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Imaging findings · Published

涙管通水試験

Lacrimal irrigation test

別名
涙道通水試験
臓器系
眼科
科目
Anatomy
トピック
解剖学 7.4:頭部:眼窩と眼
関連疾患
鼻涙管閉塞

🧠 全体像が答えるのは「通るか通らないか」の二択ではなく、逆流がどちらのから、どんな抵抗感とともに出るかによって閉塞の高さを推定するという読み方である。同時にこれは加圧下という人工的な条件での評価であり、に伴う涙のポンプ機構が働いた自然な流れを反映しない——だから「開通」と判定されても機能性のは除外できず、逆に「soft stop」と判定されても本当にが閉塞しているとは限らない。迅速で外来ですぐできるというと、加圧試験ゆえの限界を併せて理解することが出発点である。

所見の定義

  • 開通から注入したが、どちらのからも逆流せず鼻腔()へ抜ける。
  • hard stop(硬い停止):プローブがを通過し、の内側にある骨()に触れて止まる感触。そのものは開通していることを示す1
  • soft stop(軟らかい停止):プローブが骨に達する前に軟部組織の抵抗で止まる感触。の閉塞・瘢痕を示唆する1
  • 逆流のパターン:同じからの逆流は自体の閉塞を、反対側のからの拡張を伴わない逆流はの瘢痕を、反対側のからの逆流で鼻腔まで通過しない場合は閉塞を示唆する1

手技と所見の読み方

後にを拡張してからを挿入し、をゆっくり注入しながら抵抗感と逆流の有無・部位を観察する。加える力の程度は経験によって調整される1

所見 示唆する病変
逆流なく鼻腔へ通過 は解剖学的に開通(は除外できない)
同じから逆流 自体の閉塞
反対側から逆流、拡張なし の瘢痕・閉塞
反対側から逆流、鼻腔まで通過しない 閉塞

というの走行そのものは解剖学 7.4:頭部:眼窩と眼で扱う。

鑑別を絞る軸:soft stopを過信しない

  • soft stopはを示唆する所見として教えられるが、外科的所見を基準にすると偽陽性が高い。ある検討では41例53系のうちsoft stopと判定された症例で実際により上流の病変が確認されたのは37%にとどまり、63%は偽陽性だった2
  • 部位別ではさらに偏りが大きく、狭窄と判定した症例のは100%、と判定した症例でもおよそ45.5%が偽陽性だった2soft stop単独で閉塞と確定してはならない。
  • 術前にを追加するとが37%から85.7%まで改善する2。soft stopを見たらそれだけで手術適応を決めず、で裏づけを取る。

評価の進め方

の診断アルゴリズムでは、臨床診察での除外に続いてでの開通確認、での狭窄除外を経てで遅延を確認するという順に進む3

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lacrimal punctum'>涙点</span>から通水"] --> B{"逆流はあるか"}
    B -->|"なし・鼻腔へ通過"| C["解剖学的には開通<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='functional epiphora'>機能性流涙</span>は除外できない"]
    C --> D["症状が持続すれば<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='dacryoscintigraphy'>涙道シンチグラフィ</span>を検討"]
    B -->|"あり"| E{"どちらの<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lacrimal punctum'>涙点</span>から逆流するか"}
    E -->|"同じ<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lacrimal punctum'>涙点</span>"| F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lacrimal canaliculus'>涙小管</span>自体の閉塞を疑う"]
    E -->|"反対側の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lacrimal punctum'>涙点</span>"| G{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lacrimal sac'>涙嚢</span>の拡張はあるか"}
    G -->|"なし"| H["soft stopなら<span class='jp-term jp-term-diagram' title='common canaliculus'>総涙小管</span>閉塞を疑う<br>ただし偽陽性が高く確定にならない"]
    G -->|"あり・鼻腔へ通過しない"| I["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='nasolacrimal duct'>鼻涙管</span>閉塞を疑う"]
    H --> J["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dacryocystography'>涙道造影</span>で裏づけを取る"]
    I --> J

紛らわしいもの

  • 過大な圧での通水。 力を入れすぎると軟部組織を無理に押し広げてしまい、本来閉塞しているでも一時的に通過したような偽陰性を作りうる1
  • 開通しているのに症状が続く 加圧試験である以上、に伴う涙のポンプ機構の異常は評価できない。「開通」の判定はの除外にしかならない1
  • 点眼麻酔・洗浄液そのものによる反射性の増加。 検査中の刺激で見かけ上のが変わりうる。
  • soft stopの過大評価。 前述のとおり、特に領域ではsoft stopの大半が偽陽性であり、単独の所見で手術適応を決めない2

まとめ

  • は「開通か閉塞か」だけでなく、逆流がどちらのから・どんな部位から出るかによって閉塞の高さを推定する検査であり、迅速で外来ですぐ施行できる。
  • hard stopはが骨まで開通していることを、soft stopはの閉塞・瘢痕を示唆するが、soft stopのは外科的所見を基準にすると63%(領域では100%)に達し、単独では確定診断にならない。
  • 加圧下での評価であるため、開通と判定されても(涙のポンプ機構の異常)は除外できず、疑いが残ればで生理的条件下の評価に進む。
  • soft stopを見たらで裏づけを取ることでが改善する。
  • 迅速で外来で施行できるの裏に、過大な加圧による偽陰性やの見逃しという限界がある。

出典

  1. 1.Epiphora Clinical Testing(StatPearls Publishing (NCBI Bookshelf)・2023)涙管通水試験の手技(涙点拡張後にカニューレを挿入し生理食塩水を注入する、加える力は経験で調整される)、hard stop(プローブが骨に達して止まる=涙小管は開通)とsoft stop(骨に達する前に軟部組織で止まる=涙小管の閉塞・瘢痕)の判定、逆流するパターン(同じ涙点からの逆流は涙小管自体の閉塞、反対側の涙点から涙嚢拡張を伴わない逆流は総涙小管の瘢痕、反対側の涙点からの逆流で鼻腔まで通過しない場合は鼻涙管閉塞を示唆する)、非生理的な加圧試験であるため力の入れ方で結果が変わりうること、機能性の鼻涙管閉塞があっても液体が自由に流れて見えることがあるという限界を確認した閲覧 2026-08-10
  2. 2.Soft stop on syringing and probing may have a high false-positive rate in diagnosing pre-sac obstruction(International Ophthalmology・2022)41例53涙道系を対象に手術所見を基準として検討した結果、soft stopと判定された症例のうち実際に涙嚢より上流(pre-sac)の病変が確認されたのは37%にとどまり63%が偽陽性であったこと、部位別では総涙小管狭窄の偽陽性率が100%、涙小管閉塞の偽陽性率が約45.5%であったこと、術前に涙道造影を追加すると陽性的中率が37%から85.7%へ改善したことを確認した閲覧 2026-08-10
  3. 3.Functional epiphora: an under-reported entity(International Ophthalmology・2023)機能性流涙を解剖学的異常のない涙道排出機能低下と定義し、臨床診察での除外、涙管通水試験での開通確認、涙道造影での狭窄除外を経て涙道シンチグラフィで遅延を確認するという順で診断すること、遅延部位を涙嚢より上流(前涙嚢性)と下流(後涙嚢性)に分類することを確認した閲覧 2026-08-10