組織病理学

組織病理学 · H1-054

肺結核(HE染色)

Tuberculosis pulmonis (HE) - LUNG

描出疾患
結核

🧠 全体像:肺結核では、中心のを、、リンパ球が囲む壊死性肉芽腫を形成する。HE染色はの構築を示すが、やだけではを証明できないため、・・培養と組み合わせる。

標本の要点

項目 所見
臓器 肺
染色 ・染色(HE)
中心 無構造での好酸性
と
、慢性例では線維芽細胞・線維化
周囲 比較的正常な肺胞構造

肉芽腫形成

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Mycobacterium tuberculosis'>結核菌</span>が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='alveolar macrophages'>肺胞マクロファージ</span>へ侵入"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='food vacuole'>食胞</span>成熟を妨げ細胞内で生存"]
    B --> C["T細胞性免疫応答"]
    C --> D["IFN-γでマクロファージを活性化"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='epithelioid cells'>類上皮細胞</span>化・巨細胞形成"]
    E --> F["肉芽腫で病原体を封じ込める"]
    F --> G["中心に<span class='jp-term jp-term-diagram' title='caseous necrosis'>乾酪壊死</span>"]
    G --> H["線維化・石灰化して治癒"]
    G --> I["融解・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cavitation'>空洞化</span>して進展"]

観察の順序

低倍率

  1. 正常に近い肺胞と、丸いの境界を確認する。
  2. 肉芽腫中心の淡い無構造なを探す。
  3. 壊死を囲む細胞層と、その外側のリンパ球・線維化を追う。

高倍率

所見 読み方
核やを失った細粒状の好酸性物質
豊富な淡い細胞質と長円形核をもつ
核が細胞辺縁に弧状・に並ぶ
リンパ球 肉芽腫外周の小型細胞
線維化 古い病変で外周にと線維芽細胞が増える
正常肺胞 薄いと開存したを保つ

は、と壊死を単純に混ぜたものとして分類するより、結核などでみられる独特の・無構造な壊死パターンとして覚える。

初感染結核の名称

用語 正確な意味
Ghon巣 初感染時の肺実質病変
Ghon複合 Ghon巣と、所属リンパ管・同側病変の組合せ
Ranke複合 治癒したGhon複合が線維化・石灰化したもの

「肺病変から、リンパ節炎へ広がる」という流れはGhon複合に対応する。Ranke複合はその治癒・石灰化後の名称であり、両者を同義にしない。

特異性と確定

所見・検査 解釈
結核を強く示唆するが、や真菌症などでも生じうる
の形態であり、結核特異的ではない
抗酸菌を赤い桿菌として検出するが、菌種確定にはならない
の迅速な検出と一部評価に有用
培養 と薬剤感受性評価に重要

7か国500例の肺肉芽腫を肺病理専門医が見直した研究では、病因が特定できたのは58%(290例)にとどまり、抗酸菌または真菌感染が25%、が27%で、42%はを尽くしても病因を決められなかった1。も陰性で結核を否定できない——Xpert MTB/RIFのは培養を基準に85%(特異度98%)だが、塗抹陰性・培養陽性例では67%まで落ちる2。それでもは、結核が疑われる者の初期検査として塗抹顕微鏡ではなく推奨を置いている3。

抗酸菌の直接像は H1-055:肺結核() で確認する。

まとめ

  • 中心、、、リンパ球、線維化をに読む。
  • は結核を示唆するが、それだけで菌を確定しない。
  • Ghon複合と、治癒・石灰化したRanke複合を区別する。
  • 、、培養で病原体を確認する。

出典

  1. 1.Causes of pulmonary granulomas: a retrospective study of 500 cases from seven countries(Journal of Clinical Pathology・2012)7か国10施設の肉芽腫を含む肺生検・切除500例を肺病理専門医が見直した研究。原因が特定できたのは58%(290/500)にとどまり、内訳はサルコイドーシス136例(27%)、抗酸菌または真菌感染125例(25%)。抗酸菌は米国外の19%に対し米国内は8%、真菌は米国内19%に対し米国外4%と地域で逆転した。真菌の多くは組織像で、抗酸菌の多くは培養で同定された。42%(210/500)は組織学的検索を行っても病因を決定できなかった閲覧 2026-08-24
  2. 2.Xpert MTB/RIF and Xpert MTB/RIF Ultra for pulmonary tuberculosis and rifampicin resistance in adults(Cochrane Database of Systematic Reviews・2019)培養を基準としたXpert MTB/RIFの統合感度は85%(95%CrI 82〜88%)、特異度98%(97〜98%)(70研究・37,237例)。塗抹陽性例では感度98%(97〜98%)だが塗抹陰性・培養陽性例では67%(62〜72%)にとどまる。Xpert Ultraは感度88%(85〜91%)/特異度96%(94〜97%)でXpert MTB/RIFの83%/98%と対比される。核酸増幅検査の陰性は結核を否定しないため培養と薬剤感受性検査が要る閲覧 2026-08-24
  3. 3.WHO consolidated guidelines on tuberculosis. Module 3: diagnosis(World Health Organization・2025)結核が疑われる者の初期診断検査としてWHO推奨迅速分子検査(mWRD)を用いることを推奨する。塗抹顕微鏡検査を初期検査の位置に置かない閲覧 2026-08-24