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Hoehn-Yahr重症度分類

Hoehn and Yahr staging

別名
ホーン・ヤール重症度分類
臓器系
神経
科目
Neurology
トピック
神経内科 G3-11:パーキンソン病の治療神経内科 G1-28:パーキンソン病の診断
適用疾患
パーキンソン病

🧠 全体像:Hoehn-Yahrは、パーキンソン病の全身状態の進み具合を一目で伝える大づかみなである。項目ごとに採点するMDS-UPDRSと違い、左右差の有無・の有無・生活の自立度という3つの臨床的な節目だけを見てStage I〜Vに振り分ける。細かさを犠牲にする代わり、外来で「今どのくらいの病期か」を一言で共有できることがこの分類の存在意義である。

目的と適用場面

内容
目的 パーキンソン病()の全体的な進行度を、左右差・・生活自立度という粗い基準で1つの病期に要約する
対象 パーキンソン病、および他の原因によるを呈する患者
使う場面 外来での経過の申し送り、の対象選定基準(例:早期=Stage I〜II、=Stage III以降)、疫学研究での重症度層別化
評価しないもの 個々の運動症状・非運動症状の詳細な重症度(MDS-UPDRSが非運動症状・日常生活への影響・運動検査・を項目単位で採点して担う1)、生活の質、

構成要素と病期

原著の5段階(Stage I〜V)は次のとおりである2。

Stage 所見
I 性の障害のみ。機能障害はないか軽微
II 両側性またはの障害。を伴わない
III 両側性の障害。軽度〜中等度の機能障害があり、が出現するが、身体的には自立している
IV 高度の機能障害。介助なしでも起立・歩行は可能だが、著しく制限される
V 介助なしでは生活または

⚠️ Stage IIとIIIの境目が最大の節目である。 IIIで初めて(立ち直り反射の障害。後方への引っ張り試験で数歩以上する、または倒れる)が加わる。左右差の有無だけを追うStage I・IIと、姿勢反射という質的に異なる所見を含むStage III以降では、臨床的な意味合いが変わる——タスクフォース報告もの出現を臨床的進行の重要な節目とみなし、Stage 3への到達までの期間を進行を追う指標として使えるとしている3。

中間病期を補う修正版

原著の5段階では中間的な状態を表しにくいという事情から、Stage 1.5(性の障害に体幹症状を伴う)とStage 2.5(軽度の両側性障害はあるが、後方への引っ張り試験で立ち直れる)を加えた「修正版」が1990年代以降、臨床研究で広く使われるようになった。国際パーキンソン病・運動障害学会()のタスクフォースはこの普及の実態を確認したうえで、修正版には臨床計量学的な検証データが無いことを理由に、検証を経るまでは原著の5段階版を維持すべきと勧告した3。「Hoehn-Yahr分類」と言うとき原著の5段階を指すのか修正版を指すのか曖昧になりやすいため、記録するときはどちらの版かを明記する。

解釈とカットオフ

病期 目安となる臨床像
Stage I〜II 軽症。生活機能はほぼ保たれ、はまだない
Stage III 中間点。が出現するが、身体的には自立している
Stage IV〜V 。介助なしでの生活が困難〜不可能で、継続的な介護が必要になる

ではStage I〜IIを「早期」、Stage III以降を「」の目安として対象選定に用いることが多い。ただしに定義された単一のがあるわけではなく、試験ごとに採用基準は異なる。

💡 段階が上がるほど、上のドパミン低下や、標準化された運動障害・能力低下・尺度の点数と高く相関することが確認されている。 これがHoehn-Yahr分類が広く受け入れられてきた理由の1つである3。

⚠️ 限界と使ってはいけない場面

  • な尺度である。 各段階の間隔(重症度の重み)は均等ではない。とくにStage IIからIIIへの移行はという質的な転換点を含み、Stage IIIからIVへの移行とは臨床的な意味合いが異なる。「Stage 2から4への変化」と「Stage 3から5への変化」を同じ大きさの悪化として扱わない。
  • な機能障害そのものと、生活上の能力低下が混在した尺度である。 「の有無」というと、「介助なしで生活できるか」という生活機能の評価が同じ尺度の中に混ざっている。パーキンソン病にな要因(例:整形外科的な問題による)を除いて評価する標準的な手順は存在しないため、タスクフォースは無理に切り分けようとせず「見えるままを評価する(rate what you see)」——併存症の影響も含めて病期を判定する方針を推奨している。ただしこれは、原因の異なる能力低下が病期を押し上げうることを踏まえたうえでの、単純さを優先する選択である3。
  • 非運動症状を反映しない。 、精神症状、自律神経症状がどれだけ進んでいても、運動症状の左右差・・生活自立度だけで決まるHoehn-Yahr分類には反映されない。
  • 個々の症状の変化を追跡するには粗すぎる。 薬効の変動(、)や特定の症状への治療反応を見たいときは、項目単位で採点するMDS-UPDRSを使う。Hoehn-Yahr分類と-UPDRSは代替関係ではなく、粗い病期と細かい重症度を役割分担している。
  • によって同じ患者でも病期の判定が変わりうるため、評価時の服薬状態を記録に残す。

まとめ

  • Hoehn-Yahrは、左右差の有無・の有無・生活の自立度という3つの節目でパーキンソン病の進行度をStage I〜Vに振り分ける、大づかみなである。
  • Stage IIIで初めてが加わる——Stage IIとIIIの境目が最大の質的節目である。
  • 中間病期を表す修正版(Stage 1.5・2.5を追加)が提案されており、原著版と修正版のどちらを使っているかを明記する必要がある。
  • 機能障害と能力低下が混在するな尺度であり、非運動症状は反映されない。個々の症状を細かく追跡するには-UPDRSと役割分担して使う。
  • 単一のはないが、ではStage I〜IIを早期、Stage III以降をの目安として対象選定に用いることが多い。

出典

  1. 1.Movement Disorder Society-sponsored revision of the Unified Parkinson's Disease Rating Scale (MDS-UPDRS): Scale presentation and clinimetric testing results(Movement Disorders(Goetz CGら、国際パーキンソン病・運動障害学会)・2008)MDS-UPDRSが非運動症状(Part I)・運動症状の日常生活への影響(Part II)・運動検査(Part III)・運動合併症(Part IV)を項目単位で0〜4点の5段階評価する尺度であることを確認した(詳細はMDS-UPDRSを参照)閲覧 2026-09-05
  2. 2.Parkinsonism: onset, progression and mortality(Neurology(Hoehn MM, Yahr MD)・1967)パーキンソニズムの重症度を左右差の有無・姿勢反射障害の有無・生活の自立度によってStage I(一側性のみで機能障害なしか軽微)〜Stage V(介助なしでは車椅子または寝たきり)の5段階に分類した原著であり、段階が上がるほど神経学的異常が進行し生活自立度が低下することを確認した閲覧 2026-09-05
  3. 3.Movement Disorder Society Task Force report on the Hoehn and Yahr staging scale: status and recommendations(Movement Disorders(Goetz CGら、国際パーキンソン病・運動障害学会 Task Force on Rating Scales for PD)・2004)国際パーキンソン病・運動障害学会(MDS)のタスクフォースが、Hoehn-Yahr分類の長所(広く普及し受け入れられていること、段階が上がるほど神経画像上のドパミン低下や標準化された運動障害・能力低下・QOL尺度と高く相関すること)と短所(機能障害〈impairment〉と能力低下〈disability〉が混在していること、段階間の重みが均等でない非線形な尺度であること)を整理したこと、Stage 1.5(一側性の障害に体幹症状を伴う)とStage 2.5(軽度の両側性障害があるが後方への引っ張り試験で立ち直れる)を加えた「修正版」がすでに広く使われている実態を確認したうえで、この修正版には臨床計量学的な検証データが無いため検証を経るまでは原著の5段階版を維持すべきと勧告したこと、病期の判定では併存症の影響も含めて「見えるままを評価する(rate what you see)」方針を推奨したことを確認した閲覧 2026-09-05