画像所見ノート一覧へ

Imaging findings · Published

反転ハロー徴候

Reversed halo sign

別名
逆ハロー徴候atoll signアトール徴候
臓器系
呼吸器
科目
Internal MedicineMedical Microbiology
トピック
内科学 S-05:間質性肺疾患微生物学 4/10:接合菌症(フィコミセス症)。アスペルギルス属とペニシリウム属
関連疾患
多発血管炎性肉芽腫症

🧠 全体像:反転(アトール徴候)が示すのは病名ではなく「肺の器質化パターン」という形態そのものである。に比較的よくみられる所見として紹介されることが多いが、臨床の実務でとくに重要なのは逆の文脈——好中球減少患者でこの所見をみたら、まず侵襲性肺真菌症(とりわけ)を疑うという使い方である。が決めるのは良悪性の断定ではなく、免疫状態を踏まえて「次に何を調べるか」である。

所見の定義

胸部CTで、中心部のを、部分的または完全なのリング(輪状または)が取り囲む局所的な円形〜楕円形の陰影1。リングの辺縁が平滑か、結節状の壁を伴うかという性状は原因疾患を絞る手掛かりになる(後述)。

⚠️ 当初はに比較的特徴的な所見として報告されたが、ではない。 感染症、、炎症性疾患、腫瘍など多様な病態で生じうる形態パターンであり、単独では確定診断にならない1

モダリティと写り方

反転は通常、で評価される所見である。単純胸部X線では構造の輪郭やの境界を捉えにくく、実務上はCTでの評価が前提になる。造影の有無は判定に必須ではないが、腫瘍性病変やが疑われる場合は造影併用で内部構造を評価する。

リスクを上げる形態

手がかり 示唆される病態
リングに結節状の壁や内部の結節性を伴う (結核など)、真菌症2
免疫不全・好中球減少を背景に急速に出現 侵襲性肺真菌症(
末梢・胸膜下に分布し、出血を伴う 肺塞栓症の項を参照)
両側性・遊走性で、抗菌薬に反応しない経過
としての全身所見を伴う

好中球減少患者でこの所見をみたら、侵襲性肺真菌症(とりわけ)をまず疑う。 の化学療法中にを発症した患者を対象とした後ろ向き研究では、発症早期という段階からこの所見が高頻度にみられ、結節や胸水など他の画像所見が出そろう前の手掛かりになりうることが確認されている3。好中球減少患者に新たな肺陰影が出現した際は、抗菌薬不応の経過を待たずこの所見の有無を積極的に確認する意義がある。

評価の進め方

flowchart TD
    A["胸部CTで反転<span class='jp-term jp-term-diagram' title='halo sign'>ハロー徴候</span>を確認"] --> B{"免疫不全・好中球減少を<br>背景に持つか"}
    B -->|"あり"| C["侵襲性肺真菌症<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mucormycosis'>ムーコル症</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='invasive aspergillosis'>侵襲性アスペルギルス症</span>)を第一に疑う"]
    C --> D["血液培養・血清学的検査・<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='bronchoalveolar lavage (BAL)'>気管支肺胞洗浄</span>・生検を急ぐ"]
    B -->|"なし"| E["臨床経過・既往を確認"]
    E --> F{"抗菌薬不応の遷延性肺炎様陰影か"}
    F -->|"はい"| G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='organizing pneumonia'>器質化肺炎</span>を疑う"]
    F -->|"いいえ"| H["結核・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sarcoidosis'>サルコイドーシス</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pulmonary infarction'>肺梗塞</span>・<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='granulomatous vasculitis'>肉芽腫性血管炎</span>など他疾患を検討"]
    G --> I["過去画像と比較し<br>新規出現・遊走性の有無を確認"]
    H --> I
  • 過去画像との比較が鑑別の起点になる。 新規に出現した所見か既存陰影の形態変化かでの評価が変わり、免疫不全患者での新規出現はな経過観察の対象にならない。
  • リング内部・辺縁の結節性、周囲の広がり方、他の陰影(結節、胸水、)の有無を併せて評価する。

紛らわしいもの

  • 肺塞栓症に伴う:末梢病変の辺縁が反転ハロー様に見えることがあるが、の性状を反映しており、を伴う肺塞栓症の臨床文脈で解釈する。
  • 結核:反転を呈する疾患の中で頻度が高い一群であり、リングの辺縁に結節状の壁や内部結節性を伴う点がとの鑑別点として報告されている2
  • :多発性腫がを形成しうる。全身のの分布やの他の所見と合わせて判断する。
  • :ANCA関連血管炎の肺病変としても報告があり、上気道・腎症状など全身所見の有無を確認する。
  • 肺癌:腫瘍の壊死や周囲の反応性変化がに見えることがあり、経過観察でなく結節の増大傾向・性状変化を評価する。

まとめ

  • 反転(アトール徴候)は、で中心のを辺縁のが取り囲む所見であり、当初はの所見として報告されたがではない
  • 単純X線では評価しにくく、CTでの評価が前提になる所見である。
  • 好中球減少患者でこの所見をみたら侵襲性肺真菌症(とりわけ)を第一に疑うべきで、他の所見に先行して早期に出現しうる。
  • 、結核、、肺癌など多様な疾患で生じるため、リングの辺縁性状・分布・臨床背景・過去画像との比較を組み合わせて解釈する。

出典

  1. 1.Fleischner Society: Glossary of Terms for Thoracic Imaging(Fleischner Society(Radiology誌)・2024)atoll徴候(reversed halo sign)が、限局性のすりガラス影を部分的または完全なコンソリデーションのリングが取り囲む所見と定義されること、当初は器質化肺炎で記載された非特異的な徴候であり、その後さまざまな肺疾患で報告されていることを、Radiology誌2024年版Fleischner Society用語集のatoll項本文(4文)で確認した。閲覧 2026-08-11
  2. 2.Reversed Halo Sign: Presents in Different Pulmonary Diseases(PLOS ONE(Zhan X, et al.)・2015)異常なHRCT1546件のうち反転ハロー徴候を呈した108例の内訳が肺結核40例・器質化肺炎43例・肺癌16例・サルコイドーシス7例・肺クリプトコッカス症1例・多発血管炎性肉芽腫症1例であったこと、肉芽腫性疾患(特に結核)で非肉芽腫性疾患より高頻度にみられたこと、活動性結核ではリングの辺縁に結節状の壁や内部の結節性を伴う点が器質化肺炎との鑑別点として報告されていることを確認した。閲覧 2026-08-11
  3. 3.The Reversed Halo Sign: Pathognomonic Pattern of Pulmonary Mucormycosis in Leukemic Patients With Neutropenia?(Clinical Infectious Diseases(Legouge C, et al.)・2014)2003〜2012年に急性白血病の化学療法を受けた752例中に肺ムーコル症と診断された症例を後ろ向きに解析し、発症早期の段階から反転ハロー徴候が高頻度にみられ、他の画像所見(結節・胸水)よりも早期に出現しうること、好中球減少期の白血病患者でこの所見をみたら侵襲性肺真菌症(とりわけムーコル症)を積極的に疑う契機になることを確認した。閲覧 2026-08-11