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Disease Atlas · 呼吸器 · 疾患

肺動脈瘤

Pulmonary artery aneurysm

別名
PAA
臓器系
呼吸器循環器
科目
Internal MedicineCardiology
トピック
内科学 S-47:血管炎循環器内科 A-14:心房・心室中隔欠損と先天性心疾患
治療薬
メチルプレドニゾロンシクロホスファミドインフリキシマブ
原因微生物
Mycobacterium tuberculosis
症状
喀血胸痛
元疾患
ベーチェット病
原因となる疾患
結核肺高血圧症

🧠 全体像は、先天性・感染性・/医原性・血管炎性という病因の異なる4系統が「肺動脈壁の局所的な拡張」という同じ形態的結果に収束する病態である。稀だが致死的な喀血を来しうる点で臨床的重みは病因を問わず共通する一方、は病因で正反対になりうる——その最たる例がで、血栓症を合併していても抗凝固薬ではなく免疫を主体とする。「瘤=血栓=抗凝固」という反射的な対応が、ではむしろ致死的な破裂・喀血を招きかねない。

病因・分類

は真の瘤(血管壁3層すべてを含む)と、壁の一部を欠きがより高い(偽動脈瘤)に分けられる1

病因群 代表例 機序
先天性 疾患 や弁疾患による血流量増加・血行動態的の増大1
感染性 Rasmussen動脈瘤(結核)、に伴う感染性 結核性空洞に隣接する末梢肺動脈壁の炎症性破綻、による血管壁感染1
・医原性 (Swan-Ganzカテーテル)留置、心胸部外科手術、留置 血管壁の直接損傷1
血管炎性 、Hughes-Stovin症候群 血管壁(特に中膜)の炎症により壁が血管炎の原因の中では最も頻度が高い1

によるは、に伴う(PAH-CHD、その最重症型が)が主肺動脈をに拡張させる経路でも生じうる。

Hughes-Stovin症候群

Hughes-Stovin症候群は、多発性瘤、喀血を特徴とする稀な血管炎で、口腔・を欠く点を除けばと臨床像が重なり、の不完全型(血管型)と位置づけられている2。診断確定には他疾患(、結合組織病など)の除外が優先され、治療の考え方は下記の関連に準じる。

臨床像

  • 無症候のまま画像検査で発見されることもあれば、喀血(軽微なものから致死的なまで)、胸痛、咳嗽で発見されることもある。
  • ⚠️ 喀血は瘤の破裂・血管へのを示唆するであり、量にかかわらず精査を急ぐ。

診断

造影CTで診断を確定する。CT上の正常成人主肺動脈径はおよそ29mmまで、区域間肺動脈径はおよそ17mmまでとされ、これを超える限局性の拡張を瘤として評価する1。真の瘤かかの区別は、評価との決定に影響する。

治療

治療は病因によって主軸が異なるため、瘤を見つけたら病因の同定を急ぐ。

flowchart TD
    A["造影CTで<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pulmonary artery aneurysm'>肺動脈瘤</span>を確認"] --> B{"病因は何か"}
    B -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Behçet disease'>Behçet病</span>・Hughes-Stovin症候群"| C["免疫<span class='jp-term jp-term-diagram' title='suppressive therapy'>抑制療法</span>が主体<br>抗凝固薬は原則使わない"]
    B -->|"感染性(Rasmussen動脈瘤など)"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Antimycobacterials'>抗結核薬</span>・抗菌薬治療"]
    B -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='congenital heart disease (CHD)'>先天性心疾患</span>関連"| E["基礎疾患・肺高血圧の管理"]
    C --> F{"喀血・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='rupture risk'>破裂リスク</span>が高いか"}
    D --> F
    E --> F
    F -->|"はい"| G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='endovascular treatment'>血管内治療</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='coil embolization'>コイル塞栓術</span>など)を優先<br>外科的切除は限定的適応"]
    F -->|"いいえ"| H["経過観察・原疾患治療の継続"]

Behçet病・Hughes-Stovin症候群:免疫抑制療法が主体、抗凝固薬は避ける

⚠️ に伴うでは、血栓症を合併していても抗凝固薬を第一に使わない。 その理由は二重である。

  1. 血栓の性質が違う。 内血栓は、他部位からの塞栓ではなく、血管壁(中膜)の炎症を背景にその場で直接形成される血栓症であり、による通常の血栓塞栓症とは病態が異なる3
  2. 抗凝固薬が破裂・喀血のリスクを高めうる。 の継続が喀血エピソードの反復に寄与したとする報告があり2、瘤のを増加させうるため通常は不要とされる3

したがって治療の中心は炎症そのものを制御する免疫に置く。高用量の併用で瘤が縮小し、血栓が完全に消失したとする報告があり3、Hughes-Stovin症候群でも同様の免疫など)で瘤の安定化が得られたと報告されている2全体の血管病変管理と同じく、重症例ではなどのも選択肢になる。

感染性・先天性:原因治療が主体

Rasmussen動脈瘤ではによる原疾患治療を、に伴う感染性では適切な抗菌薬治療を並行する。関連のは、基礎疾患・肺高血圧の管理を主軸とする。

血管内治療:病因を問わない喀血対策

喀血やが高い症例では、病因を問わずなどのがリスクの低さから第一選択とされる1。外科的切除はアクセス困難例やしない症例に限定される。

まとめ

  • は先天性・感染性(Rasmussen動脈瘤など)・/医原性(など)・血管炎性(が最多)という異なる病因が同じ形態的結果に至る病態で、喀血・破裂という共通の致死的合併症を持つ。
  • Hughes-Stovin症候群は口腔・を欠くの不完全型(血管型)と位置づけられる。
  • 診断は造影CTで、主肺動脈径約29mm・区域間肺動脈径約17mmを超える限局性拡張を評価する。
  • ⚠️ 関連のでは、血栓症を合併しても抗凝固薬を使わず、血管壁の炎症局所で血栓が直接形成されるという病態に沿って免疫を主体とする——瘤破裂による致死的喀血のリスクが血栓症のリスクを上回るためである。
  • 喀血・の高い症例では、病因によらずなどのが第一選択となる。

出典

  1. 1.Pulmonary artery aneurysms: diagnosis & endovascular therapy(Cardiovascular Diagnosis and Therapy(Park HS, Chamarthy MR, Lamus D, Saboo SS, Sutphin PD, Kalva SP)・2018)先天性心疾患(動脈管開存・心室中隔欠損・心房中隔欠損・肺動脈弁疾患)が先天性肺動脈瘤の主因であること、Behçet病が肺動脈瘤の血管炎性原因の中では最も頻度が高いと報告されていること("Of the vasculitides"限定の記載)、結核性空洞に隣接する末梢肺動脈の破綻によるRasmussen動脈瘤や感染性心内膜炎に伴う感染性仮性瘤、Swan-Ganzカテーテル留置・心胸部外科手術・胸腔ドレーン留置などの外傷性・医原性原因があること、CT上の正常主肺動脈径が29mm、区域間肺動脈径が17mmまでであること、症候性・破裂リスクのある症例で血管内治療(コイル塞栓術など)がリスクの低さから第一選択とされることを本文で確認した。閲覧 2026-08-11
  2. 2.In situ thrombosis in pulmonary arterial aneurysms due to Behçet's disease and efficacy of immunosuppressive therapy(Multidisciplinary Respiratory Medicine・2012)Behçet病の肺動脈瘤内血栓症では抗凝固療法が瘤破裂のリスクを高めうるため不要とされること、血栓の本態が中膜栄養血管の炎症に由来しその場で直接形成される血栓症であるため抗炎症薬・免疫抑制薬が治療の中心となること、パルス大量メチルプレドニゾロン(1日250mg×3日間)と月1回のシクロホスファミド(1,000mg)による治療2か月後に肺動脈瘤の縮小と血栓の完全消失が得られたことを症例と考察から確認した。閲覧 2026-08-11
  3. 3.Hughes-Stovin Syndrome and the Acute Management of Recurrent Pulmonary Aneurysms(Cureus(Cole A, Mandava A)・2022)Hughes-Stovin症候群がBehçet病の不完全型(口腔・外陰部潰瘍を欠く血管型)と考えられており、多発性深部静脈血栓症・肺動脈瘤/気管支動脈瘤・喀血を特徴とすること、抗凝固療法の継続が喀血エピソードの反復に寄与しうること、免疫抑制療法(シクロホスファミド・ミコフェノール酸モフェチルなど)が瘤の安定化をもたらしたと報告されていることを確認した。閲覧 2026-08-11