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Symptoms · Published

周辺部潰瘍性角膜炎

Peripheral ulcerative keratitis

別名
辺縁部潰瘍性角膜炎周辺部角膜潰瘍
臓器系
眼科免疫・膠原病
科目
PathologyInternal Medicine
トピック
病理学 A/36:Ⅲ型・Ⅳ型過敏反応(免疫複合体型/遅延型)内科学 R-07:小血管炎内科学 R-03:関節リウマチの臨床像
関連疾患
ANCA関連血管炎角膜炎関節リウマチ全身性エリテマトーデス

🧠 全体像は、角膜の病気の顔をした全身性血管炎である。に沿うの実質融解という一見局所の所見の背後に、関節リウマチANCA関連血管炎のような生命を脅かすが隠れていることが多い。眼だけを診て点眼薬で融解を止めようとすると、背景にある血管炎の活動性を見逃し、患者を失明と生命の危険の両方に晒す。感染性角膜潰瘍を鑑別せずにを開始してはならない。

定義と用語の整理

「輪部の近くが白く濁って融ける」という所見は、角膜潰瘍のいずれとも部位が重なるが、を伴うかどうかで対応が根本的に異なる。患者は眼痛を訴える。

部位・所見 炎の合併 との関係
(本ノート) に沿う。浸潤に乏しく融解が主体 多い 関節リウマチなど全身性血管炎が背景にあることが多い
感染性角膜潰瘍 中心・傍中心寄りが多く、部位を選ばない。を伴いやすい を伴わない
と同じく輪部に沿う 伴わない 。定義上原因不明で全身自己免疫疾患を伴わない1
輪部との間にを残し、実質病変が上皮欠損に先行する 伴わない 黄色ブドウ球菌抗原へのIII型・を伴わない

感染性角膜潰瘍との切り分けが実務上の核心である。 感染性は中心寄りでを伴いやすいのに対し、は輪部に沿い、浸潤が乏しく融解が主体である。この違いがそのままステロイドの可否を分ける。

病態生理

なぜ周辺部に起こるのか、が機序の核心である。角膜中央部はだが、には角膜側へ0.5mm入り込む血管とリンパ管があり、免疫グロブリン・・マクロファージ・リンパ球・形質細胞が到達できる2。全身性血管炎・で形成された免疫複合体はこの輪部の血管網に沈着して補体を活性化し、好中球とマクロファージを呼び込む——と同じ機序である。動員された好中球・マクロファージはを放出し、を融解させる2

💡 血管の無い中央部にはこの経路が届かない。 そのため病変は輪部に沿うにとどまり、中央部は保たれたまま進行縁だけが中央側へ張り出す。この分布パターン自体が、部位を選ばない感染性角膜潰瘍との鑑別点になる。

背景疾患

疾患 位置づけ
関節リウマチ 最多の背景疾患。PUKの出現は状主体の病期から血管炎期への移行を示唆し、無治療での予後は不良である3
ANCA関連血管炎(など) 上気道・肺・腎のと並存しうる。全身免疫抑制の適応が明確な群
背景疾患として記載される
耳介・気道軟を伴うの一部として出現しうる
頻度は低いが背景疾患として記載される
を伴わないとしての型。炎を伴わない点でも区別される1

⚠️ 見逃してはいけないもの

危険度の高い順に並べる。

  • ⚠️ 背景の全身性血管炎が生命予後を規定する。 全身性血管炎を伴うの死亡率は無治療ではおよそ40〜50%に達するが、を行えばおよそ8%まで下がる3。角膜の所見だけを診て終わらせてはならない。
  • ⚠️ 関節リウマチにPUKが出現することは血管炎期への移行を示唆する。 状が落ち着いていても、PUKの出現は疾患活動性の質的な変化として扱う3
  • ⚠️ を鑑別せずにを開始しない。 感染性を全身性血管炎と誤認して全身免疫抑制を始めると、感染を制御不能なまま悪化させる。局所ステロイドも自己免疫疾患に伴う例ではのリスクを高めうるため慎重に用いる2
  • ⚠️ は数日単位で進行しうる。 穿孔を伴う例の1年死亡率は片眼性で24%・両眼性で50%に達する2

鑑別の進め方

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='corneal limbus'>角膜輪部</span>に沿う<span class='jp-term jp-term-diagram' title='crescent-shaped'>三日月状</span>の<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='parenchymal thinning'>実質菲薄化</span>・上皮欠損に気づく"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Anamnesis'>病歴聴取</span><br>関節痛・皮疹・腎障害・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='auricular chondritis'>耳介軟骨炎</span>・<br>消化器症状・血管炎の既往"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='slit-lamp examination'>細隙灯検査</span><br>浸潤の性状・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sclera'>強膜</span>炎の合併・<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='hypopyon'>前房蓄膿</span>の有無"]
    C --> D{"感染性を疑うか"}
    D -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='suppurative infiltrate'>膿性浸潤</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hypopyon'>前房蓄膿</span>・<br>中心寄り"| E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='corneal scraping'>角膜擦過検体</span>を採取し<br>感染性角膜潰瘍として対応"]
    D -->|"浸潤に乏しく融解主体・<br>輪部に沿う"| F["ANCA・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='rheumatoid factor, RF'>リウマトイド因子</span>・<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='anti-cyclic citrullinated peptide antibody'>抗CCP抗体</span>・補体・<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='systemic disease'>全身疾患</span>のスクリーニング"]
    F --> G{"背景疾患が同定されるか"}
    G -->|"はい"| H["背景疾患に応じた<br>全身免疫<span class='jp-term jp-term-diagram' title='suppressive therapy'>抑制療法</span>へ"]
    G -->|"いいえ"| I["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Mooren ulcer'>Mooren潰瘍</span>として<span class='jp-term jp-term-diagram' title='diagnosis of exclusion'>除外診断</span>"]

対応の考え方

感染性を鑑別したうえで、点眼だけでは融解を止められないという前提から組み立てる。

  • 全身免疫が主体である。 で治療を開始し1、穿孔の危険がある例・ステロイド不応例・関節リウマチに伴う例ではリツキシマブなどのを追加する23
  • ⚠️ 局所ステロイドは融解を助長しうるため慎重に扱う。 自己免疫疾患に伴う例では局所副腎皮質ステロイドがのリスクを高めうる2
  • 局所では阻害を狙った処置を併用し、穿孔・切迫穿孔にはを用いる2
  • 感染性角膜潰瘍が除外できていない段階では、全身免疫抑制よりも感染の除外を優先する。

まとめ

  • は角膜の病気の顔をした全身性血管炎であり、点眼薬だけで対応してはならない。
  • には血管・リンパ管があり免疫複合体が到達・沈着できるため、と好中球・マクロファージ由来のが輪部に沿うの融解を起こす。の中央部はこの経路が届かず保たれる。
  • 背景疾患は関節リウマチが最多で、ANCA関連血管炎、が続く。を伴わないの型である。
  • 最大の危険は背景の全身性血管炎が生命予後を左右することで、無治療での死亡率はおよそ40〜50%に達する。も数日単位で進行しうる。
  • 対応の中心は全身免疫で、局所ステロイドは融解を助長しうるため慎重に扱う。を鑑別せずにステロイドを開始しない。

出典

  1. 1.Peripheral Ulcerative Keratitis(American Academy of Ophthalmology (EyeWiki)・2026)免疫複合体による補体活性化と好中球・マクロファージの走化性亢進を介してコラゲナーゼ・プロテアーゼが角膜実質を破壊する機序であること、関節リウマチが患者の34〜42%を占め最多の背景疾患であること、Mooren潰瘍は定義上原因不明で全身自己免疫疾患を伴わない除外診断であること、初期治療はプレドニゾン1mg/kg/日またはメチルプレドニゾロン1g/日を3日間投与するパルス療法であること、穿孔の危険がある例・ステロイド不応例・関節リウマチに伴う例ではメトトレキサートなどの免疫抑制薬を要すること、局所ステロイドは極めて慎重に用いるべきことを確認した閲覧 2026-08-03
  2. 2.Peripheral Ulcerative Keratitis(NCBI Bookshelf (StatPearls)・2024)角膜輪部には角膜側へ0.5mm入り込む血管が存在し免疫グロブリン・マクロファージ・リンパ球・形質細胞が供給されるため免疫複合体沈着とマトリックスメタロプロテアーゼ上昇・組織メタロプロテアーゼ阻害因子低下による実質融解が中心角膜でなく周辺部で起こること、周辺部潰瘍性角膜炎の約53%が血管炎・膠原病に伴い非感染性のうち関節リウマチが34%・Mooren潰瘍が31.5%を占め感染性が19.7%を占めること、多発血管炎性肉芽腫症の寛解導入はシクロホスファミドと全身副腎皮質ステロイドが中心でシクロホスファミドに反応しなければリツキシマブを検討すること、局所副腎皮質ステロイドは自己免疫疾患に伴う例で角膜穿孔のリスクを高めうるため慎重に用いるべきこと、穿孔が3mm未満であれば角膜用接着剤と治療用コンタクトレンズが選択肢になること、角膜穿孔を伴う例の1年死亡率が片眼性で24%・両眼性で50%に達することを確認した閲覧 2026-08-03
  3. 3.Peripheral Ulcerative Keratitis(Merck Manual Professional Edition・2026)感染性角膜潰瘍が上皮欠損の後に混濁が生じるのに対し周辺部潰瘍性角膜炎は混濁が先行してから潰瘍が形成される点で鑑別できること、背景疾患として関節リウマチ・多発血管炎性肉芽腫症・再発性多発軟骨炎が記載されていること、治療は全身シクロホスファミドなどの免疫抑制薬やリツキシマブ・エタネルセプトなどの生物学的製剤が角膜炎と生命を脅かす血管炎の双方に対する中心であること、全身性血管炎を伴う周辺部潰瘍性角膜炎の死亡率は無治療ではおよそ40〜50%であるのに対し全身細胞傷害性療法を行えばおよそ8%に低下することを確認した閲覧 2026-08-03