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Disease Atlas · 皮膚 · 腫瘍

脂腺腺腫

Sebaceous adenoma

臓器系
皮膚腫瘍
科目
Pathology
トピック
病理学 C/103:非メラノサイト系皮膚腫瘍
鑑別疾患
脂腺癌
関連疾患
遺伝性大腸癌症候群(FAP・Lynch症候群)角化棘細胞腫
症状
皮膚結節
元疾患
脂腺母斑

🧠 全体像:そのものは臨床的に無害な良性腫瘍だが、この腫瘍を理解する意味は病理そのものより単発の病変であってものになりうるという一点にある。頭頸部にできた黄色〜紅色のを「ただのできもの」として片づけず、でと分かったら(異常によるの亜型)を必ず思い出し、免疫染色によるスクリーニングと(大腸癌が中心)の検索につなげられるかどうかが臨床上のになる。

臨床像

はが豊富な頭頸部に好発する良性腫瘍で、高齢者に多いが若年での発症もありうる。直径1 cm未満(まれに5 cmに至る)の黄色〜紅色調の結節として、単発または多発性に現れる。は典型的でなく、潰瘍を伴う場合は悪性()への進展を疑う所見になる1。

組織学的連続性

系の腫瘍は、良性の増殖から悪性のまで一つの組織学的スペクトラム上に位置づけられる。

病変 組織学的特徴
(非腫瘍性) 正常な小葉構造を保ち毛包に付随する
がの50%未満、明瞭に区画された小葉構造
() が50%以上を占める
浸潤性増殖、細胞異型、の増加を伴う病変

まれにと高分化型のの区別が難しいことがある1。このゆえに、のは経験を要する。

⭐ Muir-Torre症候群の皮膚指標

⭐ が複数あるときにとの関連が強いが1、Mayoのリスクスコアは腫瘍数が1個でも年齢・個人歴・家族歴で加点されうる設計になっており1、単発だからという理由だけでの検討を打ち切らない。

flowchart TD
    A["頭頸部の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sebaceous adenoma'>脂腺腺腫</span>(単発でも可)を<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pathological diagnosis'>病理診断</span>"] --> B["腫瘍組織で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mismatch repair protein'>ミスマッチ修復蛋白</span><br>(MLH1・MSH2・MSH6・PMS2)の免疫染色"]
    B --> C{"発現消失があるか"}
    C -->|"なし"| D["経過観察"]
    C -->|"あり(MSH2消失が最多)"| E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Muir-Torre syndrome'>Muir-Torre症候群</span>を疑う"]
    E --> F["個人・家族歴の聴取"]
    F --> G["遺伝カウンセリング・生殖細胞系列<span class='jp-term jp-term-diagram' title='genetic testing'>遺伝子検査</span>"]
    G --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='colonoscopy'>大腸内視鏡</span>(18歳から)・<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='upper gastrointestinal endoscopy'>上部消化管内視鏡</span>(25〜30歳から)の<br>年次<span class='jp-term jp-term-diagram' title='surveillance'>サーベイランス</span>"]

は(、HNPCC)の表現型亜型で、(MLH1・MSH2・MSH6・PMS2)のによりを介してリスクが高まる病態である。HNPCC患者の約9.2%にがみられ、皮膚病変としてはが最も多く、・がこれに続く2。に伴うでは、腫瘍組織の90%超でMSH2の発現が消失し、これに次いでMLH1の発現消失がみられる1。

⚠️ 免疫染色は初期スクリーニングにすぎず、それ単独で確定診断にはならない。 の発現消失は体細胞性の変化でも生じうるため、によるかどうかを区別できない。免疫染色が陽性(発現消失あり)であれば、個人歴・家族歴の聴取とあわせて遺伝カウンセリング・生殖細胞系列に進む必要がある1。

は大腸癌が中心だが、・卵巣癌・乳癌・・も伴い、悪性腫瘍発症年齢の中央値は53歳である。が確認された、または強く疑われる場合は、を18歳から、を25〜30歳から開始し、内臓・の年次へつなげる2。

まとめ

  • は頭頸部に好発する黄色〜紅色ので、良性だが〜へ至る組織学的スペクトラムの中間に位置する。
  • ⭐ が複数あるとき(の表現型亜型)との関連が強いが、リスクスコアは単発でも加点されうるため、単発だけを理由に検討を打ち切らない。
  • (MLH1・MSH2が中心)の免疫染色は有用な初期スクリーニングだが確定診断ではなく、陽性なら遺伝カウンセリング・・の(18歳から、25〜30歳から)へつなげる。

出典

  1. 1.Sebaceous Neoplasms(Diagnostics (MDPI)・2023)脂腺腺腫が頭頸部など脂腺に富む部位に好発し高齢者に多いが若年発症もありうること、直径1 cm未満の黄色〜紅色調の単発または多発性結節として現れ潰瘍化は非定型で悪性を疑う所見であること、脂腺増殖症(正常構造を保ち毛包に付随)→脂腺腺腫(基底様胚芽細胞が腫瘍体積の50%未満、明瞭に区画された小葉構造)→脂腺上皮腫/セバセオーマ(基底様胚芽細胞が50%以上)→脂腺癌(浸潤性増殖・細胞異型・高悪性度)という組織学的連続性があること、Muir-Torre症候群に関連する皮膚腫瘍として脂腺腺腫・脂腺上皮腫・脂腺癌が挙げられ複数病変がなくても単発の脂腺腫瘍がMuir-Torre症候群の指標となりうること、Muir-Torre症候群に伴う脂腺腫瘍の90%超でMSH2発現の消失がみられこれに次いでMLH1発現消失がみられること、免疫染色によるミスマッチ修復蛋白スクリーニングは初期評価として有用だが体細胞性か生殖細胞系列性かは区別できないため個人・家族歴の聴取とあわせて評価する必要があることを確認した。閲覧 2026-09-01
  2. 2.Muir-Torre Syndrome(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2023)Muir-Torre症候群がLynch症候群(遺伝性非ポリポーシス大腸癌、HNPCC)の表現型亜型であり、DNAミスマッチ修復遺伝子(MLH1・MSH2・MSH6・PMS2)の生殖細胞系列変異により微小衛星不安定性を介して腫瘍化リスクが高まること、HNPCC患者の約9.2%にMuir-Torre症候群がみられること、皮膚病変として脂腺腺腫(最多)・脂腺上皮腫・脂腺癌、脂腺分化を伴う角化棘細胞腫が生じること、内臓悪性腫瘍は大腸癌が中心で子宮体癌・卵巣癌・乳癌・肝胆道系癌・尿路系癌も伴い悪性腫瘍発症年齢の中央値が53歳であること、脂腺病変が見つかった場合はミスマッチ修復蛋白の免疫染色でスクリーニングし陽性なら遺伝カウンセリング・遺伝子検査、大腸内視鏡検査を18歳から、上部消化管内視鏡検査を25〜30歳から開始し内臓・皮膚悪性腫瘍の年次サーベイランスを行うことを確認した。閲覧 2026-08-19