病理学

病理学 · A/06

出血性梗塞(赤色梗塞)

Hemorrhagic infarction and its organ manifestation

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Mechanism / 機序High-yield / ポイント
応用トピック
急性・慢性腸間膜虚血

🧠 全体像:は壊死の「型」ではなく、壊死組織に血液が二次的に流れ込んだ状態で、にもにも重なりうる。共通するのは「排出(静脈側・再吸収)の問題」という軸——・疎な組織・・再灌流のいずれかがあれば赤色化すると考えると、白色梗塞との対比がすっきりする。

定義

  • 出血性(赤色)梗塞 = 壊死組織に血液が流れ込む(対照的に、蒼白・の白色梗塞がある)。
  • 排出の問題であり、(多くの臓器)にも(脳)にもなりうる。

赤色梗塞が起こるのはどんなときか

  • (例:精巣・)
  • 疎な組織(肺)で、血液を容易に再吸収できる場合
  • (肺:肺動脈+、肝:+門脈、腸管:+IMA)
  • 以前に閉塞・壊死した領域の再灌流(透過性の高い血管が破綻する)

💡 型のは精巣・に限らない。 やも同じ原理で赤色梗塞を来す——腸閉塞では内腔圧の上昇がまず静脈還流を、次いで動脈血流をするため、壁が薄く圧に弱い静脈側が先に破綻してうっ血・に至ると説明される1。精索や卵巣のねじれも、同じく壁の薄い静脈が先に閉塞するという物理的原理を共有する。

凝固性・出血性 融解性・出血性
再灌流後のAMI (・encephalomalacia rubra)
腸梗塞

臓器別の所見

急性心筋梗塞(再灌流後)

  • 再灌流を行うため通常は出血性となる。壊死した血管は透過性が高く → 破綻 → 出血(A/08参照)。

肺梗塞(二重支配)

  • 原因: 。の大部分は(90%が大腿・腸骨・)。
    • 大型・鞍状塞栓 → 突然死(形態変化を来す時間がない)。
    • 中・小型 → → 出血。
  • 肺は肺動脈+のなので、肺動脈が詰まっても多くは梗塞に至らない。古典的には、梗塞化するのは心機能が低下しが障害されている(など)場合が主だとされてきた2。形態は下葉に多く、( → 側)、赤青色 → 赤褐色()→ 白色瘢痕。
  • ⭐ 肺塞栓の多くは、実際には梗塞に至らない。 前向き335例ではの頻度は31%2、連続367例では16.9%であった3。総説では約30%とされる4。いずれの検討でも梗塞例はむしろ若く心血管疾患・気腫が少ない傾向で、「が低いほど梗塞化する」という古典的説明とは逆の所見である。機序としては、肺動脈閉塞後に動員されたの高い圧で毛細血管から赤血球が肺胞へ漏れ出し、その出血が吸収されないと梗塞に至る——という機序が提唱されている4。
  • 肺塞栓の約60〜80%は小さく無症状で経過する。大きな塞栓では上昇、心拍出量低下、右心不全、低酸素血症、を介した右→左シャントを来しうる。

腸梗塞(SMA/IMAの二重支配)

  • のうち、SMAの閉塞 → その(十二指腸から空腸・回腸、を経ての近位約3分の2まで)の壊死 → 大量出血、腹膜炎、。
  • IMAの血栓 → 通常はで代償される。
  • 門脈・の血栓 → 還流域の腸管の出血性(うっ血性)壊死。
  • 病型:(しばしば可逆的)→ (多巣性、浮腫)→ (全層に及ぶ。24時間後には壊疽+穿孔。致死率が高い)。

脳梗塞 — 赤色軟化(出血性)

  • 赤色は出血による。原因は再灌流、(など)、または境界域(・watershed)壊死。
  • ⚠️ 境界域とは2つの動脈の接合部(/の間、/の間など)で、深部(内側)のは近位狭窄や低心拍出による低灌流、皮質(外側)のは塞栓の関与が大きいとされる。そのものは境界域ではなく、の主な担い手であり、その破格(発達不全)があるとを起こしやすくなる5。

💡 ポイント: 赤色梗塞は、・疎な組織をもつ臓器(肺・腸管)、後、または再灌流後に起こる。肺はのの古典的な部位。

まとめ

  • 出血性(赤色)梗塞は壊死組織へ血液が流れ込む病態で、排出の問題(・疎な組織・・再灌流)により生じる。
  • (心臓など多くの臓器)にも(脳)にも重なりうる。
  • 肺・腸管はのため閉塞だけでは梗塞化しにくく、古典的には障害(心不全)や/IMAのが梗塞化の条件とされる。ただし肺塞栓の梗塞例はむしろ若年で心血管疾患が少ないという報告もある。
  • の再灌流後はの亢進により出血性となりやすい。
  • のは再灌流・・境界域壊死で生じる。境界域は動脈どうしの接合部であって、ではない。

出典

  1. 1.Understanding CT imaging findings based on the underlying pathophysiology in patients with small bowel ischemia(Japanese Journal of Radiology・2023)腸閉塞による腸管虚血では、内腔圧の上昇がまず静脈還流を、次いで動脈流入を圧排するため静脈側が先に破綻して虚血に至ると説明される。小腸閉塞患者の5〜42%が絞扼を来し死亡率が高い閲覧 2026-08-27
  2. 2.Predictors of Pulmonary Infarction(Medicine (Baltimore)・2015)CT血管造影で急性肺血栓塞栓症と診断された前向き335例で肺梗塞の頻度は31%。肺梗塞を伴う患者は有意に若く、心血管疾患の頻度が有意に低かった(P<0.001)。梗塞リスクは約40歳で最大となり、身長が高いことと現喫煙が危険因子、BMI高値は保護的であった閲覧 2026-08-27
  3. 3.Pulmonary infarction secondary to pulmonary embolism: An evolving paradigm(Respirology・2018)急性肺血栓塞栓症367例中62例(16.9%)に肺梗塞。肺梗塞例は有意に若く(48±20.3歳 対 59.6±17.2歳)、画像上の気腫(5% 対 22%)と大動脈粥状硬化(23% 対 43%)が少なかった。多変量解析で33歳以下(OR 3.5)、胸痛(OR 2.15)、胸水(OR 2.18)が肺梗塞リスクを高め、気腫の存在は逆にリスクを下げた(OR 0.21)閲覧 2026-08-27
  4. 4.Pulmonary infarction in acute pulmonary embolism(Thrombosis Research・2021)急性肺血栓塞栓症における肺梗塞の頻度は約30%と報告される。肺動脈閉塞後に気管支動脈が肺毛細血管の主灌流源として動員され、体血圧の高さゆえに毛細血管血流が増して赤血球が肺胞腔へ漏出(肺胞出血)し、その出血が吸収されない場合に壊死=梗塞に至る閲覧 2026-08-27
  5. 5.Border-Zone Infarcts and the Inside Story!(Annals of Indian Academy of Neurology・2023)境界域梗塞は2つの動脈灌流域の接合部(ACA/MCA間、MCA/PCA間、3動脈が収束する頭頂後頭部など)に生じ、全脳梗塞のほぼ10%を占める。深部(内側)型は近位狭窄や低心拍出による血行力学的な低灌流、皮質(外側)型は心臓や大血管プラークからの塞栓の関与が大きいとされ、ウィリス動脈輪は側副血行の主要な担い手でその破格が境界域梗塞のリスクを高めうる(PMC全文で確認した短い論説)閲覧 2026-09-23