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RASS

Richmond Agitation-Sedation Scale

別名
リッチモンド興奮・鎮静スケールRichmond Agitation Sedation Scale
臓器系
神経呼吸器
科目
Intensive Therapy and Anesthesiology
トピック
麻酔科学 A-17:ICUにおける理学療法・栄養管理・心理的ケア
構成:症状
焦燥

🧠 全体像:RASSは、鎮静薬を投与されている患者などを対象に、興奮〜鎮静の深さを+4(好戦的)から-5(昏睡)までの10段階で評価する尺度である。という症候そのものの内的緊張・行動亢進を説明するのがのノートの役割であるのに対し、RASSはそのから鎮静までを1本の軸に並べて数値化し、鎮静薬の増減やの記録に使う評価尺度である。同じで使われるCIWA-Arは症状という別の病態の重症度をモニタリングする尺度であり、RASSとは対象も測っているものも異なる。

目的と適用場面

内容
目的 興奮〜鎮静の深さを数値化し、鎮静薬の投与量調整・の記録に用いる
対象 で鎮静・を受けている患者、・を呈する入院患者一般
使う場面 定期的な反復評価(少なくとも1シフトに1回程度)、鎮静薬の増減の判断、せん妄評価(CAM-など)の前段階としての確認
評価しないもの せん妄の有無そのもの(CAM-など別の尺度が必要)、疼痛の程度

構成要素と配点

⭐ 単一の10段階スコアで、興奮側(+1〜+4)・意識清明(0)・鎮静側(-1〜-5)を対称に並べる1。

スコア 用語 説明
+4 好戦的 明らかに好戦的・暴力的で、スタッフへの差し迫った危険がある
+3 強い興奮 ・カテーテル類を自己しようとする、またはスタッフに対し攻撃的な言動をとる
+2 興奮 頻回の目的のない動き、との非
+1 落ち着きのなさ 不安げ・そわそわしているが、動きは攻撃的・激しくはない
0 意識清明で穏やか
-1 傾眠 完全に覚醒してはいないが、呼びかけに10秒を超えて目を開け続け、アイコンタクトを保つ
-2 軽い鎮静 呼びかけに10秒未満のアイコンタクトを伴う短い覚醒
-3 中等度鎮静 呼びかけに何らかの動きはあるが、アイコンタクトはない
-4 深い鎮静 呼びかけには反応しないが、身体刺激には何らかの動きがある
-5 昏睡 呼びかけにも身体刺激にも反応しない

⚠️ 評価は「観察→呼びかけ→身体刺激」という決まった順序で行う。 途中の段階を飛ばして身体刺激から始めると、本来もっと軽い鎮静深度(あるいは興奮)であるはずの患者を過大評価してしまう1。

  1. まず患者を観察する。自発的に周囲へ注意を向けているか、目的のない動きや攻撃的な言動がないかを見る(この段階で0〜+4のどれかが判定できることが多い)。
  2. 観察だけで判定できなければ、患者の名前を大声で呼び、目を開けて話者を見るよう指示する(-1〜-3の判定に用いる)。
  3. 呼びかけに反応がなければ、肩を揺する・胸骨を摩擦するなどの身体刺激を加える(-4・-5の判定に用いる)。

解釈とカットオフ

RASS 位置づけ
-2〜0 現在のPADISガイドラインが推奨する目標鎮静深度のおおよその範囲。を避けつつ不快な興奮も抑える
+1以上 ・興奮が優位。身体的原因の検索(の項を参照)や鎮静薬の調整を検討する
-3 中等度鎮静。呼びかけに何らかの動きはある、CAM-でせん妄を評価できる最も深いレベル
-4以下 深い鎮静〜昏睡。下記の通りCAM-によるせん妄評価ができない深さで、まず覚醒を図ることを優先する

💡 的なという考え方。 深すぎる鎮静を漫然と続けることは避け、非薬物的介入を優先しつつの確認された尺度(RASSなど)で鎮静深度を反復評価し、-2〜0程度のを目標にすることが現在の管理では推奨される2。

⚠️ 限界と使ってはいけない場面

⚠️ CAM-の前提として、RASSが-3以上であることが要る。 CAM-によるせん妄評価は、患者が呼びかけに何らかの反応を示すにあることを前提として組み立てられている。RASS -4・-5(深い鎮静・昏睡)の患者ではせん妄の有無を判定できず、まず鎮静深度を浅くしてから再評価する3。

⚠️ Ramsayスケールとの違い。 RASSが開発される以前によく使われたRamsayスケールは、主に鎮静深度を測る尺度で、興奮した状態をレベル1(不安・興奮・落ち着きがない、をまとめて1段階)としてしか区別できなかった。RASSは興奮側にも+1〜+4の4段階を設けたことで、鎮静だけでなく興奮の程度も段階的に追跡できる点がRamsayスケールとの主な違いである1。

そのものを指標とするため、高度のや投与中の患者では判定できない点にも注意する。

まとめ

  • RASSは、興奮(+1〜+4)から意識清明(0)、鎮静(-1〜-5)までを1本の軸に並べた10段階の評価尺度である。
  • 評価は「観察→呼びかけ→身体刺激」の順で行い、途中を飛ばさない。
  • 現在は-2〜0程度のを目標とする管理が推奨される。
  • CAM-でせん妄を評価するには、RASSが-3以上(呼びかけに何らかの反応がある)であることが前提となる。
  • Ramsayスケールと異なり興奮側も段階的に評価できる点が、RASSの主な設計上の違いである。
  • CIWA-Arは症状の重症度を測る別の尺度であり、RASSと役割を混同しない。

出典

  1. 1.The Richmond Agitation-Sedation Scale: Validity and Reliability in Adult Intensive Care Unit Patients(American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine・2002)RASSが+4(好戦的)から-5(昏睡)までの10段階からなり、「観察→呼びかけ→身体刺激」の順で判定すること、既存のRamsayスケールなど他の鎮静尺度と異なり興奮側にも4段階を設けて興奮と鎮静を対称的に評価できる点を意図して開発されたことを確認した。閲覧 2026-08-19
  2. 2.Clinical Practice Guidelines for the Prevention and Management of Pain, Agitation/Sedation, Delirium, Immobility, and Sleep Disruption in Adult Patients in the ICU(Society of Critical Care Medicine(Critical Care Medicine、Devlin JWら)・2018)妥当性・信頼性が確認された尺度(RASSなど)で鎮静深度を反復評価すべきこと、深すぎる鎮静を避け目標指向的な浅い鎮静を目指すことが推奨されることを確認した。閲覧 2026-08-19
  3. 3.Delirium in Mechanically Ventilated Patients: Validity and Reliability of the Confusion Assessment Method for the Intensive Care Unit (CAM-ICU)(JAMA(Ely EW, et al.)・2001)CAM-ICUによるせん妄評価が、患者が呼びかけに何らかの反応を示す覚醒レベル(深い鎮静・昏睡ではない状態)にあることを前提として組み立てられていることを確認した。閲覧 2026-08-19