スコア体系ノート一覧へ

Scores · Published

Knosp分類

Knosp classification

臓器系
内分泌・代謝神経
科目
Internal MedicinePathology
トピック
内科学 E-01:下垂体・視床下部疾患病理学 C/84:視床下部・下垂体系の機能低下・亢進
適用疾患
頭蓋底腫瘍

🧠 全体像は、へどこまで進展しているかを、という固定された解剖学的基準線との位置関係だけでgrade 0〜4の5段階に段階づける画像分類である。腫瘍そのものの大きさや性状ではなく「を越えているか、どこまで越えているか」を見る点が軸で、gradeが上がるほどの可能性が上がり、での全摘出が難しくなるという向きで対応する。ただし境界に近いgrade(2やgrade 3A)は判定のが中間的で、grade単独で「浸潤あり/なし」を言い切れるのは両端(grade 0〜1とgrade 3B〜4)に限られる。

目的と適用場面

内容
目的 への進展度を、MRI上のとの位置関係から段階づける
対象 で評価する。特にへの進展が問題になる
使う場面 の術前計画、全摘出可能性・内分泌学的寛解の見込みの見積もり
評価しないもの 腫瘍のホルモン産生の有無・種類、への組織学的(顕微鏡的)浸潤そのもの、術後の残存・再発

もとは1993年にKnospらが、MRI上でを基準にした3本の線(内側接線・間線・外側接線)を引き、腫瘍がこれらをどこまで越えるかでを予測する分類を提案したのが起源である1。2015年にMickoらが、下垂体137例を内視鏡下手術で直接観察し、原分類のgrade 3をより上方に進展する3Aと下方に進展する3Bへ細分した改訂版(revised )を報告し、以後はこの3A/3B区分を含めて運用されることが多い2

構成要素と配点

は点数を合算するのではなく、MRI上で腫瘍がのどのラインを越えているかによってgradeを直接決定する。

grade との位置関係
0 腫瘍が内側接線(の内側縁を結ぶ線)を越えない
1 内側接線は越えるが、間線(部・床上部のの中心を結ぶ線)は越えない
2 間線は越えるが、外側接線(の外側縁を結ぶ線)は越えない
3A 外側接線を越え、進展はより上方(頭側)の区画にとどまる
3B 外側接線を越え、進展がより下方(尾側)の区画に及ぶ
4 に包囲する

grade 0〜3は内側接線・間線・外側接線という3本の線のどこまで腫瘍が達しているかで決まり、grade 4だけが「線を越える」のではなく「を取り囲む」という質的に異なる基準で判定される1。3A/3Bの区分は、原分類のgrade 3をの頭尾方向(上下)で二分したもので、より上か下かだけを見ればよく、新たな基準線を追加するものではない2

解釈とカットオフ

💡 gradeとの対応は連続的で、実務上は次の3つの境界で区切って考えるとわかりやすい。

境界 意味
grade 0〜1 と grade 2以上 0.90 の有無を最も強く分ける境界。grade 0〜1では浸潤はまれ
grade 0〜2 と grade 3以上 0.86 「grade 3から浸潤を疑う」という従来の運用の根拠
grade 3A以下 と grade 3B以上 0.91 改訂版でgrade 3を3A/3Bに分けた意義そのもの。改訂版のほうが原分類より判別能が高い

出典:3

手術転帰への対応は次のとおりで、同じgrade 3でも3Aと3Bで差が大きい(Micko 2015、下垂体137例。片側でもgrade 1以上のものを対象としており、grade 0は含まれない)。

grade 手術で確認された 全摘出率/内分泌学的寛解率
1 1.5% 83%/88%
2 9.9% 71%/60%
3A 26.5% 85%/67%
3B 70.6%(3Aより有意に高い、p<0.001) 64%/0%
4 100% 0%/0%

出典:2

限界と使ってはいけない場面

⚠️ grade 2やgrade 3Aのような中間グレードは判定のが中間的で、単独では浸潤の有無を確定できない。 判定が確実なのはgrade 0〜1(浸潤はまれ)とgrade 3B〜4(浸潤が強く疑われる)の両端で、境界に近いgradeでは他の所見(の偏位、視交叉圧迫の程度など)と合わせて総合的に判断する必要がある3

⚠️ との位置関係という肉眼的な進展の指標であり、への組織学的(顕微鏡的)浸潤を直接判定するものではない。 のgradeと実際の手術所見(内視鏡的な直接観察)との対応が体系的に検証されたのは2015年のMicko論文が最初で、それ以前は画像分類が実際の浸潤をどこまで正しく反映するかの直接的な検証が乏しかった2

⚠️ gradeが高いこと自体は「手術適応外」を意味しない。 grade 3B・4はあくまで全摘出の見込みが下がることを示す指標であり、手術を行うかどうか・どの術式(内視鏡下か開頭かなど)を選ぶかは、腫瘍のホルモン活性、視機能障害の有無、患者の希望を含めたな判断で決める。

⚠️ ・薄いスライス厚での撮像が前提であり、撮像条件が不適切だと基準線そのものが引きにくくgradeがぶれる。

まとめ

  • は、上で腫瘍との位置関係だけを見てへの進展をgrade 0〜4に段階づける画像分類である。
  • grade 0〜3は内側接線・間線・外側接線という3本の線のどこまで腫瘍が達しているかで決まり、grade 4は包囲という質的に異なる基準で判定する。
  • 2015年の改訂版はgrade 3をより上方進展のgrade 3Aと下方進展のgrade 3Bに分けた。手術で確認された率は3Aで26.5%・3Bで70.6%(p<0.001)、全摘出率/内分泌学的寛解率は3Aで85%/67%・3Bで64%/0%と、同じgrade 3でも転帰が大きく異なる。
  • gradeが高いほどの可能性・手術の難度が上がるが、中間グレード(grade 2・3A)は判定のが低く、grade単独で浸潤の有無や手術適応を確定してはならない。
  • の術前計画・全摘出可能性の見積もりに使う指標であり、腫瘍のホルモン活性や視機能障害の評価とあわせて総合的に判断する。

出典

  1. 1.Pituitary Adenomas With Invasion of the Cavernous Sinus Space: A Magnetic Resonance Imaging Classification Compared With Surgical Findings(Neurosurgery(Knosp E, Steiner E, Kitz K, Matula C)・1993)冠状断MRI上で内頸動脈を基準にした内側接線・内頸動脈間線・外側接線という3本の線を使い、海綿静脈洞への進展をgrade 0〜4の5段階(grade 4は内頸動脈の全周性包囲)に分類する原著の枠組みを確認した。閲覧 2026-08-10
  2. 2.Invasion of the cavernous sinus space in pituitary adenomas: endoscopic verification and its correlation with an MRI-based classification(Journal of Neurosurgery(Micko ASG, Wöhrer A, Wolfsberger S, Knosp E)・2015)下垂体大腺腫137例(片側でもgrade 1以上)の内視鏡的検討から、grade 3を内頸動脈より上方(頭側)進展のgrade 3Aと下方(尾側)進展のgrade 3Bに細分した改訂分類を提示し、手術で確認された海綿静脈洞浸潤率がgrade 1で1.5%・grade 2で9.9%・grade 3Aで26.5%・grade 3Bで70.6%・grade 4で100%であったこと(3Aは3Bより有意に低い、p<0.001)、全摘出率/内分泌学的寛解率がgrade 1で83%/88%・grade 2で71%/60%・grade 3Aで85%/67%・grade 3Bで64%/0%・grade 4で0%/0%であったことを確認した。閲覧 2026-08-10
  3. 3.Diagnostic value of Knosp grade and modified Knosp grade for cavernous sinus invasion in pituitary adenomas: a systematic review and meta-analysis(Pituitary(Fang Y, et al.)・2021)12件の研究・Knosp分類で評価された3,006例、改訂分類で評価された1,315例のメタ解析で、海綿静脈洞浸潤の予測能(AUC)がgrade 2以上とgrade 0〜1の境界で0.90、grade 3以上とgrade 0〜2の境界で0.86、grade 3B以上とgrade 3A以下の境界で0.91であったこと、grade 2・grade 3Aのような中間グレードでは判定の信頼性が弱いことを確認した。閲覧 2026-08-10