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Lab values · Published

ガストリン

Gastrin

別名
血清ガストリン空腹時ガストリンgastrin
臓器系
消化器内分泌・代謝
科目
PhysiologyInternal Medicine
トピック
生理学 6.3:唾液腺の機能と唾液分泌の調節・胃液分泌とその調節内科学 S-27:胃炎
関連疾患
カルチノイド症候群・神経内分泌腫瘍(ゾリンジャー・エリソン症候群、インスリノーマを含む)胃炎巨赤芽球性貧血多発性内分泌腫瘍症

🧠 全体像:空腹時血清は、)を疑ったときの一次検査である。ただし高値の意味は胃酸が出ているかどうかで正反対に分かれる。腫瘍が負のフィードバックをして自律的にを出し続ける高酸状態(ZES)と、フィードバックは正常なのに酸そのものが出せないためにが上がる無酸・低酸状態(、PPI服用中など)は、同じ「高値」でも病態が正反対である。このを軸に読まないと、この検査は解釈を誤る。

何を測っているか

は主に胃前庭部・。十二指腸・膵にも一部分布する)から分泌されるである。は、迷走神経を介したACh、、胃壁の伸展(食物の存在)、アルコール・などの刺激を受けてを分泌する。血中に放出されたは、してプロトンポンプ(H+/K+-ATPase)の発現を促すとともに、を刺激してヒスタミンを放出させ、間接的にもを増やす。

この系の中核は負のフィードバックである。胃内pHが下がり酸が十分に出ると、前庭部のからソマトスタチンが放出され、分泌をに抑える。つまり正常な状態では「酸が出ればは下がる」。この一文が、高値の解釈全体の軸になる。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='G cell'>G細胞</span>(胃前庭部)がACh・GRP・胃壁の伸展などで刺激される"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='gastrin'>ガストリン</span>を血中へ放出"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='parietal cell'>壁細胞</span>のH+/K+-ATPaseの発現を促進し<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='enterochromaffin-like cell, ECL cell'>ECL細胞</span>からのヒスタミン放出を刺激"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='gastric acid secretion'>胃酸分泌</span>が増加し胃内pHが低下"]
    D --> E["前庭部<span class='jp-term jp-term-diagram' title='D cell'>D細胞</span>からソマトスタチンが放出される"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='G cell'>G細胞</span>を<span class='jp-term jp-term-diagram' title='paracrine'>傍分泌的</span>に抑制し<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='gastrin'>ガストリン</span>分泌を減らす"]

基準値と単位

正常な空腹時血清はおおむね100 pg/mL未満で、測定法・施設ごとに上限が異なる。100〜1,000 pg/mLは境界域であり、ZES以外の多くの病態でも見られる1

高値の意味

は、胃酸が出ているか出ていないかで機序が正反対に分かれる。同じ数値でも、まずこの軸で分ける。

病態 機序
高い 腫瘍が自律的にを分泌し、フィードバックを受けずにを刺激し続ける
への自己抗体陽性)、 低い・無い が破壊され酸が出ないため、フィードバックが働かずに働き続ける
H. pylori 関連 低い・無い 慢性炎症によるの萎縮で能そのものが失われる
的に抑制 を人為的に止めるため、フィードバックが解除される
後・ 低い を促す刺激の一部が失われる
flowchart TD
    A["空腹時血清<span class='jp-term jp-term-diagram' title='gastrin'>ガストリン</span>高値"] --> B{"胃内pHは低いか<br>(酸が出ているか)"}
    B -->|"低い(酸あり)"| C["負のフィードバックが効かない<br>腫瘍の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='autonomous secretion'>自律分泌</span>を疑う"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Zollinger-Ellison syndrome'>ゾリンジャー・エリソン症候群</span><br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='gastrinoma'>ガストリノーマ</span>)"]
    B -->|"高い(酸なし・低い)"| E["フィードバックは正常<br>酸が出せないため<span class='jp-term jp-term-diagram' title='compensatory'>代償的</span>に上昇"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='autoimmune gastritis'>自己免疫性胃炎</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pernicious anemia'>悪性貧血</span><br>H. pylori関連<span class='jp-term jp-term-diagram' title='atrophic gastritis'>萎縮性胃炎</span><br>PPI・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vagotomy'>迷走神経切離</span>後など"]

閾値の書き方には資料ごとに流儀の違いがある。空腹時>1,000 pg/mLという絶対値を使う文献と、上限の10倍という相対値を使う文献があるが、いずれも胃内pH≤2というの文脈とセットで判断する点は共通する12。この組み合わせで診断が成立するのは全体の一部にとどまり、残りの境界域ではを追加する。静注後にが120 pg/mLを超えて増加すれば陽性とされるが、この試験はPPI服用中には偽陽性を来すため施行できず、できる状態かどうかの評価自体が臨床判断になる12

若年発症・多発性のではを疑う。患者ではの合併頻度が40〜60%と高い2の病態・治療の詳細はそちらを参照。

を疑うワークアップでは、CBC・鉄・ビタミンB12とともに/をあわせて評価する。高値とI低値・PGI/II比低下は、同じ部萎縮を逆方向から映す組み合わせで、対にして読むと確度が上がる。ビタミンB12欠乏の確認へ進むならを測る。

低値の意味

低値そのものに確立した臨床的意義はなく、この検査の主題ではない。

⚠️ 測定上の注意

⚠️ PPIによる:PPIは作用が長く(最大で1週間程度)、服用中は健常者の大半でもを来しうる2。測定前は少なくとも1週間のPPIは48時間のが推奨される1。ただしZESが疑われる患者でPPIを急に中止するとによる潰瘍出血・穿孔のリスクがあるため、診断目的のは患者が安定し消化性潰瘍がないことを確認したうえで、専門管理下で行う2診断のための情報と、そのものの危険性を天秤にかける場面である。

  • 腎不全のクリアランス低下により血中濃度が上昇する1
  • の低下を介して同じ機序で上昇しうる。
  • でも高値になりうる1
  • は血中で分解されやすいため、採血後は速やかに冷却・分離して処理する。

経時変化とモニタリング

を外科的に切除しても、患者の約62%は状態が残り、そのうち約28%は著明なが最長8年ほど持続すると報告される2。手術による「治癒」を単回の正常化だけで判定せず、PPIを自己判断で中止させずに継続的なモニタリングを行う2

再発の早期発見には、空腹時の推移と、造影CT/MRIやSSTR-PET/CTなどの画像検査を組み合わせる。に伴うは多発性・再発しやすいため、術後もこの生化学的フォローを続ける。

まとめ

  • は胃前庭部のから分泌され、を刺激してを促す。正常では胃内pH低下がソマトスタチンを介して分泌を抑える負のフィードバックが働く。
  • 高値の解釈は「胃酸が出ているか」で二分される。高+高酸(低pH)はZES()、高+無酸・低酸は・H. pylori関連・PPI・後を示唆する。
  • 空腹時(>1,000 pg/mLまたは上限の10倍)+胃内pH≤2はZESを強く支持する。境界域では(増加>120 pg/mLで陽性)を検討するが、PPI服用中は偽陽性のため施行できない。
  • PPIはの最大の原因で、測定前の(PPI 1週間、48時間)と自体の危険性(潰瘍出血・穿孔)を天秤にかけて専門管理下で行う。腎不全もクリアランス低下で上昇させる。
  • 切除後もが長期間残存しうるため、単回値でなく継続的なモニタリングと画像検査で再発を追う。若年・多発例ではを疑う。

出典

  1. 1.Gastrinoma(StatPearls Publishing (NCBI Bookshelf)・2026)空腹時血清ガストリン>1,000 pg/mLかつ胃内pH≤2の文脈でZESの診断的意義が強いこと、100〜1,000 pg/mLは境界域であること、セクレチン刺激試験は投与後のガストリン増加>120 pg/mLで陽性とすること、測定前にPPIは少なくとも1週間・H2受容体拮抗薬は48時間の休薬が重要であること、腎不全がガストリンのクリアランス低下を介して上昇させることを確認した。閲覧 2026-08-03
  2. 2.ENETS Consensus Guidelines Update for the Management of Patients with Functional Pancreatic Neuroendocrine Tumors and Non-Functional Pancreatic Neuroendocrine Tumors(Neuroendocrinology(Falconi M, Eriksson B, Kaltsas G, et al.)・2016)空腹時血清ガストリンが基準値上限の10倍を超え胃内pH<2ならZES診断が成立すること(残り約6割は追加検査を要する)、セクレチン刺激試験はPPI服用中は偽陽性のため施行できないこと、PPIの作用は最大1週間持続し健常者の大半で高ガストリン血症を来しうること、診断のための休薬は患者が安定し消化性潰瘍がない場合に限ること、ガストリノーマ切除後も約62%で酸分泌過多が残り約28%は著明な過多が最長8年続きうること、MEN1患者でのガストリノーマ合併頻度が40〜60%であることを確認した。閲覧 2026-08-03