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Disease Atlas · 消化器 · 先天性疾患

十二指腸閉鎖

Duodenal atresia

別名
十二指腸狭窄
臓器系
消化器
科目
PathologyPediatricsEmbryologyObstetrics
トピック
病理学 C/36:消化管の発生異常・血管障害小児科 2-12:新生児消化管閉塞:胎便性イレウス・肥厚性幽門狭窄症・腸閉鎖小児科 13:胎便性イレウス、腸閉鎖症、幽門狭窄症、横隔膜ヘルニア発生学 14.5:消化器系:臨床産科学 45:主な先天異常
鑑別疾患
胎便性イレウス腸回転異常・中腸軸捻転肥厚性幽門狭窄症
症状
嘔吐
画像所見
ダブルバブルサイン
原因となる疾患
ダウン症候群(21トリソミー)

🧠 全体像は、消化管の発生異常のなかで最も頻度の高い腸閉鎖であり、に十二指が増殖して内腔を一時的にふさいだ後、に失敗することで生じる。この発生機序が、より遠位で起こるの腸間膜血流障害が主因)と根本的に異なる点が理解の軸になる——だからこそをはじめとする染色体異常・他臓器のを高率に合併するのに対し、は比較的である。閉塞部位はより肛門側にあることが多いため嘔吐の多くは胆汁性で、画像は+遠位腸管ガスの消失が典型となる。ただし遠位にガスが残っている場合は完全閉鎖ではなく、狭窄や、そしての高いを考えなければならない。治療は緊急手術ではなく、まず内科的に安定化し、合併奇形を評価してから根治術に進む。

病態

は、胎生5週頃に十二指が急速に増殖して内腔を一時的に完全に閉塞させ、その後アポトーシスを伴いながらし内腔が再形成される「」過程の異常で生じる。が全く起こらなければ内腔のが完全に絶たれるとなり、部分的にしか進まなければ内腔が狭いまま残る十二指腸狭窄(有窓型の膜様閉鎖を含む)となる。閉塞部位は大多数が(十二指腸乳頭)より肛門側、すなわち十二指腸第2〜3部に生じる。出生約5,000〜10,000人に1人程度とまれな疾患だが、消化管の閉鎖・狭窄のなかでは最も頻度が高い部位である。

flowchart TD
    A["胎生5週頃:十二指<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intestinal epithelium'>腸上皮</span>の増殖による内腔の一時的閉塞"] --> B{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='recanalization'>再疎通</span>は完了するか"}
    B -->|"完了"| C["正常な十二指腸内腔"]
    B -->|"部分的に失敗"| D["十二指腸狭窄<br>(有窓型の膜様閉鎖を含む)"]
    B -->|"完全に失敗"| E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='duodenal atresia'>十二指腸閉鎖</span><br>(内腔の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='continuous'>連続性</span>が絶たれる)"]
    D --> F["閉塞部<span class='jp-term jp-term-diagram' title='oral side (proximal, toward the mouth)'>口側</span>が拡張し遠位へわずかにガスが通過しうる"]
    E --> G["閉塞部<span class='jp-term jp-term-diagram' title='oral side (proximal, toward the mouth)'>口側</span>のみ拡張し遠位腸管ガスが消失"]

💡 は「閉塞の原因」であって閉鎖そのものではない。 は膵原基のにより膵組織が十二指腸を外側から輪状に取り巻いて狭窄させる病態、は本来十二指腸の背側を通るはずの門脈が腹側を通ることで十二指腸を圧迫する病態であり、いずれも十二指腸の外部からの圧迫による狭窄・閉塞である。上皮の不全というそのものの発生機序とは区別して理解する。

空腸回腸閉鎖との違い

と、より遠位で起こるは、同じ「腸閉鎖」という結果を来しながら発生機序が根本的に異なる。

比較項目
機序 上皮増殖後のの失敗 腸間膜血流障害(虚血)
染色体異常・他奇形の合併 高率など) 比較的まれが多い)

⚠️ すべての腸閉鎖を一括して「染色体異常を合併しやすい」と結び付けない。 合併率が高いのは発生機序の異なるであり、は主因が血流障害であるため染色体異常との関連は乏しい。

合併奇形

約1/4〜1/3にを合併する。一方での多くはでも生じ、染色体異常を伴わない例も少なくないため、「合併しやすいが必発ではない」という両面を押さえる。以外にも、をはじめとするの構成異常(脊椎・肛門直腸・心・腎・四肢の奇形)を合併しうるため、診断後は心エコーを含む系統的な評価を行う。またと同じ部位に併存して見つかることがあり、術中に両者を見落とさず確認する必要がある。

臨床像

  • 胆汁性嘔吐が典型:閉塞の大多数はより肛門側にあるため、出生後早期から胆汁性嘔吐を来す。乳頭よりにまれに生じる閉鎖では胆汁は混入せず非胆汁性嘔吐となる。
  • 腹部膨満は上腹部中心:胃と十二指腸近位部の拡張によりが膨隆する一方、閉塞部より肛門側には空気が届かないため下腹部は平坦なことが多い。
  • 胎便排出は保たれることが多く、や遠位のほど排出遅延は目立たない。
  • 出生前:胎児が羊水を嚥下・吸収できないためを来し、胎児腹部超音波で胃と十二指腸近位部の2つの液体貯留腔として描出されることがある。

診断

  • 画像での(拡張した胃と十二指腸近位部の2つのガス像+遠位腸管ガスの消失)がであり、描出の詳細や紛らわしい所見との鑑別は同ノートに譲る。
  • 診断がな場合やが疑われる場合は、で閉塞部位・完全/不完全の別を評価する。

⚠️ 遠位腸管ガスがある場合、「完全閉鎖ではないから安心」と判断してはいけない。 十二指腸狭窄・有窓型の膜様閉鎖・によるの可能性に加え、という、とともにが進行する外科救急を積極的に除外しなければならない。胆汁性嘔吐のある新生児では、画像がダブルとして完成していなくてもの可能性を常に念頭に置く。

flowchart TD
    A["新生児の胆汁性嘔吐+<span class='jp-term jp-term-diagram' title='plain abdominal radiograph'>腹部単純X線</span>"] --> B{"ダブル<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bubble'>バブル</span>+遠位ガス消失か"}
    B -->|"はい"| C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='duodenal atresia'>十二指腸閉鎖</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='complete occlusion'>完全閉塞</span>)と診断"]
    B -->|"遠位にガスあり"| D["狭窄・有窓型膜様閉鎖・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='annular pancreas'>輪状膵</span>を疑う"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intestinal malrotation'>腸回転異常</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='midgut volvulus'>中腸軸捻転</span>を否定できるまで否定しない"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Upper GI series'>上部消化管造影</span>などで緊急評価"]
    C --> G["胃管減圧・輸液で安定化"]
    G --> H["心エコーを含む合併奇形の評価"]
    H --> I["根治術(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='duodenoduodenostomy'>十二指腸十二指腸吻合</span>など)"]

治療

は緊急手術の対象ではない。 が除外されていれば、まず内科的に安定化してからに根治術を行う。

  1. 術前の安定化による減圧で胃・十二指腸近位部の拡張を軽減し、輸液で脱水・電解質異常を補正する。緊急手術ではないが、安定化と合併奇形評価がすめば出生後数日以内に手術することが多く、いたずらに根治術を先延ばしにするものでもない。
  2. 合併奇形の評価:心エコーを中心に、を念頭に置いた全身評価を行ってから手術に進む。
  3. 根治術:狭窄・位を迂回するが標準術式であり、口径差の大きい近位・遠位断端をつなぐが広く用いられる。アプローチも行われる。
  4. 術後経過:拡張した近位十二指腸は術後もの回復に時間を要するため、の確立まで数日〜数週間を要することが多い。この間はで補い、焦ってを急速に増量しない。

まとめ

  • は消化管の発生異常のなかで最多の腸閉鎖であり、の十二指におけるの失敗で生じる。血流障害が主因のとは機序が異なり、染色体異常・他奇形の合併率も高い。
  • 約1/4〜1/3にを合併するが、多くはでも起こる。の一部としてなどを合併しうる。
  • 閉塞はより肛門側が大多数のため胆汁性嘔吐が典型で、出生前は、出生後は+遠位腸管ガスの消失で診断する。
  • 遠位ガスが残る場合は狭窄・に加え、を除外するまで否定しない。
  • 緊急手術ではなく、胃管減圧・輸液での安定化と合併奇形評価の後にを行う。術後は蠕動回復までの確立に時間を要する。