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Disease Atlas · 眼科 · 疾患

再発性角膜びらん

Recurrent corneal erosion

別名
再発性角膜上皮びらん症候群
臓器系
眼科
科目
Microscopic Anatomy and Embryology (Microscopic Anatomy)Microscopic Anatomy and Embryology (Embryology)
トピック
組織学 17.1:感覚器:眼発生学 19.3:眼:水晶体・角膜・脈絡膜・強膜・硝子体
鑑別疾患
水疱性角膜症
合併症
角膜炎
症状
眼痛羞明流涙

🧠 全体像:は、上皮と実質をつなぐ「接着」そのものが弱いために、同じ場所のが繰り返し剥がれる病気である。原因は外傷が最多だが、のように内皮が尽きているわけではなく、実質の浮腫もの低下も伴わない——はという接着装置にある。⭐ 明け方・起床時に突然の激痛で目が覚めるという特徴的な病歴が、この病気を疑う最大の手がかりになる。

病態——「治りが悪い」のではなく「接着が弱い」

正常なは、基底膜の(半)とアンカリングフィラメントによって下床のBowman膜・実質にしっかり固定されている。では、この接着装置そのものが構造的に弱いため、いったん治癒したようにみえる上皮が、や睡眠中の眼瞼と角膜の摩擦程度の軽微な力で再び剥離する。

原因の内訳は外傷関連が45〜64%と最多で、ジストロフィ(EBMD、別称map-dot-fingerprint dystrophyまたはCogan)関連が19〜29%を占める1。EBMDは一般人口の最大15%にみられ、多くは無症状だが1、基底膜が異常に肥厚・重複することでの数が減り、上皮の接着そのものが脆弱になる。

💡 「一度の外傷」が「繰り返す病気」に変わる理由。 最初の外傷(爪によるが典型)で基底膜が損傷すると、その部位の再生した基底膜は正常構造に戻りきらないことがある。一度損傷した接着装置は完全には元に戻らないため、同じ場所が繰り返し剥がれる素地が残る。乾性・糖尿病・眼瞼炎・も上皮の治癒を妨げ、の背景になりうる1。

症状

⭐ 明け方・起床時に突然の強い眼痛で覚醒するという病歴が最も特徴的である。夜間の中はによる角膜の湿潤・潤滑が低下し、開瞼時にが弱く接着した上皮を引き剥がすためと考えられている。・・を伴う。

エピソードは数分〜数時間で軽快することが多いが、同じ眼で(しばしば同じ部位で)繰り返す点が診断の核心である。

診断

で上皮の欠損・微細な隆起・接着不良を確認する。で上皮欠損部が染まる。ジストロフィが背景にある場合は、罹患部位以外にも不規則な灰色のmap様、上皮内の(Cogan)、上皮下の小石様といったがみられる2。

⚠️ 感染への波及に注意

⚠️ 繰り返す上皮欠損は感染の門戸になる。 上皮のバリアが破綻するたびに病原体の侵入経路ができ、放置すれば角膜炎()へ波及しうる。急性期の・予防的抗菌薬点眼は、この感染リスクを念頭に選択する。

治療——保存的治療から段階的に進む

治療は保存的治療から始め、失敗した場合にへ進む段階的アプローチをとる1。

段階 内容
保存的治療(第一選択) 不含の、抗菌薬、(点眼・)、の装用
(保存的治療が無効な例) 上皮、穿刺(ASP)、ダイヤモンドバー研磨(DBP)、(PTK)
  • 穿刺(ASP):成功率は約80%1。
  • ダイヤモンドバー研磨(DBP):術式の中で最も再発率が低い1。
  • (PTK):成功率は60〜100%と報告によって幅がある1。

⭐ は「治す」のではなく「再発を減らす」対症療法である。 を高張にして上皮下の浮腫を減らし、脆弱な接着への負荷を下げる。根本的な接着不良を治すのは(とくに上皮の再生を促すダイヤモンドバー研磨やPTK)である。

鑑別

疾患 決め手
上皮欠損はあるが、との低下を伴わない点がとの違いになる
樹枝状病変・を伴う。・で区別する
が高度に低下している病歴(・既往など)で疑う
露出性角膜症 ・不全などの病歴を伴う

まとめ

  • は、の接着装置が構造的に弱いために同じ部位のが繰り返し剥離する疾患である。
  • 原因は外傷関連が45〜64%と最多で、ジストロフィ(EBMD、map-dot-fingerprint dystrophy)関連が19〜29%を占める。
  • ⭐ 明け方・起床時の突然の眼痛という病歴が診断の最大の手がかりで、と異なり・低下を伴わない。
  • ⚠️ 繰り返す上皮欠損は感染の門戸になり、角膜炎へ波及しうる。
  • 治療は・・など保存的治療から始め、無効例では穿刺・ダイヤモンドバー研磨・PTKへ段階的に進む。

出典

  1. 1.Recurrent corneal erosion: a comprehensive review(Clinical Ophthalmology・2019)再発性角膜びらんが主に30〜80歳の成人に影響し30〜40歳で有病率が最も高いこと、原因の内訳が外傷関連45〜64%・上皮基底膜ジストロフィ(EBMD)関連19〜29%であること、EBMD(別称map-dot-fingerprint dystrophy、anterior basement membrane dystrophy)が一般人口の最大15%にみられること、乾性眼症・糖尿病・眼瞼炎・酒皺症(酒さ)との関連があること、鑑別診断に単純ヘルペス角膜炎・露出性角膜症・神経栄養性角膜症・角膜感染症・移植片対宿主病が挙がること、治療は抗菌薬と防腐剤不含の人工涙液など保存的治療から始め失敗例で外科的治療へ進む段階的アプローチをとること、前部実質穿刺(ASP)の成功率が約80%であること、ダイヤモンドバー研磨(DBP)が術式の中で最も再発率が低いこと、光治療的角膜切除術(PTK)の成功率が60〜100%と報告により幅があることを確認した。閲覧 2026-09-06
  2. 2.Corneal Dystrophy(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2023)上皮基底膜角膜ジストロフィ(EBMCD、map-dot-fingerprint dystrophy)が細隙灯検査で不規則な灰色のmap様パッチ、上皮内の微小囊胞(Cogan微小囊胞)、上皮下の小石様封入体(blebs)として現れること、顆粒状・斑状・格子状角膜ジストロフィなど上皮系ジストロフィの患者が軽度から重度の角膜びらんに苦しむこと、治療に人工涙液・高張性の夜間用潤滑剤・NSAIDs・治療用コンタクトレンズ・光治療的角膜切除術(PTK)が用いられることを確認した。閲覧 2026-09-06