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ABC分類

ABC classification

臓器系
消化器
科目
Internal Medicine
トピック
内科学 L-75:食道・胃の前癌病変と悪性腫瘍
構成:検査値
ヘリコバクター・ピロリ抗体ペプシノゲン
適用疾患
胃癌

🧠 全体像:は、H. pylori抗体と法という2つの血清検査の陽性・陰性の組み合わせだけで、まだ癌のない胃をA〜D群の4段階に層別する枠組みである。点数を積み上げる方式ではなく、「感染したことがあるか」(抗体)と「萎縮がどれだけ進んだか」(PG法)という独立した2つの軸を掛け合わせる点に特徴がある。もっとも紛らわしいのはD群——「H. pylori抗体陰性・PG陽性」という一見矛盾した組み合わせで、実際は未感染ではなく、高度萎縮の進行によりが自然に消えた既感染者を捕まえるための群であり、A〜D群のうち最もリスクが高い。

目的と適用場面

内容
目的 胃癌発症リスクによる集団の層別化(間隔の個別化)
対象 無症候の一般集団・検診受診者
使う場面 胃がん検診・人間ドックでのリスク評価、内視鏡監視間隔の決定
評価しないもの 現在の胃癌の有無そのもの(診断ではなくリスク層別)

日本で開発された胃癌スクリーニングの枠組みで、血清H. pylori抗体と法を組み合わせ、内視鏡を用いずに採血だけでハイリスク集団を絞り込む目的で考案された1。・の範囲や家族歴とあわせて内視鏡監視間隔を個別化するという考え方の土台になる。

構成要素と配点

⭐ 点数を積み上げる方式ではなく、2つの血清検査それぞれの陽性・陰性を組み合わせた表そのものが判定基準になる。

H. pylori抗体

判定 代表的(Eプレート栄研H.抗体II、法)
陽性 10 U/mL以上
陰性 3.0 U/mL未満

⚠️ 3.0〜9.9 U/mLは「陰性高値」帯と呼ばれ、現感染・既感染例が高率に混在する2。

⚠️ このはキットに固有のもので、国内の主流キットは既に入れ替わっている。 日本ヘリコバクター学会の2024年版ガイドラインは、2016年版の発行時には法のEプレートが最も使用されていたが、その後より簡便な法が急速に普及したとし、現在は法(主にH.-「生研」)が多くの施設で採用されていると述べている(同キットのを10.0〜10.8 U/mLとしたときの感度86〜98.1%・特異度78.0〜95%・82.2〜92.8%)3。⚠️ 「陰性高値」はEプレートに固有の考え方である——同ガイドラインは、Eプレートと同じ抗原を用いるLZテスト以外の国産法キットについては陰性高値を設定する必要がなく、むしろ設定すると多くの既感染者・未感染者を陽性と判定してしまうとしている3。どのキットで測ったかを確かめないままA〜D群へ割り付けない。 詳細はH. pylori抗体ノートに譲る。

法(PG法)

判定 代表的
陽性 PGI 70 ng/mL以下 かつ PGI/PGII比 3.0以下
陰性 上記条件を満たさない

は測定キット・により調整が必要で、施設間で一定でない1。詳細はノートに譲る。

A〜D群への割り付け

H. pylori抗体 PG法 群
陰性 陰性 A群
陽性 陰性 B群
陽性 陽性 C群
陰性 陽性 D群

⚠️ D群(H. pylori抗体陰性・PG陽性)は「未感染なのに萎縮が進んでいる」という一見矛盾した組み合わせに見えるが、実際は高度萎縮の進行に伴い抗原刺激が減り、が自然に消失した既感染例を含む1。

解釈とカットオフ

群 (A群基準) 想定される病態像
A群 1(基準) 未感染・萎縮なしと想定される群。最低リスクだが既感染例が紛れる(後述の偽A群)
B群 9.8 現感染・萎縮は軽度
C群 19.6 現感染・萎縮が進行
D群 120.4 既感染・高度萎縮。最高リスク

和歌山県の職域集団5,209人を追跡した成績では、A群を基準としたがB群9.8、C群19.6、D群120.4と、群を追うごとにに上昇する1。

⚠️ この表の観察期間は出典の中で食い違っている。 表題は eight-year periods (1994–2002) と8年を掲げているのに、同じ表の追跡期間の行は群ごとに9.3〜10.0年である。同じ表に載る人年をで割ると(A群なら9,487人年÷966人)約9.8年になり、表題の8年ではなく追跡期間の行と一致する。本ノートは追跡期間を「約9.5〜10年」と読み、表題の「8年」は採らない1。

💡 抗体が境界域の群は、元の成績では別に立てられていた。 この追跡表は4群ではなく6群で、H. pylori抗体が境界域(±)でPG法陰性のB′群(2.1)と、抗体境界域でPG法陽性のC′群(同54.8)を別枠に置いている1。上記の「陰性高値」帯を単純に陰性と読み替えると、この2群がA群・D群へ紛れ込む。

⭐ 群ごとの内視鏡間隔まで具体的に示されている。 提唱者は、ABC法によるスクリーニング自体は毎年である必要はなく5年程度の間隔でよいとしたうえで、内視鏡検査をB群は少なくとも3年に1回、C群は少なくとも2年に1回、D群は毎年行い、A群は対象から除くことを推奨している1。⚠️ ただし同じ論文が自施設の運用として記しているのは「A群は5年に1回、B群3年、C群2年、D群毎年」で、A群を「除外する」のか「最長間隔で追う」のかは同一資料の中で揺れている。著者自身、ABC法を一次スクリーニングへ採用するうえでの問題はとくにA群からH. pylori感染者を除くことだと述べており、この揺れはそこに由来する1。

💡 除外の理由は「A群のリスクがゼロだから」ではない。 同論文は除外の根拠を一貫して効率(from the viewpoint of efficiency)と、二次内視鏡検査を担う人員不足の解消に置いている1。⚠️ この揺れには後続の資料が答えを出している——日本消化器がん検診学会の見解と、A群を内視鏡的萎縮の有無で二分したは、どちらも「A群を画像検査から外さない」側に立つ(→「限界と使ってはいけない場面」)。

限界と使ってはいけない場面

⚠️ 診断ではなくリスク層別である。 はその時点で胃癌の有無を判定する検査ではない。C群・D群であっても内視鏡で異常が見つからない受診者が大半であり、群の判定だけで胃癌の診断・除外はできない。

⚠️ 日本のでは推奨されていない。 「有効性評価に基づく胃がん検診ガイドライン2014年版」にもとづく推奨で、・任意型検診として実施を推奨されているのは胃X線検査と胃内視鏡検査の2つだけである(いずれも検査対象は50歳以上が望ましく、内視鏡は検診間隔を2〜3年とすることが可能)4。

⚠️ 「推奨しない」の中身は検査ごとに違う。 単独法・H. pylori抗体単独法については、死亡率減少効果を示唆する観察研究は複数あるが研究の質が低く、確定的な判断が得られなかったとされる。これに対しABC検査(法とH. pylori抗体検査の併用法)は、死亡率減少効果を検討した研究がそもそも報告されていない——「証拠の質が低い」のではなく「証拠が無い」である。⭐ どちらも禁止ではない。 任意型検診として実施する場合には、死亡率減少効果が不明であることと、不利益(偽陰性・偽陽性・過剰診断)および今後の検診の必要性について適切な説明を行う必要がある、という書き方になっている4。⚠️ 日本ヘリコバクター学会の2024年版ガイドラインも、無症候者への血清H. pylori抗体・によるリスク層別検査について「胃がん予防効果が期待されるが、エビデンス不足のため現時点での推奨提示は困難である」として、推奨の提示そのものを見送っている5。

⚠️ 血清検査そのものを毎年繰り返さない。 同ガイドライン(第3章「胃がん予防・成人」)は、胃癌予防のために血清H. pylori抗体検査および検査を毎年行うことは推奨しないとする(推奨の強さ「強い」、合意率85.0%、エビデンスの確実性C)。未感染者のの長期変化を追跡した研究が無く陰性域での抗体値の高低の意味が不明であること、除菌成功後のの変遷が発癌に関連するという報告が無いこと、PGI/PGII比は年齢や感染状況で変化しうるが胃癌リスクとの関連を示した研究が無いことが理由で、ABC検診として併用する場合も同じである5。⭐ ただし「一切測るな」ではない——内視鏡所見などからH. pylori感染を疑う場合に、感染を評価する目的で複数回測定することは否定されていない5。

⚠️ 国・集団によって評価が割れる。 の胃ガイドライン(2025年)は、H. pylori抗体・I/II・などを非侵襲的の候補に挙げたうえで、⭐ とくに米国ではスクリーニング・監視における有効性を示す決定的な研究が無く、上部内視鏡を置き換えうるものも、低リスクと高リスクを振り分けうるものも存在しないとしている6。⚠️ これは「が誤りだ」という主張ではない——同ガイドラインは米国外の集団でのの進行予測能を mixed data と評したうえで、推奨3を「米国では、胃または胃癌のスクリーニング・監視を目的として非侵襲的を用いないことを提案する」と、射程を米国に限って書いている。⚠️ 推奨の強さも潰さない——エビデンスの質は「非常に低い」、推奨の強さは「弱い(条件付き)」である6。日本の成績を否定したものではない。

⚠️ 除菌歴・服用は判定を狂わせる。 除菌に成功するとPGI/PGII比は上昇方向へ動く一方、H. pylori抗体は陽性のまま年単位で残るため、除菌前後で同じ基準を当てはめると群がずれる。判定前にはをし、除菌歴を確認する。提唱者は判定に先立って必ず確認すべき事項として、H. pylori除菌の既往・消化性潰瘍の治療歴(とくに)・胃切除の既往・の4点を挙げている1。⚠️ 胃切除の既往とは見落としやすい。

⚠️ A群に感染者が紛れることが実務上の最大の問題である。 提唱者は、A群からH. pylori感染者を除くための目安として、①除菌歴のが最も重要で、血清PG値が大きく変化しているかPGI・PGIIがともに低ければ除菌歴を疑う、②PGII 15 ng/mL以上の高値はH. pylori感染に伴う組織学的胃炎の存在を反映する可能性が高いのでH. pyloriの有無を確認する、③PGI 35 ng/mL以下かつPGI/PGII比3.1〜4.0は既感染またはの可能性を示唆する、の3点を挙げている1。また*H. pylori*抗体の力価はキットによって大きく変動するため、日本株を用い域を持たないキットの使用が勧められている(PG値にはキット間の変動が無い)1。

⚠️ A群を画像検査から外さない——これが日本の学会見解である。 日本消化器がん検診学会は、を受けた人に向けた見解で「胃がんリスク評価のA群(健康な胃)の判定の中には、胃がんも胃炎も紛れ込んでいます」と明記し、実際のA群には以前にH. pyloriに感染していた人や、現在も感染が継続している人が一部含まれてしまうこと、胃がんの10%前後がA群に分類されたという報告があることを理由に、A群に分類された人も一度は胃内視鏡検査か胃X線検査などの画像検査を受けることを推奨するとしている7。⚠️ 同じ見解は、リスク評価は胃癌の診断ではないのでB・C・D群と判定された人は血液検査だけで終わらせず定期的に胃がん検診を受けること、除菌後もリスクはゼロにならないので定期的な検診を勧めることも述べている7。⭐ つまり同学会は、提唱者の「A群は内視鏡の対象から除く」を採っていない。

⚠️ 割れを解く鍵は内視鏡的萎縮の有無である——「真A群」と「偽A群」。 広島大学病院の(1,507例)は、のA群を内視鏡的萎縮の有無で真A群273例(萎縮なし)と偽A群87例(萎縮あり)に二分した。A群360例の約24%が偽A群であり、追跡中の胃癌発生は真A群0例に対し偽A群2例(B群7例・C群12例・D群3例)だった。⭐ A群全体と他群では胃癌発生に有意差がつかなかった(log-rank P = 0.058)のに対し、真A群と他群では有意差がついた(P = 0.017)8。💡 「A群だから低リスク」は成り立たず、「血清が両方陰性で、かつ内視鏡的萎縮も無い」まで絞って初めて低リスク群になる。 同研究では抗体陰性の201例(偽A群87例とD群114例)のうち168例(83.6%)が萎縮を示しており、抗体陰性は萎縮が無いことを意味しない8。⚠️ それでも「真A群なら内視鏡フォローは不要」とまではできないと著者らは明記しており、真A群の内視鏡間隔をどう置くかは今後の課題として残されている。単一施設ので、内視鏡的萎縮の判定が間で異なりえた点も限界に挙げられている8。

⚠️ ・はPG法陰性でも否定できない。 PG法は主に優位萎縮を反映する検査であり、萎縮の乏しいにも生じうる・はPG法陰性、すなわちA群やB群に紛れうる。

まとめ

  • はH. pylori抗体と法の陽性・陰性の組み合わせでA〜D群に分ける胃癌リスク層別の枠組みで、点数を積み上げる方式ではない。
  • A群(両陰性、最低リスク)を基準に、職域集団を約9.5〜10年追跡したはB群9.8、C群19.6、D群120.4とに上昇する(同じ表の表題は「8年」と食い違っており、人年から計算できる追跡期間の行を採る)。
  • D群(H. pylori抗体陰性・PG陽性)は未感染ではなく、高度萎縮に伴いがした既感染例を含み、A〜D群のうち最もリスクが高い。
  • 提唱者が示す内視鏡間隔はB群3年・C群2年・D群毎年で、A群は効率の観点から対象外とされていた(同じ論文の自施設運用ではA群5年で、資料内で揺れている)。⭐ 後続の資料は「外さない」側に立つ——日本消化器がん検診学会はA群にも一度は内視鏡またはX線の画像検査を受けることを推奨しており、内視鏡的萎縮のある「偽A群」がA群の約24%を占め胃癌もそこから出ることが示されている。
  • 血清検査自体を毎年繰り返すことは、ABC検診を含めて推奨されない(日本ヘリコバクター学会2024、強い推奨)。感染を疑う場面での複数回測定は否定されていない。
  • 診断ではなくリスク層別の検査であり、日本のでは推奨されていない(ABC検査は死亡率減少効果を検討した研究が報告されていない)。ただし任意型検診として、効果が不明であることと不利益を説明したうえで実施することは否定されていない。国・集団によって評価が割れる。
  • 除菌歴・消化性潰瘍の治療歴・胃切除の既往・は判定を狂わせ、・はPG法陰性でも否定できない。抗体のと「陰性高値」はキットに固有で、国内の主流は法から法へ移っている。

出典

  1. 1.Gastric cancer screening by combined assay for serum anti-Helicobacter pylori IgG antibody and serum pepsinogen levels — 'ABC method'(Proceedings of the Japan Academy, Series B(Miki K)・2011)PMC3171284のHTML全文を再取得して確認した。ABC分類のA〜D群の定義(H. pylori抗体陽性/陰性とPG法陽性/陰性の組み合わせ)、職域集団5,209人の追跡でのハザード比(A群を基準にB群9.8・C群19.6・D群120.4)。⚠️ 観察期間はこの表の中で食い違っており、表題は eight-year periods (1994–2002) と8年を掲げるのに追跡期間の行は群ごとに9.3〜10.0年で、同じ表の人年を人数で割ると(A群 9,487人年÷966人)約9.8年と追跡期間の行に一致する。コーパスでは約9.5〜10年を採る。⚠️ 同じ表は6群で、抗体境界域のB′群2.1・C′群54.8を別枠に置いている。D群には高度萎縮の進行に伴い抗体価が自然消失した既感染例が混在しうること、内視鏡は「at least once every 3 years for group B, at least once every 2 years for group C, and annually for group D, and that group A be excluded from the examination」とされる一方、同論文の自施設運用の記述ではA群にも5年に1回を勧めており同一資料内で揺れていること、判定前にH. pylori除菌歴・消化性潰瘍の治療歴(とくにPPI)・胃切除の既往・腎機能障害の4点の問診が必須とされること、A群からH. pylori感染者を除くための目安(PGII 15 µg/L以上、PGI 35 µg/L以下かつPGI/II比3.1〜4.0)も確認した閲覧 2026-09-08
  2. 2.胃がんリスク評価に資する抗体法適正化に関する多施設研究(日本ヘリコバクター学会 胃がんリスク評価に資する抗体法適正化委員会・2018)国内で最も汎用される「Eプレート栄研H.ピロリ抗体II」の代表的カットオフ(10 U/mL以上を陽性、3.0 U/mL未満を陰性)と、その間の3.0〜9.9 U/mLが「陰性高値」帯として現感染・既感染例を高率に含むことを確認した閲覧 2026-08-10
  3. 3.H. pylori感染の診断と治療のガイドライン2024 第1章「診断」(日本ヘリコバクター学会・2024)PDF全文をpdftotextで抽出して確認した。BQ1-8の解説が、2016年版ガイドライン発行時にはEIA法のEプレート(栄研化学)が診断精度も高く最も使用されていたが、その後測定が簡便なラテックス法が急速に普及したと述べること。CQ1-2の解説が、現在はラテックス法、主にH.ピロリ-ラテックス「生研」(Denka Lx)が多くの施設で採用されているとし、同キットのカットオフ値を10.0〜10.8 U/mLとした場合の感度86〜98.1%・特異度78.0〜95%・正診率82.2〜92.8%を示すこと。⭐ BQ1-8が、Eプレートと同じ抗原を用いるラテックス法のLZテストは同一のカットオフでは偽陽性が多く、LZテスト以外の国産ラテックス法キットについてはEプレートで議論されてきた「陰性高値」を設定する必要はなくむしろ設定することにより多くの既感染者・未感染者を陽性と判断してしまうと述べること。CQ1-2のステートメントが「血清抗体陽性はH. pylori現感染のみを反映するものではないため,その結果のみで除菌治療を行わないことを推奨する」(推奨の強さ「強い」、合意率91.3%、エビデンスの確実性B)であること閲覧 2026-09-08
  4. 4.胃がん検診について(有効性評価に基づく胃がん検診ガイドライン2014年版にもとづく推奨)(国立がん研究センター(がん情報サービス)・2014)2026-09-08に本文を再取得した(ページの更新・確認日は2019年06月11日、内容は「有効性評価に基づく胃がん検診ガイドライン2014年版」にもとづく推奨)。対策型検診・任意型検診として実施を推奨されるのは胃X線検査と胃内視鏡検査の2つで、いずれも検査対象は50歳以上が望ましく内視鏡は検診間隔を2〜3年とすることが可能であること、ペプシノゲン単独法・H. pylori抗体単独法は「複数の観察研究において死亡率減少効果が示唆されましたが、研究の質が低いため、確定的な判断は得られませんでした」として対策型検診には推奨しないこと、⭐ 一方でABC検査(併用法)については「死亡率減少効果を検討した研究は報告されていません」であって証拠の質の問題ではないこと、いずれも任意型検診として実施する場合には死亡率減少効果が不明であることと不利益および今後の検診の必要性の説明を要するとしていることを確認した閲覧 2026-09-08
  5. 5.H. pylori感染の診断と治療のガイドライン2024 第3章「胃がん予防・成人」(日本ヘリコバクター学会・2024)PDF全文をpdftotextで抽出して確認した。⭐ CQ3-2のステートメントは「胃癌予防のために、血清H. pylori抗体検査およびペプシノゲン検査を毎年行うことは推奨しない」で、推奨の強さ「強い」(合意率85.0%)、エビデンスの確実性C。解説は、H. pylori未感染者の抗体の長期変化を追跡した研究が存在せず陰性域での抗体値の高低の意味が明らかでないこと、除菌成功後の抗体価の変遷が発癌に関連するという報告が存在しないこと、PGI/II比は年齢やH. pylori感染状況で変化しうるが胃癌リスクとの関連を指摘した研究が無いことを挙げ、胃がんリスク検診(ABC検診)を含めて毎年測定することは推奨しないと結論する。⚠️ ただし内視鏡検査などでH. pylori感染を疑う場合に感染を評価する目的で複数回測定することは否定されないと明記している。CQ3-1は無症候者への血清H. pylori抗体とペプシノゲンによるリスク層別検査について「胃がん予防効果が期待されるが、エビデンス不足のため現時点での推奨提示は困難である」として推奨の提示そのものを見送り、有害事象として実際は高リスク者でありながら低リスク群に分類された個人から胃がんが発生していることが議論されているとしたうえで、血清によるリスク層別化検査と内視鏡画像診断との組み合わせによりより精度の高いリスク層別化が可能になると期待されると述べる閲覧 2026-09-08
  6. 6.ACG Clinical Guideline: Diagnosis and Management of Gastric Premalignant Conditions(American College of Gastroenterology・2025)PMC13166553のHTML全文(ブラウザUA付きcurl。Europe PMCは isOpenAccess N)で確認した。非侵襲的バイオマーカーの候補として「H. pylori IgG, H. pylori CagA or VacA (strain specific virulence factors), pepsinogen I, pepsinogen II, gastrin, gastrin-17, C reactive protein, migration inhibitory factor 1 (MIF-1), trefoil factor family 3, (TFF-3), reprimo, or a combination of these」を列挙したうえで、⭐ 「Overall, and particularly in the U.S., definitive studies are lacking regarding efficacy of non-invasive biomarkers for the purpose of screening or surveillance for GPMC and GC」とし、エビデンスの検討に基づき「non-invasive biomarkers are lacking that would 1) replace upper endoscopy or 2) serve as a method to discriminate subjects at low versus high-risk of GPMC, GPMC progression, or GC and warrant referral for upper endoscopy」と結論していること、胃前癌病変のある患者では組織型・重症度によらず「tested for H. pylori using non-serologic methods」と非血清学的検査での検査を求めること、米国の高リスク集団に対する上部内視鏡スクリーニングについては推奨を出すに足る根拠が無いとすることを確認した。⚠️ 米国外の集団では血清バイオマーカー(ペプシノゲンなど)の前癌病変から胃癌への進行の予測価値について「mixed data」と述べており、否定で閉じてはいない。推奨3は「We suggest against the use of noninvasive biomarkers for the purpose of GPMC or GC screening or surveillance in the US」で、エビデンスの質 very low・conditional recommendation(弱い推奨)と付されていることも確認した。閲覧 2026-09-08
  7. 7.血液による胃がんリスク評価(いわゆる「ABC分類」)を受けられた方へのご注意(日本消化器がん検診学会・2016)2026-09-08に本文を取得した(学会サイトの一覧では2016年10月の掲載)。胃がんリスク評価では胃がんにかかっているかどうかの診断はできず、胃がんの診断には胃内視鏡検査か胃X線検査という画像診断が必要であること、胃がんリスクがある(B・C・D群)と判定された人は定期的に胃がん検診を受け血液検査だけで終わらせないこと、⭐ 「胃がんリスク評価のA群(健康な胃)の判定の中には,胃がんも胃炎も紛れ込んでいます。一度は胃がん検診を受けられることをお勧めします。」として、実際のA群には以前にH. pyloriに感染していた人や現在も感染が継続している人が一部含まれてしまうこと、胃がんの患者のリスク評価では胃がんの10%前後がA群に分類されたという報告があること、したがってA群に分類された人も一度は胃内視鏡検査か胃X線検査などの画像検査を受けることを推奨すること、除菌治療を受けた人も胃がんにならないわけではなく定期的な胃がん検診を勧めることを確認した閲覧 2026-09-08
  8. 8.Identification of Helicobacter pylori-related gastric cancer risk using serological gastritis markers and endoscopic findings: a large-scale retrospective cohort study(BMC Gastroenterology(Nagasaki N ら、広島大学)・2022)Europe PMCのfullTextXML(PMC9210732)で全文を取得して確認した。広島大学病院で1990〜2014年に採血と内視鏡検査を受けた症例のうち、採血の3か月より後に内視鏡検査を受けた1,507例(平均62.5歳、男985・女522)の後ろ向きコホート。ABC分類のA群を内視鏡的萎縮の有無で真A群273例(萎縮なし)と偽A群87例(萎縮あり)に二分し、B群518例・C群515例・D群114例と比較した。A群360例の約24%が偽A群であり、追跡中の胃癌発生は真A群0例・偽A群2例・B群7例・C群12例・D群3例。A群と他群の比較では胃癌発生に有意差が無かった(log-rank P = 0.058)のに対し、真A群と他群の比較では有意差がついた(P = 0.017)。抗体陰性の201例(偽A群87例とD群114例)のうち168例(83.6%)が開放型萎縮を示した。⚠️ 著者らは、真A群でも内視鏡フォローが不要とまでは結論できず、真A群の内視鏡間隔の決定は今後の課題であるとし、ABC分類のA群も内視鏡的萎縮の評価を受けるべきで偽A群は他群と同様に年1回の検査を要する可能性があると述べている。日本消化器がん検診学会がA群にも内視鏡検診を勧めていること、自施設の先行研究で胃癌患者の約10%がA群に分類されたことにも言及している。抗体はEプレート「栄研」のEIA法でカットオフ3 U/mLを用いた単一施設の後ろ向き研究であり、内視鏡的萎縮の判定が術者間で異なりえたことを限界として挙げている閲覧 2026-09-08