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Symptoms · Published

両耳側半盲

Bitemporal hemianopia

別名
両耳側性半盲
臓器系
眼科神経
科目
PhysiologyNeurologyInternal MedicinePediatrics
トピック
生理学 8.4:視覚の生理学神経学 G2-01:視力低下の神経学的原因と視野欠損内科学 E-01:下垂体・視床下部疾患小児科 3-03:小児脳腫瘍と網膜芽細胞腫

🧠 全体像は、両眼の外側(耳側)視野だけが対称性に欠けるで、視交叉そのものに病変があることを示す。(視交叉より後ろの病変)とはの高さがまったく違うため、まず両耳側性かかを見極めることが局在診断の第一歩になる。を見たら反射的に鞍部・鞍上部——などの鞍部近傍腫瘍を疑い、あとは「急性か緩徐性か」でを分ける。急性発症はという内分泌と視機能の両面にわたる緊急疾患を、緩徐進行は腫瘍の増大による慢性圧迫を意味する。

定義と用語の整理

の代表)は、両眼の視野のうち外側(耳側)半分だけが欠ける状態を指す。網膜でいえば、耳側視野を担当するのは鼻側網膜であり、視交叉ではこの鼻側網膜からの線維だけが対側へ交叉する。視交叉そのものが障害されると、左右それぞれの眼から交叉してきた線維がまとめて巻き込まれ、両眼の耳側視野が対称的に欠ける。

の型 侵される範囲 示唆する病変の高さ
単眼性 片方の眼だけ 網膜・視神経(視交叉より前)
両眼の耳側(外側)視野 視交叉そのもの
両眼の同じ側の視野半分 視交叉より後ろ——からまで

「視野の外側が見えない」=視交叉病変、と機械的に覚えるより、だけが交叉するという解剖を思い出す方が応用が利く。 交叉線維の障害はどこで起きても両耳側性の欠損として現れるため、視交叉の圧迫方向(下方から/上方から)によって欠損の広がり方が変わっても、「両耳側性」という大枠は変わらない。

病態生理

視交叉を圧迫する方向によって、の始まり方が変わる。

flowchart TD
    A["視交叉の圧迫"] --> B{"圧迫の方向"}
    B -->|"下方から(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pituitary adenoma'>下垂体腺腫</span>)"| C["交叉線維の下部(下鼻側網膜由来)が最初に障害"]
    C --> D["上耳側<span class='jp-term jp-term-diagram' title='quadrantanopia'>四分盲</span>から始まる"]
    B -->|"上方・後方から(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='craniopharyngioma'>頭蓋咽頭腫</span>など鞍上部病変)"| E["交叉線維の上部(上鼻側網膜由来)が最初に障害"]
    E --> F["下耳側<span class='jp-term jp-term-diagram' title='quadrantanopia'>四分盲</span>から始まる"]
    D --> G["進行すると完全な<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bitemporal hemianopsia'>両耳側半盲</span>へ"]
    F --> G

💡 の左右差・上下差は、腫瘍が視交叉の正中に対して対称に増大するとは限らないために生じる。完全に左右対称なはむしろまれで、実際には左右で進行度の異なる非対称な欠損として見つかることが多い。

⚠️ 緊急・見逃してはいけない疾患

⚠️ :既存の内への出血・梗塞により、突然の激しい頭痛、を含む)、麻痺など)、意識障害が急速に出現する内分泌・神経眼科の緊急疾患である。頭痛が80〜90%、が30〜71%、が39〜52%、意識障害が最大42%にみられる1を45〜70%と高頻度に伴うため、画像検査の結果を待たずに静注などの補充を優先する1。神経眼科的所見が高度、または意識障害を伴う例では緊急のを検討する。

⚠️ 視交叉圧迫の持続期間が長いほど、治療後の視野回復が悪い。 後は多くの症例でが改善するが、術前の症状期間が長いほど術後の視野回復は悪くなる逆相関があり、圧迫・虚血が遷延すると視交叉に不可逆的な障害が生じうる2。緩徐進行するを「様子を見てよい変化」と誤解せず、原因検索との決定を先延ばしにしないことが視機能温存につながる。

⚠️ 小児での緩徐進行するは、や視交叉膠腫など鞍部・鞍上部腫瘍を示唆し、などの内分泌症状を伴っていないか必ず確認する。

鑑別の進め方

flowchart TD
    A["両耳側の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='visual field defect'>視野障害</span>を疑う"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='confrontation'>対座法</span>で大まかに確認し<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='static perimetry'>静的視野計</span>で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='objective'>客観的</span>に記録"]
    B --> C{"発症は急性か緩徐性か"}
    C -->|"急性・激しい頭痛や意識変容を伴う"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pituitary apoplexy'>下垂体卒中</span>を疑い<br>緊急MRIと基礎ホルモン測定"]
    D --> E["結果を待たず<span class='jp-term jp-term-diagram' title='glucocorticoids'>糖質コルチコイド</span>補充"]
    C -->|"緩徐進行"| F["造影下垂体・鞍部MRIで腫瘤性病変を評価"]
    F --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='anterior pituitary'>下垂体前葉</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='posterior lobe'>後葉</span>ホルモンを一括評価"]
    E --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='neurosurgery'>脳神経外科</span>・内分泌科で手術方針を検討"]
    G --> H

が両耳側性と確認できたら、単眼性・との鑑別はすでに終わっている前提で、次は「急性か緩徐性か」で分岐する。急性発症で頭痛・意識変容を伴えばとして緊急対応へ、緩徐進行であればなどの鑑別を造影MRIで進める。いずれの経路でも、視交叉近接病変が疑われた時点で内分泌評価(ホルモン、必要に応じての評価)を併せて行う。

対症療法の考え方

そのものを直接補う対症療法は乏しい。では視野の欠損側へ視線を向ける代償訓練やが助けになるが、は欠損が左右対称に視野の外側全体へ及ぶため、片側へ視線をずらすような代償は成立しにくい。対応の中心は原因病変(など)そのものへの介入——薬物療法・手術による減圧——であり、は原因治療の効果を測る指標としてに追跡する。

まとめ

  • は視交叉で交叉するの障害を意味し、両眼の耳側視野が対称性に欠ける。視交叉より後ろの病変で起こるとは局在がまったく異なる。
  • 代表疾患はなどの鞍部・鞍上部腫瘍。下方からの圧迫()は上耳側から、上方・後方からの圧迫(など)は下耳側から始まりやすい。
  • 突然発症で高度頭痛・意識障害を伴えばを疑い、画像結果を待たずに補充を優先する。
  • 圧迫期間が長いほど治療後の視野回復は悪くなるため、緩徐進行例でも診断・治療を先延ばしにしない。
  • 対症的な代償手段に乏しく、原因病変への介入が治療の中心になる。

出典

  1. 1.Revisiting Pituitary Apoplexy(Journal of the Endocrine Society・2022)下垂体卒中では頭痛が80〜90%、視野障害(両耳側半盲を含む視交叉症候)が30〜71%、動眼神経麻痺を主とする眼球運動障害が39〜52%、意識障害が最大42%にみられること、続発性副腎不全45〜70%・続発性甲状腺機能低下35〜70%を高頻度に伴うため、画像検査の結果を待たずに静注ヒドロコルチゾンなどの糖質コルチコイド補充を優先すべきことを確認した閲覧 2026-08-11
  2. 2.Visual field improvement after endoscopic transsphenoidal surgery in patients with pituitary adenoma(Frontiers in Oncology・2023)経蝶形骨洞手術後に視野障害が改善する割合が約80.8%に達する一方、術前の視野障害の持続期間が長いほど術後の視野回復が悪いという逆相関があり、圧迫・虚血の遷延が視交叉に不可逆的な障害を来しうることを確認した閲覧 2026-08-11