小児科学

小児科学 · 3-31

夜尿症

Enuresis Nocturna

前提:正常
腎における尿の濃縮と希釈。膀胱の機能と排尿の調節。
疾患
夜尿症

🧠 全体像:は5歳以上で睡眠中の間欠的尿失禁を繰り返す状態で、本人の怠慢ではない。日中症状、便秘、睡眠、二次性の原因を確認してから治療を選ぶ。

分類

分類 定義・意味
単一症候性 日中のや膀胱機能障害を伴わない
非単一症候性 頻尿、、日中尿失禁、などを伴う
一次性 6か月以上連続して乾燥した期間がない
二次性 6か月以上乾燥していた後に再発

頻度は年齢とともに自然減少する。1家族歴、、、、排尿・が関係する。心理的問題は原因にも結果にもなり得るが、罰や羞恥を与えてはならない。

💡 年齢別との内実。 香港の(配布21,000件・回収16,512件、回収率78.6%)では、一次性のは5歳の16.1%(男児20.7%、女児10.8%)から9歳で3.14%、19歳で2.2%へ低下したが、この低下は主に軽症例(週3回未満の)で顕著であり、が持続する例では加齢とともにむしろ重症化する傾向があった(週7回のを呈する割合が5歳の14.3%から19歳の48.3%へ増加、P<0.001)。10歳を超える児・思春期例では日中尿失禁の合併も年少児より多かった(32% 対 14.6%、P<0.001)2。

評価

頻度、日中症状、飲水・排尿、便通、いびき・無呼吸、発達・心理社会的変化、薬剤、家族歴を確認し、排尿・日誌を用いる。診察では成長、血圧、腹部、・下肢神経、外性器を必要に応じ評価する。

flowchart TD
    A["5歳以上の反復<span class='jp-term jp-term-diagram' title='nocturnal enuresis'>夜尿</span>"] --> B["日中症状・便秘・二次性を確認"]
    B --> C["日中症状あり"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='voiding dysfunction'>排尿機能障害</span>を先に治療"]
    B --> E["便秘あり"]
    E --> F["便秘を治療"]
    B --> G["単一症候性"]
    G --> H["基本的<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lifestyle advice'>生活指導</span>"]
    H --> I["アラームまたは<span class='jp-term jp-term-diagram' title='desmopressin'>デスモプレシン</span>"]

多尿・口渇・体重減少なら糖尿病、・発熱なら、いびきなら、二次性なら心理社会的ストレスや新規疾患を検索する。尿検査は二次性、日中症状、糖尿病・疑いなどで行う。典型的な一次性単一症候性では画像は不要である。

治療

まず病態とを説明し、日中は十分に飲水、就寝前はを避け、日中のと就寝前排尿、便秘治療を行う。夜間に繰り返し起こすだけの方法や罰は勧めない。

治療 向く状況 注意点
アラーム 長期的改善を目指し、本人・家族が継続可能 効果まで数週を要し、家族の支援が必要
宿泊行事など速い効果が必要、 服用前1時間から服用後8時間は飲水制限;低Na血症・に注意
・小容量を伴う選択例 ・便秘を評価し専門管理

💡 アラームとの比較(Cochraneレビュー)。 アラームは治療中の改善(14夜連続の乾燥達成)ではと大差ない可能性があるが、治療終了後も乾燥を維持できる児の割合はアラームの方が高い可能性があり(中等度の確実性)、有害事象もアラームの方が少ない可能性が高い(中等度の確実性)3。別のCochraneレビュー(74試験・5983例)でも、アラームは無治療・対照と比べ頻度を減らしを増やしたが、エビデンスの質は総じて低いとされる4。

反応不十分なら診断、服薬・アラーム実施状況、便秘、睡眠時無呼吸、日中症状を再評価し、小児泌尿器科/腎臓科へ紹介する。

💡 便秘治療による改善のエビデンス。 慢性便秘・のある小児234例を対象にした前向き研究で、34%に夜間尿失禁、29%に日中尿失禁を認めたが、便秘治療を12か月以上継続し便秘が解消した52%の児では、夜間尿失禁の63%・日中尿失禁の89%が消失した5。

まとめ

  • は本人の意思の問題ではなく、罰を与えない。
  • 日中症状と便秘を先に見つけて治療する。
  • アラームは長期改善、はに優れるが飲水制限が必須である。

出典

  1. 1.Management and treatment of nocturnal enuresis-an updated standardization document from the International Children's Continence Society(Journal of Pediatric Urology・2020)国際小児禁制学会(ICCS)の用語基準に基づく夜尿症診療の更新文書で、警告所見(排尿困難・過度の口渇など)が無ければ血液検査・画像・尿流動態検査は不要であること、積極的治療は6歳から推奨されること、便秘・尿路感染症・いびきや無呼吸などの併存症を優先して治療すべきこと、単一症候性夜尿症では第一選択治療がデスモプレシンまたは夜尿アラームであり、これらが単独・併用で無効な場合の次の一手として抗コリン薬治療が挙げられることを確認した。閲覧 2026-08-27
  2. 2.Differences in characteristics of nocturnal enuresis between children and adolescents: a critical appraisal from a large epidemiological study(BJU International・2006)香港で5〜19歳の児童・生徒に21,000件の問診票を配布し16,512件(78.6%)を回収した大規模疫学調査で、一次性夜尿症の有病率は5歳の16.1%(男児20.7%・女児10.8%)から9歳で3.14%、19歳で2.2%へ年齢とともに低下したが、この低下は主に軽症例(週3回未満の夜尿)で顕著であったこと、夜尿が持続する例では加齢とともに重症化する傾向があり週7回の夜尿を呈する割合が5歳の14.3%から19歳の48.3%へ増加したこと(P<0.001)、10歳を超える夜尿症児・思春期例では日中尿失禁の合併が10歳以下より多かったこと(32% 対 14.6%、P<0.001)を確認した。閲覧 2026-08-27
  3. 3.Desmopressin for nocturnal enuresis in children(2025)95研究・8473例(デスモプレシン投与5434例)を統合したCochraneレビューで、デスモプレシンはプラセボと比べ週あたりの夜尿夜数を減らし(平均差-1.81、95%信頼区間-2.24〜-1.39、低い確実性)、14夜連続の乾燥達成率も高めた(リスク比3.18、中等度の確実性)こと、治療中の効果は夜尿アラームと大差ない可能性があるが(エビデンスの質は低い〜非常に低い)、治療終了後に乾燥を維持できた児の割合はアラームの方が高い可能性があった(中等度の確実性)こと、デスモプレシンの軽度の有害事象としてめまい・頭痛・気分変化・消化器症状・鼻症状に加え低ナトリウム血症と痙攣1例が報告されたことを確認した。閲覧 2026-08-27
  4. 4.Alarm interventions for nocturnal enuresis in children(Cochrane Database of Systematic Reviews・2020)74試験・5983例を対象にしたCochraneレビューで、夜尿アラームは無治療・対照と比べ週あたりの夜尿夜数を減らし(平均差-2.68、低い確実性)、完全奏効(14夜連続乾燥)達成児が多く(リスク比7.23、低い確実性)、治療終了後も乾燥を維持できた児が多かった(リスク比9.67、低い確実性)こと、デスモプレシンとの比較では治療中の効果に関するエビデンスは低い確実性にとどまるが、有害事象を経験した児はアラームの方が少ない可能性が高かった(リスク比0.38、中等度の確実性)ことを確認した。閲覧 2026-08-27
  5. 5.Urinary incontinence and urinary tract infection and their resolution with treatment of chronic constipation of childhood(Pediatrics・1997)慢性便秘・遺糞症のある小児234例の前向き評価で、34%に夜間尿失禁、29%に日中尿失禁、11%に尿路感染症を認めたこと、便秘治療を開始し少なくとも12か月後に再評価したところ便秘は52%で解消し、便秘が解消した患者では夜間尿失禁の63%・日中尿失禁の89%が消失し、解剖学的異常のない患者では反復尿路感染症も全例で消失したことを確認した。閲覧 2026-08-27