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Disease Atlas · 眼科 · 先天性疾患

Peters奇形

Peters anomaly

別名
Peters sequence
臓器系
眼科小児
科目
Microscopic Anatomy and Embryology (Embryology)
トピック
発生学 6.1:胚子期(器官形成):外胚葉由来組織発生学 19.3:眼:水晶体・角膜・脈絡膜・強膜・硝子体
鑑別疾患
先天性遺伝性角膜内皮ジストロフィ(CHED)
合併症
緑内障
関連疾患
Axenfeld-Rieger症候群
検査値
眼圧

🧠 全体像:Peters奇形は、神経堤由来の形成異常スペクトラムのうち、中央が疾患の定義そのものである病態である。Axenfeld-Rieger症候群が緑内障を主な帰結とするのに対し、Peters奇形ではによる視力障害が最初から前面に出る。同時に緑内障の合併率も50〜70%と高く、「角膜との両方を一生涯フォローする病気」として捉える。

病態:発生学的な二段階の破綻

Peters奇形は、がから分離する過程の異常に端を発し、その二次的な結果としての遊走が破綻して生じる12。

眼周囲のは3波にわたって遊走し、第1波がとを形成する。Peters奇形ではこの過程が障害され、部位で内皮とが完全に欠損し、Bowman膜も菲薄化または欠損しうる1。

💡 「の分離不全」が起点というのが、Axenfeld-Rieger症候群との発生学的な違いを理解する鍵になる。 Axenfeld-Rieger症候群が主にの分化・遊走そのものの障害であるのに対し、Peters奇形は形成の異常が先にあり、の破綻はその結果として二次的に起こる2。

分類:Type IとType II

病型 所見 罹患側 視力予後
Type I 角膜癒着を伴う 通常片眼性 比較的良好
Type II 角膜癒着、または異常を伴う 通常両眼性 Type Iより不良

角膜癒着はの集合輪から生じての辺縁に付着し、細い線維状・太い・弓状のなど多様な形を取る1。

疫学と原因遺伝子

奇形をもつ小児は出生1万人あたり約3.3〜6.0人で、その大部分をPeters奇形が占め、米国では年間44〜60例が報告される1。

はが大きく、PAX6とFOXC1が最も頻度が高い1。CYP1B1の変異も症例の約20%を占める1。ほかにPITX2・PITX3・COL4A1・COL6A3・FOXE3などが報告されている12。大部分は孤発例だが、・優性いずれの遺伝形式も報告されている2。

⭐ 緑内障と全身症状

⭐ はPeters奇形の50〜70%に合併する1。の評価と並行して、生涯にわたるのフォローが必須になる。

全身症状(、、耳介異常、知的障害など)を伴う場合はPeters plus症候群と呼ばれる。この呼称が最も正確に指すのは、13q上のB3GLCT遺伝子の両アレル機能喪失による、・などを伴うのPeters sequenceである2。

治療と予後

⚠️ 確定的治療はだが、予後は限定的である。 のは術後5〜10年で約30%まで低下する1。の適応・時期はの範囲・両眼性・緑内障合併の有無を踏まえて個別に判断する。

先天性遺伝性角膜内皮ジストロフィ(CHED)との鑑別

いずれも乳児期のとして現れるが、CHEDは両眼性のびまん性(の著明な低下)が主体で角膜癒着を伴わないのに対し、Peters奇形は限局した中央と角膜癒着(またはType IIでの角膜癒着)が特徴であり、成り立ちもの分化異常(CHED)と分離不全に続発する遊走の破綻(Peters奇形)で異なる。

まとめ

  • Peters奇形は、がから分離する過程の異常を起点とし、二次的にの遊走が破綻して生じる形成異常である。
  • 中央で内皮・が欠損することが疾患の定義そのもので、角膜癒着を伴うType Iと角膜癒着を伴うType IIに分類される。
  • はPAX6とFOXC1が中心で、が大きい。
  • が50〜70%に合併し、生涯にわたるフォローを要する。
  • 確定的治療はだが、は術後5〜10年で約30%まで低下する。
  • Axenfeld-Rieger症候群と同じ神経堤由来の形成異常スペクトラムに位置づけられるが、罹病の主因( vs 緑内障)が異なる。

出典

  1. 1.Peters Anomaly(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2023)前眼部奇形をもつ小児が出生1万人あたり約3.3〜6.0人おり、その大部分をPeters奇形が占めること、米国で年間44〜60例が報告されること、組織学的に角膜混濁部位で内皮とDescemet膜が完全に欠損しBowman膜も菲薄化または欠損しうること、Type Iが虹彩角膜癒着を伴う角膜混濁で通常片眼性・視力予後が比較的良好であるのに対し、Type IIは水晶体角膜癒着または水晶体異常を伴う角膜混濁で通常両眼性であること、原因遺伝子としてPAX6・PITX2・PITX3・COL4A1・FOXC1・COL6A3が知られ中でもPAX6とFOXC1が最も頻度が高いこと、CYP1B1の変異が症例の約20%を占めること、神経堤由来細胞が3波にわたり遊走し第1波が線維柱帯と角膜内皮を形成すること、Peters奇形が水晶体胞が表面外胚葉から分離する過程の異常に由来すること、先天緑内障がPeters奇形の50〜70%に合併すること、全身症状(口唇口蓋裂・低身長・耳介異常・知的障害など)を伴う場合をPeters plus症候群と呼ぶこと、確定的治療は角膜移植だが術後5〜10年で移植片生着率が約30%まで低下すること確認した。閲覧 2026-09-07
  2. 2.Genetics of the anterior segment dysgenesis(Taiwan Journal of Ophthalmology・2023)Peters anomaly/sequenceが後部角膜欠損とそれに続く混濁、虹彩角膜癒着または水晶体角膜癒着(白内障の有無を問わない)で特徴づけられること、この病態が表面外胚葉からの水晶体形成不全とそれに続く神経堤細胞遊走の二次的破綻の結果であること、大部分の症例は孤発性だが常染色体劣性・優性の遺伝形式も報告されていること、原因遺伝子としてPAX6・FOXE3・PITX2・FOXC1・PITX3が頻度が高くCOL4A1・CYB1P1・FLNA・HCCS・NDP・SLC4A11・TFAP2の変異も報告されていること、Peters plus症候群という呼称は13q上のB3GLCT遺伝子の両アレル機能喪失による骨格異形成・発達遅延などを伴う常染色体劣性のPeters sequenceを最も正確に指すことを確認した。閲覧 2026-09-07