病理学

病理学 · A/07

脂肪壊死・乾酪壊死・線維素様壊死

Fat, caseous and fibrinoid necrosis and its organ manifestation

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Mechanism / 機序High-yield / ポイント

🧠 全体像:この3つの壊死は「主役となる物質」で区別すると覚えやすい——はリパーゼ()、はに対する細胞性免疫の肉芽腫反応、は血管壁へのが主役で、それぞれ膵炎・結核・血管炎という代表疾患に直結する。

脂肪壊死

  • (リパーゼ・lipase)が脂肪に作用することで起こる壊死。
  • や(を活性化する)に関連する。
  • ⭐ 膵炎のと(乳房など)は起点が異なる。 膵炎では膵から漏出したリパーゼが遠隔の脂肪組織を消化するのに対し、は局所の虚血・死をきっかけに血液・組織由来のリパーゼが働く無菌性の反応であり、乳房のの21〜70%は外傷が原因とされる1。どちらも+Ca²⁺のという反応自体は共通する。

発生機序

  1. 活性化したが放出される。
  2. リパーゼが細胞膜を消化し、トリグリセリドから脂肪酸を遊離させる。
  3. +Ca²⁺ → 白墨様で白色の「石鹸」沈着 = (の一種 — 血清Ca²⁺・PO₄は正常)。
  4. → 胆汁の逆流 → 酵素の活性化 → 膵の。
  5. アルコールが促進する(酵素産生の増加+腺房の閉塞 → 漏出)。
flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bile-duct obstruction'>胆管閉塞</span>・アルコールなど"] --> B["活性化した<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pancreatic enzyme'>膵酵素</span>の放出"]
    B --> C["リパーゼが細胞膜を消化"]
    C --> D["トリグリセリドから<span class='jp-term jp-term-diagram' title='free fatty acids'>遊離脂肪酸</span>を遊離"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='free fatty acids'>遊離脂肪酸</span>+Ca2+"]
    E --> F["白墨様の「石鹸」沈着(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='saponification'>鹸化</span>)<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='dystrophic calcification'>異栄養性石灰化</span>の一種"]

形態と臨床

  • 脂肪のリパーゼ壊死、膵実質の性破壊、血管の破壊 → 出血。
  • 臨床:急性腹痛、・リパーゼの上昇。全身への酵素放出 → DIC、ARDS。
  • ⭐ 壊死の広がりが重症度と直結し、造影CTで評価する(Balthazar分類・ severity index)。 のある患者は無い患者に比べ死亡率23%対0%、82%対6%と高く、 severity indexが高い群は92%・死亡率17%に達した(低い群は合併症2%・死亡0%)2。

乾酪壊死

  • +の組み合わせ。古典的には結核(M. tuberculosis)、一部の真菌でも起こる。⭐ は結核に特異的ではない——・などの真菌感染も類似の壊死性肉芽腫を来しうる。肺の肉芽腫一般(壊死の有無を問わない)で見ると、7か国10施設の・切除500例を病理専門医が見直した検討では、原因を特定できたのは58%にとどまり、(通常は)27%、抗酸菌または真菌感染25%であった。地域によって内訳は逆転し、米国内では真菌19%・抗酸菌8%、米国外では抗酸菌19%・真菌4%であった3。
  • 細胞の輪郭は(のように)失われるが、タンパク質の凝固もあり → 黄白色でチーズ様。
  • 炎症細胞に囲まれ → を形成:
    • T細胞、マクロファージ、、(融合した。核が辺縁にに並ぶ)。
  • 主に肺()。腎・膵にも生じる。

線維素様壊死

💡 ポイント: → 膵炎(、白墨様の白色)。 → 結核(、)。 → の血管傷害(の血管壁)。

まとめ

  • は活性化したが脂肪を消化し、とCa²⁺が結合して白墨様にする壊死で、・に典型的。
  • はとが組み合わさった壊死で、結核に代表され、とからなるを形成する。
  • は血管傷害+抗原抗体複合体・フィブリンの沈着による壊死で、・無定形の外観を呈し、・血管炎・でみられる。
  • のCa²⁺沈着は血清Ca²⁺・PO₄が正常のままのの一種。
  • 臨床では→急性腹痛・/リパーゼ上昇、→、→血管炎症状として現れる。

出典

  1. 1.Breast Fat Necrosis(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2023)乳房の脂肪壊死は血流途絶による脂肪細胞死に続いて生じる無菌性の炎症過程で、局所の血液・組織由来のリパーゼによる脂肪の鹸化(saponification)が本体である。非手術例では外傷が最も多い原因で、外傷による脂肪壊死は21〜70%を占める閲覧 2026-08-27
  2. 2.Acute pancreatitis: value of CT in establishing prognosis(Radiology・1990)急性膵炎88例の造影CTによる検討で、膵壊死(30%・50%・50%超)を有する患者は無い患者に比べ死亡率23%対0%、合併症率82%対6%と高かった。膵周囲炎症・膵周囲貯留・壊死の程度を組み合わせたCT severity indexが高い群は合併症率92%・死亡率17%、低い群は合併症率2%・死亡0%であった閲覧 2026-08-27
  3. 3.Causes of pulmonary granulomas: a retrospective study of 500 cases from seven countries(Journal of Clinical Pathology・2012)7か国10施設の肉芽腫を含む肺生検・切除500例を肺病理専門医が見直した研究。原因が特定できたのは58%(290/500)にとどまり、内訳はサルコイドーシス136例(27%)、抗酸菌または真菌感染125例(25%)。抗酸菌は米国外の19%に対し米国内は8%、真菌は米国内19%に対し米国外4%と地域で逆転した。42%は原因を特定できなかった。対象は肉芽腫一般であり、抄録は壊死性・非壊死性の別の内訳を示していない閲覧 2026-08-27
  4. 4.Pathogenic factors in vascular lesions of experimental serum sickness(The Journal of Experimental Medicine・1965)ウサギのArthus型血清病モデルで、血管壁の壊死・フィブリノイド沈着部に、抗原(BSA)・ウサギガンマグロブリン・宿主補体(β1Cグロブリン)が免疫蛍光法で共局在した。多形核白血球を除去すると壊死性血管病変とフィブリノイド沈着はいずれも生じず、フィブリノイド壊死が単純なフィブリン析出ではなく免疫複合体沈着と好中球依存性の血管傷害であることを示す閲覧 2026-08-27