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Disease Atlas · 感染症 · 疾患

肺吸虫症

Paragonimiasis

別名
Paragonimus westermani感染症肺ジストマ症
臓器系
感染症呼吸器
科目
Medical Microbiology
トピック
微生物学 5/23:真菌性・寄生虫性の肺感染の病原体(一覧)微生物学 5/11:人獣共通感染症(一覧)とその予防微生物学 4/23:蠕虫の一般的特徴と分類
鑑別疾患
結核
合併症
胸水
治療薬
プラジカンテルビチオノール
原因微生物
Paragonimus westermani
症状
血痰・喀血咳嗽胸痛発熱頭痛痙攣
検査値
好酸球増多
適応薬
プラジカンテル

🧠 全体像:は「結核とされやすい肺の寄生虫症」という1点を軸に読む。原因であるParagonimus westermaniは産カニ・ザリガニの生食から感染し、は腹腔→横隔膜→胸腔を経て肺実質へ直接移行する。慢性の・咳嗽・胸痛に遊走性の胸水が加わり、画像・臨床像とも結核に酷似するのが最大の診断上の罠である。まれにが肺以外へすると、頭痛・痙攣を来す脳性という重篤な病型になる——系統的解析では発表症例の1.7%が痙攣・関連の転帰を経験している。治療はが第一選択で、かつて主力だったから置き換わった。

感染経路と疫学

生活環の詳細(→産カニ・ザリガニという2つの中間宿主、が腹腔・横隔膜を経て肺実質へ移行する経路)はParagonimus westermaniの項に譲る。ここでは疾患としての要点のみ確認する。

  • 生・加熱不十分な産カニ・ザリガニ(サワガニ・モクズガニなど)の摂取で感染する。酒漬け・酢漬けなど不十分な下処理でもは失活しない。
  • 東アジア・東南アジアに集中して流行するが、非流行地でも移民集団や輸入食材を介した症例が報告される。
  • 予防にはカニ・ザリガニを中心温度約63℃(145°F)以上に加熱することが有効である1。

臨床像

慢性の・喀血、咳嗽、胸痛、発熱が主体で、好酸球増多を伴うことが多い。肺実質に定着した成虫はに線維性の被膜を伴う嚢胞を形成し、胸膜への波及で胸水・気胸を生じる——片側から対側へ遊走することが特徴とされ、同にとどまる結核性胸水との鑑別点の一つになる。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='schistosomulum'>幼若虫</span>が腹腔→横隔膜→胸腔を経て肺実質へ移行"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='peribronchial'>気管支周囲</span>に<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fibrous cap'>線維性被膜</span>を伴う嚢胞を形成"]
    B --> C["慢性の炎症・機械的刺激"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hemoptysis'>血痰</span>・咳嗽・胸痛・発熱"]
    C --> E["胸膜への波及"]
    E --> F["遊走性の胸水・気胸"]
    A --> G["移行経路からの<span class='jp-term jp-term-diagram' title='migrate/displace into'>迷入</span>(まれ)"]
    G --> H["脳性<span class='jp-term jp-term-diagram' title='paragonimiasis'>肺吸虫症</span>:頭痛・痙攣・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='focal signs'>巣症状</span>"]

⚠️ 移行過程でのにより、肺以外の臓器に異所性病変を作ることがある。 最も重篤なのが脳性で、頭痛・痙攣・を呈する。発表された症例5,302例の系統的解析では、頭痛を来した転帰が614例(11.58%)、痙攣・関連の転帰が90例(1.70%)にみられた(1例が複数の転帰を経験しうるため延べ数である)2。皮下に移動性腫瘤として触知される皮下パラゴニミア症の報告もある。

診断

⚠️ 臨床像・画像とも結核に酷似するため、に反応しない「結核」を診たら本症を疑う。 渡航歴・喫食歴(流行地でのカニ・ザリガニ生食)の聴取と、や特異的な顕微鏡・血清学的検査による鑑別が必要になる3。

  • 喀痰または胸水中の検出が基本。単回検査での感度は30〜40%にとどまるため、複数回の検体採取で感度を上げる3。した虫卵を嚥下していればでも検出できる1。
  • で虫卵を確認することもある1。
  • P. westermani抗原に基づく特異的・高感度な血清抗体検査も利用できる1。
  • 画像所見:・環状影・末梢の線状陰影に加え、遊走性の胸水・気胸。ではの移動経路に沿った影・小嚢胞、がみられる3。

治療

⭐ が第一選択である。 日本の電子添文ではに対し1回20mg/kgを1日2回、2日間投与する4。

⚠️ はかつての主力だったが、現在はに置き換わっている。 添付文書が存在しない薬で50mg/kg隔日×15日間という長い治療期間を要したため、単回〜数日で完結するへの移行はこの疾患の治療史における大きな転換点である。

まとめ

  • はParagonimus westermaniによる感染で、生・加熱不十分な産カニ・ザリガニの摂取で生じる。
  • は腹腔→横隔膜→胸腔を経て肺実質へ直接移行し、慢性の・喀血・咳嗽・胸痛に片側から対側へ遊走する胸水が加わる。
  • 臨床像・画像とも結核に酷似するのが最大の診断上の罠で、に反応しない「結核」では本症を疑う。
  • まれに移行経路からのにより脳性(頭痛・痙攣)などの異所性病変を来す。系統的解析では発表症例の1.7%が痙攣・関連の転帰を経験している。
  • 診断は喀痰・胸水中の検出(単回感度30〜40%)と血清抗体検査。治療はが第一選択で、かつて主力だったから置き換わった。

出典

  1. 1.Clinical Overview of Paragonimiasis(Centers for Disease Control and Prevention・2024)肺吸虫症の診断が喀痰中の虫卵検出を基本とし、咳で喀出した虫卵を嚥下した場合は便からも検出されうること、組織生検で虫卵を確認することもあること、P. westermani抗原に基づく特異的・高感度な抗体検査も利用できること、感染経路が生・加熱不十分なカニ・ザリガニの摂取であり予防にはカニ・ザリガニを中心温度約63℃(145°F)以上に加熱することが有効であることを確認した閲覧 2026-09-07
  2. 2.Estimation of disability weight for paragonimiasis: a systematic analysis(Infectious Diseases of Poverty(Feng Y, Fürst T, Liu L, Yang GJ)・2018)発表された肺吸虫症症例5,302例を対象とした系統的解析で、肺病変を来した転帰が1,425例(26.88%)、胸膜病変を来した転帰が1,341例(25.29%)、頭痛を来した転帰が614例(11.58%)、痙攣・脳脊髄炎関連の転帰が90例(1.70%)であったこと(1例が複数の転帰を経験しうるため合計は症例総数を超える延べ数であること)を確認した閲覧 2026-09-07
  3. 3.Paragonimiasis Acquired in the United States: Native and Nonnative Species(Clinical Microbiology Reviews(Diaz JH)・2013)肺吸虫症の画像所見として肺浸潤影・環状影(ring sign)・末梢の線状陰影に加え、胸水・気胸がみられ、CTでは幼若虫の移動経路に沿った索状影・小嚢胞、小結節が描出されること、喀痰中虫卵検出の感度が単回検査で30〜40%にとどまり複数回の検体採取で感度が上がること、臨床像が結核と紛らわしくツベルクリン反応や特異的な顕微鏡・血清学的検査による鑑別が必要になることを確認した閲覧 2026-09-07
  4. 4.ビルトリシド錠600mg 電子添文(2023年10月改訂・第2版)(バイエル薬品(PMDA 医療用医薬品情報)・2023)日本の電子添文が肺吸虫症をプラジカンテルの承認適応の一つと定めていること、用法用量が1回20mg/kgを1日2回、2日間投与であることを確認した閲覧 2026-09-07