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Disease Atlas · 眼科 · 病態

高眼圧症

Ocular hypertension

別名
OHT
臓器系
眼科
科目
Medical Physiology
トピック
生理学 8.4:視覚の生理学
鑑別疾患
緑内障
治療薬
ラタノプロストチモロールブリモニジン
検査値
眼圧

🧠 全体像:は「緑内障になる前段階」ではなく、視神経・視野に異常がないままだけが統計的を超えている状態である。緑内障の項が強調するとおり緑内障はであり、はその対極——が高いだけでを欠く——に位置づけられる。この主題の学習の幹は1本にほぼ集約できる:OHTS(Ocular Hypertension Treatment Study)が、無治療なら5年で約1割が緑内障へ転換すること、点眼治療でその転換率を半分以下に減らせること、そして・比・年齢・・視野のパターンという5つの因子で「誰が転換しやすいか」を予測できることを示した。全員を治療する必要はない——危険因子に応じてリスクを層別化し、治療と経過観察を使い分けるという発想そのものが、このノートの核心である。

定義:緑内障との境界線

は、が統計的なを超えていながら、隅角は開放し、・視野に緑内障性変化を認めない状態を指す。💡 「統計的な」の中身は集団の平均+2である。 米国眼科学会のPreferred Practice Patternはを「・視野の障害の証拠を欠いたまま、がその集団の平均より2以上高い状態」と定義し、米国ではこの定義が通常21 mmHg超を指すと述べている1。⚠️ 21という数字は正常と異常を分ける生物学的な境界ではなく、ある集団の分布から導かれた統計量である——集団が違えば値も動く。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intraocular pressure'>眼圧</span>が統計的<span class='jp-term jp-term-diagram' title='upper limit of normal (ULN)'>正常上限</span>を超える"] --> B{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='optic disc'>視神経乳頭</span>・視野に<br>緑内障性変化があるか"}
    B -->|"なし"| C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ocular hypertension'>高眼圧症</span>"]
    B -->|"あり"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='primary open-angle glaucoma'>原発開放隅角緑内障</span>(POAG)"]
    C --> E{"危険因子の層別化<br>(年齢・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='corneal thickness'>角膜厚</span>・C/D比・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intraocular pressure'>眼圧</span>・<br>視野のパターン<span class='jp-term jp-term-diagram' title='standard deviation'>標準偏差</span>)"}
    E -->|"5年転換リスクが低い"| F["経過観察"]
    E -->|"5年転換リスクが高い"| G["点眼治療で転換リスクを低減"]

⭐ 緑内障がであるという定義に立ち返ると、は「まだになっていない」状態にすぎない。 という一つの数値だけでは緑内障の診断もその除外も成立しないことはの項で述べたとおりで、はこの原則をそのまま体現する概念である。

OHTS(Ocular Hypertension Treatment Study)

⭐ の管理はこの1本のにほぼ集約される。 1994年から22施設で開始されたOHTSは、緑内障性障害の所見が無い40〜80歳で、少なくとも一方の眼のが24〜32mmHg・が21〜32mmHgの1,636例を、当初無治療の経過観察群と点眼による下降治療群にした23。治療群の目標はを20%以上下げ、かつ24mmHg以下にすることで、実際のは治療群22.5±9.9%・観察群4.0±11.6%だった2。は再現性のある視野異常またはの悪化で、マスクされたセンターと判定委員会が判定している2。

⚠️ 「観察群」は20年間ずっと無治療だったわけではない。 2002年6月〜2008年12月(phase 2)は両群とも点眼治療を受けており、2009年以降は治療がプロトコル規定外になったものの、20年時点でも967例中696例(72.0%)がを継続していた3。以下の「観察群」「治療群」は、あくまで当初のを指すラベルである。

追跡期間・出典 観察群(当初無治療、2002年以降は治療) 治療群(当初から点眼治療)
60か月時点のPOAG発症の確率(OHTS原著、2002年発表) 9.5% 4.4%(0.40、95%CI 0.27-0.59、P<.0001)2
5年POAG発症率(JAMA 2021が同じコホートを再計算した値) 7.7%(95%CI 5.8-9.5) 4.0%(95%CI 2.6-5.4)3
20年POAG発症率 49.3%(95%CI 44.5-53.8) 41.9%(95%CI 37.2-46.3)3

⚠️ 9.5%・4.4%は「60か月時点の確率」であって、5年間に発症したを頭数で割った割合ではない。 原著の逐語は At 60 months, the cumulative probability of developing POAG was 4.4% in the medication group and 9.5% in the observation group である2。⚠️ 治療群の値は資料によって小数第1位がずれる——米国眼科学会のPreferred Practice Patternは同じ試験を3箇所とも「9.5%から4.5%へ」と書いている1。原著のの逐語は4.4%なので、数字を引くときは原著に戻る。

💡 5年時点と20年時点の数字を並べるときは、比べているものが変わる点に注意する。 「観察群」は2002年以降に治療へ切り替わっているため、49.3% vs 41.9%という20年の差は「治療する・しない」の差ではなく、「治療開始が早いか遅いか」で分かれた2群の差である3。

⚠️ 第1期にできた差は、その後広がりはしなかったが、20年まで縮まりもしなかった。 20年報告の本文は、POAGの発症は第1期には観察群で多く、その差はその後ほぼ一定のまま推移したと書いている(原文 The incidence of POAG was higher in the observation group during the OHTS 1, but this difference remained relatively constant thereafter)。同じ論文の表でを観察群・治療群の順に並べると、5年7.7%・4.0%、10年17.5%・9.4%、15年26.3%・20.2%、20年49.3%・41.9%である3。同じ論文のは、両群が点眼を受けた第2期(2002〜2008年)の発症が2群でほぼ等しく(1.06、95%CI 0.74-1.50)、第1期に治療を遅らせたことは大半の参加者で不可逆な悪化の過程を始めはしなかったと述べる3。米国眼科学会のPreferred Practice Patternの要約も、この第2期の結果について、治療を遅らせたことでその後の治療への反応性が悪くなる不利益は無かったと、反応性に限って述べている1。

⚠️ これを「治療を遅らせても代償は無い」と読まない。 治療開始後の反応性が保たれることと、遅らせていた間に生じた発症の差が取り戻されることは別である。追跡期間の中央値13年の時点で、POAGを発症した割合は当初の観察群0.22(95%CI 0.19-0.25)、当初の治療群0.16(95%CI 0.13-0.19)で差があり(P=.009)、ベースラインの発症リスクが最も高い3分の1では0.40対0.28だった。著者らは、な減少はベースラインのリスクが最も高い群で最大であり、発症リスクの高い人はより頻回の診察と早期ので利益を得うるとしている4。

20年の発症率は25.2%(95%CI 22.5-27.8)で、20年追いかけてもに至ったのは4人に1人であり、20年報告はこの情報と予測モデルが個別化した判断を助けうるとしている3。

危険因子:誰が転換しやすいか

OHTSのベースライン解析は、年齢・・・・を組み合わせた予測モデルを確立した53。⚠️ 単変量で見えた因子と、多変量で残った因子は同じではない。 原著のは、で発症を予測した因子として高齢・アフリカ系人種・男性・垂直および水平C/D比が大きいこと・が高いこと・視野のパターンが大きいこと・心疾患・が薄いことを挙げる一方、で残った因子として挙げるのは高齢・C/D比(垂直または水平)・・パターン・の5つで、人種・性・心疾患はその列挙に入っていない5。

危険因子 内容
(CCT) 薄いほど転換リスクが高く、原著のはこれを「powerful predictor」と呼ぶ5。OHTS/EGPSの群の平均CCTは570μmで、555μm未満の眼は588μm以上の眼よりPOAG発症リスクが高かった1。の項で述べたとおり、薄い角膜は(の過小評価)と真の危険因子という二重の意味を持つ
垂直(および水平)C/D比 大きいほど転換リスクが高い。多変量でも残る5
年齢 高齢ほど転換リスクが高い。多変量でも残る5
基礎 高いほど転換リスクが高い。多変量でも残る5
視野のパターン 大きいほど転換リスクが高い。多変量でも残る5
人種 単変量ではアフリカ系人種が予測因子に挙がるが、多変量で残った因子の列挙には入っていない5。20年は黒人/アフリカ系アメリカ人55.2%(95%CI 47.9-61.5)に対し他の人種42.7%(95%CI 38.9-46.3)であった3
その他 米国眼科学会のPreferred Practice Patternは、POAGの確立した危険因子として上記のほかに緑内障家族歴・ラテン系/ヒスパニック系・糖尿病・低い収縮期/・低い眼・・低い角膜・を挙げる1。⚠️ これはOHTSのの結果ではなく、POAG一般の危険因子の列挙である

⚠️ は測定値の解釈と危険因子評価の両方に関わる、でとくに重要なである。 角膜が薄い眼はで実際のを過小評価されやすく、「見た目のはそれほど高くない」でも、角膜が薄ければ真のリスクは過小評価されている可能性がある。⚠️ ただし補正式でを「直す」ことはしない——Preferred Practice Patternは、測定とCCTの関係を定量化しようとした研究は多いが一般に受け入れられた補正式は無いとし、世界緑内障学会の合意も個々の患者の測定値を補正係数で調整すべきでないとしている1。

⭐ 危険因子は1つずつではなく組み合わせで効く。 同じPreferred Practice Patternは、OHTSの未治療例のうち基礎26mmHg以上かつCCT 555μm以下の患者は5年間の追跡で36%が視神経の障害を来したのに対し、基礎24mmHg未満かつCCT 588μm超の患者では2%だったと述べている1。⚠️ これは2因子の組み合わせについての数字であって、だけ・だけで36%になるという意味ではない。

誰を治療するか

⭐ と診断された全員に点眼治療を始める必要はない。 米国眼科学会のPreferred Practice Patternは「OHTSでは未治療の患者の90%超が5年で緑内障へ進行しなかった」と述べ1、英国ガイドライン(NG81)は逐語で Do not offer treatment to people with OHT who are not at risk of visual impairment within their lifetime. と、生涯にわたるのリスクが無いなら治療しないことを明示的な推奨として置いている6。⚠️ ここでの「」は、同ガイドラインの用語の節で「標準的なやコンタクトレンズで矯正できない高度ので、視覚的な環境で機能する能力を低下させるもの」と定義されている6。

では何を見てリスクを見積もるのか。NG81は診断時に将来ののリスクを評価するよう求め、考慮する因子としての水準・・家族歴・余命を挙げる6。米国のPreferred Practice Patternは、年齢・・視野のパターン・・の5から5年リスクを出す器を「用いることを考慮してよい」とするにとどめ、治療を開始する数値の閾値は置いていない——「どの場面であれ、治療と経過観察の利益と不利益を並べる話し合いがと患者のあいだで行われなければならない」と述べる1。

⚠️ 「5年転換リスク15%以上で治療、5%未満で経過観察、5〜15%は個別に判断」という有名な目安は、ガイドラインの推奨ではない。 これは緑内障のグループの合意として2004年に米国の眼科誌(AJO)で発表された目安で、2006年の米国眼科学会の会員誌記事が器とともに紹介したものである7。覚えやすいが、上記のとおり2025年のPreferred Practice Patternはこの種の数値の閾値を採用していない1。

💡 層別化が実際にどれくらい効くかは、20年の成績で見える。 5因子のベースラインモデルでリスクを3分位に分けると、20年POAG発症率は低リスク群31.7%(95%CI 26.4-36.6)・群47.6%(95%CI 41.6-53.0)・高リスク群59.8%(95%CI 53.1-65.5)だった3。⚠️ 低リスク群でも20年で3割が転換している——層別化は「誰を先に治療するか」を決めるものであって、「誰が一生発症しないか」を保証するものではない。

💡 この層別化の考え方は、無治療がデフォルトで「危険因子が重なる例だけ治療対象に上げる」という発想である。 緑内障そのものと違い、は治療しなければ確実に失明へ向かう疾患ではないため、点眼治療の副作用・コスト・の負担と、転換リスク低減の利益を天秤にかけるの典型例になる。

治療

治療に用いる薬は、緑内障の治療と同じ抑制・流出促進を狙った点眼薬——などの、などのβ遮断薬、などのα2作動薬——である。治療を行うと決めた場合の初期の目標は、OHTSに基づき複数回測定したベースラインの平均から20%下げることが妥当とされる1。⚠️ ただし同じ資料は直後に、開始時のが著しく高ければ20%の下降では緑内障への転換を防ぐ・十分に遅らせるのに足りないことがあると断り、受診ごとにとの関係を評価して個別化するよう求めている1。また同じ資料は、をの第一選択の治療として考慮しうると位置づけ、LiGHT試験に触れている1。

⚠️ 英国ガイドライン(NG81、2022年改訂)は、点眼薬より先に360°(SLT)を提示するという順序を採る。 推奨1.4.4の逐語は Offer 360° selective laser trabeculoplasty (SLT) to people with newly diagnosed OHT with IOP of 24 mmHg or more (excluding cases associated with pigment dispersion syndrome) if they are at risk of visual impairment within their lifetime である6。これは緑内障のと共通する。読むときに落としやすい点が3つある。

  • ⚠️ 閾値は「24mmHg以上」であって「24mmHg超」ではない。 ちょうど24mmHgの患者は対象の側に入る6。24mmHgという値は、OHTSがの下限(少なくとも一方の眼で24mmHg以上)としていた値と一致する。
  • ⚠️ 色素散布症候群に伴う例は括弧書きで除外されている6。
  • ⚠️ 「生涯にわたるのリスクがある場合」という条件が付く。 リスクが無ければ、そもそも治療しないのが推奨1.4.3である6。

点眼薬はSLTの代わりに置かれる。NG81の推奨1.4.6は、①SLTを選ばない ②SLTが適さない(例として色素散布症候群) ③SLT中の橋渡しが要る ④SLTを受けたがなお下降が足りない、の4つの場合にジェネリックのを提示するとし、初回処方時に点眼手技を実演して患者が正しくできることを確認するよう求める6。⭐ できないときの順序も決まっている——別のジェネリックの → β遮断薬 → 非ジェネリックの・・・・これらの併用、である6。⚠️ 初回SLTの効果が時間とともに減弱した場合は、2回目の360°SLTを考慮してよい6。

緑内障との役割分担

⭐ と緑内障を「同じ病気の軽症・重症」と捉えない。 緑内障はそのものでありはその危険因子の一つにすぎないのに対し、はを欠く「危険因子だけがある」状態である。同じ理屈で、緑内障の項が扱う(が正常でもが進行する)はの対極に位置する——の数値だけでは緑内障の存在も不在も証明できないという一点に、両者は共通して行き着く。

(POAG)
統計的超 高いことが多いが必須ではない()
・視野 正常 緑内障性変化あり
治療の目的 転換リスクの低減(危険因子に応じて個別化) の進行抑制(原則として治療対象)

まとめ

  • は、が統計的(集団の平均+2。米国の慣用では21mmHg超)を超えながら・視野に緑内障性変化を認めない状態で、緑内障()とは明確に区別される。
  • OHTS原著は60か月時点のPOAG発症の確率を観察群9.5%・治療群4.4%(0.40、95%CI 0.27-0.59)と報告した。⚠️ これは確率であって生の割合ではなく、二次資料には4.5%と書くものがある。「観察群」も2002年以降は治療に切り替わっており(20年時点で72.0%が投薬継続)、20年時点の49.3% vs 41.9%は「無治療かどうか」ではなく「治療開始の早さ」の差である。第1期にできた差は、その後広がりも縮まりもせずほぼ一定のまま残った。治療を遅らせても治療開始後の反応性は損なわれなかったが、発症リスクの高い群ほど早期治療による発症のな減少が大きい。20年追ってもに至ったのは25.2%にとどまる。
  • 危険因子のうちで残るのは年齢・C/D比・・視野のパターン・の5つで、人種・性・心疾患は単変量で挙がるにとどまる。⚠️ 危険因子は組み合わせで効き、基礎26mmHg以上かつCCT 555μm以下なら5年間の追跡で36%、基礎24mmHg未満かつCCT 588μm超なら2%である。
  • 全員を治療する必要はない——未治療でも90%超は5年で緑内障へ進行せず、は生涯にわたるのリスクが無いには治療を行わないと明示している。⚠️ 有名な「5年転換リスク15%以上で治療開始、5%未満で経過観察」は2004年に発表されたグループの合意の目安であって、2025年のPreferred Practice Patternは数値の閾値を置いていない。
  • 治療を行う場合、(NG81、2022年改訂)は24mmHg以上(色素散布症候群に伴う例を除く)で生涯にわたるのリスクがある新規に360°SLTを初期治療として提示し、SLTを選ばない・適さない・中・SLT後も不十分という4つの場合にジェネリックのを置く6。⚠️ 「24mmHg超」と覚えない——この値はOHTSがの下限としていた値と一致する。米国眼科学会の示す初期の下降目標は20%だが、開始時のが著しく高ければそれでは足りないことがある。

出典

  1. 1.Primary Open-Angle Glaucoma Suspect Preferred Practice Pattern(American Academy of Ophthalmology・2025)2026-09-16に2025年版のPDF本体(57頁、Board of Trustees 承認 2025年9月6日)を取得し、ランディングページ(aao.org/education/preferred-practice-pattern/primary-open-angle-glaucoma-suspect-ppp)の埋め込みJSONが同じアセットを指していることで現行版であることを確かめたうえで、次を逐語で確認した。①定義は「Ocular hypertension has been defined as IOP higher than two standard deviations above the mean for the population without evidence of optic disc or visual field damage.」で、続けて米国ではこの定義が通常21 mmHg超を意味すると述べる。②OHTSについて「More than 90% of patients with untreated ocular hypertension did not progress to glaucoma over 5 years, but treatment reduced the risk of developing POAG from 9.5% to 4.5%.」と書く(原著Kass 2002の抄録の値は4.4%)。続けて「In the OHTS 2, both randomized groups received medication. The rate of progression to POAG was similar between the two randomized groups, indicating that delaying treatment in the observation group during the OHTS 1 did not penalize participants by making them less responsive to treatment to prevent disease progression.」と述べ、20年累積のPOAG発症が全参加者で45.6%、視野障害が25.2%であるとする。③中心角膜厚について「In the OHTS and European Glaucoma Prevention Study (EGPS) trials, the average CCT in the ocular hypertension group was 570 µm, and the risk of developing POAG was greater in eyes with a corneal thickness of less than 555 µm compared with eyes with a corneal thickness of 588 µm or greater.」。測定眼圧とCCTの関係については「there is no generally accepted correction formula」とし、世界緑内障学会の眼圧に関する合意が個々の患者の測定値を補正係数で調整すべきでないとしていると述べる。④治療開始の判断について「untreated patients in the OHTS with a baseline IOP of 26 mmHg or above and a CCT of 555 µm or below had a 36% chance of developing optic nerve damage compared with a 2% risk for patients with a baseline IOP of less than 24 mmHg and a CCT greater than 588 µm during 5 years of follow-up.」——2因子の組み合わせについての、5年間の追跡での値である(以前のclaimが長期追跡と書いていたのは誤りで、2025年版の文言は during 5 years of follow-up)。同じ資料が555 µmの境界を③では less than、④では or below と2通りに書いている。⑤POAGの確立した危険因子として、眼圧上昇に加えて高齢・緑内障家族歴・Black race・Latino or Hispanic ethnicity・diabetes mellitus・低い収縮期および拡張期血圧・低い眼灌流圧・近視・薄い中心角膜・低い角膜ヒステリシス・視神経乳頭出血・大きいC/D比・高いパターン標準偏差を挙げる(糖尿病は型を限定していない)。⑥リスク計算器については「Clinicians may consider using a risk calculator」という書き方にとどまり、変数は年齢・垂直C/D比・パターン標準偏差・中心角膜厚・眼圧の5つで5年リスクを出すと述べる。数値の閾値で治療開始を決める記述は無く、「Whatever the scenario, a discussion must occur between the physician and patient to outline the risks and benefits of treatment versus observation.」と患者との相談を求める。⑦目標眼圧について「a reasonable initial target based on the OHTS is a 20% reduction in IOP from the mean of several baseline IOP measurements.」とし、直後に「However, if the starting pressure is markedly elevated, a 20% reduction may be insufficient to prevent or adequately delay conversion to glaucoma.」と続ける。⑧「Laser trabeculoplasty surgery can be considered a first-line therapy in patients with ocular hypertension.」としてLiGHT試験に触れる。閲覧 2026-09-16
  2. 2.The Ocular Hypertension Treatment Study: a randomized trial determines that topical ocular hypotensive medication delays or prevents the onset of primary open-angle glaucoma(Archives of Ophthalmology・2002)OHTS原著の抄録(Europe PMC の resultType=core、PMID 12049574)で次を確認した。①組入れは緑内障性障害の所見が無い40〜80歳で、一方の眼の眼圧24〜32 mmHg・僚眼21〜32 mmHgの1,636例。②治療群の目標は眼圧を20%以上下げ、かつ24 mmHg以下にすること。③主要評価項目は再現性のある視野異常または視神経乳頭の悪化で、マスクされた読影センターと判定委員会が判定した。④眼圧の低下は治療群22.5±9.9%、観察群4.0±11.6%。⑤逐語は「At 60 months, the cumulative probability of developing POAG was 4.4% in the medication group and 9.5% in the observation group (hazard ratio, 0.40; 95% confidence interval, 0.27-0.59; P<.0001).」であり、9.5%・4.4%は60か月時点の累積確率であって生の割合ではない。⑥結論は逐語で「Although this does not imply that all patients with borderline or elevated IOP should receive medication, clinicians should consider initiating treatment for individuals with ocular hypertension who are at moderate or high risk for developing POAG.」。⚠️ 全文は取得していない(Unpaywall の oa_status は closed、リポジトリ版なし)。上記は抄録に逐語で載っている範囲のみである。閲覧 2026-09-16
  3. 3.Assessment of Cumulative Incidence and Severity of Primary Open-Angle Glaucoma Among Participants in the Ocular Hypertension Treatment Study After 20 Years of Follow-up(JAMA Ophthalmology・2021)OHTSが1994年から22施設で1,636例(眼圧21〜32mmHg)を無治療経過観察群と点眼治療群に無作為割付けしたこと、2002年6月〜2008年12月(phase 2)は両群とも点眼治療を受けたため「観察群」は20年間無治療だったわけではないこと、20年時点で967例中696例(72.0%)が眼圧下降薬を投与されていたこと、この論文自身が再計算した5年累積POAG発症率は観察群7.7%(95%CI 5.8-9.5)・治療群4.0%(95%CI 2.6-5.4)であること(OHTS原著の9.5%/4.4%とは値が異なる)、20年累積発症率は観察群49.3%(95%CI 44.5-53.8)・治療群41.9%(95%CI 37.2-46.3)、20年累積視野障害発症率が25.2%であったこと、予測モデルが年齢・眼圧・中心角膜厚・垂直C/D比・視野パターン標準偏差を用いることを確認した。2026-09-16に抄録(PMID 33856434)で再確認できたのは、無作為化された1,636例の平均年齢55.4±9.6歳・女性931例(56.9%)・白人1,138例(69.6%)・黒人/アフリカ系アメリカ人407例(24.9%)、曝露期間で調整した20年累積発症率が全体45.6%(95%CI 42.3-48.8)・観察群49.3%・治療群41.9%、黒人/アフリカ系アメリカ人55.2%(95%CI 47.9-61.5)に対し他の人種42.7%(95%CI 38.9-46.3)、20年累積視野障害発症率25.2%(95%CI 22.5-27.8)、そして5因子のベースラインモデルによる低・中・高リスク3分位の20年累積発症率が31.7%(95%CI 26.4-36.6)・47.6%(95%CI 41.6-53.0)・59.8%(95%CI 53.1-65.5)であること、そして結論が逐語で「only one-fourth of participants in the Ocular Hypertension Treatment Study developed visual field loss in either eye over long-term follow-up. This information, together with a prediction model, may help clinicians and patients make informed personalized decisions about the management of ocular hypertension.」であり、抄録は観察群と治療群の20年累積発症率の差について検定結果も解釈も述べていないことまでである。5年の再計算値(7.7%/4.0%)と72.0%という投薬継続割合は抄録に無いが、2026-09-16にPMCのHTML全文(https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8050785/ 、ブラウザUAで200。Europe PMCのfullTextXMLは同日500)を取得し、題名とDOIが一致することを確かめたうえで次を確認した。①Table 2(曝露期間で調整した累積発症率)の観察群・治療群が、5年7.7%(5.8-9.5)・4.0%(2.6-5.4)、10年17.5%(14.7-20.2)・9.4%(7.3-11.5)、15年26.3%(22.9-29.7)・20.2%(17.0-23.3)、20年49.3%・41.9%であること。②Resultsが逐語で 'The incidence of POAG was higher in the observation group during the OHTS 1, but this difference remained relatively constant thereafter' と述べること。③本文が、20年追跡時または死亡前2年以内に967例中696例(72.0%)が眼圧下降薬を投与されていたと述べること。④序論が、OHTS 2(2002年6月3日〜2008年12月30日)では両群とも投薬を受け、その期間のPOAG発症が2群でほぼ等しく(HR 1.06、95%CI 0.74-1.50)、'delaying treatment in the observation group during the OHTS 1 did not initiate a process of irreversible deterioration in most participants' と述べること。閲覧 2026-09-16
  4. 4.Delaying treatment of ocular hypertension: the ocular hypertension treatment study(Archives of Ophthalmology(Kass MA ほか、128巻3号276-287頁)・2010)Europe PMCの抄録(PMID 20212196)で次を確認した。DOIはCrossrefで題名・誌名・巻号・2010年を照合した(出版社サイトはcurlで403)。①目的は早期治療と遅れた治療の安全性・有効性の比較で、治療群の治療期間の中央値は13.0年、観察群は無治療の中央値7.5年の後に中央値5.5年の投薬を受けた。②追跡期間の中央値13年の時点でPOAGを発症した累積割合は、当初の観察群0.22(95%CI 0.19-0.25)、当初の治療群0.16(95%CI 0.13-0.19)、P = .009。③ベースラインの発症リスクが最も高い3分の1では0.40(95%CI 0.33-0.46)対0.28(95%CI 0.22-0.34)。④投薬に伴う有害事象の増加を示す証拠はほとんど無かった。⑤臨床への適用として逐語で「Absolute reduction was greatest among participants at the highest baseline risk of developing POAG. Individuals at high risk of developing POAG may benefit from more frequent examinations and early preventive treatment.」。⚠️ 全文は取得していない。上記は抄録に逐語で載っている範囲のみである。閲覧 2026-09-16
  5. 5.The Ocular Hypertension Treatment Study: baseline factors that predict the onset of primary open-angle glaucoma(Archives of Ophthalmology・2002)OHTSのベースライン予測因子の原著の抄録(PMID 12049575)で次を確認した。①角膜厚の測定だけは無作為化前ではなく追跡期間中に行われた。②単変量解析で発症を予測した因子は、高齢・アフリカ系人種・男性・垂直および水平C/D比が大きいこと・眼圧が高いこと・Humphrey視野のパターン標準偏差が大きいこと・心疾患・中心角膜厚が薄いことである。③多変量解析で残った因子として抄録が挙げるのは、高齢・垂直または水平C/D比が大きいこと・眼圧が高いこと・パターン標準偏差が大きいこと・中心角膜厚が薄いことの5つで、人種・性・心疾患はこの列挙に入っていない。④結論は中心角膜厚を「powerful predictor」と呼んでいる。⚠️ 555 µmのような層別の境界値は抄録に無い。全文は取得していない(Unpaywall の oa_status は closed)。閲覧 2026-09-16
  6. 6.Glaucoma: diagnosis and management (NICE guideline NG81)(National Institute for Health and Care Excellence・2022)NG81の推奨の章の本文を直接取得して確認した(ページの表示は published 01 November 2017、last updated 26 January 2022。SLTの推奨には[2022]の版表示が付く)。①1.4.3は逐語で「Do not offer treatment to people with OHT who are not at risk of visual impairment within their lifetime.」であり、生涯にわたる視機能障害のリスクが無い高眼圧症には治療を行わず、一次眼科医療での定期受診を続けるよう助言するとしている。②1.4.4は逐語で「Offer 360° selective laser trabeculoplasty (SLT) to people with newly diagnosed OHT with IOP of 24 mmHg or more (excluding cases associated with pigment dispersion syndrome) if they are at risk of visual impairment within their lifetime」——閾値は24 mmHg「以上」であり、色素散布症候群に伴う例は除外される。③1.4.6は、SLTを選ばない/SLTが適さない(例として色素散布症候群)/SLT待機中の橋渡し/SLT後になお眼圧下降が足りない、の4つの場合にジェネリックのプロスタグランジン関連薬を提示するとし、初回処方時に点眼手技を実演して確認することを求める。④1.4.7は忍容できない場合の順序を、別のジェネリックのプロスタグランジン関連薬→β遮断薬→非ジェネリックのプロスタグランジン関連薬・炭酸脱水酵素阻害薬・交感神経刺激薬・縮瞳薬・併用、と定める。⑤1.2.6は高眼圧症の診断時に将来の視機能障害のリスクを評価するとし、考慮する因子として眼圧の水準・中心角膜厚・家族歴・余命を挙げる。⑥用語の節は visual impairment を「標準的な眼鏡やコンタクトレンズで矯正できない高度の視力低下で、視覚的な環境で機能する能力を低下させるもの」と定義する。⑦1.4.5は初回SLTの効果が減弱した場合に2回目の360°SLTを考慮するとする。⚠️ 本ページの「last updated」は2022年1月26日だが、1.4.9にNICE技術評価TA1009(2024年、ラタノプロスト・ネタルスジル)への参照が入っている。閲覧 2026-09-16
  7. 7.Glaucoma: Calculating the Risk(American Academy of Ophthalmology (EyeNet Magazine)・2006)2026-09-16に記事本文を取得して確認した(ページの表示は FEB 01, 2006、By Miriam Karmel, Contributing Writer、「This article is from February 2006 and may contain outdated material.」の注記つき)。記事が紹介するのは当時の5年POAGリスク計算器(STAR)で、その計算器に印刷された global risk thresholds chart について「originally published in AJO in 2004」「based on the consensus of a group of glaucoma experts」と書き、専門家グループが5年転換リスク15%以上なら治療、5%未満なら経過観察、5〜15%は利益とリスクを患者と話し合うよう助言したと述べる(参考文献は Am J Ophthalmol 2004;138:458-467)。OHTSが危険因子として挙げたのは中心角膜厚・垂直C/D比・眼圧・視野のパターン標準偏差・年齢であると述べる。⚠️ 記事時点のOHTS/EGPS共同の計算器は「準備中」と書かれており、目安がOHTS/EGPS計算器のために作られたものではない。診療ガイドラインの推奨でもなく、同じ学会の2025年版Preferred Practice Patternはリスク計算器を「考慮してよい」とするにとどめ、治療開始の数値の閾値を置いていない。閲覧 2026-09-16