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Disease Atlas · 眼科 · 先天性疾患

視神経低形成

Optic nerve hypoplasia

別名
ONH視神経形成不全
臓器系
眼科内分泌・代謝小児
科目
Pediatrics
トピック
小児科 3-15:小児下垂体疾患
関連疾患
視隔膜異形成症成長ホルモン分泌不全性低身長症
症状
眼振視力低下
画像所見
下垂体後葉異所性

🧠 全体像・診断で答えるべき問いは「視神経が細いか」だけではない。視神経が低形成であるという所見そのものが、視床下部-という発生学的に隣接する正中構造の異常を疑う入口になるという一点が本質である。孤立性のとして見つかっても、(de Morsier症候群)というより広い正中発生異常スペクトラムの一部である可能性を常に考え、内分泌評価を省略しないことが、低血糖やという見逃せば重篤な結果につながる合併症を防ぐ唯一の手段になる。

病態:正中構造の発生異常という共通の起源

視神経・視交叉・の一部として発生し、下垂体(とくに神経下垂体)・など脳の正中構造と発生学的に隣接した起源を持つ。妊娠初期のこれらの正中構造の形成異常が、・下垂体低形成という一見別々の所見を同じ発生学的な事故の異なる現れとして同時に生じさせうる。これが(SOD、de Morsier症候群)という一つの症候群概念として3徴が語られる理由である。

flowchart TD
    A["妊娠初期の前脳・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='diencephalon'>間脳</span>正中構造の<br>形成異常(原因の多くは特発性)"] --> B["視神経・視交叉の形成不全"]
    A --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='septum pellucidum'>透明中隔</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='corpus callosum'>脳梁</span>など<br>正中脳構造の形成不全"]
    A --> D["下垂体(とくに神経下垂体)の<br>形成不全・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pituitary stalk'>下垂体茎</span>の異常"]
    B --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='optic nerve hypoplasia'>視神経低形成</span>"]
    C --> F["正中脳<span class='jp-term jp-term-diagram' title='structural aberration'>構造異常</span>"]
    D --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hypopituitarism'>下垂体機能低下症</span>"]
    E --> H{"E・F・Gのうち2つ以上を満たすか"}
    F --> H
    G --> H
    H -->|"はい"| I["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='SOD'>視隔膜異形成症</span>"]
    H -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='optic nerve hypoplasia'>視神経低形成</span>のみ"| J["孤立性<span class='jp-term jp-term-diagram' title='optic nerve hypoplasia'>視神経低形成</span><br>(後年に下垂体機能低下を発症しうる)"]

・正中脳・下垂体低形成のうち2つ以上の組み合わせで定義され、3徴すべてが揃う例は半数に満たない1。あるコホートではを有する例が89.9%を占め、3徴すべてを満たす例は64.9%であった2。この64.9%という値は単施設の内分泌専門外来に紹介された171例の集団によるもので、原著自身が「より重症の表現型が紹介されるの可能性」を挙げ、一般集団での従来推計(24〜30%)より高いことを認めている。母集団の違いによる差であり、どちらかが誤りというわけではない。

孤立性の(他の2徴を伴わない)であっても、下垂体機能低下と無縁ではない。 孤立性の症例では約半数がMRIでの低形成を伴い、診断時に下垂体機能が保たれていても、その後の経過で機能低下を発症しうる2。「視神経だけの所見だから内分泌評価は不要」という判断は誤りである。

原因

多くは特発性で、母体の若年妊娠や妊娠初期の血管性・環境要因(アルコール曝露など)との関連が指摘されてきたが、単一の原因で説明できる例は一部にとどまる。既知のとしては、前脳・視神経・下垂体の発生を制御する転写因子をコードするHESX1SOX2SOX3OTX2などの遺伝子変異が一部の症例で同定されているが、大多数の症例では遺伝学的診断がつかない。孤発例が大半で、家族内発症はまれである。

臨床像

  • 片眼性・両眼性いずれもありうる。両眼性は眼振が定まらないことによる)として、片眼性はとして気づかれることが多い。視力は正常に近い例からのみの重度障害まで幅が広い。
  • そのものに特徴的な眼底所見がdouble ring sign)である。外側の輪は本来のサイズに相当する色素の境界、内側のより暗い輪はの終端と低形成したの境界にあたる。
  • 内分泌症状が前面に出ることもある。・低血糖(重症例ではけいれんを伴う)、乳児期以降のは、いずれも背景にあるを疑う手がかりになる。

⚠️ 内分泌評価は必須

⚠️ と診断したら、視力の評価だけで終わらせず、必ずホルモン全系統をスクリーニングする。 これが本疾患の管理で最も見逃してはならない一点である。

  • SOD+(下垂体機能低下を伴う)と診断された症例のうち、欠乏症が最も高頻度(欠乏を有する例の大半)で、TSH欠乏・ACTH欠乏がこれに続き、ゴナドトロピン欠乏は思春期年齢に達するまで診断が遅れがちである。を合併することもある2
  • 単回の正常な内分泌検査は将来にわたる安心を保証しない。 ホルモン欠乏は経過中に段階的に出現し、初発の欠乏が10代半ばまで、・ACTH欠乏はさらに遅れて出現しうることが示されている2。生涯にわたる定期的な内分泌フォローが必要になる。
  • MRIでを認める頻度は、下垂体機能低下を合併する例でより高い2。ただしの異常の有無自体は、ホルモン欠乏がいつ発症するかとは関連しない2——正中の「量」よりも下垂体そのものの画像所見の方が内分泌評価の手がかりとして重みを持つ。

診断

flowchart TD
    A["乳児の眼振・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Strabismus'>斜視</span>、または<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='decreased visual acuity'>視力低下</span>の精査で発見"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dilated fundus examination'>散瞳下眼底検査</span>でdouble ring signを確認"]
    B --> C["頭部MRIで正中構造(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='septum pellucidum'>透明中隔</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='corpus callosum'>脳梁</span>)と<br>下垂体(前葉低形成・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='posterior lobe'>後葉</span>異所性)を評価"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='anterior pituitary'>下垂体前葉</span>ホルモン全系統を<br>初診時にスクリーニング<br>(GH・TSH・ACTH・ゴナドトロピン・プロラクチン)"]
    D --> E{"初診時の内分泌検査は正常か"}
    E -->|"異常あり"| F["該当するホルモンを補充"]
    E -->|"正常"| G["生涯にわたり定期的に再評価"]
    F --> H["低血糖・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='adrenal crisis'>副腎クリーゼ</span>の予防を<br>家族に説明"]
    G --> H
  • 下でdouble ring signを確認する。
  • 頭部MRIなど正中構造、の大きさ、の位置(正常か異所性か)を評価する。
  • 内分泌評価:GH・TSH/遊離T4・ACTH/コルチゾール・ゴナドトロピン/性ステロイド・プロラクチンを初診時に評価し、正常であっても定期的に再評価する。

治療・管理

  • 低血糖・副腎不全の予防:重症のを伴う例では、からの低血糖に注意し、副腎不全を疑う症候(、活気低下、ショック)があれば速やかにグルココルチコイドを投与できるよう家族に説明しておく。
  • ホルモン補充:欠乏が確認された軸から順に補充する。欠乏症が確認されればに準じて補充を行う。副腎不全を合併する場合は、他のホルモン補充(とくに甲状腺ホルモン)に先立って副腎系を評価・補充する。
  • 視機能支援:視力障害の程度に応じた低視覚支援、療育・発達支援を並行して行う。
  • 長期フォロー:初診時の内分泌検査が正常でも、生涯にわたり定期的にホルモン評価を繰り返す。

まとめ

  • は、視神経・下垂体・正中脳構造が発生学的に隣接することから、・下垂体機能低下と合併しうる(、de Morsier症候群)。3徴のうち2つ以上を満たせばと定義され、3徴すべてが揃う例は半数に満たない。
  • 特徴的な眼底所見はdouble ring signで、両眼性は眼振、片眼性はとして気づかれやすい。
  • 孤立性のであっても下垂体機能低下と無縁ではなく、初診時に正常でも後年に発症しうるため、内分泌評価と生涯にわたる再評価が必須である。
  • 下垂体機能低下を伴う例では欠乏症が最も高頻度で、TSH欠乏・ACTH欠乏・が続く。低血糖・副腎不全の見逃しを防ぐことが管理の要である。
  • 診断はと頭部MRI(正中構造・下垂体形態)、そしてホルモン全系統のスクリーニングを組み合わせて行う。

出典

  1. 1.Endocrine morbidity in midline brain defects: Differences between septo-optic dysplasia and related disorders(eClinicalMedicine・2020)視隔膜異形成症(SOD)が視神経低形成・下垂体機能異常・正中脳構造異常という3徴のうち2つ以上で定義されコホートの64.9%が3徴すべてを、89.9%が視神経低形成を有していたこと、孤立性視神経低形成35例のうち半数が下垂体前葉の低形成(small anterior pituitary)を有しながら中央値10.22年の追跡で下垂体機能が保たれていた一方その後に下垂体機能低下を発症しうること、下垂体機能低下を伴うSOD(SOD+)171例中132例に前葉ホルモン欠乏を認めそのうち121例(91.7%)が成長ホルモン欠乏症でありTSH欠乏・ACTH欠乏・思春期年齢まで診断が遅れがちなゴナドトロピン欠乏がこれに続く順であったこと、尿崩症がSOD+29例・複数下垂体前葉ホルモン欠乏症(MPHD)5例に生じたこと、ホルモン欠乏が経過中に段階的に出現しSOD+では初発欠乏までの年齢中央値の90%が8.54歳・尿崩症は17歳・ACTH欠乏は16歳まで新規発症しうること、下垂体後葉異所性の頻度がMPHDで80.0%・SOD+で41.6%であったこと、透明中隔・脳梁の異常の有無はホルモン欠乏の発症年齢と関連しなかったことを確認した閲覧 2026-08-11
  2. 2.Septo-optic dysplasia(MedlinePlus Genetics, National Library of Medicine (NIH)・2025)視隔膜異形成症が視神経低形成・脳正中構造の異常発達・下垂体低形成という3主徴のうち2つ以上の組み合わせで定義され3徴すべてが揃う例は半数未満であること、出生1万人に約1人の頻度であること、視神経低形成では視神経の軸索数減少により眼から脳への神経連絡が乏しくなり片眼または両眼の視力障害を来すこと、下垂体低形成が多くの場合まず成長ホルモン欠乏症として現れ成長遅延・低身長をきたすがより広範な内分泌機能低下を来しうることを確認した閲覧 2026-08-11