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Disease Atlas · 腎・泌尿器 · 疾患

夜尿症

Nocturnal enuresis

臓器系
腎・泌尿器小児
科目
Pediatrics
トピック
小児科 3-31:夜尿症小児科 55:夜尿症、多尿・多飲
鑑別疾患
糖尿病尿路感染症閉塞性睡眠時無呼吸
関連疾患
尿失禁
治療薬
デスモプレシンイミプラミンオキシブチニン
症状
多飲
適応薬
イミプラミンデスモプレシン

🧠 全体像:は5歳以上の小児が睡眠中に間欠的な尿失禁を繰り返す状態で、本人の怠慢や意思の問題ではない。診療の分岐は「どの薬を出すか」ではなく、単一症候性か非単一症候性か・一次性か二次性かを見極め、便秘・睡眠時無呼吸などの併存症を先に治療することにある。積極的治療は6歳から。第一選択はアラームとの2つで、どちらを先に使うかは(があるか、最大排尿量が小さいか)か家族の希望で決め、片方が無効ならもう一方へ、単独でどちらも無効なら併用へ進む。が第二選択、が専門医の扱う第三選択という3段のとして覚える。

分類

分類 定義
一次性 6か月以上連続して乾燥した期間が一度もない
二次性 6か月以上乾燥していた後に再発
単一症候性 日中の・膀胱機能障害を伴わない
非単一症候性 頻尿、、日中尿失禁、などを伴う

は年齢とともに自然に低下するが、家族歴、の高さ、、、排尿・が関与する。では、だけでなく糖尿病、尿路感染症、便秘、などの新規発症を再評価する。ICCSが挙げる最も重要な併存症は、精神疾患(ADHDなど)・便秘・尿路感染症・いびきや睡眠時無呼吸である1。

評価

頻度、日中症状、飲水・排尿習慣、便通、いびき・無呼吸、発達・心理社会的変化、家族歴を確認し、排尿・日誌を用いる。(・多尿・体重減少、失禁、異常、反復尿路感染症、いびき・無呼吸)があれば、それぞれ糖尿病・/・睡眠時無呼吸などを検索する。典型的な一次性単一症候性では画像・血液検査は不要である1。

flowchart TD
    A["5歳以上の反復<span class='jp-term jp-term-diagram' title='nocturnal enuresis'>夜尿</span>"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='warning sign (red flag)'>警告所見</span>・日中症状・便秘を確認"]
    B --> C["日中症状あり"]
    C --> D["非単一症候性として<span class='jp-term jp-term-diagram' title='voiding dysfunction'>排尿機能障害</span>を先に評価"]
    B --> E["便秘あり"]
    E --> F["便秘治療を先行"]
    B --> G["単一症候性・一次性"]
    G --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lifestyle advice'>生活指導</span>(飲水・排尿習慣、罰を与えない)"]
    H --> I["第一選択:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='nocturnal enuresis'>夜尿</span>アラームまたは<span class='jp-term jp-term-diagram' title='desmopressin'>デスモプレシン</span><br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bladder diary'>排尿日誌</span>の所見または家族の希望で選ぶ)"]
    I --> J["無効ならもう一方へ切り替え"]
    J --> K["どちらも単独で無効なら2つを併用"]
    K --> L["第二選択:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='anticholinergics'>抗コリン薬</span><br>(便秘・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='residual urine (post-void residual)'>残尿</span>を除外してから)"]
    L --> M["第三選択:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='imipramine'>イミプラミン</span><br>(専門医。心毒性のスクリーニングを先に)"]

治療

積極的治療は6歳から推奨される。まず病態とを説明し、日中は十分に飲水、就寝前はを避け、日中のと就寝前排尿、便秘治療を行う。夜間に繰り返し起こすだけの方法や罰は勧めない1。

第一選択をどちらから始めるか

単一症候性の第一選択はアラームとの2つで、どちらもはIaである。ICCSは、どちらから始めるかの決め方を2通り示している1。

  • 戦略A(予後因子で決める):でと昼間の1回排尿量を測る。があり昼間の排尿量が正常なら、が正常で最大排尿量が低ければアラームを選ぶ。と最大排尿量の低下(推定の65〜70%未満)が両方あれば、初めから併用を検討してよい。
  • 戦略B(家族が選ぶ):両者の・短所を説明したうえで家族に選んでもらう。アラームへのが高い家族はアラームを選ぶ。

💡 どちらの戦略でも、先に選んだほうで乾かなければもう一方を提供し、単独でどちらも無効なら2つを併用する1。日本のガイドラインの診療アルゴリズムも「 → または(切り替え可)→ 両者の併用 → またはの併用 → 併存症の精査目的にへ相談」という同じ順序を採る2。

治療の段階

段階 治療 位置づけ 注意点
第一選択 アラーム 長期的な治癒を目指す。成功率は50〜70%で、した児の多くは治癒に至る 6週間経っても進歩の徴候(濡れる範囲の縮小、乾いた夜)が無ければ中止する。進歩があれば14夜連続で乾くまで続ける。毎晩欠かさず使い、鳴ったら親がすぐ起こすところまでが治療である
第一選択 速い効果が必要な場面(宿泊行事など)。服用中は約1/3が確実に乾き、1/3は無効、1/3は中間の反応 唯一の禁忌は()。無効な児に1〜2週間を超えて続ける正当性は無い。によるを避けるため、服薬1時間前から8時間後までの飲水を240 mL以内、または就寝前1時間の飲水を200 mL以内に制限する
第二選択 (など) ()を標的とし、と併用することが多い ⚠️ 開始前に便秘とを除外または治療する(があれば禁忌)。小児で問題になるのは便秘・(尿路感染のリスク)・で、は3〜6か月以内に一度測る。⚠️ 日本ではに対する保険適用が無い
第三選択 ・アラーム・がいずれも無効または禁忌だった場合に専門医が用いる 心毒性が使用を制限してきた。下記の⚠️を参照

⭐ アラームとの使い分けは「 vs 持続性」で覚える。 治療中の改善(14夜連続乾燥の達成)では両者に大差ない可能性があるが、治療終了後も効果を維持できる割合はアラームの方が高い可能性があり、有害事象もアラームの方が少ない可能性が高い34。

⚠️ は第三選択であって、第一選択の薬物療法ではない。 ICCSは、・アラーム・がいずれも無効または禁忌であった場合に専門医が用いる第三選択と位置づけ、治療抵抗性の児の30〜50%に効果が期待でき、を加えるとその割合は上がるとする。用量は25〜50 mgで、大きいほうの用量は9歳を超える小児または低用量が無効で副作用が無い場合に用い、就寝の約1時間前に投与する。効果判定は1か月後に行い、しても耐性が生じやすいので3か月ごとに2週間のを挟むことが一案として挙げられる(個別化が要る)。中止時は半量にして1〜2週間続けてから止める。臨床で最も多く問題になる副作用は気分の変動と悪心である1。も「を第一選択に用いない」「三環系を使うなら」「他の全治療に反応せず、の管理に精通した医療者の評価を受けた小児で検討する」と3段の推奨に分け、初回コースは3か月・反復コースでは3か月ごとの医学的再評価・中止時はとし、あわせて3か月のコース後には3人に2人以上が再発することを家族に伝えるよう求めている5。日本のガイドラインもCQ8で「,,その両者による併用療法で効果が得られない場合には,を提案する.」(推奨グレード2A)としている2。

⚠️ 心毒性のスクリーニングは資料ごとに書き方が違うので、どの枠で診ているかを意識する。 NICEは早期のの家族歴がある小児と心疾患を示す所見がある小児でを禁忌とする5。ICCSは、本人に・の既往があるかの家族歴があれば長時間心電図で評価するまで投与してはならないとし(不安定な不整脈=QT延長症候群のある小児では致死的反応が起こりうる)、家族にを施錠保管させることも求める1。日本のガイドラインは、開始前に・失神の既往と不整脈・をし、気になる所見があれば心電図でQT延長が無いことを確認するとしている2。

⚠️ との併用は、資料によって扱いが正反対である。 は「との併用を行わない」と明記する5。一方、日本のガイドラインは併用療法が無効だった段階でまたはの併用を置き2、ICCSも治療抵抗例では専門医の判断で・アラーム・・・抗うつ薬を組み合わせるがありうるとする1。

反応不十分なら、診断の見直し、服薬・アラームの実施状況、便秘、睡眠時無呼吸、日中症状を再評価し、小児泌尿器科・腎臓科へ紹介する。ICCSは治療抵抗例にを含むと、・による非侵襲的な尿流動態評価を求める(病的な尿流曲線や反復してがあれば、解剖学的閉塞やの除外が要り、は禁忌になる)一方で、治療抵抗であること自体は血液検査・画像・侵襲的の適応にはならないとする。第一選択が効かなかった小児でも、病態の重みは年月で変わるので2年ほどの間隔をおいてアラームを試み直すのは理にかなっている。それでも乾かない場合には、・といった以外の選択肢(Ib)、末梢電気刺激、への注入(IV)が専門医の裁量として挙げられている1。

鑑別

疾患 分かれ目
糖尿病 ・多尿・体重減少を伴う。・血糖で除外する
尿路感染症 ・頻尿・発熱を伴うことが多い。尿検査で除外する
いびき・無呼吸・を伴う。の機序が異なる

まとめ

  • は一次性/二次性、単一症候性/非単一症候性で分類し、二次性では新規の原因を再評価する。
  • 積極的治療は6歳から。治療はから始め、第一選択はアラームとの2つ(どちらもIa)である。アラームが長期治癒を目指す治療、はが必要な場面での薬物療法という役割分担があり、先に選んだほうが無効ならもう一方へ、単独でどちらも無効なら併用へ進む。
  • アラームは6週間で進歩が無ければ中止し、進歩があれば14夜連続の乾燥まで続ける。は無効なら1〜2週間で見切りをつけ、を避けるため夕方以降の飲水を制限する。
  • 第二選択はで、開始前に便秘とを除外・治療する(があれば禁忌)。⚠️ 日本ではに対するの保険適用が無く、にはある。
  • ⚠️ は第三選択で、・アラーム・がいずれも無効または禁忌だった例に専門医が使う。 治療抵抗例の30〜50%に効き、25〜50 mgを就寝1時間前、1か月で効果判定、耐性を避けるため3か月ごとに2週間の、中止は半量を1〜2週間。心毒性のスクリーニング(失神・の既往、の家族歴、心電図)を先に行う。
  • ⚠️ との併用の可否は資料で割れている(は併用しない、日本のガイドラインとICCSは選択肢として置く)。
  • 便秘・睡眠時無呼吸などの併存症治療を優先し、罰や叱責を避ける。

出典

  1. 1.Management and treatment of nocturnal enuresis-an updated standardization document from the International Children's Continence Society(Journal of Pediatric Urology・2020)Utrecht大学リポジトリ経由で出版社版PDF全文(11頁。表紙にPublisher versionと明記)を取得して確認した。国際小児禁制学会(ICCS)の標準化文書で、警告所見(排尿困難・過度の口渇など)が無ければ血液検査・画像・尿流動態検査は不要であること、積極的治療は6歳から推奨されること(原文はActive therapy is recommended from the age of 6 years)、便秘・尿路感染症・いびきや無呼吸などの併存症を優先して治療すべきこと、単一症候性夜尿症の第一選択が夜尿アラームとデスモプレシンの2つ(いずれもエビデンスレベルIa)で第一選択の選び方に戦略Aと戦略Bの2通りがあること、先に選んだほうが無効ならもう一方を提供し単独でどちらも無効なら併用を検討すること、アラームの成功率が50〜70%で6週間で進歩が無ければ中止し進歩があれば14夜連続の乾燥まで続けること、デスモプレシンは約3分の1が確実に乾き3分の1が無効で3分の1が中間の反応であり唯一の禁忌が習慣性多飲であること、無効な小児に1〜2週間を超えて続ける正当性は無いこと、抗コリン薬が第二選択(エビデンスレベルIb)で開始前に便秘と残尿を除外または治療する必要があり残尿があれば禁忌であること、イミプラミンが第三選択(エビデンスレベルIa)で専門医が用いること、治療抵抗性の夜尿児の30〜50%に効果が期待できデスモプレシン併用でその割合が上がること、用量25〜50mgで大きいほうの用量は9歳を超える小児または低用量が無効で副作用が無い場合に用い就寝の約1時間前に投与すること、効果判定を1か月後に行い耐性が生じやすいため3か月ごとに2週間の休薬を置くことが一案とされること、中止時は半量にして1〜2週間続けること、原因不明の失神や動悸の既往または突然心臓死の家族歴があれば長時間心電図で評価せずに投与してはならないこと、臨床で最も多く問題になる副作用が気分の変動と悪心であること、治療抵抗例では専門医の裁量でアトモキセチンやレボキセチン(エビデンスレベルIb)・末梢電気刺激・排尿筋へのボツリヌス毒素注入(エビデンスレベルIV)が挙げられることを確認した。閲覧 2026-09-08
  2. 2.夜尿症診療ガイドライン2021(日本夜尿症学会(現:日本夜尿症・尿失禁学会)・2021)Mindsガイドラインライブラリの要旨ページで本ガイドラインが「最新版」「本文公開中」であること(2016年版が旧版)を確認したうえで、本文PDF(https://minds.jcqhc.or.jp/common/summary/pdf/c00690.pdf )をpdftotextで抽出して確認した。診療アルゴリズムが生活指導のあと「デスモプレシンまたはアラーム療法(切り替え可)→ 両者の併用 → 抗コリン薬または三環系抗うつ薬の併用 → 併存症の精査目的に専門家へ相談」の順に進むこと、抗コリン薬には夜尿症に対する保険適用が国内で無い一方で三環系抗うつ薬にはあること、CQ8の推奨文が「デスモプレシン,アラーム療法,その両者による併用療法で効果が得られない場合には,三環系抗うつ薬を提案する.」で推奨グレードが2Aであること、三環系抗うつ薬が国内外でデスモプレシン・抗コリン薬に次ぐ第三選択の位置づけであること、三環系抗うつ薬の開始に際して動悸や失神など心疾患を疑わせる既往と不整脈・突然死の家族歴を問診し気になる所見があれば心電図でQT延長が無いことを確認するとしていること、副作用は主に抗コリン作用によるものが約5%で最も深刻なものが過量投与時の心臓障害であること、デスモプレシンの希釈性低ナトリウム血症の予防として服薬1時間前から8時間後までの飲水量を240mL以内に、あるいは就寝前1時間の飲水量を200mL以内に制限することが望ましいとしていること、宿泊行事で使う予定があれば行事の少なくとも6週間前からの試用を勧めていること、日本の添付文書ではイミプラミンのほかアミトリプチリンが夜尿症を、クロミプラミンが遺尿症を効能又は効果に持つ一方、欧米で夜尿症に用いられるのはイミプラミンのみであると述べていることを確認した。閲覧 2026-09-08
  3. 3.Desmopressin for nocturnal enuresis in children(Cochrane Database of Systematic Reviews・2025)95研究・8473例を統合したCochraneレビューで、デスモプレシンはプラセボと比べ週あたりの夜尿夜数を減らし(低い確実性)、14夜連続の乾燥達成率も高めた(中等度の確実性)こと、治療中の効果は夜尿アラームと大差ない可能性があるが、治療終了後に乾燥を維持できた児の割合はアラームの方が高い可能性があったこと(中等度の確実性)、有害事象として低ナトリウム血症・痙攣1例が報告されたことを確認した。閲覧 2026-09-06
  4. 4.Alarm interventions for nocturnal enuresis in children(Cochrane Database of Systematic Reviews・2020)74試験・5983例を対象にしたCochraneレビューで、夜尿アラームは無治療・対照と比べ週あたりの夜尿夜数を減らし(低い確実性)、完全奏効(14夜連続乾燥)達成児が多く(低い確実性)、治療終了後も乾燥を維持できた児が多かった(低い確実性)こと、デスモプレシンとの比較では治療中の効果に関するエビデンスは低い確実性にとどまるが有害事象を経験した児はアラームの方が少ない可能性が高かった(中等度の確実性)ことを確認した。閲覧 2026-09-06
  5. 5.Nocturnal enuresis: the management of bedwetting in children and young people (NICE Clinical Guideline 111)(National Clinical Guideline Centre (UK) for the National Institute for Health and Care Excellence (NICE)・2010)第15章の推奨15.2.8.1〜15.2.8.6で、三環系抗うつ薬を夜尿症の第一選択に用いないこと、三環系を用いるならイミプラミンとすること、他の全治療に反応せず夜尿症の管理に精通した医療者の評価を受けた小児で検討すること、初回治療コースは3か月でその後のコースは検討可能であること、反復してコースを受けている小児には3か月ごとに医学的再評価を行うこと、中止時は漸減することを確認した。あわせて15.1が、三環系の作用について強い抗コリン作用に加えて十分に解明されていない中枢作用があると述べること、早期の心臓死の家族歴がある小児と心疾患を示す所見がある小児には禁忌であること、低用量から開始して2週ごとに年齢に応じた最大用量まで増量し就寝の約3時間前に1日1回投与することを確認した。2026-09-08にNICEのウェブ版(https://www.nice.org.uk/guidance/cg111 )も取得し、本指針が撤回・改訂されておらず公開日2010年10月27日のまま現行であること(更新情報は2015年8月の他ガイドラインへの参照差し替えと2023年8月のデスモプレシンの用量・商品名の削除の2件のみ)、同じ推奨がウェブ版では1.14.1〜1.14.6に対応すること、1.14.4がイミプラミンについて「3か月のコース後に3人に2人以上が再発する」ことと過量服薬の危険・施錠保管を家族に伝えるよう求めること、1.13.7が「抗コリン薬とイミプラミンの併用を行わない」と明記することを確認した。閲覧 2026-09-08