病理学

病理学 · A/33

急性炎症の特徴(細胞イベント・化学メディエーター・全身反応)

Characteristics of acute inflammation (cellular events, chemical mediators, systemic effects, exudate, organic example)

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Mechanism / 機序High-yield / ポイント
応用トピック
整形外科疾患・外傷のリハビリテーション:変形性関節症・多発外傷・人工股関節創傷の分類と創傷治癒創感染の症状と治療創傷の分類と創傷治療の原則手の軟部組織・腱損傷と手感染症

🧠 全体像:は「血液中の防御細胞を傷害部位へ届ける」ことが目的で、(・透過性亢進)と細胞イベント(白血球のローリング→接着→→→貪食)という2つの並行で成り立つ。滲出液の性状(漿液性→→化膿性→出血性→)は、おおまかには血管・の強さを映す。

定義

炎症 は、細胞傷害の原因とそれによって生じた壊死細胞・組織を排除する防御反応で、宿主防御の細胞・分子を血液から傷害部位へ届けることで行われる。臓器名+_「-itis」_でする(例外:肺炎・pneumonia)。急性または慢性に分けられる。

: 急速に発症し短期間。主な細胞は好中球(と血小板)。5つの主徴は rubor(発赤)、tumor(腫脹)、dolor(疼痛)、calor(熱感)、functio laesa(機能障害)。

刺激: 感染、外傷・物理(熱傷、放射線)、(虚血)、異物、免疫・過敏反応。

認識(自然免疫)

  • が(PAMPs、例:LPS)を認識。
  • 傷害センサーがを認識。
  • 循環タンパク質 — 補体、結合、。
  • 機能:補体・凝固・貪食の活性化、の誘発、アポトーシスの誘導。

血管イベント

  1. 一過性の血管収縮 → 血管拡張 → (発赤、熱感)。
  2. の亢進 — 内皮の収縮が間隙を形成:早期はヒスタミン、による(15〜30分)、後期はTNF、IL-1、IFN-γによる(4〜6時間、約24時間持続)。ほかに、からの漏出、駆動の。
  3. 結果 — タンパク質に富む滲出液がへ → 血液が濃縮 → 粘稠度上昇 → うっ滞。間質浸透圧の上昇 → 浮腫。

細胞イベント — 白血球の動員

  1. 辺縁趨向とローリング — 白血球が血管辺縁へ押しやられ、(内皮のE-/P-、白血球のL-)による弱い接着。
  2. 強固な接着 — (で活性化)がICAM/VCAMに結合。
  3. ・ — 主にで、CD31(PECAM-1)を介し内皮細胞間をすり抜ける。が基底膜を破る。
  4. — 細菌産物、、補体(C5a)、に向かう。
  5. 貪食と殺菌 — (IgG-Fc、C3b)→ 取り込み → ROS()、窒素種、リソソーム酵素。NETsが微生物を捕捉。

💡 「ローリング=、強固な接着=、=PECAM-1」という教科書の対応は、実際にはもっと細かい段階に分かれている。 2007年の総説は、従来の3段階(ローリング・活性化・強固な接着)に、slow rolling・接着強化(adhesion strengthening)・血管内匍匐(intraluminal crawling)・傍細胞性/経細胞性の遊走という段階が加わったと整理している。遊走には内皮細胞の間を通る経路(傍細胞性)だけでなく、内皮細胞そのものを貫く経路(経細胞性)もある1。

flowchart TD
    A["辺縁趨向とローリング<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='selectins'>セレクチン</span>(E-/P-/L-)"] --> B["強固な接着<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='integrin'>インテグリン</span>-ICAM/VCAM"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='diapedesis (emigration)'>遊出</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='diapedesis'>血管外遊走</span><br>CD31(PECAM-1)"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='chemotaxis'>走化性</span><br>細菌産物・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='chemokine'>ケモカイン</span>・C5a"]
    D --> E["貪食と殺菌<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='opsonization'>オプソニン化</span>→ROS・NETs"]

化学メディエーター

メディエーター 由来 主な作用
ヒスタミン・セロトニン 肥満細胞、、血小板 血管拡張、透過性亢進
プロスタグランジン 経路 血管拡張、疼痛・発熱
、、透過性亢進
/ IL-1 / IL-6 マクロファージ、内皮 、
補体(C3a, C5a) 血漿(肝由来) 、、、
キニン系() 透過性亢進、血管拡張、疼痛
NO 内皮、マクロファージ 血管拡張、殺菌
PAF 、血管収縮

(Hageman因子)の活性化が、凝固系・キニン系・を炎症と結びつける。

全身反応(急性期反応)

主にTNF、IL-1、IL-6が駆動:

  • 発熱 — → IL-1/ → 増加 → PGE2が視床下部のを上げる。
  • 質の増加 — 、、フィブリノゲン、(はとして働く。フィブリノゲンはを上げる。は鉄を組織に隔絶し炎症性の低鉄血症をもたらす。そのを炎症時に誘導するのに必要かつ十分なサイトカインはIL-6である2)。成人ヒト肝細胞では、IL-1β・・IL-6の3つが合成を調節するが、・・フィブリノゲンなどの増加とアルブミン・の減少という炎症時と同じ全体像を単独で再現できるのはIL-6だけで、IL-1βとはとを誘導できなかった3。
  • — サイトカインが骨髄の予備を放出、遷延感染では(一部の感染はを来す)。
  • 心拍数・血圧の上昇。圧倒的な感染では → (/IL-1 → 低血圧、DIC、アシドーシス、低血糖)。

形態学的パターン(滲出液による)と臓器例

パターン 滲出液 例
漿液性 薄く低タンパク(フィブリン・細胞なし) 熱傷の水疱、貯留、
フィブリンに富む 「絨毛心」、(C. difficile)、ジフテリア
化膿性 膿(好中球+壊死) 膿瘍、、蜂窩織炎、・
出血性 赤血球に富む(重度の血管傷害) 出血性肺炎、、
壊死+細菌 (糖尿病、動脈硬化)、

の転帰:消退、・線維化(吸収されない滲出液の器質化)、または慢性炎症への移行。

💡 ポイント: 主徴(rubor・tumor・dolor・calor・functio laesa)。動員カスケード:ローリング()→ 接着(–ICAM)→ → 。早期透過性 = ヒスタミン、後期 = /IL-1。急性期の三役 = TNF、IL-1、IL-6 → 発熱、、。滲出液パターン:漿液性 → → 化膿性 → 出血性 → 。

まとめ

  • は急速に発症する短期の炎症で、好中球が主な細胞。5主徴は発赤・腫脹・疼痛・熱感・機能障害。
  • は血管拡張(発赤・熱感)と透過性亢進(早期=ヒスタミン、後期=/IL-1)による滲出液形成。
  • 白血球動員はローリング()→強固な接着(–ICAM/VCAM)→(CD31)→→貪食と殺菌(・ROS・NETs)の順に進む。実際にはslow rolling・接着強化・血管内匍匐といった中間段階も区別されている1。
  • はヒスタミン()、プロスタグランジン・(疼痛)、a/C5a(・)など多岐にわたる。
  • 全身反応(・IL-1・IL-6が駆動)は発熱、質増加(・SAA・フィブリノゲン・等、いずれもIL-6が中心的に誘導する32)、を来す。
  • 滲出液の形態は漿液性→→化膿性→出血性→の順に、おおまかには血管・が強くなる(厳密な重症度の序列ではなく、原因によって最初から特定の型をとる)。

出典

  1. 1.Getting to the site of inflammation: the leukocyte adhesion cascade updated(Nature Reviews Immunology・2007)抄録で、従来の3段階(ローリング・活性化・強固な接着)が精緻化され、slow rolling・接着強化(adhesion strengthening)・血管内匍匐(intraluminal crawling)・傍細胞性/経細胞性の血管外遊走という段階が新たに区別されるようになったこと、好中球ではGタンパク質共役受容体を介さない第二の活性化経路が発見されていることを確認した。本文は取得できていない(Unpaywallでclosed)ので、各段階を担う個々の分子(セレクチン・インテグリン・PECAM-1)の対応はこの出典では確かめていない閲覧 2026-08-27
  2. 2.IL-6 mediates hypoferremia of inflammation by inducing the synthesis of the iron regulatory hormone hepcidin(Journal of Clinical Investigation・2004)ヒト肝細胞培養・マウス・ヒトボランティアを用いた検討で、炎症時の低鉄血症(hypoferremia)の発現には肝臓で産生される鉄調節ペプチドホルモンのヘプシジンが必要であること、IL-6が炎症時のヘプシジン誘導に必要かつ十分なサイトカインであり、IL-6-ヘプシジン軸が炎症の低鉄血症の原因であることを確認した閲覧 2026-08-27
  3. 3.Interleukin-6 is the major regulator of acute phase protein synthesis in adult human hepatocytes(FEBS Letters・1989)ヒト成人肝細胞で急性期タンパク合成を調節する単球由来サイトカインはIL-1β・TNF-α・IL-6の3つだが、ヒトの炎症状態で見られる全スペクトラムの急性期タンパク応答を誘導できるのはIL-6のみであること、IL-6はCRP・血清アミロイドA・フィブリノゲン・α1アンチトリプシン・α1アンチキモトリプシン・ハプトグロビンの合成・分泌を増加させる一方、アルブミン・トランスフェリン・フィブロネクチンを減少させることを確認した閲覧 2026-08-27