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Drug Atlas · A18 Antipsychotics / 抗精神病薬 · 必修

クロザピン

clozapine

分類
Antipsychotics / 抗精神病薬
商品名(日本)
クロザリル
商品名(EU)
Leponex
科目
Pharmacology
トピック
A18: Antipsychotics
禁忌疾患
イレウス・腸閉塞
副作用
痙攣便秘
監視検査値
絶対好中球数血糖
影響検査値
好中球減少
相互作用
カルバマゼピンメタミゾール
対象疾患
統合失調感情障害統合失調症
原因となる疾患
悪性症候群心筋炎無顆粒球症

🧠 全体像は抗精神病薬の中で唯一「他剤に勝る」というエビデンスを持つ、の切り札である。D2受容体への親和性が弱くすぐ解離する一方、D4・5-HT2A・M1など多数の受容体に広く弱く結合する変わった薬理プロファイルのおかげでEPS・はほとんど起きない。だがその代償としてという致死的なを負っており、定期的な好中球数モニタリングという運用そのものが薬の一部になっている。「効くが、管理コストが高い」——この一言に尽きる薬である。

薬効群の中での位置づけ

世代・型 代表薬 特徴 主な適応
定型・高力価 など D2遮断のみ→EPSが強く出やすい 急性精神病
非定型(第2世代) など D2+5-HT2A遮断→
(別格) D4/5-HT2A拮抗・低D2親和性。唯一「他剤に勝る」根拠を持つがのリスクで最終手段 、自殺リスク低減
D2部分作動(第3世代) ドパミン系を「安定化」、代謝副作用少 の補助

は「非定型の元祖」でありながら非定型の枠に収まらない。 D2親和性が低いのにEPSがほとんど出ない理由は「結合してもすぐ外れる(fast dissociation)」という的な性質にあり、単純な受容体率では説明できない。この特殊性が、EPSの少なさと引き換えに・心筋炎・痙攣という他の非定型薬にはないリスクを背負う理由でもある。

機序

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='clozapine'>クロザピン</span>が複数受容体に<span class='jp-term jp-term-diagram' title='low affinity'>低親和性</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fast dissociation (fast-off)'>速い解離</span>で結合"] --> B["D2受容体を弱く遮断(すぐ解離)"]
    A --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='5-HT2A receptor'>5-HT2A受容体</span>を強く遮断"]
    A --> D["M1受容体には部分的に<span class='jp-term jp-term-diagram' title='agonist'>アゴニスト</span>様作用(M4刺激含む)"]
    B --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='positive symptoms'>陽性症状</span>を軽減、EPS・高プロラクチンはほぼ生じない"]
    C --> E
    D --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='paradoxically'>逆説的</span>な<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sialorrhea (hypersalivation)'>唾液過多</span>(sialorrhea)"]
    A --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bone marrow progenitor cell'>骨髄前駆細胞</span>への<span class='jp-term jp-term-diagram' title='direct toxicity'>直接毒性</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='immune-mediated'>免疫介在性</span>機序(仮説)"]
    G --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='agranulocytosis'>無顆粒球症</span>(好中球数500/μL未満)"]

D2受容体からの「」仮説は、なぜだけEPSが少ないのかを説明する代表的な理論である。率がある瞬間だけ高くても、結合がすぐ外れるためのドパミン伝達を長時間は妨げない。

💡 の「例外」。 は全体としてを持つが、唾液腺のムスカリンにはむしろ刺激的に働くため、口渇ではなく逆に唾液が増えるという一見矛盾した副作用が高頻度に出る。試験で「が強いのに口が乾かない薬は?」と問われたらを疑う。

薬物動態

項目 値・特徴
約50〜60%
代謝 主にCYP1A2(一部CYP3A4・CYP2D6)
排泄 代謝物として腎・胆汁排泄
半減期 約12時間
喫煙の影響 CYP1A2を誘導するため喫煙者は血中濃度が低下。禁煙すると急激に血中濃度が上昇しに入りうる

喫煙状態の変化はの引き金になる。 入院で急に禁煙した患者では、同じ用量でも血中濃度が上がり、痙攣・鎮静過多のリスクが増す。

適応

領域 使いどころ
精神科 治療抵抗性(十分量・十分期間の抗精神病薬2剤に反応不十分な場合)
精神科 における自殺リスクの低減(承認された特異的な適応)

用法・用量

リスクを避けるため、少量(例:1日12.5〜25 mg)から開始し数日〜数週かけて緩徐に漸増する。急な増量は・痙攣のリスクを上げる。開始前・導入後・を通じて(ANC)を定期的にモニタリングし、基準を下回れば減量・中止のプロトコルに従う。実際の用量・モニタリング間隔は各国のREMS/管理プログラムや施設のプロトコル・添付文書で確認する。

禁忌・注意

  • 禁忌・腸閉塞による低下で。便秘から腸閉塞・死亡に至った例がある)
  • ⚠️ :好中球数500/μL未満と定義される重度好中球減少。定期的なANCモニタリングが必須で、を下回れば直ちに中止する
  • ⚠️ 心筋炎:特に導入後6週以内に多く、発熱・頻脈・胸部症状があれば疑う
  • ⚠️ 痙攣。高用量・急速な増量でリスクが上がる
  • 重大な相互作用カルバマゼピンとの併用は骨髄抑制作用が重なるため避ける

副作用

頻度 内容
高頻度 、鎮静、体重増加、便秘
注意 頻脈、・脂質異常)、による誤嚥
重篤・まれ 、心筋炎、痙攣

まとめ

  • に唯一「他剤に勝る」エビデンスを持つ切り札。自殺リスク低減という特異的な適応も持つ。
  • D2親和性は弱く速く解離するため、EPS・はほとんど生じない。
  • 代償としてのリスクを負い、の定期モニタリングが治療の一部になっている。
  • ・便秘・体重増加・鎮静が高頻度。便秘はに進展しうるため軽視しない。
  • 心筋炎は導入後6週以内に多く、発熱・頻脈があれば早期に疑う。
  • 痙攣は。急な増量を避け緩徐に漸増する。
  • 喫煙状態の変化(特に禁煙)はCYP1A2を介して血中濃度を大きく動かす。
  • カルバマゼピンとの併用は骨髄抑制が重なるため避ける。