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Disease Atlas · 眼科 · 疾患

鼻涙管閉塞

Nasolacrimal duct obstruction

別名
NLDO
臓器系
眼科小児
科目
AnatomyEmbryology
トピック
解剖学 7.4:頭部:眼窩と眼発生学 16.3:頭頸部:顔面と口蓋
鑑別疾患
結膜炎緑内障
症状
流涙
画像所見
色素消失試験涙管通水試験涙道造影涙道内視鏡

🧠 全体像閉塞は「先天性後天性で全く別の疾患」として学ぶのが最も効率がよい。先天性はの開存遅延という発生の問題で、生後1年で大半が自然に治るため治療の主軸は待つことにある。後天性(とくに中高年女性に多い原発性後天性閉塞)はそのものの慢性炎症・線維化であり、自然治癒は期待できず炎を繰り返す。この「待てば治る疾患」と「待っても治らず手術を要する疾患」という対比が、年齢を聞いた瞬間に診療方針を分岐させる。

先天性と後天性の対比

項目 先天性閉塞 後天性閉塞
好発 新生児(約5%) 中高年女性(男女比約1:3.85、平均54歳)1
機序 の開存遅延(膜様閉鎖) の慢性炎症・線維化・狭窄1
1年以内に約90%が自然開通 自然治癒しない、進行性
初期対応 マッサージ+経過観察 保存的治療で治らないことを前提とする
まれ 炎を繰り返しやすい
確定的治療 (開通しない例に限る)

先天性鼻涙管閉塞

は発生過程での間のに形成される管で、下端はとして鼻腔()に開口する発生学 16.3このの開存が遅れ、膜様の閉鎖として残るのが先天性閉塞の最多の原因であり、新生児のおよそ5%に生じる2

生後1年で大半が自然開通するため、は時期を待つ。 自然開通率は1年以内でおよそ90%に達し2、初期対応はマッサージを閉塞させながらを下方へ圧迫する手技)と経過観察が第一選択になる。感染兆候を伴えば局所抗菌薬を併用する。は生後1年を待たず、生後6か月〜10か月未満の乳児に提案されることが多い2。生後12か月未満で施行した場合の成功率は外来処置で72%、施設下処置で80%とやや差がある2。全体としての成功率は70〜97%(多くは90%程度)である2。なお生後12〜24か月の間にも44〜76%が自然開通するため2「1歳で治らなければ全例」と単純化しない——遷延・感染反復の程度と家族の希望を踏まえて時期を個別に判断する。

⚠️ 乳児のを先天性閉塞と決めつける前にを除外する。 、さらに(角膜径の拡大)やを伴う場合は、単なる排出障害ではなくそのものが原因であるを疑う。先天性閉塞は経過観察してよい良性疾患だが、は放置すれば不可逆的な視力障害に至るため、この2つを取り違えてはならない。

flowchart TD
    A["新生児の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lacrimation'>流涙</span>・眼脂"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lacrimal sac'>涙嚢</span>マッサージ+経過観察"]
    B --> C{"生後6か月〜10か月未満の時点で<br>開通したか・遷延しているか"}
    C -->|"開通した(1年以内で約90%)"| D["治療終了"]
    C -->|"遷延・感染を繰り返す"| E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='probing'>プロービング</span>を提案"]
    E --> F["成功率70〜97%<br>(12か月未満:外来72%/施設80%)"]

⚠️ 新生児の膿性眼脂を炎と決めつけない。 淋菌・クラミジア・2型などによる新生児は新生児の最大10%に生じうる重症疾患で、産道感染に由来し全身治療を要する。一方、先天性閉塞による眼脂はに伴う二次的な分泌物で、や強い炎症所見に乏しいまま・目やにだけが持続するのが典型である。先天性閉塞は文献により新生児の約5〜11%に生じるとされ、新生児炎と並んで新生児の眼脂・のありふれた原因になる。膿性が強い・発症が生後早期(2〜14日)に集中する・を伴うといった所見があれば、閉塞と決めつけず炎を評価する。

後天性鼻涙管閉塞

後天性は、原因が同定できないと、原因が同定できるに分けられる3

  • PANDOは中高年女性に好発し(男女比約1:3.85、平均年齢54歳)、骨性の狭小化やの慢性炎症と関連しながら自体が慢性炎症・線維化を来して狭窄する1。原因が特発性である点がSANDOとの分類上の違いになる。
  • SANDOは感染性・炎症性(炎が最多)、腫瘍性、(涙石など)のいずれかの原因が同定できる病態である3

⚠️ 後天性閉塞は炎を繰り返す。 排出路がに閉塞すると内にが停滞し、細菌感染を来しやすくなる。は眼瞼腫脹・発赤・疼痛・圧痕からの分泌物を呈し、による治療を急ぐ。可能であれば手術は感染が消退してから行う方が望ましい3。膿瘍を形成すればを要する。

⚠️ 血性の分泌物はを疑う所見であり、「よくある閉塞」と片付けない。 通水検査の異常だけで原発性・続発性の閉塞と決めつけず、片側性・血性の分泌物があれば画像評価に進む。

後天性の確定的治療はで、と鼻腔を直接吻合し閉塞したを迂回させる。成功率は90〜95%と高い3

検査:涙管通水試験から涙道内視鏡へ

診断は非侵襲的な検査から段階的に進める。で通過性を確認し、で外側から形態を俯瞰したうえで、閉塞の型・部位をで分類し同一手技内で処置に移れるに進む。はプローブが病変を貫通できないではができず、その場合は無理をせずDCRのような外科的再建に切り替える判断材料になる——検査そのものが治療のを兼ねるのがこの疾患の診断の特徴である。

まとめ

  • 閉塞は先天性(の開存遅延、新生児の約5%)と後天性(PANDO・SANDO、中高年女性に好発)で機序・が全く異なる。
  • 先天性は生後1年以内に約90%が自然開通するため、マッサージによる経過観察が第一選択で、は時期を待って行う。
  • 後天性は自然治癒せず炎を繰り返しやすい。には治療を急ぎ、確定的治療は成功率90〜95%のである。
  • 新生児の眼脂は先天性閉塞(頻度5〜11%)がありふれた原因だが、を伴う膿性眼脂では新生児炎(淋菌・クラミジア・HSV-2、最大10%)を鑑別する。
  • 検査はという非侵襲的検査から、閉塞の型をで分類し処置も兼ねられるへと段階的に進める。

出典

  1. 1.Nasolacrimal Duct Obstruction, Congenital(American Academy of Ophthalmology (EyeWiki)・2026)先天性鼻涙管閉塞が新生児の約5%(別節では最大11%)に生じ鼻涙管下端のHasner弁部位における膜様閉鎖が最多の原因であること、1年以内に約90%が自然開通し12〜24か月の間にも44〜76%が自然開通しうること、初期対応が涙嚢マッサージと局所抗菌薬による経過観察でありプロービングは生後6か月〜10か月未満の乳児に提案されることが多いこと、12か月未満での成功率が外来処置72%・施設下処置80%とやや異なること、全体の成功率が70〜97%(多くは90%程度)であること、まれに眼窩隔膜前蜂窩織炎・涙嚢炎を合併しうることを確認した。閲覧 2026-08-12
  2. 2.Secondary Acquired Nasolacrimal Duct Obstruction(American Academy of Ophthalmology (EyeWiki)・2026)続発性後天性鼻涙管閉塞(SANDO)が原発性後天性閉塞(PANDO、特発性)と異なり感染性・炎症性、腫瘍性、外傷性、機械的閉塞など同定可能な原因を持つこと、続発性の感染性原因として最多なのが涙嚢炎であること、急性涙嚢炎には広域抗菌薬治療を行い可能なら手術は感染消退後に延期すべきであること、涙嚢鼻腔吻合術(DCR)の成功率が90〜95%であることを確認した。閲覧 2026-08-12
  3. 3.Anatomic characteristics of primary acquired nasolacrimal duct obstruction: a comparative computed tomography study(Quantitative Imaging in Medicine and Surgery・2022)原発性後天性鼻涙管閉塞(PANDO)が中高年女性に好発すること(男女比約1:3.85、平均年齢54歳)、病態が鼻涙管の慢性炎症・線維化・狭窄であり骨性鼻涙管の狭小化や鼻副鼻腔の炎症と関連すること、臨床像として流涙・粘液膿性眼脂・涙嚢炎・慢性結膜炎を来しうることを確認した。閲覧 2026-08-12