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ABC分類

ABC classification

臓器系
消化器
科目
Internal Medicine
トピック
内科学 L-75:食道・胃の前癌病変と悪性腫瘍
構成:検査値
ペプシノゲンH. pylori抗体
適用疾患
胃癌

🧠 全体像は、H. pylori抗体という2つの血清検査の陽性・陰性の組み合わせだけで、まだ癌のない胃をA〜D群の4段階に層別する枠組みである。点数を積み上げる方式ではなく、「感染したことがあるか」(抗体)と「萎縮がどれだけ進んだか」(PG法)という独立した2つの軸を掛け合わせる点に特徴がある。もっとも紛らわしいのはD群——「H. pylori抗体陰性・PG陽性」という一見矛盾した組み合わせで、実際は未感染ではなく、高度萎縮の進行によりが自然に消えた既感染者を捕まえるための群であり、A〜D群のうち最もリスクが高い。

目的と適用場面

内容
目的 胃癌発症リスクによる集団の層別化(間隔の個別化)
対象 無症候の一般集団・検診受診者
使う場面 胃がん検診・人間ドックでのリスク評価、内視鏡監視間隔の決定
評価しないもの 現在の胃癌の有無そのもの(診断ではなくリスク層別)

日本で開発された胃癌スクリーニングの枠組みで、血清H. pylori抗体法を組み合わせ、内視鏡を用いずに採血だけでハイリスク集団を絞り込む目的で考案された1。萎縮・の範囲や家族歴とあわせて内視鏡監視間隔を個別化するという考え方の土台になる。

構成要素と配点

⭐ 点数を積み上げる方式ではなく、2つの血清検査それぞれの陽性・陰性を組み合わせた表そのものが判定基準になる。

H. pylori抗体

判定 代表的(Eプレート栄研H.抗体II)
陽性 10 U/mL以上
陰性 3.0 U/mL未満

⚠️ 3.0〜9.9 U/mLは「陰性高値」帯と呼ばれ、現感染・既感染例が高率に混在する2はキット・施設により異なり、詳細はH. pylori抗体ノートに譲る。

法(PG法)

判定 代表的
陽性 PGI 70 ng/mL以下 かつ PGI/PGII比 3.0以下
陰性 上記条件を満たさない

は測定キット・により調整が必要で、施設間で一定でない1。詳細はノートに譲る。

A〜D群への割り付け

H. pylori抗体 PG法
陰性 陰性 A群
陽性 陰性 B群
陽性 陽性 C群
陰性 陽性 D群

⚠️ D群(H. pylori抗体陰性・PG陽性)は「未感染なのに萎縮が進んでいる」という一見矛盾した組み合わせに見えるが、実際は高度萎縮の進行に伴い抗原刺激が減り、が自然に消失した既感染例を含む1

解釈とカットオフ

(A群基準) 想定される病態像
A群 1(基準) 未感染・萎縮なし。最低リスク
B群 9.8 現感染・萎縮は軽度
C群 19.6 現感染・萎縮が進行
D群 120.4 既感染・高度萎縮。最高リスク

8年間の追跡では、A群を基準としたがB群9.8、C群19.6、D群120.4と、群を追うごとにに上昇する1。群が上がるほどの間隔を短くする運用の目安になる。

限界と使ってはいけない場面

⚠️ 診断ではなくリスク層別である。 はその時点で胃癌の有無を判定する検査ではない。C群・D群であっても内視鏡で異常が見つからない受診者が大半であり、群の判定だけで胃癌の診断・除外はできない。

⚠️ 日本のでは推奨されていない。 を含む法・H. pylori抗体検査は死亡率減少効果のエビデンスが不十分としての推奨から外れており、推奨される検査は胃X線検査と胃内視鏡検査の2つのみである3

⚠️ 国・集団によって評価が割れる。 米国の指針は、H. pylori抗体・などの血清学的マーカーが北米集団で一貫したを示していないとし、高いがなければ低集団での血清学的スクリーニングを推奨しない4

⚠️ 除菌歴・服用は判定を狂わせる。 除菌に成功するとPGI/PGII比は上昇方向へ動く一方、H. pylori抗体は陽性のまま年単位で残るため、除菌前後で同じ基準を当てはめると群がずれる。判定前にはし、除菌歴を確認する。

⚠️ 未分化型・はPG法陰性でも否定できない。 PG法は主に部優位萎縮を反映する検査であり、萎縮の乏しいにも生じうる未分化型・はPG法陰性、すなわちA群やB群に紛れうる。

まとめ

  • H. pylori抗体の陽性・陰性の組み合わせでA〜D群に分ける胃癌リスク層別の枠組みで、点数を積み上げる方式ではない。
  • A群(両陰性、最低リスク)を基準に、8年間追跡でのはB群9.8、C群19.6、D群120.4とに上昇する。
  • D群(H. pylori抗体陰性・PG陽性)は未感染ではなく、高度萎縮に伴いが自然消失した既感染例を含み、A〜D群のうち最もリスクが高い。
  • 診断ではなくリスク層別の検査であり、日本のでは推奨されていない。国・集団によって評価が割れる。
  • 除菌歴・服用は判定を狂わせ、未分化型・はPG法陰性でも否定できない。

出典

  1. 1.Gastric cancer screening by combined assay for serum anti-Helicobacter pylori IgG antibody and serum pepsinogen levels — 'ABC method'(Proceedings of the Japan Academy, Series B(Miki K)・2011)ABC分類のA〜D群の定義(H. pylori抗体陽性/陰性とPG法陽性/陰性の組み合わせ)、8年間追跡でのハザード比(A群を基準にB群9.8・C群19.6・D群120.4)、D群には高度萎縮の進行に伴い抗体価が自然消失した既感染例が混在しうることを確認した閲覧 2026-08-10
  2. 2.胃がんリスク評価に資する抗体法適正化に関する多施設研究(日本ヘリコバクター学会 胃がんリスク評価に資する抗体法適正化委員会・2018)国内で最も汎用される「Eプレート栄研H.ピロリ抗体II」の代表的カットオフ(10 U/mL以上を陽性、3.0 U/mL未満を陰性)と、その間の3.0〜9.9 U/mLが「陰性高値」帯として現感染・既感染例を高率に含むことを確認した閲覧 2026-08-10
  3. 3.胃がん検診について(有効性評価に基づく胃がん検診ガイドライン2014年版にもとづく推奨)(国立がん研究センター(がん情報サービス)・2014)日本の対策型検診では、ABC分類を含むペプシノゲン法・H. pylori抗体検査は死亡率減少効果のエビデンスが不十分として推奨されておらず、推奨される検査は胃X線検査と胃内視鏡検査の2つのみであることを確認した閲覧 2026-08-10
  4. 4.ACG Clinical Guideline: Treatment of Helicobacter pylori Infection(American College of Gastroenterology・2024)H. pylori抗体・ペプシノゲンなどの血清学的マーカーによる胃癌スクリーニングは北米集団で一貫した信頼性が確認されておらず、高い検査前確率がない限り低有病率集団での血清学的スクリーニングは推奨されないことを確認した閲覧 2026-08-10