組織病理学

組織病理学 · H1-053

リウマチ性心筋炎

Myocarditis rheumatica (HE)

描出疾患
リウマチ熱・リウマチ性心疾患

🧠 全体像:では、心筋にAschoff体が形成される。中心のを、、形質細胞、であるが囲む病変で、感染性肉芽腫ではなく、咽頭炎後の免疫傷害を反映する。

標本の要点

項目 所見
臓器 心筋
染色 ・染色(HE)
特徴的病変 Aschoff体
中心 好酸性の・壊死
周囲 、、形質細胞
巨細胞 複数核をもつAschoff巨細胞を伴うことがある

発症機序

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='group A Streptococcus'>A群レンサ球菌</span>咽頭炎"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='somatic antigen'>菌体抗原</span>に対する免疫応答"]
    B --> C["心組織との<span class='jp-term jp-term-diagram' title='molecular mimicry'>分子相同性</span>"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cross-reactivity'>交差反応性</span>抗体とT細胞"]
    D --> E["心内膜・心筋・心膜の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='immune-mediated'>免疫介在性</span>傷害"]
    E --> F["心筋にAschoff体"]
    E --> G["弁膜に小型<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sterile vegetation'>無菌性疣贅</span>"]
    E --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fibrinous pericarditis'>線維素性心膜炎</span>"]

病変は生きたレンサ球菌が心筋内で増殖してできるのではない。先行咽頭感染に対する免疫反応が心組織へする。組換えM蛋白だけで免疫したの50%に弁膜炎と心筋炎が生じ、と疣贅様病変まで再現された。そのT細胞はには反応したが骨格筋ミオシンには反応せず、とのが病変を作りうることを示している1。

Aschoff体の読み方

構成要素 形態と意味
中心の強い外基質
大型の。クロマチンが中央に波状に集まり「いもむし状核」を示す
Aschoff巨細胞 に似た核を複数もつ
小型核をもち、病変周囲に集まる
形質細胞 偏在核と核周明庭を示しうる

⚠️ 自体を「巨細胞」と定義しない。通常は単核ので、多核化したものをAschoff巨細胞として区別する。弁手術検体15例の免疫染色でも、とAschoff細胞はいずれもマクロファージマーカーで明瞭に染まった。これらは分裂像を示しPCNA陽性で、はではなく少なくとも部分的にによってできると考えられている2。

💡 「いもむし状核」だけでと決めない。 ヒト胎児・新生児心では、このクロマチン像を示す小胞状核が心筋の主要な細胞型として観察され、同じ像はとその周囲の細胞にも見られた。この核所見は特定の細胞型ではなく細胞の未熟性を示すものとされている3。核の形だけを頼りにせず、を中心にもつAschoff体という病変の文脈のなかで読む。

💡 Aschoff体の有無は予後と結びつく。 心臓手術を受けた118例では、術前の通常の・血液検査で活動性を同定できるものは無かった。病理でAschoff体を認めた群は年齢中央値が13歳(対27歳)と若く、遠隔期死亡率も22.9%対5.4%と高かった4。標本でAschoff体を見つけることは、臨床検査では拾えない活動性を拾っていることになる。

観察の順序

  1. 低倍率で心筋束の間にある境界不明瞭なを探す。
  2. 中心の好酸性を確認する。
  3. 周囲の大型マクロファージを探し、核の中央に波状クロマチンがあるかを見る。
  4. リンパ球・形質細胞と、必要に応じてを確認する。
  5. 単なる間質性炎症や心筋梗塞の壊死と区別する。

汎心炎

心臓の層 での病変
心内膜・弁膜 に沿う小型の。主にフィブリンと血小板からなる
心筋 Aschoff体を伴う心筋炎
心膜 による

心膜のフィブリン滲出は炎症で漏出したフィブリノゲンから形成されるのであり、がフィブリンを産生するわけではない。

感染性心内膜炎との比較

項目 心内膜炎
疣贅 小型・無菌性でに沿う 大型で脆く、微生物と炎症を含む
急性期は比較的軽い 潰瘍・穿孔・を起こしうる
慢性転帰 反復傷害で肥厚・癒合・短縮 治癒後の瘢痕または急性

まとめ

  • Aschoff体は急性心筋炎の特徴的病変である。
  • 中心のと、・リンパ球・形質細胞を確認する。
  • は通常単核で、多核のAschoff巨細胞と区別する。
  • 心内膜、心筋、心膜の三層が傷害されるとして理解する。

出典

  1. 1.Induction of autoimmune valvular heart disease by recombinant streptococcal M protein(Infection and Immunity・2001)組換えA群レンサ球菌6型M蛋白のみで免疫したLewisラットの50%(6匹中3匹)に弁膜炎と巣状心筋炎が生じ、Anitschkow細胞と疣贅様病変を認めた。T細胞は心筋ミオシンに反応して増殖したが骨格筋ミオシンには反応せず、菌体抗原が生菌の存在なしに心臓への自己免疫性細胞性攻撃を誘導しうることを示す閲覧 2026-08-24
  2. 2.Rheumatic Aschoff nodules revisited: an immunohistological reappraisal of the cellular component(Histopathology・1995)リウマチ性弁膜炎の手術検体15例の免疫組織化学で、Anitschkow細胞とAschoff細胞はいずれもマクロファージマーカーに明瞭に染まった。Aschoff結節は、リンパ球を伴わない中心性フィブリノイド壊死(第1期)、T細胞が少数(10個未満)加わる第2期、T・B細胞のリンパ球集簇を伴う第3期の3段階に分けられる。これらの細胞は分裂像を示しPCNA陽性で、多核巨細胞は細胞融合ではなく少なくとも部分的に核分裂によって形成されると考えられる閲覧 2026-08-24
  3. 3.Anitschkow myocytes or cardiac histiocytes in human hearts(Pathology・1999)ヒト胎児・新生児心では、いもむし状クロマチン像を示す小胞状核が心筋の主要な細胞型として観察された。同じクロマチン像は生後6週児の喉頭軟骨および隣接線維組織の2種の細胞にも認められ、この核所見は特定の細胞型ではなく細胞の未熟性を示すものと結論された閲覧 2026-08-24
  4. 4.Incidental Diagnosis of Rheumatic Myocarditis during Cardiac Surgery-Impact on Late Prognosis(Diagnostics (Basel)・2023)心臓手術を受けたリウマチ性心疾患118例の後方視的検討。術前の通常の臨床所見・検査では活動性心炎を同定できる検査は無かった。病理でAschoff体を認めた群は年齢中央値13歳(11-24)と認めなかった群の27歳(17-37)より若く(p=0.001)、遠隔期死亡率が22.9%対5.4%と高かった(p=0.043)閲覧 2026-08-24