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Disease Atlas · 眼科 · 先天性疾患

後部多形性角膜ジストロフィ

Posterior polymorphous corneal dystrophy

別名
PPCD
臓器系
眼科
科目
Microscopic Anatomy and Embryology (Microscopic Anatomy)Microscopic Anatomy and Embryology (Embryology)Medical Genetics and Immunology (Genetics)
トピック
組織学 17.1:感覚器:眼発生学 19.3:眼:水晶体・角膜・脈絡膜・強膜・硝子体遺伝学 4.4:常染色体優性遺伝(AD I)
鑑別疾患
先天性遺伝性角膜内皮ジストロフィ緑内障
症状
角膜浮腫
検査値
眼圧

🧠 全体像:(PPCD)は、のジストロフィで、大多数は生涯無症候のまま発見される。本態は内皮細胞が側で異常増殖し、上皮のような形質へ化生するという一風変わった現象で、この「内皮なのに上皮のように振る舞う」性質が、小胞状・帯状・びまん性という多彩な所見を生む。大多数は治療不要だが、一部は緑内障・を来し、(CHED)としばしば混同されてきた歴史を持つ。

病態

PPCDの本態は、細胞がの後面で異常に増殖し、上皮細胞のような形質へ化生することにある。化生した細胞はを発現し、多数のとを持つ多層性の構造をとる、という本来の内皮細胞には無い上皮様の性状を示す1。

💡 「内皮が上皮のように振る舞う」という一点が、この病気の名前が示す「」の由来である。 増殖した異常内皮は正常とは異なる基底膜を分泌し、時にや隅角へ這うように広がるため、所見が症例ごとに小胞状・帯状・びまん性と多彩に見える。

臨床像

レベルの異常所見は次の3パターンに分かれる1。

パターン 所見
小胞状 円形〜楕円形の小さな水疱様病変が点在する
帯状 の辺縁を持つ平行な帯(幅2〜10 mm)
びまん性 オレンジの皮のような外観を呈する広範な

⭐ 大多数の患者は無症候で、診断は何年も経ってからつくことが多い。 これは、水疱の破裂による激痛が前面に出るとも、生下時から明らかな両眼性を呈するCHEDとも対照的である1。

合併症

⚠️ 無症候だからといって放置してよいわけではない。 異常増殖した組織がに癒着やを起こすと、続発緑内障のリスクが上がる。また内皮機能そのものが障害されると、角膜のが損なわれてを来す1。したがって、無症候例であってもと角膜の透明性を定期的に確認する価値がある。

CHEDとの関係——鑑別であり、混同の歴史でもある

PPCDとCHEDはともにジストロフィで、臨床的に混同されやすい1。この2つは単なるにとどまらない歴史的な経緯を共有する。

⚠️ かつて「常染色体優性のCHED(CHED1)」と呼ばれていた病態の多く(おそらく全て)が、実はPPCDだった。 IC3D分類の第2版(2015年)で常染色体優性CHEDが分類から削除されたのは、そう呼ばれていた5家系を再検討した結果、その多くあるいは全てがPPCDであったためである2。詳しくはの項に譲るが、「CHED1」という古い記載を見たら、それは今日でいうPPCDである可能性を考える必要がある。

現在のCHED(旧CHED2)はで生下時からの両眼性びまん性を呈するのに対し、PPCDはで大多数が無症候という違いが、両者を分ける実用的な手がかりになる。

治療

大多数の症例は治療を要さず、経過観察でよい。緑内障・を来した症例、視力に影響するが生じた症例では治療介入が必要になり、患者の20〜25%は最終的にを要する1。

まとめ

  • PPCDはのジストロフィで、内皮細胞が側で異常増殖し上皮様形質へ化生することが本態である。
  • レベルの所見は小胞状・帯状・びまん性の3パターンに分かれる。
  • 大多数は無症候で経過観察でよいが、による緑内障、によるを来しうる。
  • CHEDと混同されやすく、歴史的には常染色体優性CHED(CHED1)とされた症例の多くが実はPPCDだった。現行のCHEDはで生下時から両眼性を呈する点で区別する。
  • 治療は無症候例では不要だが、患者の20〜25%はを要する。

出典

  1. 1.Posterior Polymorphous Corneal Dystrophy(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2023)後部多形性角膜ジストロフィが常染色体顕性遺伝の疾患であること、大多数の患者は無症候で診断が何年も後になることが多いこと、Descemet膜の異常が小胞状・帯状・びまん性の3パターンに分かれ帯状病変は鋸歯状の辺縁を持つ平行な帯として2〜10mmにわたること、びまん性病変はオレンジの皮のような外観(peau d'orange)を呈すること、内皮細胞がケラチン・多数の微絨毛・デスモソームを持つ多層性の上皮様形態へ化生すること、虹彩角膜癒着や隅角閉塞により緑内障のリスクが上がること、内皮機能の障害が角膜の脱水機能(deturgescence)を損なうことで角膜浮腫を来すこと、先天性遺伝性角膜内皮ジストロフィ(CHED)と混同されやすいこと、大多数の症例は治療を要さず経過観察でよいが患者の20〜25%は全層角膜移植を要することを確認した閲覧 2026-09-06
  2. 2.IC3D Classification of Corneal Dystrophies-Edition 3(Cornea (International Committee for Classification of Corneal Dystrophies)・2024)常染色体優性の先天性遺伝性角膜内皮ジストロフィ(旧CHED1)を独立疾患として支持する報告が無いため第2版(2015年)で分類から削除されたこと、その根拠が常染色体優性CHEDとされた5家系の多くあるいは全てが後部多形性角膜ジストロフィであったという文献の再検討であったことを確認した閲覧 2026-09-06