画像所見ノート一覧へ

Imaging findings · Published

涙道造影

Dacryocystography

別名
DCG
臓器系
眼科
科目
Anatomy
トピック
解剖学 7.4:頭部:眼窩と眼
関連疾患
鼻涙管閉塞

🧠 全体像が答えるのは「閉塞・狭窄がどこにあるか」という一点であり、涙が生理的に流れているかどうかではない。造影剤をから加圧して注入するため、涙のポンプ機構が働いていない状態を撮影する検査であり、狭くはあっても完全には閉じていない部位は圧に押されて造影剤が通過してしまい、を見逃しうる1。その代わり、造影剤が描くの輪郭はな閉塞・狭窄・憩室・腫瘍の位置を高い解剖学的詳細で示す——局在診断に強く、機能診断に弱いというこの裏返しの関係が、との役割分担を決めている。

所見の定義

からを挿入し、へ注入したうえでX線撮影する検査である。単純写真に加え、変化した位置をより正確に示すデジタルサブトラクションDCG(DS-DCG)、断面で骨・軟部組織との関係をできるCT-DCG、軟部組織に優れるMR-DCGといった撮影法がある2

で評価する項目は次の通りである。

  • 通過性。 造影剤がからを経て鼻腔まで抜けるかどうか。
  • 途絶の形。 に途絶すればを、長い区間にわたって先細りになれば狭窄を疑う。狭窄の近位側に拡張を伴えば、機能的に有意な狭窄と判断する根拠になる。
  • 造影剤の中に見える境界不明瞭な欠損は腫瘍・涙石を示唆する。
  • 憩室・瘻孔の有無。

モダリティと写り方

撮影法 何を描出するか 得意なこと 苦手なこと
単純写真DCG が満たすの輪郭 簡便で全体の形態を一度にできる 前後の構造と重なり局所の詳細に乏しい
デジタルサブトラクションDCG(DS-DCG) 造影剤注入前後の差分画像 変化した位置を正確に示す2 体動でが出やすい
CT-DCG 造影剤で満たしたの断面像 周囲の骨・軟部組織との関係を立体的にできる が単純写真より多い
MR-DCG 軟部組織による周囲の描出 涙石・の性状評価に向く で単純写真・CTに劣る

いずれの撮影法も、といった微細な構造まではいまだ詳細に描出できないという限界を共有する2

鑑別を絞る軸

途絶の高さによって、次に想定する原因とが変わる。

  • レベルの途絶。 の裂傷、炎、薬剤性(点眼薬・抗癌剤)などが原因になりやすい。
  • 移行部の途絶。 の拡張を伴えば、下流の閉塞に続発した二次的な変化であることが多い。
  • レベルの途絶。 原発性の狭窄、続発性の炎症・腫瘍・外傷のいずれもここに現れる。
  • を伴う途絶。 腫瘍・涙石を積極的に疑い、単なる炎症性狭窄と決めつけない。
  • で挿管そのものが困難な例。 造影で位置を特定したうえで、に処置へ移行できるを検討する。

評価の進め方

で通過抵抗や逆流がみられた症例に対し、で通過性と途絶の形を確認する。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lacrimal irrigation test'>涙管通水試験</span>で通過抵抗・逆流あり"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dacryocystography'>涙道造影</span>で通過性・途絶の形を評価"]
    B --> C{"造影剤の停滞・途絶はあるか"}
    C -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='filling defect'>陰影欠損</span>あり"| D["腫瘍・涙石を疑い追加評価へ"]
    C -->|"途絶あり・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='filling defect'>陰影欠損</span>なし"| E["途絶の高さから原因を絞り<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='lacrimal drainage system'>涙道</span>処置の適応を検討"]
    C -->|"開通・停滞なし"| F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mechanical (organic) obstruction'>器質的閉塞</span>は否定的"]
    F --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='functional epiphora'>機能性流涙</span>を疑い<br>次の検査を検討"]

造影でが否定されれば、次はを評価する。実臨床ではを初期検査として先に行い、正常であった場合にのみへ進む運用が合理的とされる3

紛らわしいもの

  • 偽陰性:加圧注入がを押し通す。 は高圧で造影剤を注入するため、狭くはあっても完全には閉じていない部位を圧で通過させてしまい、機能的には有意な通過障害を見逃しうる1
  • 挿入自体による偽所見。 挿管手技でを損傷すると造影剤が外へ漏れ出し、実際には存在しない瘻孔や腫瘤様陰影に見えることがある。
  • 撮影のタイミングによる見かけの停滞。 注入直後の像だけで判定すると生理的な通過の遅れを異常ととらえかねず、遅延撮影と合わせて判定する。
  • 期の評価。 炎などを伴う時期に施行すると、炎症による腫脹との区別が難しくなる。

まとめ

  • は「閉塞・狭窄がどこにあるか」を答える局在診断の検査であり、生理的なの流れを評価する検査ではない。
  • から加圧注入してX線撮影する。単純写真のほか、デジタルサブトラクションDCG(DS-DCG)・CT-DCG・MR-DCGといった撮影法がある。
  • では通過性、途絶の形(な途絶か長い先細りか、近位拡張の有無)、、憩室・瘻孔の有無を評価する。
  • 高圧注入という手技そのものが、不完全な閉塞を押し通してしまいを見逃す原因になる——この弱点を補うのがであり、実臨床ではが正常であった場合にのみへ進む。
  • 挿入自体による偽所見、撮影タイミングによる見かけの停滞、期の評価の難しさが紛らわしい所見を生む。

出典

  1. 1.Comparison of dacryocystography and lacrimal scintigraphy in the diagnosis and management of functional nasolacrimal duct obstruction(British Journal of Ophthalmology・1999)涙道造影で93%、涙道シンチグラフィで95%の系統に異常所見が検出され、両者を組み合わせると感度が98%まで上がること、実臨床では涙道造影を初期検査として施行し正常所見であった場合にのみシンチグラフィへ進む運用が合理的とされていることを確認した閲覧 2026-08-10
  2. 2.Clinical utility of SPECT/CT and CT-dacryocystography-enhanced dacryoscintigraphy in the imaging of lacrimal drainage system obstruction(Annals of Nuclear Medicine・2019)涙道造影では涙道系へ高圧で造影剤を注入するため不完全な閉塞部位でも造影剤が通過しうること、涙道シンチグラフィは生理的な涙液流を模した検査であることを確認した閲覧 2026-08-10
  3. 3.Dacryocystography: From theory to current practice(Annals of Anatomy・2019)涙道造影には単純写真のほかデジタルサブトラクションDCG(DS-DCG)・CT-DCG・MR-DCGといった撮影法があり、DS-DCGが変化の位置を正確に示し狭窄・閉塞を明瞭に描出できること、いずれの撮影法でも涙小管や鼻涙管の膜様部はいまだ詳細には描出できないという限界があることを確認した閲覧 2026-08-10