組織病理学

組織病理学 · H1-052

大葉性肺炎・黄色肝変(肉眼標本)

Pneumonia lobaris (2)

描出疾患
市中肺炎

🧠 全体像:のは、肺胞がフィブリン・炎症細胞・液体で満たされ、で柔らかい肺が肝臓のように硬く充実する変化である。黄灰白色のは好中球に富む進行した滲出を示唆するが、「黄色肝変」は標準的な四病期とは別の肉眼的記述として扱う。

肉眼所見

項目 所見
臓器
標本 肺の肉眼標本
分布 の広い範囲で均一
色調 黄白色から灰黄色
硬さ を失い、肝臓のように硬い
病理学的対応 肺胞内のフィブリン・好中球性滲出

肝変の成立

flowchart TD
    A["細菌性<span class='jp-term jp-term-diagram' title='alveolitis'>肺胞炎</span>"] --> B["毛細血管うっ血と透過性亢進"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='alveolar space'>肺胞腔</span>へフィブリン・赤血球・好中球が滲出"]
    C --> D["肺胞内の空気が置換"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lobe'>肺葉</span>が重く硬くなる"]
    E --> F["肝変"]
    F --> G["滲出物が分解・除去"]
    G --> H["消散"]

古典的病期と「黄色肝変」

区分 主な所見
うっ血期 赤く重い肺、毛細血管うっ血と肺胞内浮腫
赤血球、好中球、フィブリンがを満たす
灰白色肝変期 赤血球が崩壊し、フィブリンと好中球が残る
消散期 滲出物が分解され、マクロファージやで除去される
黄色肝変という記述 好中球に富む黄灰白色のを表す肉眼用語。独立した標準病期として四段階へ追加しない

実験的の観察では、肝変は側から末梢へ絶えず進む連続過程で、進行の先端ではのなかでも程度に差が生じうる1。四病期は連続する変化を便宜的に区切った枠であり、の色調がそのまま一つの病期に対応するとは限らない。

💡 黄白色は化膿性成分の多さを示唆するが、固定標本の色調だけで病期や菌種を断定しない。

原因と形態の関係

肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)はの古典的原因菌である。ただし、大葉性の分布はと感染の広がり方を表す形態パターンであり、肺炎球菌だけに特異的ではない。系統的な微生物検査を行った成人入院で肺炎球菌が検出されたのは5%にとどまり2、小児では充が定型を示すは12%にすぎなかった3。

病変 肉眼分布
の広い連続領域が均一に充実する
気道を中心に黄白色のが斑状・多発する
に楔形の暗赤色病変を形成しやすい
肺水腫 湿潤で重量が増すが、均一な黄白色肝変とは異なる

顕微鏡像との対応

肺胞内フィブリン、好中球、の詳細は H1-049:(組織像) で確認する。

まとめ

  • 肝変は、肺胞内滲出物が空気を置換してを硬くする変化である。
  • 黄灰白色の充実は好中球・フィブリンに富む病変を示唆する。
  • 標準的な四病期は、うっ血、、灰白色肝変、消散である。
  • 「黄色肝変」は肉眼的記述として残し、独立した標準病期とはしない。

出典

  1. 1.Studies on experimental pneumonia: II. Pathology and pathogenesis of pneumococcus lobar pneumonia in monkeys(The Journal of Experimental Medicine・1920)実験的肺炎球菌大葉性肺炎の病理は人の大葉性肺炎と同一で、肝変は肺門側から始まって末梢へ絶えず進行する連続過程である。消散にはしばしば肺の粗大構築の器質化を伴い、肺胞滲出物の器質化も程度はさまざまに起こりうる——つまり四病期は連続する過程を便宜的に区切ったものである閲覧 2026-08-24
  2. 2.Community-Acquired Pneumonia Requiring Hospitalization among U.S. Adults(The New England Journal of Medicine・2015)培養・血清・抗原・分子診断を系統的に行った成人入院市中肺炎2259例でも病原体が同定できたのは38%にとどまり、肺炎球菌は5%(ライノウイルス9%、インフルエンザウイルス6%より少ない)。古典的原因菌という位置づけと実測の検出頻度は一致しない閲覧 2026-08-24
  3. 3.Association of Radiology Findings with Etiology of Community Acquired Pneumonia among Children(The Journal of Pediatrics・2023)小児市中肺炎2212例で、胸部X線の充実像が定型細菌性肺炎を示す陽性的中率は12%(95%CI 10-15%)にすぎず、陰性的中率は96%(95-97%)。充実(大葉性)パターンから起因菌は決められないが、充実像が無ければ定型細菌性は考えにくい閲覧 2026-08-24