画像所見ノート一覧へ

Imaging findings · Published

涙道シンチグラフィ

Dacryoscintigraphy

別名
涙道シンチ涙液シンチグラフィ
臓器系
眼科
科目
Anatomy
トピック
解剖学 7.4:頭部:眼窩と眼

🧠 全体像が答えるのは「が生理的な条件のまま流れているか」という一点であり、がどこにあるかという局在診断ではない。は外から圧をかけて評価するため、押せば通るが自然には流れないという機能性のを見逃す。を制限せずが働いたままの状態で観察できる数少ない検査であり、その代わりにの正確な位置を特定する力は弱い——この役割分担を理解することがすべての出発点であり、位置の特定はに委ねる。

何を評価する検査か

微量のなど)を眼表面外側のし、で連続的に撮像しながら→鼻腔への移行を時間で追う1

  • は制限せず、通常どおり行わせる。 のたびに・弛緩させて生じる陰圧がを吸い込む「涙のポンプ機構」が働いた状態のまま評価することに意味があり、これがとの根本的な違いになる。
  • 挿入や加圧注入を伴わないため、でみられる偽陽性・偽陰性を避けられる1
  • で見るのは、どのレベルで停滞するか、左右差、鼻腔への到達時間である。健常では投与後おおむね15分以内に鼻腔への移行がみられるとされる1
  • のおよそ100分の1と少ない1
  • 撮像・解釈・報告の手順は向けガイドラインで標準化されており、の程度を定量化して評価することもできる2

他検査との対比

検査 何を評価するか 限界
後の残留量から排出の目安をみる 簡便でスクリーニングに向く 定量性に乏しく、閉塞の部位・機序までは分からない
から通水し開の有無をみる 迅速で外来で施行できる 外から圧をかけるため機能性の通過障害を見逃す
造影剤での形態を描出する の局在診断に優れる 加圧して造影剤を注入するため生理的な流れを反映しない
内腔を直接視認する 閉塞部位をで確認でき、そのまま処置に移行できる 侵襲的で、ではプローブが病変を貫通できない
生理的条件下でのの実際の流れをみる 生理的条件のままを捉えられる の正確な位置の特定には向かない

治療方針を変える所見

  • で開通と判定されたにもかかわらずで遅延がみられる例は、という診断そのものを支える所見であり、追加の検索よりも排出の側の評価を優先する根拠になる3
  • がなくと判断されれば、方針はのような再建術ではなく、・保存的治療やそのものの評価へ変わる。
  • 遅延がより上流()か、を含む下流()かによって、次に想定する原因が変わる3

評価の進め方

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lacrimal irrigation test'>涙管通水試験</span>で開通・逆流なし"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dacryocystography'>涙道造影</span>で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='structural stenosis'>器質的狭窄</span>を除外"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dacryoscintigraphy'>涙道シンチグラフィ</span>を施行"]
    C --> D{"鼻腔への移行"}
    D -->|"遅延なし"| E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='functional epiphora'>機能性流涙</span>は否定的<br>他の原因を再検討"]
    D -->|"遅延あり"| F{"停滞する高さ"}
    F -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lacrimal sac'>涙嚢</span>より上流(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='presaccal'>前涙嚢性</span>)"| G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lacrimal punctum'>涙点</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lacrimal canaliculus'>涙小管</span>側の機能不全を疑う"]
    F -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='nasolacrimal duct'>鼻涙管</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='postsaccal'>後涙嚢性</span>)"| H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='nasolacrimal duct'>鼻涙管</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='functional transit disorder'>機能性通過障害</span>を疑う"]
    G --> I["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='punctoplasty'>涙点形成</span>・保存的治療を検討"]
    H --> I

紛らわしいもの

  • 点眼時のこぼれ・過剰投与。 した嚢からあふれると、実際より排出が遅い、あるいは速いようにみえる。
  • の亢進。 点眼の刺激そのものが量を増やし、見かけ上の通過遅延や希釈を招きうる。
  • 炎・による貯留。 の機能とはに停滞所見を作りうるため、判定の前に眼表面の状態を確認する。
  • 体位・撮像開始のタイミング。 点眼から撮像開始までのずれや総撮像時間の設定によって、同じ患者でも「遅延あり」と判定されるかどうかが変わりうる。
  • 小児での評価の難しさ。 検査中に安静や一定の頭位を保ちにくく、体動がを妨げる。

まとめ

  • の流れを生理的な条件のまま追える唯一の検査であり、(押せば通るが自然には流れない通過障害)をとらえるために使う。
  • の正確な位置を知りたい場面には向かず、その役割はが担う。この役割分担が最も重要である。
  • 微量のを点眼し、を制限せずで連続撮像してから鼻腔までの移行を時間で追う。
  • が正常でもで遅延がみられればと判断し、ではなく・保存的治療やの評価へ方針が変わる。
  • 点眼のこぼれ・の亢進・炎による貯留・体位や撮像タイミング・小児での安静保持の難しさは、いずれも見かけ上の遅延や偽陽性を生みうる。

出典

  1. 1.Lacrimal scintigraphy BNMS Guidelines(British Nuclear Medicine Society (Professional Standards Committee)・2021)涙道シンチグラフィの推奨・実施・解釈・報告を支援する専門家向けガイドラインであり、放射性トレーサーの点眼と連続撮像によって涙液排出障害の程度を生理的条件下で評価し定量化しうる検査として位置づけていること、2018年版の改訂であることを確認した閲覧 2026-08-04
  2. 2.Dacryoscintigraphy: A Pictorial Essay(Indian Journal of Nuclear Medicine・2018)テクネチウム99m硫黄コロイド50〜100マイクロキュリー/10マイクロリットルを用い低エネルギー高分解能コリメータで撮像すること、放射線被曝が涙道造影のおよそ100分の1であること、カニューレ挿入や加圧を伴わないため涙管通水試験でみられる偽陽性・偽陰性を避けられる生理的な評価法であること、健常では投与後おおむね15分以内に鼻腔への移行がみられるとされることを確認した閲覧 2026-08-04
  3. 3.Functional epiphora: an under-reported entity(International Ophthalmology・2023)機能性流涙を解剖学的異常のない涙道排出機能低下と定義し、臨床診察での除外、涙管通水試験での開通確認、涙道造影での狭窄除外を経て涙道シンチグラフィで遅延を確認するという順で診断すること、遅延部位を涙嚢より上流(前涙嚢性)と下流(後涙嚢性)に分類することを確認した閲覧 2026-08-04