スコア体系ノート一覧へ

Scores · Published

Charcot三徴

Charcot triad

別名
シャルコー三徴Charcotの三徴Reynolds五徴Reynolds pentadレイノルズ五徴
臓器系
肝胆膵感染症
科目
PathologyInternal MedicineSurgery
トピック
病理学 C/52:胆道系・胆嚢の炎症と腫瘍内科学 I-12:腹腔内感染症:胆管炎・胆嚢炎・腹腔内膿瘍・憩室炎・腹膜炎内科学 L-52:胆石症・胆嚢炎・胆管炎外科学 B/11:胆石症(症状・診断・治療・合併症)外科学 S-09:胆嚢・胆道結石の症候・診断・治療外科学 S-10:胆石症の合併症と治療
構成:症状
発熱黄疸腹痛低血圧意識障害
適用疾患
急性胆管炎胆石症

🧠 全体像(発熱・悪寒、黄疸、右上腹部痛)は、の病態生理――胆道の閉塞・胆汁うっ滞・全身感染という3つの過程――をそのまま反映する、19世紀由来の古典的な臨床パターンである。点数化された採点系ではなく、「その徴候がそろえば/そろわなければ何を意味するか」を読む診断的手がかりであり、特異度は高いが感度が低いという一言に尽きる性質を持つ。現在ではの確定診断はTokyo Guidelines 2018(TG18)が正本であり、は「TG18をさせる入口」として位置づけ直されている。

目的と適用場面

内容
目的 発熱・黄疸・右上腹部痛という3所見の組み合わせから、し初期評価へつなげる
対象 右上腹部痛・黄疸・発熱のいずれかをに受診した患者、の既往やERCP後などで胆管炎のリスクがある患者
使う場面 の場でのベッドサイドの。三徴が陽性ならを強く疑い、による確定評価に進む
評価しないもの の確定診断(が正本)、重症度そのもの(が正本)、三徴が陰性の場合の

構成要素と配点

の3要素は、恣意的に選ばれたものではなく、の病態生理の各段階に1対1で対応している。

要素 反映する機序
発熱 による→菌血症・全身感染の段階)
黄疸 による胆汁排泄障害・胆汁うっ滞の段階)
右上腹部痛 そのものによる有痛性の胆管拡張(の段階)

💡 3所見がそのまま「閉塞→うっ滞→感染」という一連の連鎖を表すため覚えやすいが、裏を返せばこの順に揃うとは限らず、どれか1つ、あるいは2つしか出そろわない患者の方が多い(後述の感度参照)。

(Reynolds’ pentad) は、に低血圧・意識障害の2要素を加えたものである。

追加要素 反映する機序
低血圧 への進展
意識障害 敗血症に伴う低下・

歴史的には、この2要素が加わり重症化した状態はと呼ばれてきた。

解釈とカットオフ

点数のかわりに、何項目そろっているかで意味を読み替える。

そろっている項目 意味
(3/3) を強く示唆する所見だが、感度が低いため陰性でも否定できない
部分的(1〜2項目) 頻度としてはこちらの方が多い。(全身炎症・胆汁うっ滞・画像所見の3系統)で評価を進める
(+低血圧・意識障害) を伴う重症胆管炎を示唆し、Grade III(重症)に相当することが多い。蘇生と並行したの適応を検討する

の診断特性は、TG13策定の基盤となったKiriyamaらの感度26.4%・特異度95.9%と報告されている。「そろえば当たる確率は高いが、そろわない症例の方が多い」という非対称性が数値化された形であり、単独のには使えない。

⭐ この「特異度は高いが感度が低い」という弱点を補うために作られたのがTokyo Guidelines(TG07→TG13→TG18)のである。TG13で腹痛・の既往を要件から外し全身炎症所見を主軸に据えたことで感度は91.8%まで改善し、この枠組みがTG18でも踏襲されている。は現在、単独のとしては用いられていない。 詳しいを参照。

限界と使ってはいけない場面

⚠️ 感度が低いため、三徴(または)がそろわないことを理由にを除外してはならない。 陰性所見は「否定」ではなく「での評価を省略しない」というだけの意味しか持たない。

⚠️ 高齢者・免疫不全者ではになりやすい。 発熱を欠く、腹痛の訴えが乏しい、意識障害のみが前景に立つなど、三徴が最初から崩れた形で現れることが多く、症状が乏しいことをもって重症例を除外しない。

⚠️ Charcotの名を冠する別の概念と混同しない。

名称 分野 内容
(本ノート) 肝胆膵 発熱、黄疸、右上腹部痛(
神経 眼振、
整形外科・糖尿病 などによる無痛性の関節破壊
病理・呼吸器 好酸球由来のガ-10がしたもの。喘息の喀痰などで見られる

いずれも同じ人名(Jean-Martin Charcot)に由来するが、指している臓器・病態はまったく別である。

まとめ

  • (発熱・悪寒、黄疸、右上腹部痛)は、の「閉塞・胆汁うっ滞・全身感染」という病態生理の3段階にそのまま対応する。
  • 診断特性は感度26.4%・特異度95.9%と報告されており、そろえば強く示唆するが、そろわなくても否定できない。
  • 低血圧・意識障害を加えたを伴う重症胆管炎(TG18 Grade III相当)を示唆する。
  • 現在の確定診断・重症度判定はが正本であり、は単独のとしては用いられない。
  • Charcotの名を冠する別概念(の三徴、)と混同しない。