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Symptoms · Published

腹部腫瘤

Abdominal mass

別名
触知可能な腹部腫瘤palpable abdominal mass
臓器系
消化器
科目
Pediatrics
トピック
小児科学 1-02:小児の腹部腫瘤・腹部腫瘍
関連疾患
腎盂尿管移行部閉塞馬蹄腎肥厚性幽門狭窄症卵管卵巣膿瘍

🧠 全体像:腹部腫瘤はというより身体所見であり、「か」「圧痛はあるか」「可動性はあるか」「どの部位か」「患者の年齢は」の5つで鑑別の枠組みがほぼ決まる。同じ「右上腹部の腫瘤」でも、新生児と高齢者ではまったく別のがに来る。まず血管性・炎症性の緊急病態を除外してから、年齢・部位に応じた腫瘍性・非腫瘍性の鑑別へ進む。

定義と用語の整理

  • 「」は・触診で認識される限局した膨隆であり、必ずしもを意味しない。膿瘍、血腫、拡張した腸管、尿貯留、正常臓器の腫大(肝脾腫)もすべて腫瘤として触れる。
  • 「」とは区別する。膨満はびまん性で明確な輪郭を欠く(腹部膨満を参照)。

病態生理——触診の4つの評価軸

腫瘤を触れたときに確認すべき軸は4つで、それぞれが病態を絞り込む手がかりになる。

評価軸 示唆する病態
の有無 なら()を最優先で除外する
圧痛の有無 圧痛は炎症・虚血・出血を示唆し、無痛性腫瘤はより緩徐な腫瘍性病変を示唆する
可動性 周囲組織に固定していればを疑う
部位 発生臓器を絞り込む最初の手がかりになる

小児は腹壁が薄く臓器同士が近接するため触知感度が高い一方、正常な構造物を異常腫瘤と誤認しやすい1。

⚠️ は「触れなければ否定できる」わけではない。 生後2〜8週の乳児で〜右上腹部に触れる無圧痛の腫瘤はの古典的所見だが、43研究・乳児6,085例ので触診感度は10.0〜93.4%と幅広く、しかも時代とともに低下している2。・があれば腫瘤を触れなくても超音波へ進む。

⚠️ 緊急・見逃してはいけない病態

腫瘤の性状からを判定する。

所見 疑う病態
・圧痛を伴う腫瘤+腹痛・血圧低下 破裂/した。破裂例は50%以上が病院到着前に死亡し、90分以内の治療開始が推奨される3
だが無圧痛 未破裂の。触診では通常、無圧痛のとして触れる3
を伴う腫瘤 腹膜炎(消化管穿孔、破裂した卵巣腫瘤、を含む)1
硬く不整・深部に固定した腫瘤 悪性腫瘍を疑う所見。あるでは悪性群の62.5%に圧痛、60%に深部固定を認めた4
小児の進行性増大+全身症状(体重減少・発熱・) ・Wilms腫瘍などの悪性腫瘍

鑑別の進め方

flowchart TD
    A["腹部腫瘤を触知"] --> B{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pulsatile'>拍動性</span>か"}
    B -->|"はい"| C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vascular lesion'>血管性病変</span>を最優先で除外(造影CTまたは超音波)"]
    B -->|"いいえ"| D{"圧痛・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='peritoneal signs'>腹膜刺激徴候</span>があるか"}
    D -->|"はい"| E["炎症・穿孔・虚血・出血を疑い緊急画像へ"]
    D -->|"いいえ"| F{"年齢層は"}
    F -->|"乳児・小児"| G["先天性・腫瘍性病変を年齢別に鑑別(超音波を第一選択)"]
    F -->|"成人"| H["部位・性別から発生臓器を絞り、造影CTで確定診断へ"]

年齢層・部位別に代表的な原因を整理する。

年齢層 代表的な原因
新生児・乳児 ()、水腎症、
幼児(1〜6歳にピーク) ・Wilms腫瘍、
成人・骨盤部(女性) 、・腫瘍
成人・腸管由来 、
高齢者・

画像検査は超音波を第一選択とするが、精度は部位に依存する。ある研究では超音波は75.5%の症例で発生部位を同定できた一方、・胃・盲腸由来の腫瘤では精度が低下し、造影CTを追加すると89.3%で術前診断に寄与したと報告されている4。

まとめ

  • 腹部腫瘤は「」「圧痛」「可動性」「部位」「年齢」でと原因臓器を絞り込む身体所見であり、腫瘍を意味するとは限らない。
  • ・圧痛を伴う腫瘤はまず破裂/したを除外する。
  • 乳児のはの古典的所見だが、触診感度は幅広く、触れないことは除外根拠にならない。
  • 硬く不整で深部に固定した腫瘤、進行性増大+全身症状を伴う小児の腫瘤は悪性を疑う。
  • 画像は超音波を第一選択とし、部位により精度が落ちる場合は造影CTを追加する。

出典

  1. 1.Abdominal Examination(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2025)小児は腹壁が薄く臓器同士が近接するため腫瘤や臓器腫大の触知感度が高い一方、正常構造を異常所見と誤認しやすいこと、腹部触診で検出すべき緊急病態として腸閉塞・腹膜炎・破裂した異所性妊娠・破裂した腹部大動脈瘤が挙げられることを確認した閲覧 2026-09-05
  2. 2.Diagnostic accuracy of palpation and ultrasonography for diagnosing infantile hypertrophic pyloric stenosis: a systematic review and meta-analysis(The British Journal of Radiology・2022)43研究・乳児6,085例を統合したメタ解析で、肥厚性幽門狭窄症におけるオリーブ様腫瘤の触診感度が10.0〜93.4%と幅広く、経時的に低下していることを確認した閲覧 2026-09-05
  3. 3.Abdominal Aortic Aneurysm(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2025)腹部大動脈瘤の触診所見が通常「無圧痛の拍動性腹部腫瘤」であること、破裂例ではびまん性腹痛・腹部膨満を呈しショックで来院することが多く50%以上が病院到着前に死亡すること、破裂例では90分以内の治療開始(door-to-intervention time)が推奨されることを確認した閲覧 2026-09-05
  4. 4.Diagnostic and therapeutic approach to abdominal masses in a country with limited resources(BMC Surgery・2024)腹部腫瘤の後ろ向きコホート(平均年齢41.8歳、女性優位75.5%)で骨盤部腫瘤が32%を占め子宮筋腫35.8%・卵巣嚢腫11.3%・卵巣腫瘍9.4%が最多であったこと、悪性を示唆する所見として硬く不整な性状・62.5%での圧痛・60%での深部固定が報告されたこと、超音波が75.5%の症例で発生部位を同定した一方で膵尾部・胃・盲腸由来の腫瘤では精度が低く、造影CT追加により89.3%で術前診断に寄与したことを確認した閲覧 2026-09-05