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MDS-UPDRS(改訂版統一パーキンソン病評価尺度)

MDS-UPDRS

別名
改訂版UPDRS
臓器系
神経
科目
Neurology
トピック
神経内科 G3-11:パーキンソン病の治療神経内科 G1-28:パーキンソン病の診断
構成:症状
動作緩慢振戦筋強剛ジスキネジアウェアリングオフ現象
適用疾患
パーキンソン病多系統萎縮症

🧠 全体像:-UPDRSは、パーキンソン病の運動症状・非運動症状・治療合併症を1つの尺度で数値化する、現在最も広く使われる評価尺度である。が診察する項目(Part III・IV)と患者自身が記入する項目(Part I・II)を組み合わせた複合尺度で、診断のための基準ではなく、すでに診断がついた患者の重症度・治療効果を追跡するためのツールである点がHoehn-Yahrやパーキンソン病の臨床診断基準と役割分担している。

目的と適用場面

内容
目的 パーキンソン病の運動症状・非運動症状・治療合併症の重症度を、に比較できる形で定量化する
対象 すでにパーキンソン病と診断されている患者。の主要エンドポイントとしても用いられる
使う場面 初診時のベースライン評価、薬物調整の前後比較、(など)の効果判定、の測定
評価しないもの パーキンソン病そのものの診断(別途 2015年臨床診断基準を用いる)、の詳細(・など別尺度で補う)

⭐ 旧UPDRSからの改訂点は「非運動症状の重み付け」である。 1980年代に作られた旧UPDRSは運動症状の評価が中心で、採点基準があいまいな項目や現代の治療にそぐわない項目を含んでいた。-UPDRSは非運動症状の日常生活への影響を独立したPart Iとして新設し、全項目に詳細な採点基準(アンカー)を付けて評価者間のばらつきを減らした1。

構成要素と配点

4つのPartに分かれ、各項目は0(正常)〜4(重度)の5段階で採点する1。

Part 内容 項目数 評価者 点数範囲
Part I 非運動症状の日常生活における経験(、・精神症状、抑うつ・不安、倦怠感、疼痛、便秘など) 13項目(IA:評価6項目/IB:患者記入7項目) +患者 0〜52
Part II 運動症状の日常生活における経験(会話、、嚥下、、更衣、歩行、振戦など) 13項目 患者記入 0〜52
Part III 運動検査(言語、顔面表情、、指タップ・手のなどの、振戦の振幅、姿勢・歩行) 18項目(部位・左右別に採点し計33スコア) の診察 0〜132
Part IV (の・支障度3項目、()の・支障度・複雑さ3項目) 6項目 が病歴と診察所見の両方から判定 0〜24

いずれも1。合計点は理論上0〜260で、点数が高いほど重症である。検証では各Partのが0.79〜0.93、旧UPDRSとの相関がρ=0.96と高く、旧尺度からの移行が円滑であることが確認されている1。

💡 Part III・IVの評価にはの明記が要る。 服用直後の「on」状態と、薬効が切れた「off」状態では同じ患者でも点数が大きく変わるため、記録時にどちらの状態で評価したかを併記しないと経時比較が成立しない。

解釈とカットオフ

-UPDRSには単一の重症度はなく、個々の患者内での(治療前後の点数差)や、での群間差として使う設計である1。

Part IIIの点数は「反応性」を操作的に定義する場面でも使われる。たとえばの 2017年はPart III運動スコアの改善が30%以下であることをの基準とし2、の 2022年も1000 mgを1か月以上使用してPart III運動スコアの改善が30%未満であることを同様の基準としている3。パーキンソン病の 2015年臨床診断基準が支持所見に掲げる「への明瞭かつ劇的な反応」の判定にも同じ考え方が使われる4。

日常診療では、運動症状の全体像を一言で表す指標としてHoehn-Yahr(Stage I〜V)が併記されることが多い。Hoehn-Yahr分類は左右差・・生活自立度という大づかみな病期を表す5のに対し、-UPDRSは各症状の重症度を項目単位で細かく追跡する——粗いと細かいを役割分担して使う関係にある。

⚠️ 限界と使ってはいけない場面

  • 診断ツールではない。 -UPDRSの点数だけでパーキンソン病と診断することはできない。診断は 2015年臨床診断基準に基づく別のであり、-UPDRSはすでに診断がついた後の重症度追跡に使う。
  • 評価者訓練が前提になる。 各項目には詳細な採点基準(アンカー)があるが、訓練を受けていない評価者間ではばらつきが生じうる。はのトレーニングプログラムを提供している。
  • Part I・IIは自己申告・に依存する。 患者の記憶や症状認識のばらつきに影響されるため、Part III(による直接観察)と単純に同列に扱わない。
  • を明記しないと経時比較が崩れる。 同じ患者でも服薬タイミングで点数が大きく変わるため、評価条件をそろえずに前後比較すると治療効果を見誤る。
  • 単一の重症度区分・が定まっていない。 合計点や各Partの点数を「軽症/中等症/重症」に機械的に当てはめる基準はなく、個々の患者内での変化や群間比較に用いるのが本来の使い方である。
  • 完全な評価には30分近くを要し、外来の短時間診療にはそぐわないことがある。

まとめ

  • -UPDRSは、パーキンソン病の非運動症状(Part I)・運動症状の日常生活への影響(Part II)・運動検査(Part III)・(Part IV)を0〜4点の5段階で採点する複合尺度である。
  • ではなく、診断後の重症度追跡・治療効果判定・の測定に使う。
  • Part IIIの点数変化は、反応性を操作的に定義する際の共通の物差しとしても使われる(改善30%以下=など)。
  • 評価にはの明記と評価者訓練が前提になる。単一のはなく、・群間差として解釈する。
  • 粗い病期を表すHoehn-Yahrと、項目単位で細かく追跡する-UPDRSは、互いを代替せず併用される。

出典

  1. 1.Movement Disorder Society-sponsored revision of the Unified Parkinson's Disease Rating Scale (MDS-UPDRS): Scale presentation and clinimetric testing results(Movement Disorders(Goetz CGら、国際パーキンソン病・運動障害学会)・2008)国際パーキンソン病・運動障害学会(MDS)が旧UPDRSを改訂したMDS-UPDRSの構成が、Part I(非運動症状の日常生活における経験、医師評価6項目+患者記入7項目の計13項目)、Part II(運動症状の日常生活における経験、患者記入13項目)、Part III(運動検査、評価者による18項目・部位と左右差を分けて33のスコアを取る)、Part IV(運動合併症、ジスキネジア3項目+運動変動3項目の計6項目、評価者が病歴と診察所見の両方から判定)の4パートであること、各項目が0(正常)〜4(重度)の5段階で採点されること、Cronbach's α(内的整合性)が各パートで0.79〜0.93、旧UPDRSとの相関がρ=0.96と高く、旧尺度からの円滑な移行が確認されたことを確認した閲覧 2026-09-05
  2. 2.Clinical diagnosis of progressive supranuclear palsy: The Movement Disorder Society criteria(Movement Disorder Society(Movement Disorders誌)・2017)MDS 2017年PSP臨床診断基準がレボドパ抵抗性を「MDS-UPDRS運動スコアの改善が30%以下」と操作的に定義し、判定には1000 mg(忍容できれば)を1か月以上投与するか、200 mg以上のチャレンジ投与後に評価するとしていることを確認した閲覧 2026-09-05
  3. 3.The Movement Disorder Society Criteria for the Diagnosis of Multiple System Atrophy(Movement Disorder Society(Movement Disorders誌、Wenning GKら)・2022)MDS 2022年MSA臨床診断基準の臨床的確実例において、レボドパ1000 mgまでを1か月以上使用してもMDS-UPDRS運動スコアの改善が30%未満であることをレボドパ反応性の乏しさの基準としていることを確認した閲覧 2026-09-05
  4. 4.MDS clinical diagnostic criteria for Parkinson's disease(International Parkinson and Movement Disorder Society (MDS)・2015)MDS 2015年臨床診断基準の支持所見の1つが「ドパミン作動性治療への明瞭かつ劇的な反応」であり、客観的には治療変更を伴うUPDRS III運動スコアの30%超の改善、主観的には信頼できる患者・介護者による明確な変化の記録のいずれかで判定するとしていること、初回反応の記録が無い場合は増量での明瞭な改善・減量での明瞭な悪化・予測可能なウェアリングオフを含む明確なon-off変動で代替判定できるとしていることを確認した閲覧 2026-09-05
  5. 5.Parkinsonism: onset, progression and mortality(Neurology(Hoehn MM, Yahr MD)・1967)パーキンソニズムの重症度を左右差・姿勢反射障害・生活自立度で5段階(Stage I〜V)に分ける病期分類の原著であることを確認した(詳細はHoehn-Yahr重症度分類を参照)閲覧 2026-09-05