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Symptoms · Published

多飲

Polydipsia

別名
心因性多飲一次性多飲症habitual polydipsiaprimary polydipsia
臓器系
内分泌・代謝腎・泌尿器
科目
Internal MedicinePediatrics
トピック
内科学 L-43:多尿・多飲の鑑別小児科学 1-08:小児の多尿・多飲
関連疾患
夜尿症

🧠 全体像:「水をよく飲む」という一つの訴えは、口渇が先か、飲水行動が先かで機序が正反対に分かれる。が正常に働いて生じる代償性の(・/抵抗性への反応)と、口渇の訴え・行動そのものが先に立つ(・習)を区別できて初めて、鑑別と治療が組み立てられる。は多尿の原因にも結果にもなるというが、このノートで最も外しやすいポイントである。

定義と用語の整理

は口渇または行動による過剰な水分摂取を指す。成人の多尿の目安は尿量>3 L/日または>50 mL/kg/日であり、と多尿は独立に測定してから関係を評価する1。

⭐ は、過剰な水分摂取がを伴う多尿を来し、最終的にに至る病態と定義される1。用語の使い分けは次の通り。

用語 意味
精神疾患(・が最多)に伴う
精神疾患を伴わず、健康志向の過剰な水分摂取習慣として生じる。近年は一般人口で増加し女性に多い
上記2つを包含する概念。口渇調節異常または行動が先行する全般を指す

⚠️ は「原因の」と「結果の多尿」が区別しにくい。 ()欠乏・抵抗性(中枢性・の新名称)でもにが生じるため、という訴えだけではと系異常を区別できない1。

病態生理

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='polydipsia'>多飲</span>"] --> B["①口渇調節異常・行動が先行<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='primary polydipsia'>一次性多飲</span>:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='psychogenic'>心因性</span>/習<span class='jp-term jp-term-diagram' title='inertia'>慣性</span>)"]
    A --> C["②<span class='jp-term jp-term-diagram' title='free water'>自由水</span>喪失への代償<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='arginine vasopressin'>AVP</span>欠乏・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='arginine vasopressin'>AVP</span>抵抗性)"]
    A --> D["③<span class='jp-term jp-term-diagram' title='osmotic diuresis'>浸透圧利尿</span>への代償<br>(糖尿病・高Na負荷)"]
    B --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dilute urine'>希釈尿</span>・低〜正常Na<br>極端なら低Na血症"]
    C --> E
    C --> F["高Na血症リスク<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='free water'>自由水</span>喪失が飲水を上回る場合)"]
    D --> G["高血糖・糖尿を伴う"]

①口渇調節異常・行動が先行:は・での合併が最も多く、精神科入院患者の18%にがみられるとされる1。・抗精神病薬の副作用による口渇、精神症状の増悪、ストレス、喫煙が危険因子として挙げられる。は精神疾患を伴わない過剰飲水習慣で、近年は健康志向から一般人口でも増加傾向にあり女性に多い1。

②喪失への代償:欠乏()・抵抗性()では、大量のによる喪失を補うためにが正常に働いてが生じる。この場合のは病的ではなく適切な代償反応であり、をむやみに行うと高Na血症を助長する。

③への代償:糖尿病の高血糖によるでも、喪失したを補うためにが生じる。

💡 腎の最大排泄能力(1日約12L)を理解すると、なぜで低Na血症が起こるかが見える。 摂取量がこの上限を超えると水分が体内に貯留しのに至る。例(いわゆる)では溶質摂取量の低下により排泄能力自体が1日8L以下まで下がるため、より少ない飲水量でもを来しうる1。

緊急・見逃してはいけない疾患

危険度の高い順に並べる。

⚠️ ・急性:が腎の排泄能力を超えて水分貯留を来すとに至り、急速に進行すれば脳浮腫・痙攣・意識障害を来しうる。患者のでは精神症状の増悪と重なって見逃されやすい。

⚠️ 投与中の:治療でを投与している小児がを併存すると、が薬理学的に妨げられた状態で過剰飲水が重なり、によるを来す。ICCSは()を投与の唯一の禁忌とし、服薬前後の飲水制限(服薬1時間前から8時間後までの飲水を240 mL以内、または就寝前1時間の飲水を200 mL以内)を求めている2。

(見逃すと診断が遅れる)欠乏・抵抗性の見落とし:を「だろう」と決めつけて喪失への代償反応を見逃すと、不適切なで高Na血症を助長する。だけで系異常とを鑑別することはできない1。

鑑別の進め方

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='polydipsia'>多飲</span>を訴える"] --> B["血清Na・浸透圧、尿浸透圧を測定"]
    B --> C{"血清Na・浸透圧"}
    C -->|"高値〜<span class='jp-term jp-term-diagram' title='upper limit of normal (ULN)'>正常上限</span>"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='arginine vasopressin'>AVP</span>欠乏・抵抗性を疑う<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='free water'>自由水</span>喪失への代償と考える"]
    C -->|"低〜正常"| E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='primary polydipsia'>一次性多飲</span>を疑う"]
    D --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='copeptin stimulation test'>コペプチン刺激試験</span>または<br>監視下<span class='jp-term jp-term-diagram' title='water deprivation test'>水制限試験</span>"]
    E --> F
    F --> G{"診断精度"}
    G -->|"浸透圧刺激<span class='jp-term jp-term-diagram' title='copeptin'>コペプチン</span>"| H["精度96%"]
    G -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='water deprivation test'>水制限試験</span>"| I["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='primary polydipsia'>一次性多飲</span>の診断精度は41%と低い"]

血清Na・浸透圧が高値〜であればが不足している方向(系異常への代償)を疑い、低〜正常であればを疑う、という向きで最初の切り分けを行う。確定にはが要り、によるの診断精度は41%にとどまるのに対し、浸透圧刺激を組み合わせた測定では96%まで精度が上がる1。

対症療法の考え方

そのものへの介入は、背景にある機序(系異常かか)を区別した後に位置づける。

  • 欠乏・抵抗性が背景の場合:を制限せず、原因治療(補充等)を優先する。を止めさせると喪失が補われず高Na血症を助長する。
  • の場合:基礎にある精神疾患の治療、原因薬剤(等)の見直しを行う。急な厳格飲水制限は避け、行動療法的なアプローチを組み合わせる。
  • の場合:過剰飲水というそのものへの介入(飲水量の段階的な適正化)が中心になる。
  • 投与中の場合:服薬前後の飲水制限を徹底し、を予防する2。

⚠️ が疑われる患者に、系異常への代償だと誤解して自由飲水を促してはならない。 逆に、欠乏・抵抗性の患者にと誤解して厳格なを行うと、高Na血症を助長する。で機序を確定してから介入方針を決める。

まとめ

  • は、口渇調節異常・行動が先行する(・習)と、喪失・への代償性の(欠乏・抵抗性、糖尿病)に大別する。
  • は精神科入院患者の18%にみられでの合併が最多、は精神疾患を伴わず一般人口で増加傾向1。
  • ⚠️ ・急性は最も危険な合併症。投与中はが唯一の禁忌であり、服薬前後の飲水制限でを予防する2。
  • 鑑別は血清Na・浸透圧と尿浸透圧の組み合わせで方向づけ、確定には(精度96%)を(精度41%)より優先する1。
  • 対症療法は機序(系異常かか)を区別してから決める。誤った方向への介入(自由飲水の促進、または厳格な)はどちらも症状を悪化させうる。

出典

  1. 1.Primary Polydipsia(StatPearls Publishing・2023)一次性多飲を「過剰な水分摂取が希釈尿を伴う多尿を来し、最終的に低ナトリウム血症に至る病態」と定義し、精神科入院患者の18%に多飲がみられ統合失調症・統合失調感情障害での合併が最も多いこと、健常腎は1日最大約12Lまで排泄できるが摂取量がこれを超えると水分貯留・低ナトリウム血症を来すこと、低栄養例(いわゆるビール多飲症)では溶質摂取量低下により排泄能力が1日8L以下まで低下すること、水制限試験による一次性多飲の診断精度が41%にとどまる一方、浸透圧刺激を組み合わせたコペプチン測定では96%まで精度が向上することを確認した(Europe PMC取得版の最終更新は2023年7月24日)。閲覧 2026-09-16
  2. 2.Management and treatment of nocturnal enuresis-an updated standardization document from the International Children's Continence Society(Journal of Pediatric Urology・2020)国際小児禁制学会(ICCS)の標準化文書が、デスモプレシン投与における唯一の禁忌を習慣性多飲(心因性多飲)としていること、水中毒による低ナトリウム血症を避けるため服薬前後の飲水制限(服薬1時間前から8時間後までの飲水を240 mL以内、または就寝前1時間の飲水を200 mL以内)を求めていることを確認した。閲覧 2026-09-16