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ペプシノゲン

Pepsinogen

別名
ペプシノゲンI/II比ペプシノゲン法PG I/II比pepsinogen
臓器系
消化器
科目
Medical Physiology
トピック
生理学 6.3:唾液腺の機能と唾液分泌の調節・胃液分泌とその調節
関連疾患
胃炎胃癌
スコア
ABC分類

🧠 全体像:は、採血だけでの萎縮の程度を推定できる「」という考え方の中心にある検査である。I・IIは分泌される腺の分布が異なり、この違いがPGI/PGII比を意味のある指標に変えている。ただしこの検査が答えるのは「がどれだけ萎縮しているか」というリスクの推定であって、「胃癌があるかないか」という診断ではない——単独で内視鏡の代わりにはならない。

何を測っているか

は主細胞・が産生するので、胃酸により活性型のへ変換される。分泌は・アセチルコリン・ヒスタミン・によって促進される(生理学 6.3:とその調節)。

I・IIは、分泌する腺の分布が異なる。

型 分泌源 反映する範囲
I の主細胞・のみ の腺組織量そのもの
II (主細胞・)に加え、・十二指腸腺()からも分泌 だけでなく前庭部・十二指腸を含む広い範囲

この違いが検査全体の軸になる。優位の萎縮が進むと、体部にしか分泌源を持たないPGIが選択的に低下する一方、PGIIは・十二指腸腺からの分泌が残るため下がりにくい。結果としてPGI/PGII比は、PGI単独よりも鋭敏に体部萎縮を映す指標になる。

が由来の内分泌ホルモンとしてで「上がる」指標であるのに対し、は主細胞由来の前駆体として萎縮とともに「下がる」指標であり、両者は同じ萎縮を逆方向から映す関係にある。

基準値と単位

単位はng/mLで表す。PG法陽性の代表的な基準は、PGI 70 ng/mL以下かつPGI/PGII比 3.0以下である1。この基準は測定キット・によって調整が必要とされ、施設をまたいで絶対値をそのまま比較しない2。

実務では陽性・陰性の二分だけでなく、PGI値とPGI/PGII比がさらに低いほど萎縮が強いとみなす段階的な運用(重み付けした複数区分)を採る施設もある。

高値の意味

病態 機序
*H. pylori*現感染 活動性炎症が主細胞・の双方を刺激しPGI・PGIIともに上昇するが、領域での上昇がより顕著なためPGI/PGII比はむしろ低下する
(など)服用中 抑制によりへの負のフィードバックが解除され、が主細胞を刺激してPGI分泌を押し上げる
など腎機能低下 腎でのクリアランス低下により血中に蓄積する

低値の意味

病態 機序
H. pylori関連の 慢性炎症によりの主細胞・が消失し、PGIが選択的に低下する
(A型胃炎) ・主細胞を含む・優位の腺破壊により、PGIが著減する
PGIの産生源であるそのものが外科的に失われる

⚠️ 測定上の注意

⚠️ 服用中は判定に使えない。 高値の意味で述べた経由の刺激でPGIが押し上げられるため、実際には萎縮があってもPGIが下がりきらず陰性側へ振れうる一方、が不十分だと絶対値そのものが不安定になり陽性側にも振れうる——偽陽性・偽陰性の両方向に判定を誤らせる。 測定前には少なくとも2週間のを置く。

⚠️ 除菌歴を必ず確認する。 H. pylori除菌に成功すると、PGI・PGIIはともに低下するが、PGI/PGII比はむしろ上昇する方向へ動く1。除菌前後で同じ基準をそのまま当てはめると解釈を誤る。

  • 腎機能低下では上昇しうるため、腎機能を確認せずに高値を「萎縮なし」と解釈しない。
  • 法は胃癌そのものを見つける検査ではなく、リスクを層別する検査である。 単独で内視鏡の代わりにしない。・は萎縮の乏しいにも生じうるため、PG法陰性は胃癌を否定する根拠にならない。 実際、欧州のコホートではを有する参加者のうち法のは44.0%に達し、現在喫煙者・男性・H. pylori陽性者で偽陰性になりやすいと報告されている3。

経時変化とモニタリング

*H. pylori抗体*と法を組み合わせたは、A群(H. pylori陰性・PG陰性、最低リスク)、B群(H. pylori陽性・PG陰性)、C群(H. pylori陽性・PG陽性)、D群(H. pylori陰性・PG陽性、最高リスク)の4群にリスクを層別する。約9.5〜10年の追跡では、A群を基準としたがB群9.8、C群19.6、D群120.4と、群を追うごとにに上昇する(表題は「8年」を掲げるが同じ表の追跡期間の行および人年から計算した値と食い違っており、後者を採る)1。群に応じての間隔を個別化する運用の土台になる。⚠️ ただし「A群=最低リスクだから画像検査は要らない」ではない。 A群には既感染例が紛れ込むため、日本消化器がん検診学会はA群にも一度は内視鏡または胃X線検査を受けるよう勧めている(上記のノート参照)。

⚠️ この検査の位置づけは国・学会で扱いが異なる。日本ので実施を推奨されているのは胃X線検査と胃内視鏡検査の2つだけで、法はそこに入らない(いずれも検査対象は50歳以上が望ましく、内視鏡は検診間隔を2〜3年とすることが可能)4。⚠️ ただし「推奨しない」の中身は検査ごとに違う。 単独法・H. pylori抗体単独法は、死亡率減少効果を示唆する観察研究は複数あるが研究の質が低く、確定的な判断が得られなかったためであるのに対し、併用法(ABC検査)は死亡率減少効果を検討した研究がそもそも報告されていない——「証拠の質が低い」のと「証拠が無い」のは別である。⭐ どちらも禁止ではない。 任意型検診として実施する場合には、死亡率減少効果が不明であることと、不利益(偽陰性・偽陽性・過剰診断)および今後の検診の必要性について適切な説明を行う必要がある、という書き方になっている4。一方欧州のガイドラインは、PGI低値・PGI/PGII比低値を広範囲の同定に用い、内視鏡評価を要する対象を絞り込む補助として位置づける(エビデンスグレードC)2。同じ検査でも「集団検診の主軸にするか」「個々の患者で内視鏡の要否を判断する補助にするか」で評価が割れている。

では、PGI著減との組み合わせで読む。はでになるため、・が陰性の困難例で、PGI低値・PGI/PGII比低下とあわせてを裏づける所見として評価する。

まとめ

  • Iはの主細胞・のみから、IIはそれに加え・十二指腸腺()からも分泌される。この分布の違いによりPGI/PGII比がを鋭敏に映す。
  • PG法陽性の代表的基準はPGI 70 ng/mL以下かつPGI/PGII比3.0以下だが、測定キット・によって調整が必要。
  • 低値はH. pylori関連のや、を示唆する。高値はH. pylori現感染、服用中、腎機能低下でみられる。
  • 服用中は判定に使えず2週間以上のが必要。除菌歴があるとPGI/PGII比が上昇方向へ動くため確認する。
  • 法は胃癌そのものを見つける検査ではなくリスク層別の検査であり、・はPG法陰性でも否定できない。
  • でリスクを層別し間隔の目安にするが、としての位置づけは日本と国際ガイドラインで異なる。ではPGI著減+の組み合わせで読む。

出典

  1. 1.Gastric cancer screening by combined assay for serum anti-Helicobacter pylori IgG antibody and serum pepsinogen levels — 'ABC method'(Proceedings of the Japan Academy, Series B(Miki K)・2011)PG法陽性のカットオフをPGI 70 ng/mL以下かつPGI/PGII比3.0以下と定義し、ABC分類(A〜D群)の追跡でのハザード比(B群9.8、C群19.6、D群120.4)、除菌治療後にPGI・PGIIがともに低下しPGI/PGII比はむしろ上昇することを確認した。⚠️ 観察期間はこの表の中で食い違っており、表題は eight-year periods (1994–2002) と8年を掲げるのに追跡期間の行は群ごとに9.3〜10.0年で、同じ表の人年を人数で割ると(A群 9,487人年÷966人)約9.8年と追跡期間の行に一致する。コーパスでは約9.5〜10年を採る(詳細は scores/abc-classification)閲覧 2026-08-03
  2. 2.Management of precancerous conditions and lesions in the stomach (MAPS): guideline from the European Society of Gastrointestinal Endoscopy (ESGE), European Helicobacter Study Group (EHSG), European Society of Pathology (ESP), and the Sociedade Portuguesa de Endoscopia Digestiva (SPED)(ESGE / EHSG / ESP / SPED・2012)血清ペプシノゲン低値が広範囲萎縮性胃炎を予測しうるとしてエビデンスグレードCで内視鏡評価を要する対象の同定に位置づけていること、カットオフ値は測定法・対象集団により調整が必要であり施設間で一定でないことを確認した閲覧 2026-08-03
  3. 3.Factors Associated with False Negative Results in Serum Pepsinogen Testing for Precancerous Gastric Lesions in a European Population in the GISTAR Study(Diagnostics(GISTAR study, ラトビア)・2022)前癌病変を有する参加者のうちペプシノゲン法の偽陰性率が44.0%に達すること、現在喫煙者・男性・H. pylori陽性が偽陰性と有意に関連することを確認した閲覧 2026-08-03
  4. 4.胃がん検診について(有効性評価に基づく胃がん検診ガイドライン2014年版にもとづく推奨)(国立がん研究センター(がん情報サービス)・2014)2026-09-08に本文を再取得した(ページの更新・確認日は2019年06月11日、内容は「有効性評価に基づく胃がん検診ガイドライン2014年版」にもとづく推奨)。対策型検診・任意型検診として実施を推奨されるのは胃X線検査と胃内視鏡検査の2つで、いずれも検査対象は50歳以上が望ましく内視鏡は検診間隔を2〜3年とすることが可能であること、ペプシノゲン単独法・H. pylori抗体単独法は「複数の観察研究において死亡率減少効果が示唆されましたが、研究の質が低いため、確定的な判断は得られませんでした」として対策型検診には推奨しないこと、⭐ 一方でABC検査(併用法)については「死亡率減少効果を検討した研究は報告されていません」であって証拠の質の問題ではないこと、いずれも任意型検診として実施する場合には死亡率減少効果が不明であることと不利益および今後の検診の必要性の説明を要するとしていることを確認した閲覧 2026-09-08