疾患ノート一覧へ

Disease Atlas · 腎・泌尿器 · 疾患

腎盂尿管移行部閉塞

Ureteropelvic junction obstruction

別名
UPJOUPJ閉塞腎盂尿管移行部狭窄
臓器系
腎・泌尿器
科目
UrologyPediatrics
トピック
泌尿器科学 U-02:腎臓・尿管・膀胱の発生異常小児科 3-22:先天性腎尿路異常
合併症
尿路感染症尿路結石症慢性腎臓病
症状
側腹部痛腹痛腹部腫瘤血尿嘔吐発熱
画像所見
水腎症
元疾患
馬蹄腎

🧠 全体像:UPJOは、腎盂から尿管への尿の通過が移行部で妨げられる病態で、小児水腎症の最も頻度の高い原因である1。先天性(尿管低形成による内因性狭窄が最多、次いで交差血管による)と、後天性(結石・腫瘍・・など)の2系統で原因を整理する。診断の核心は「拡張=閉塞」ではないという点にあり、で機能的な閉塞かどうかを確かめてから手術適応(分腎機能40%未満など)を判断する。標準術式はAnderson-Hynes性で、開腹・腹腔鏡・ロボット支援いずれも95%超の高い成功率を示す。

疫学と原因

出生およそ1,000〜1,500人に1例で、男児が女児の約2倍、左側が右側の約2倍の頻度である。両側性は10〜40%にみられる1。

flowchart TD
    A["UPJOの原因"] --> B["先天性(最多)"]
    A --> C["後天性"]
    B --> B1["尿管低形成による内因性狭窄<br>(最多)"]
    B --> B2["交差血管による<span class='jp-term jp-term-diagram' title='extrinsic compression'>外因性圧迫</span><br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='endovascular/surgical intervention'>外科的治療</span>を要した症候性小児の約50%)"]
    B --> B3["尿管の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='high'>高位</span>挿入・腎<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Malrotation'>回転異常</span>・<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='duplex kidney'>重複腎</span><span class='jp-term jp-term-diagram' title='lower pole (of kidney)'>下極</span>の障害(まれ)"]
    C --> C1["外因性:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='retroperitoneal fibrosis'>後腹膜線維症</span>・<br>リンパ節腫大・腫瘤"]
    C --> C2["内因性:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='urolithiasis'>尿路結石</span>・腫瘍・<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='ureteroscopy'>尿管鏡</span>検査後の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='iatrogenic injury'>医原性損傷</span>"]

⭐ 交差血管は「原因」と「増悪因子」の両方でありうる。 を要した症候性の小児例では、約50%で交差血管によるが確認されている1。手術で交差血管を温存できる術式(後述のAnderson-Hynes法)が標準になっているのはこのためである。

💡 では、がの起始に引っかかって・前方回旋不全のまま固定されるため尿管がの前面を回り込んで走行し、この解剖そのものがUPJOを起こしやすくする。の合併症のうちUPJOは最も頻度が高く、最大33%に及ぶ。

病態生理

移行部のが減少しに置き換わることでぜん動運動が低下する。産生の増加に伴う単球浸潤が生じ、・が低下する1。

臨床像

年齢層 典型像
新生児 多くは無症状で、の水腎症所見から発見される1
幼児・小児 間欠的な側腹部痛、反復する尿路感染症、嘔吐、発熱、血尿、腹部腫瘤1
成人 利尿薬摂取後に誘発される側腹部痛(一過性に尿量が増えて移行部を通過しきれないため)1

診断——「拡張」と「閉塞」を区別する

⭐ 水腎症(拡張)があること自体は閉塞の証明にならない。 出生前に検出された水腎症の約20%は出生後に自然軽快する1。超音波はSFU(Society for Fetal Urology)分類で水腎症の程度を段階付けるが、これは形態の評価であって機能の評価ではない。

⭐ 機能的な閉塞の有無はで判定する。 テクネシウム99mMAG-3を用いたが標準的な検査で、利尿薬負荷後の半減期クリアランス(T1/2)により次のように判定する1。

T1/2(利尿薬負荷後) 判定
10分未満 閉塞なし
10〜20分
20分超 高度閉塞

分腎機能が40%未満になると、が著明と判断される1。

💡 レノグラムでな症例には、Whitakerテスト(灌流試験)を追加する。 腎盂へ直接カテーテルを留置して一定流量で灌流し、の上昇から機能的な閉塞の有無を評価する、より侵襲的な検査である2。

治療

flowchart TD
    A["UPJOと診断"] --> B{"生後18か月未満かつ<br>分腎機能40%以上か"}
    B -->|"はい"| C["保存的経過観察<br>(連続的な画像・機能評価)"]
    B -->|"いいえ、または悪化"| D["手術適応<br>(分腎機能40%未満・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='recurrent infection'>反復感染</span>・<br>症候性閉塞・両側高度UPJO)"]
    C --> E{"分腎機能の明らかな悪化・<br>症状の出現"}
    E -->|"あり"| D
    D --> F["Anderson-Hynes<span class='jp-term jp-term-diagram' title='avulsion'>離断</span>性<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pyeloplasty'>腎盂形成術</span><br>(開腹・腹腔鏡・ロボット支援)"]
    F --> G{"短い狭窄の再発"}
    G -->|"あり"| H["内視鏡的腎盂切開術<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='salvage therapy (rescue treatment)'>救済治療</span>)"]
  • :生後18か月未満で分腎機能40%以上であれば経過観察が推奨され、およそ50%の小児が手術を要さず保存的に管理できる1。
  • 手術適応:分腎機能40%未満、反復尿路感染症、症候性の閉塞、両側性の高度UPJOである1。
  • 標準術式はAnderson-Hynes性で、狭窄部を切除して再吻合し、交差血管を温存できることが利点である1。
  • ブラジル5施設・小児322例の前向き比較研究では、開腹・腹腔鏡・ロボット支援のいずれも成功率95%超で有意差が無く、・も3群間で同等であった。手術時間は開腹が最短(中央値110.5分)、入院期間はロボット支援が最短(中央値1日)という trade-off があり、(腹腔鏡・ロボット支援)は1歳未満の乳幼児にも安全に施行できるとしている3。
  • 内視鏡的腎盂切開術は短い狭窄部位に対するとして位置づけられる1。

⚠️ 未治療のまま放置すると、反復する尿路感染症・の形成・進行性の腎機能低下()につながりうる1。

予後

SFU水腎症分類のGrade別に自然軽快率が大きく異なる——Grade Iはおよそ50%が自然軽快するのに対し、Grade II・III・IVはそれぞれ36%・16%・3%にとどまる1。⭐ 拡張のが重いほど自然軽快の見込みが低い、というな関係を持つ。

術後合併症としては尿路感染・・再発閉塞がある1。

まとめ

  • UPJOは小児水腎症の最も一般的な原因で、出生1,000〜1,500人に1例、男児・左側に多い(両側性10〜40%)。
  • 原因は先天性(内因性狭窄が最多、次いで交差血管の)と後天性(結石・腫瘍・・)に分ける。
  • ⭐ 水腎症(拡張)とは別物である。 出生前水腎症の約20%は自然軽快する。機能評価は(T1/2が20分超で高度閉塞、分腎機能40%未満で著明)で行い、例にはWhitakerテストを追加する。
  • (生後18か月未満・分腎機能40%以上)で約半数は手術不要。手術適応は分腎機能40%未満・・症候性・両側高度。
  • 標準術式はAnderson-Hynes性(交差血管を温存できる)。開腹・腹腔鏡・ロボット支援いずれも成功率95%超で同等だが、手術時間は開腹が短く、入院期間はロボット支援が短い。
  • SFU grade が重いほど自然軽快率は低下する(Grade I 約50%→Grade IV 3%)。

出典

  1. 1.Ureteropelvic Junction Obstruction(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2023)UPJOが腎盂から尿管への尿流を障害し小児水腎症の最も一般的な原因であること、発生頻度がおよそ出生1,000〜1,500人に1例で男児が女児の約2倍・左側が右側の約2倍の頻度で罹患し両側性が10〜40%にみられること、原因は先天性(尿管低形成による内因性狭窄が最多、外科的治療を要した症候性小児の約50%で交差血管による外因性圧迫を合併、尿管の高位挿入、まれに腎回転異常・重複腎下極の障害)と後天性(外因性の後腹膜線維症・リンパ節腫大・腫瘤、内因性の尿路結石・腫瘍・尿管鏡検査後の医原性損傷)に分けられること、病態生理として平滑筋線維の減少と線維性組織の増加によるぜん動機能低下、炎症性サイトカイン産生増加に伴う単球浸潤、腎血流量・糸球体濾過量の低下が生じること、臨床像が新生児では多くが無症状で出生前超音波で検出される一方、幼児・小児では間欠的側腹部痛・反復尿路感染症・嘔吐・発熱・血尿、成人では利尿薬摂取後に誘発される側腹部痛であること、診断は超音波で行いSFU分類で水腎症を段階付けし出生前に検出された水腎症の約20%は出生後に自然軽快すること、機能的評価にはテクネシウム99mMAG-3を用いた利尿レノグラムが標準で利尿剤負荷後の半減期クリアランス(T1/2)が10分未満は閉塞なし・10〜20分は判定不能・20分超は高度閉塞と判定し分腎機能40%未満は腎実質障害が著明と判断すること、治療は生後18か月未満かつ分腎機能40%以上であれば保存的経過観察が推奨されおよそ50%の小児が保存的に管理可能であること、外科的介入の適応が分腎機能40%未満・反復感染・症候性閉塞・両側性の高度UPJOであること、標準術式がAnderson-Hynes離断性腎盂形成術(交差血管を温存できる)であり内視鏡的腎盂切開術は短い狭窄部位に対する救済治療であること、ロボット支援腎盂形成術は短い入院期間・高い成功率・低い合併症率が報告されていること、SFU水腎症分類でGrade Iはおよそ50%が自然軽快しGrade II・III・IVはそれぞれ36%・16%・3%の軽快率にとどまること、合併症が反復感染・腎機能低下・結石形成、術後合併症が尿路感染・尿漏・再発閉塞であることを確認した。NCBIが直接取得できなかったためEurope PMCのbookXMLエンドポイント(NBK560740)で本文を取得した。閲覧 2026-09-07
  2. 2.The Whitaker test: 35 years on(BJU International・2010)Whitakerテストは、経皮的に腎盂へ小口径のカテーテルを留置して一定流量で灌流し腎盂内圧を測定する、より侵襲的な圧流動態検査であり、利尿レノグラムなど非侵襲的検査で判定不能だった症例、機能低下腎での閉塞疑い、陰性のレノグラムがある側腹部痛、間欠的閉塞の疑い、陽性レノグラムを伴う著明な拡張などに限定して用いるべきとされること。閲覧 2026-09-07
  3. 3.Multicenter comparative study of open, laparoscopic, and robotic pyeloplasty in the pediatric population for the treatment of ureteropelvic junction obstruction (UPJO)(International Braz J Urol・2022)ブラジル5施設による2014〜2018年の多施設前向きコホート研究(開腹式62例・腹腔鏡86例・ロボット支援174例、計322例の小児UPJO)で、いずれの術式もAnderson-Hynes離断性腎盂形成術を用いたこと、手術時間の中央値が開腹110.5分・腹腔鏡140分・ロボット支援179分で開腹が有意に短かったこと、入院期間の中央値が開腹5日・腹腔鏡3日・ロボット支援1日でロボット支援が有意に短かったこと、成功率はいずれも95%以上で3群間に有意差が無かったこと、合併症率・再手術率も3群間で同等であったこと、尿管ステント留置率が開腹35.5%に対し腹腔鏡96.5%・ロボット支援100%であったこと、低侵襲手術(腹腔鏡・ロボット支援)が1歳未満の乳幼児にも安全に施行できると結論していることを、SciELOで公開されている本文(PID S1677-55382022000600961)で確認した。既存トピックノート `topics/urology-y5/u-02-developmental-disorders-of-the-kidney-ureter-and-bladder.md` で使用済みのidを再利用したが、claimは本文を直接読んで書き直した。閲覧 2026-09-07