病態生理学

病態生理学 · P-1-24

体性神経障害の診断のための診察法

Examination for somatic nerve neuropathy

前提:病態
糖尿病の細小血管合併症
疾患
小径線維ニューロパチー舌痛症糖尿病性ニューロパチー
検査値
角膜共焦点顕微鏡

🧠 全体像: (DSPN)のスクリーニングは、と足の診察を組み合わせ、温度覚・痛覚・触覚・振動覚・反射を系統的に評価する。必要に応じてや組織学的検査を追加する。

スクリーニングの開始時期

診断の進め方は1型糖尿病と2型糖尿病で多少異なる。

糖尿病の型 DSPNスクリーニング
1型糖尿病 診断5年後から開始し、その後は少なくとも年1回行う
2型糖尿病 診断時から開始し、その後は少なくとも年1回行う

いずれの型でも、開始時期が異なるだけで以後の頻度(少なくとも年1回)は共通する1。この開始時期と頻度は、米国糖尿病学会の診療基準2026年版(推奨12.17)でも変わっていない2。

スクリーニングの構成

を障害するDSPNのスクリーニングは、次の2要素からなる。

  1. ・:病歴と症状を確認する。
  2. :足の外観、感覚、反射を評価する。

身体診察

評価項目 方法 評価する内容
足の変形、創傷、その他の異常を確認する 潰瘍や圧迫点につながる
温度覚 させ、冷たく感じる金属製プローブと、冷たさの弱い製プローブで足に触れ、違いを答えてもらう 温度識別能
痛覚 鈍端と鋭端をもつ針で刺激し、違いを答えてもらう 鋭鈍覚
触覚() (Semmes-Weinstein)を、たわむ強さで垂直に押し当てて感じるかを答えてもらう。年1回実施する1 (潰瘍・切断のリスクを持つ足の識別)
振動覚 128Hzをの骨に当て、振動が消失した時点を答えてもらう1 振動覚の低下
反射 腱反射を診察する 末梢神経機能

⚠️ は「どこを触るか」が目的によって違う。 米国糖尿病学会は、年1回のDSPNスクリーニングと、そのである「ハイリスク足」の判定を明確に別物として扱っている1。

目的 触れる部位
年1回のDSPNスクリーニング(軽い触覚の評価) 両側の背側(Perkinsらが検証した簡便法)
ハイリスク足(リスク)の判定 各足4か所——第1・3・5と遠位の足底面

💡 足の総合評価では、に別の検査を1つ重ねる。 米国糖尿病学会の診療基準2026年版は、年1回の足の総合評価のを「10 g検査またはIpswich触覚テスト(検者が指で触れてを評価する簡便法。英国などではより好まれる)に、痛覚・温度覚・振動覚のうち少なくとも1つを加える」としている。のに加えてもう1つの検査が異常なら、のが確定する。⚠️ 単独では進行したDSPNは拾えても、進行予防の恩恵が最も大きい早期例を確実には拾えないため、DSPN診断の唯一の方法にしない2。

💡 症状が乏しくても防御感覚が低下していることがあるため、だけでなく足を直接診察することが重要である。

⚠️ 感覚が失われているからこそ危険である。 のは、傷や圧迫によるを知らせる痛みというが働かなくなっていることを意味し、それ自体がの危険因子である。神経障害のある患者は痛みを感じないまました病変の上を歩き続けてしまうため、病変が慢性化し感染を合併しやすい1。や128Hzでが確認された患者は、・のハイリスク群として、毎日の自己足検査と異常時の速やかな受診、足に合った履物の使用を教育し、・・足部真菌感染など前への専門的治療の対象にする13。⭐ 再スクリーニングの間隔もリスク層で変え、IWGDFリスク1で6〜12か月ごと、リスク2で3〜6か月ごと、リスク3で1〜3か月ごととする3。

機器・組織学的検査

  • (ENG):末梢神経のを測定する。
  • 組織学的検査:などで採取した検体を評価する。侵襲的検査であり、なDSPNスクリーニングではなく、必要性を吟味して用いる。

⚠️ 典型例の診断には要らない。 米国糖尿病学会の診療基準2026年版は、・脊椎・神経内科紹介は、「急性・亜急性の発症、でない分布、非対称、運動優位といったな特徴があるときや、診断が不確かなとき」を除けばほとんど必要ないとし、・・・の生検も末梢の診断にルーチンには適応されないとしている2。な特徴は、前節の(ほかの原因の神経障害)を疑う合図でもある。

💡 確かさの段階を定義したのが Toronto 合意(2010年)である。 は、DSPNの「確定」を定義する要素として位置づけられている4。

段階 定義
可能性あり 症状(、・足・下腿優位の陽性)または徴候(遠位感覚の左右対称な低下、の明らかな低下・消失)がある
ほぼ確実 の症状、遠位の、の明らかな低下・消失のうち2つ以上
確定 の異常に、症状または徴候を伴う(が正常なら、検証された神経障害の指標を用いてよい)
症状・徴候は無いが、またはの指標が異常

臨床では「可能性あり」〜「確定」、研究では「確定」または「」の定義を用いるよう勧められている4。

まとめ

項目 押さえる点
開始時期と頻度 2型は診断時から、1型は診断5年後から、以後は少なくとも年1回
構成 ・+足の診察(・温度覚・痛覚・触覚・振動覚・反射)
/ 温度覚または痛覚で、128Hzの振動覚でを評価する
年1回。年1回のDSPNスクリーニングは両側背側、ハイリスク足の判定は各足4か所。単独で診断を下さず、ほかの検査を少なくとも1つ重ねる
の 痛みというが失われの危険が高い。自己足検査・履物の教育と、リスクに応じた再スクリーニング間隔
・組織検査 典型例では不要。な特徴や診断が不確かなときに用いる。Toronto 合意ではの異常が「確定」の要素

出典

  1. 1.Diabetic Neuropathy: A Position Statement by the American Diabetes Association(American Diabetes Association (Diabetes Care)・2017)DSPNスクリーニングは2型糖尿病では診断時から、1型糖尿病では診断5年後から開始し、その後は少なくとも年1回行うこと(推奨グレードB)、身体診察には温度覚または痛覚(小径線維)と128-Hz音叉による振動覚(大径線維)を含め、全患者に年1回の10gモノフィラメント検査を行うこと、モノフィラメントは年1回のDSPNスクリーニングでは両側母趾背側で評価する一方、晩期合併症である「ハイリスク足」の判定はこれとは別であり第1・3・5中足骨頭と母趾遠位足底の各足4か所を検査すること、痛みという警告が失われることで足底の神経障害性潰瘍の上を歩き続け病変が慢性化・感染しやすくなることを、Screening and Diagnosis節で確認した。閲覧 2026-08-14
  2. 2.12. Retinopathy, Neuropathy, and Foot Care: Standards of Care in Diabetes—2026(American Diabetes Association・2026)PMC12690177で全文を閲覧した(diabetesjournals.orgは403)。推奨12.17が末梢神経障害の評価を2型糖尿病では診断時から・1型糖尿病では診断5年後から少なくとも年1回とし(B)、推奨12.18が遠位対称性多発神経障害の評価に丁寧な病歴と温度覚または痛覚(小径線維)・128 Hz音叉による振動覚(大径線維)を含め、全員に年1回の10 gモノフィラメント検査を潰瘍・切断リスクのある足の同定のために行うとしていること(B)。モノフィラメント検査は少なくとも1つの他の神経学的検査と併せて行い、モノフィラメントの脱失ともう1つの異常で防御知覚の脱失が確定すること、モノフィラメント単独では進行した神経障害は検出できても早期例を確実には同定できずDPN診断の唯一の方法にすべきでないこと、英国など数か国では指で触れるIpswich触覚テストがモノフィラメントより好まれること、神経伝導検査・筋電図・神経生検・表皮内神経線維密度の生検は末梢感覚神経障害の診断にルーチンには適応されないこと。推奨12.24が足の総合評価の神経学的評価を「10 gモノフィラメント検査またはIpswich触覚テストに、痛覚・温度覚・振動覚のうち少なくとも1つを加える」としていること(B)。電気生理検査・脊椎MRI・神経内科紹介は、急性・亜急性発症、長さ依存性でない分布、非対称、運動優位といった非典型的な特徴があるときや診断が不確かなときを除いて、ほとんど必要ないとしていることを確認した。閲覧 2026-09-24
  3. 3.Guidelines on the Prevention of Foot Ulcers in Persons with Diabetes (IWGDF 2023 Update)(International Working Group on the Diabetic Foot (IWGDF)・2023)潰瘍化リスクのある患者(IWGDF risk 1-3)に対し、毎日の自己足検査と(前)潰瘍性病変を疑ったときの速やかな受診を教育すること(推奨5、Strong/Low)、足の形に合い正しくフィットする履物を履くよう教育すること(推奨8a、Strong/Low)、(前)潰瘍性病変・過剰な胼胝・陥入爪・足部真菌感染に適切な治療を行うこと(推奨9、Strong/Very low)を確認した。またIWGDFリスク層別化に基づく再スクリーニング間隔をrisk 1で6〜12か月ごと、risk 2で3〜6か月ごと、risk 3で1〜3か月ごととしている(推奨2、Strong/High)。閲覧 2026-08-14
  4. 4.Diabetic neuropathies: update on definitions, diagnostic criteria, estimation of severity, and treatments(Diabetes Care・2010)Europe PMCの全文(PMC2945176)で確認した。Toronto糖尿病性神経障害専門家会議の合意として、遠位対称性多発神経障害を「可能性あり(possible:症状または徴候のいずれか)」「ほぼ確実(probable:神経障害性の症状・遠位の感覚低下・アキレス腱反射の明らかな低下/消失のうち2つ以上)」「確定(confirmed:神経伝導検査の異常に症状または徴候を伴う。神経伝導が正常ならクラス1の証拠をもつ小径線維神経障害の検証済み指標を用いてよい)」「潜在性(subclinical:症状・徴候が無く神経伝導検査異常または小径線維指標の異常のみ)」に分け、臨床では1〜3、研究では3または4の定義を用いるよう勧めていること。閲覧 2026-09-24