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Lab values · Published

T3抑制試験

T3 suppression test

別名
T3抑制試験(Werner試験)トリヨードサイロニン抑制試験
臓器系
内分泌・代謝
科目
Internal Medicine
トピック
内科学 E-02:甲状腺疾患の症状・診断・治療内科学 E-01:下垂体・視床下部疾患
関連疾患
TSH産生下垂体腺腫甲状腺ホルモン抵抗性

🧠 全体像:(Werner試験)は、外因性のT3を投与して分泌をどれだけ抑え込めるかを見るである。⚠️ 単独では診断的価値が明確でない検査とされ、量的には産生・のどちらも「完全な抑制」には至らないという点で似通っている。両者を分けるのは量ではなく抑制パターンの質——の大多数は定性的に正常型の抑制を示すのに対し、産生は定性的にもになる——であり、刺激試験と組み合わせて初めてと産生の鑑別に使える。⚠️ 外因性T3の負荷そのものが頻脈・不整脈のリスクを伴うため、実施可否はの状態を確認したうえで判断する。

検査の原理と実施方法

は、正常であれば甲状腺ホルモンの負のフィードバックに強く反応して分泌を抑制する。外からT3()を連日投与して人為的に甲状腺ホルモン優位の状態を作り、投与前後でがどれだけ下がるかを見るのがこの試験の骨子である。

標準的なプロトコルは1日80〜100 µgを8〜10日間投与し、投与前後でを比較するというものである1。頻脈のリスクを減らす目的で、1日25 µgを7日間投与する低も検討されており、遺伝的に確定した患者を対象とした比較では、低下率は従来量群と有意差がなく(いずれも80%以上の低下)、頻脈で心拍数低下薬を要した患者は従来量群13例中9例に対し低用量群13例中1例にとどまった2。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='inappropriate TSH secretion'>不適切TSH分泌</span>パターンを確認"] --> B["循環器リスクを評価し実施可否を判断"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='liothyronine, T3'>リオチロニン</span>を連日投与(標準:1日80〜100µgを8〜10日間)"]
    C --> D["投与前後で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='thyroid-stimulating hormone'>TSH</span>を測定"]
    D --> E["抑制パターンの質を評価する(量的にはどちらの群も完全抑制に至らない)"]
    E -->|"定性的に正常型(一部でも明瞭に抑制される)"| G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='thyroid hormone resistance'>甲状腺ホルモン抵抗性</span>を支持"]
    E -->|"定性的にも<span class='jp-term jp-term-diagram' title='non-response'>無反応</span>"| H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='thyroid-stimulating hormone'>TSH</span>産生<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pituitary adenoma'>下垂体腺腫</span>を支持"]
    G --> I["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='thyrotropin-releasing hormone'>TRH</span>刺激試験の結果と併せて判定"]
    H --> I

判読の指標と基準

指標 内容
の完全抑制(量的) 産生・のいずれの群でも、基礎値・刺激後が完全に抑制される定量的に正常な反応は記録されたことがなく、両群とも100%が異常反応を示し有意差が無い(NS)1
の抑制パターン(質的) の大多数(47例中45例)は定性的には正常型の抑制パターンを示す一方、産生は定性的にもになるという対比がある13
摘出後の評価 腺腫が完全に切除されたことを確認するうえで、最も感度・特異度が高い方法とされる1

⚠️ 「完全に抑制されるかどうか」で線引きしない。 量的には産生・のどちらも完全抑制には至らず、この検査単独では明確な診断的価値を持たないとされる1。両群を分けるのは抑制パターンの質であり、刺激試験の結果と併せて初めて鑑別に使える。

異常パターンの意味

パターン 代表的な病態 機序
抑制されない 産生 腫瘍細胞が自律的にを分泌しており、外因性T3による負のフィードバックが働かない
部分的に抑制される のフィードバック機構自体は働くが、末梢のの感受性低下を反映し、健常者ほど深くは抑制されない
摘出後に正常化(強く抑制される) 産生の完全切除後 自律的な分泌源が除かれ、正常なフィードバック機構が回復したことを示す1

💡 「抑制されない」「部分的に抑制される」という対比はETAガイドラインの記述どおりだが、量的な指標(基礎値・刺激後の完全抑制)だけで見ると産生・のいずれも100%が異常反応を示し差が無い。実際に鑑別の手がかりになるのは抑制パターンの質であり、刺激試験の結果と併せて判定する。

⚠️ 実施上・判読上の注意

  • ⚠️ 高齢者・心疾患患者では禁忌である。 外因性T3の負荷は頻脈・不整脈のリスクを伴い、高齢者や心疾患を有する患者への実施は禁忌とされる1。
  • 低で頻脈リスクを減らせる可能性がある。 1日25 µg・7日間の低は、低下の程度を保ったまま頻脈による心拍数低下薬の使用が明らかに少なかった2。ただし比較対象は患者に限られ、産生でのは別に検証が要る。
  • 単独では確定しない。 刺激試験と組み合わせることで感度・特異度が高まる1。片方だけの結果で鑑別を確定させない。
  • 投与期間中は様の症状(・振戦・発汗)が生じうるため、実施中は症状のモニタリングを行う。

次に進むべき検査 / 使い分け

検査 何を追加で確定できるか
刺激試験 と対になる。産生で反応が鈍化、で保たれる
SHBG 侵襲を伴わない補助指標。で正常、産生で甲状腺まで上昇する
産生の局在を直接確認する

まとめ

  • は、外因性T3の投与でをどれだけ抑制できるかを見るで、標準プロトコルは1日80〜100 µgを8〜10日間投与する。
  • ⭐ 量的には産生・のどちらも完全抑制には至らず差が無い。分かれるのは抑制パターンの質(の大多数は定性的に正常型)であり、刺激試験と組み合わせて初めて鑑別に使える。
  • ⚠️ 高齢者・心疾患患者では禁忌。頻脈リスクを減らす低(1日25 µg・7日間)も検討されている。
  • 腺腫摘出後の完全切除確認にも高い感度・特異度を持つ。
  • 単独では確定できず、刺激試験・SHBG・と組み合わせて判断する。

出典

  1. 1.Thyrotropin-Secreting Pituitary Adenomas(Endotext(Persani L, Lania A, Beck-Peccoz P / MDText.com)・2025)刺激・抑制試験のいずれもTSH産生下垂体腺腫の診断に明確な診断的価値を持つものは無いという前置きのもと、T3抑制試験がリオチロニン1日80〜100 µgを8〜10日間投与する標準プロトコルであること、量的にはTSH産生下垂体腺腫・RTHβとも100%が異常反応(基礎値・TRH刺激後TSHの完全な抑制)を示し両群に有意差が無いこと(NS)、基礎値・TRH刺激後TSHの両方が完全に抑制される定量的に正常な反応はいずれの群でも記録されたことがないこと、それでもRTHβ患者47例中45例は定性的には正常なTSH抑制パターンを示す一方TSH産生下垂体腺腫は定性的にも異常型になるという質的な対比があること、この試験が腺腫摘出後の完全切除を確認するうえで最も感度・特異度が高い方法であること、高齢者や心疾患患者では本試験が禁忌であること、可能な限りT3抑制試験とTRH刺激試験の両方を組み合わせることで感度・特異度が高まるため両者の併用を推奨することを確認した。閲覧 2026-08-28
  2. 2.Can a novel drug dose be used for T3 suppression test?(Endocrine(Çetin S, Güven M, Bolayır B, et al.)・2023)遺伝的に確定した甲状腺ホルモン抵抗性26例を対象とした前向き研究で、従来量(1日50〜100 µgを3〜9日間)投与群13例と低用量(1日25 µgを7日間)投与群13例を比較したところ、TSH値の平均変化率に有意差はなく両群とも全例で80%以上のTSH低下を認めたこと、頻脈により心拍数低下薬(プロプラノロール)を要したのが従来量群13例中9例、低用量群13例中1例であったことを、抄録で確認した。閲覧 2026-08-28
  3. 3.2013 European Thyroid Association Guidelines for the Diagnosis and Treatment of Thyrotropin-Secreting Pituitary Tumors(European Thyroid Association(Beck-Peccoz et al., European Thyroid Journal)・2013)T3抑制試験でTSHの完全抑制はTSH産生下垂体腺腫で報告がなく、部分抑制は甲状腺ホルモン抵抗性でのみみられるという鑑別点を、原文の診断・鑑別診断の節で確認した。閲覧 2026-08-28