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Disease Atlas · 内分泌・代謝 · 先天性疾患

キサンチン尿症

Xanthinuria

別名
遺伝性キサンチン尿症キサンチン酸化還元酵素欠損症古典的キサンチン尿症
臓器系
内分泌・代謝腎・泌尿器
科目
Internal MedicinePediatrics
トピック
内科学 E-09:プリン・鉄・銅代謝および希少代謝疾患小児科 3-26:小児腎尿細管疾患
鑑別疾患
モリブデン補因子欠損症腎性低尿酸血症
続発疾患
尿路結石症
症状
側腹部痛血尿
検査値
尿酸

🧠 全体像:は、の最終2段階(→→尿酸)を担う()が働かないために、尿酸が作れずが尿へ排泄される疾患である1。と並んで無症状のままを来す2つの疾患の一方だが、機序は正反対で、こちらは産生側の酵素欠損である。両者はで分かれる——ではもわずかしかない2。臨床上の要点は2つ——①血清尿酸が1 mg/dL未満という極端な低値で見つかること、②尿酸が低くても安全ではなく、溶けにくいが結石を作ること1。

機序:止まるのは経路の最後の2段

はをへ、を尿酸へと2段階で水酸化する1。この酵素が働かないと、経路はの手前で止まるのではなく、で詰まる。

flowchart TD
    A["核酸分解・食事由来プリン"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hypoxanthine'>ヒポキサンチン</span>"]
    B -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='xanthine oxidoreductase'>XOR</span>(第1段階)"| C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='xanthine'>キサンチン</span>"]
    C -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='xanthine oxidoreductase'>XOR</span>(第2段階)"| D["尿酸"]
    B -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='salvage pathway'>サルベージ経路</span><br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='phosphoribosyl pyrophosphate'>PRPP</span>を<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cosubstrate'>共基質</span>"| E["IMP(再利用される)"]
    C --> F["尿中へ排泄<br>溶解度が低く結石を作る"]
    D --> G["血清尿酸<br>1 mg/dL未満"]

💡 なぜは溜まらないのか。 第1段階も止まるのだからが蓄積しそうに見えるが、実際にはは尿中へ有意には排泄されない。をとするでIMPへ変換され、再利用されるからである1。行き場のあると、行き場のないとの差が、この疾患の表現型を決めている。

⚠️ は尿酸より溶けにくい。 だから「尿酸が低い=結石の心配が無い」は成り立たず、代わりにができる。霊長類以外の高等動物ではが尿路のによる腎障害のため致死的であり、霊長類はを失った代わりにへの耐性を獲得したとみられている1。

3つの型

型 欠損している酵素 原因
I型 のみ 遺伝子(2p23.1、36エクソン)の欠陥
II型 +(AO) の
+AO+ 合成の欠陥

いずれもIchidaらの総説による1。

💡 なぜスルフラーゼが欠けるととAOが両方止まるのか。 とAOはいずれもを持つで、にはが要る。は、タンパク質結合型を生成してこの硫黄を供給する最終成熟段階を触媒する。この一手が抜けると、補因子そのものは作れていても2つの酵素が同時に不活性のまま残る1。

⚠️ は別格に重い。 まで失われるため、重篤な神経障害・・形態異常を示し、転帰は不良である1。は所見の一部にすぎず、I型・II型と同じ枠では扱えない。

診断

気づくきっかけ

血清尿酸が典型的に1 mg/dL未満と極端に低く、血中尿酸の測定を契機に発見されることが多い1。これまでに数百例が報告されたにすぎない稀な疾患である2。

病型の決め方

I型とII型は臨床的に区別できない。活性の測定法が確立していないため、鑑別はとで行う1。

⭐ の原理は一行で言える。 からへの変換はとAOによって触媒されるので、AOが残っているI型では投与後に血清・尿中へが検出され、もAOも欠けるII型では検出されない1。

侵襲を避ける現代的な手順

従来、最終確認は小腸または肝の生検でXDH/XO活性の欠如を示すことに基づいてきた。Mrazらは3例の新規患者の所見を示したうえで、これに代わる3段階の手順を提案している3。

段階 内容
第1段階 著明に低い血清・尿中尿酸と、それを置き換えるにより診断する
第2段階 により病型を決める
第3段階 で確認する

著者らは、この安全で非侵襲的な手順を従来のや小腸・に代えて推奨している3。

💡 第2段階で病型が決まるという点が新しい。 は薬剤を投与しなければ答えが出ないが、なら検体だけで済む。

鑑別:低尿酸血症をどう仕分けるか

はとに大別され、I型・II型はに入る2。

群 該当するもの
、、、SIADH、悪性腫瘍、糖尿病、薬剤(・など)、妊娠、
(I型・II型)、、、合成酵素活性低下、、、薬剤(など)、るいそう

⭐ 薬剤性を除けば、無症状のままを示す疾患はとの2つだけである。 そして両者はで分かれる——ではがわずかしかない2。

flowchart TD
    A["持続する<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hypouricemia'>低尿酸血症</span>"] --> B{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='urinary uric acid excretion'>尿中尿酸排泄</span>はどうか"}
    B -->|"増えている<br>FEUA上昇"| C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='overexcretion type'>排泄過剰型</span><br>→ <span class='jp-term jp-term-diagram' title='renal hypouricemia'>腎性低尿酸血症</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Fanconi syndrome'>Fanconi症候群</span>など"]
    B -->|"わずかしかない"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='underproduction type'>産生低下型</span><br>→ <span class='jp-term jp-term-diagram' title='xanthinuria'>キサンチン尿症</span>・薬剤・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='severe hepatic injury'>重症肝障害</span>など"]
    D --> E{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='allopurinol'>アロプリノール</span>など<span class='jp-term jp-term-diagram' title='xanthine oxidoreductase'>XOR</span>阻害薬を<br>飲んでいないか"}
    E -->|"飲んでいる"| F["薬剤性を先に除外する"]
    E -->|"飲んでいない"| G["尿中<span class='jp-term jp-term-diagram' title='xanthine'>キサンチン</span>を測る"]
    G --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='xanthinuria'>キサンチン尿症</span>"]

⚠️ 薬剤性の除外を先に置く。 は阻害薬であり、飲んでいれば同じ生化学像(+尿中増加)を人工的に作る。だから鑑別表でも「」の薬剤として並んでいる2。

治療

の中心的な問題は、沈着によると、まれにそこから生じるである1。

💡 阻害薬はこの疾患には無意味である。 ・は止まっている酵素をさらに止める薬であり、そもそも同じ生化学像の薬剤性の原因として鑑別表に並んでいる2。

⚠️ II型ではAO欠損の影響をの観点で意識する。 AO欠損そのものによると分かる・検査異常はまだ同定されていないが、AOは多数の化合物の代謝に重要な役割を果たすと報告されており、将来の治療最適化には病型分類が不可欠になりうる1。

💡 は「阻害薬の安全性のヒト実験」でもある。 極度に低いをもつ患者が無症状であるという臨床観察は、阻害薬が阻害以外の作用をもたない限り重篤な副作用を起こさない可能性を示唆する。ただしなど多くのがでされるため、癌・妊娠・授乳中の患者は例外となりうる1。

まとめ

  • はの機能障害により尿酸が作れずが尿へ排泄される疾患で、血清尿酸は典型的に1 mg/dL未満になる。
  • はでIMPへ再利用されるため蓄積せず、行き場のないだけが尿へ出て結石を作る。
  • I型は単独欠損、II型は欠損による+AOの二重欠損。両者は臨床的に区別できず、(I型でが検出される)とで分ける。
  • はも欠く第3の型で、重篤な神経障害・・形態異常を伴い転帰は不良である。
  • 現代的には、①血清・尿の尿酸低値とによる診断、②による病型決定、③分子遺伝学的確認、という非侵襲的手順が提案されている。
  • 無症状ので最初に分けるのはで、わずかしか出ていなければ=や薬剤性を考える。

出典

  1. 1.Mutations Associated with Functional Disorder of Xanthine Oxidoreductase and Hereditary Xanthinuria in Humans(International Journal of Molecular Sciences(Ichida K, Amaya Y, Okamoto K, Nishino T)・2012)キサンチン酸化還元酵素(XOR)がヒポキサンチン→キサンチン→尿酸という2段階の水酸化を触媒すること、XORの遺伝的機能障害による疾患を尿中にキサンチンが排泄されることからキサンチン尿症と呼ぶこと、第1段階が止まってもヒポキサンチンは尿中へ有意には排泄されずPRPPを共基質とするサルベージ経路でIMPへ変換されること、患者の血中尿酸が典型的に1 mg/dL未満と低く血中尿酸の測定を契機に発見されることが多いこと、I型がXOR遺伝子(2p23.1、36エクソン)の欠陥によるものでII型はモリブデン補因子スルフラーゼの遺伝的欠陥によりXORとアルデヒド酸化酵素(AO)の二重欠損を来すこと、モリブデン補因子スルフラーゼがタンパク質結合型ペルスルフィドを生成してXORとAOの活性中心に必要な末端硫黄配位子を供給する最終成熟段階を触媒すること、I型とII型は臨床的に区別できずモリブデン補因子スルフラーゼ活性の測定法が確立していないためアロプリノール負荷試験と遺伝子解析で鑑別すること、アロプリノール負荷試験ではアロプリノールからオキシプリノールへの変換がXORとAOにより触媒されるためI型では血清・尿中にオキシプリノールが検出されII型では検出されないこと、AO欠損によると分かる臨床症状・検査異常はまだ同定されていないもののAOが多数の化合物の代謝に重要な役割を果たすと報告されており将来的な治療最適化には病型分類が不可欠となりうること、モリブデン補因子欠損症が第3の型でモリブドプテリン合成の欠陥によりXOR・AO・亜硫酸酸化酵素の三重欠損を来し重篤な神経障害・水晶体脱臼・形態異常を示し転帰が不良であること、キサンチン沈着による尿路結石がときに合併しまれに急性腎不全に至りうること、霊長類以外の高等動物ではキサンチン尿症が尿路のキサンチン結石による腎障害のため致死的であるのに対し霊長類はウリカーゼを失った代わりにオキシプリンへの耐性を獲得したとみられること、極度に低い血清尿酸値をもつキサンチン尿症患者が無症状であるという臨床観察はXOR阻害薬がXOR阻害以外の作用をもたない限り重篤な副作用を起こさない可能性を示唆すること、ただしメルカプトプリンなど多くのプリンアナログ抗癌薬がXORで異化されるため癌・妊娠・授乳中の患者は例外となりうることを確認した。閲覧 2026-09-03
  2. 2.Clinical practice guideline for renal hypouricemia (1st edition)(Human Cell(Nakayama A, Matsuo H, Ohtahara A, et al.、日本痛風・核酸代謝学会と共同編集)・2019)低尿酸血症の鑑別を排泄過剰型(腎性低尿酸血症・Fanconi症候群・Wilson病・SIADH・悪性腫瘍・糖尿病・ベンズブロマロンやプロベネシドなどの薬剤・妊娠・難治性下痢)と産生低下型(キサンチン尿症I型・II型、モリブデン補因子欠損症、PNP欠損症、PRPP合成酵素活性低下、特発性尿酸産生低下型低尿酸血症、重症肝障害、アロプリノールなどの薬剤、るいそう)に分けていること、薬剤性を除けば無症状のまま低尿酸血症を来す疾患は腎性低尿酸血症とキサンチン尿症だけであること、キサンチン尿症はこれまでに数百例が報告されたにすぎない稀な疾患であり尿中尿酸排泄がわずかである点で他の低尿酸血症と区別できること、腎性低尿酸血症の診断ガイダンスが血清尿酸2.0 mg/dL(120 µmol/L)以下と尿酸排泄分画(FEUA)の上昇を必須項目とし他疾患の除外を求めていることを確認した。閲覧 2026-09-03
  3. 3.Modern diagnostic approach to hereditary xanthinuria(Urolithiasis(Mraz M, Hurba O, Bartl J, Dolezel Z, Marinaki A, Fairbanks L, Stiburkova B)・2015)遺伝性キサンチン尿症をキサンチン脱水素酵素/酸化酵素(XDH/XO)の欠損による稀な遺伝性疾患とし、XDH/XO活性の欠如により血清・尿の尿酸が検出限界以下となり代わりにキサンチンが過剰に存在すること、I型とII型の鑑別には従来アロプリノール負荷試験が用いられてきたこと、最終確認は従来小腸または肝の生検でXDH/XO活性の欠如を示すことに基づいてきたこと、著者らが3例の新規患者の臨床・生化学・超音波・分子遺伝学的所見を示したうえで3段階の診断手順(第1段階:著明に低い血清・尿中尿酸とそれを置き換えるキサンチンにより診断する、第2段階:尿メタボロミクスにより病型を決める、第3段階:分子遺伝学的検査で確認する)を提案していること、この安全で非侵襲的な診断手順を従来のアロプリノール負荷試験や小腸・肝生検に代えて推奨していることを確認した。抄録のみを閲覧しており全文は未取得。閲覧 2026-09-03