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Disease Atlas · 眼科 · 腫瘍

脂腺癌

Sebaceous carcinoma

臓器系
眼科腫瘍
科目
Pathology
トピック
病理学 C/103:非メラノサイト系皮膚腫瘍
鑑別疾患
脂腺腺腫麦粒腫・霰粒腫
症状
慢性眼瞼炎・マイボーム腺機能不全睫毛乱生皮膚結節
元疾患
脂腺母斑

🧠 全体像:を理解する鍵は、「治らない」「片側性の難治性」という一見ありふれた訴えの裏に、まぎれもない悪性腫瘍が隠れうるという一点である。・という眼瞼のに好発し、良性の炎症性疾患とそっくりな見た目で数年単位の診断遅延を来しやすい。組織学的にはのため肉眼的境界が実際の広がりと一致せず、を要する。そしてもう一つの見逃せない側面が——と(大腸癌が中心)を結びつけるの亜型——であり、を診断したら必ずこの可能性を検索する。

発生と好発部位

は眼瞼の(瞼板内)と(睫毛の毛包に付属する)に好発する悪性腫瘍で、眼瞼悪性腫瘍のうち・扁平上皮癌に次いで3番目に多い。眼周囲発生が全体の約75%を占め、が集中する上眼瞼は下眼瞼より2〜3倍多く侵される1。

年間は人口100万人あたり1〜2例とまれで、60〜79歳の高齢者に好発し、男女比は1.4対1とやや男性に多い1。高齢者の片側性・難治性眼瞼病変を診るときに、この年齢層そのものが疑う根拠の一つになる。

⚠️ 見逃してはいけないもの

⚠️ 「治らない」「片側性の難治性」として長期間見逃されやすい。 は臨床的に・・・母斑と酷似し、このが診断の遅れと・死亡率の増加に直結する1。通常のは数週間で軽快に向かうかに反応するのに対し、再発を繰り返す・片側性・眼瞼縁の構造そのものが歪む例は、この一線を越えていないか疑う。

⚠️ (内への進展を含む)のため、肉眼的な病変境界と実際の広がりが一致しない。 への進展が疑われる場合は、複数箇所から採取するで病変の広がりを確認したうえで切除範囲を計画する必要がある1。

⚠️ を必ず鑑別・検索する。 は(、HNPCC)の表現型亜型で、(MLH1・MSH2・MSH6・PMS2)のによりを介してリスクが高まる。HNPCC患者の約9.2%にみられ、・・といったと、大腸癌を中心とする(・卵巣癌・乳癌・・)を結びつける2。を切除病理で確認したら、腫瘍組織のでスクリーニングし、陽性であれば遺伝カウンセリング・、(18歳から)・(25〜30歳から)による年次につなげる2。

flowchart TD
    A["眼瞼の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='chalazion'>霰粒腫</span>様腫瘤・難治性<span class='jp-term jp-term-diagram' title='blepharitis'>眼瞼縁炎</span>"] --> B{"再発性・片側性・<br>眼瞼縁の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='structural aberration'>構造異常</span>を伴うか"}
    B -->|"いいえ・典型的な経過"| C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='chalazion'>霰粒腫</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='chronic blepharitis'>慢性眼瞼炎</span>として経過観察"]
    B -->|"はい"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sebaceous carcinoma'>脂腺癌</span>を疑い生検"]
    D --> E{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='conjunctiva'>結膜</span>への進展が疑われるか"}
    E -->|"あり"| F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='map biopsy'>マッピング生検</span>で広がりを確認"]
    E -->|"なし"| G["切除範囲を計画"]
    F --> G
    G --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mismatch repair protein immunohistochemistry'>ミスマッチ修復蛋白免疫染色</span>で<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='Muir-Torre syndrome'>Muir-Torre症候群</span>をスクリーニング"]

危険因子

紫外線・放射線への曝露、臓器移植後の免疫抑制(など)、・、既存のが危険因子として知られる1。

治療

⭐ 標準治療は広範切除で、は5〜6 mmが目安とされる。 ただし広範切除後の5年死亡率は18%、5年以内の再発率は30〜37%に達する。は11%・6〜8%と、標準的な広範切除より成績が優れる1。T2c以上の眼周囲病変やではを考慮する1。進行例では腫瘍の浸潤で眼瞼縁の構造そのものが破壊され、睫毛乱生を来すこともある。

治療 位置づけ・成績
広範切除(5〜6 mm) 標準治療だが5年再発率30〜37%
11%・6〜8%と良好
T2c以上・で考慮
例 を要することがある

予後

は眼周囲病変で11〜30%、遠隔転移率は眼周囲病変で3〜25%(眼外病変では21%)、死亡率は報告により9〜50%と幅がある。を合併する例は特異的5年生存率が52.5%と、非合併例の78.2%より低い1。

まとめ

  • は・に好発する眼瞼悪性腫瘍で、眼瞼悪性腫瘍としては・扁平上皮癌に次いで多い。
  • 「治らない」「片側性の難治性」として長期間見逃されやすく、のため肉眼的境界と実際の広がりが一致せずを要する。
  • (+、の亜型)を必ず鑑別・検索し、陽性なら検査・につなげる。
  • 治療は広範切除(5〜6 mm)またはで、進行例では・を要することがある。

出典

  1. 1.Sebaceous Carcinoma(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2024)脂腺癌の年間発生率が人口100万人あたり1〜2例であり60〜79歳に好発(男女比1.4対1)すること、眼瞼悪性腫瘍のうち基底細胞癌・扁平上皮癌に次いで3番目に多く、眼周囲発生が全体の約75%を占め上眼瞼が下眼瞼より2〜3倍多いこと、霰粒腫・眼瞼炎・母斑と誤診されやすく診断の遅れが罹患率・死亡率の増加につながること、組織学的にパジェット様表皮内進展を認めるため結膜への進展が疑われる場合はマッピング生検(結膜の複数部位からの生検)で病変の広がりを確認する必要があること、危険因子として紫外線・放射線曝露、臓器移植後の免疫抑制(シクロスポリンなど)、Muir-Torre症候群・Lynch症候群、既存の脂腺母斑を挙げていること、標準的な広範切除のマージンが5〜6 mmとされる一方、広範切除後の5年死亡率が18%・5年以内再発率が30〜37%に達し、Mohs顕微鏡下手術では局所再発率11%・領域転移6〜8%と成績が優れること、T2c以上の眼周囲病変や高悪性度腫瘍ではセンチネルリンパ節生検を考慮すること、局所再発率が眼周囲病変で11〜30%、遠隔転移率が眼周囲病変で3〜25%(眼外病変で21%)、死亡率が9〜50%と報告により幅があり、Muir-Torre症候群合併例では脂腺癌特異的5年生存率が52.5%と非合併例の78.2%より低いことを確認した。閲覧 2026-08-19
  2. 2.Muir-Torre Syndrome(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2023)Muir-Torre症候群がLynch症候群(遺伝性非ポリポーシス大腸癌、HNPCC)の表現型亜型であり、DNAミスマッチ修復遺伝子(MLH1・MSH2・MSH6・PMS2)の生殖細胞系列変異により微小衛星不安定性を介して腫瘍化リスクが高まること、HNPCC患者の約9.2%にMuir-Torre症候群がみられること、皮膚病変として脂腺腺腫(最多)・脂腺上皮腫・脂腺癌、脂腺分化を伴う角化棘細胞腫が生じること、内臓悪性腫瘍は大腸癌が中心で子宮体癌・卵巣癌・乳癌・肝胆道系癌・尿路系癌も伴い悪性腫瘍発症年齢の中央値が53歳であること、脂腺病変が見つかった場合はミスマッチ修復蛋白の免疫染色でスクリーニングし陽性なら遺伝カウンセリング・遺伝子検査、大腸内視鏡検査を18歳から、上部消化管内視鏡検査を25〜30歳から開始し内臓・皮膚悪性腫瘍の年次サーベイランスを行うことを確認した。閲覧 2026-08-19