薬剤ノート一覧へ

Drug Atlas · A21 Adjuvant analgesics / 鎮痛補助薬

カプサイシン

capsaicin

分類
Adjuvant analgesics / 鎮痛補助薬
商品名(EU)
Qutenza
科目
Pharmacology
トピック
A21: Antiepileptics. Adjuvant analgesics
副作用
紅斑灼熱痛そう痒感
対象疾患
カンナビノイド悪阻症候群小径線維ニューロパチー舌痛症

🧠 全体像:は(1)の作動薬で、唐辛子の辛味成分そのものである。低濃度のOTCは反復塗布で徐々に効かせる「じわじわ系」だが、高濃度8%は医療機関で1回30〜60分だけ貼付する「一撃系」という、同じ受容体を狙いながら使い方が正反対の2種類が存在する。⚠️ 一般名だけで「と同じ」と考えると、施による・防護・血圧モニタリングを要する高濃度の実際の運用像を見誤る。

薬効群の中での位置づけ

A21トピックの鎮痛補助薬のうち、は()や・とはがまったく異なり、ではなく末梢の線維そのものに直接働きかける外用薬という位置づけになる。の限局した痛みに対する治療の並びでは、とが第一選択、は併用療法・とともに第二選択に置かれる1。

機序

flowchart TD
    A["高濃度<span class='jp-term jp-term-diagram' title='capsaicin'>カプサイシン</span>が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='transient receptor potential vanilloid 1'>TRPV1</span>受容体を強く持続的に活性化"] --> B["Ca2+が細胞内へ大量に流入"]
    B --> C["細胞内Ca2+<span class='jp-term jp-term-diagram' title='buffer capacity'>緩衝能</span>を超え、Ca依存性プロテアーゼ・細胞骨格の破綻を誘発"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='transient receptor potential vanilloid 1'>TRPV1</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='desensitization'>脱感作</span>と一過性の膜電位消失"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='neurotrophic factor'>神経栄養因子</span>の輸送障害"]
    E --> F["表皮内・真皮の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='nociceptive nerve'>侵害受容神経</span>終末が可逆的に退縮(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='defunctionalization'>脱機能化</span>)"]
    F --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='nociceptive transmission'>痛覚伝達</span>の入力そのものが一時的に失われる"]
    G -.->|"数か月かけて神経終末が再生"| A

💡 鎮痛の主因は枯渇ではない。 かつては「を枯渇させて痛みを伝えられなくする」と説明されていたが、実際にはを介した一連の細胞内カスケードによる神経終末の可逆的なが主体であることが示されている2。は貼付後に低下するが、数か月かけて再生する可逆的な変化である。

適応

区分 使いどころ
高濃度8% 成人の(PHN)に伴う、足部の(DPN)に伴う3
低濃度OTC などのの痛みに対するの外用。高濃度とは適応・使用法が別物

用法・用量

⚠️ 高濃度8%は医療従事者のみが取り扱う施術で、患者への交付・自己貼付はできない3。

  1. 貼付部位とその周囲1〜2 cmにを塗布し、皮膚が麻酔されるまで置く(添付文書に時間の指定は無い)3。
  2. 貼付時間は適応で異なる——は60分、足部のは30分。最大4枚まで同時貼付できる3。
  3. 除去後は洗浄剤(クレンジングジェル)で皮膚に残ったを除去する。
  4. は3か月以上の間隔をあける3。

施はを着用する(手袋は不可)3。

禁忌・注意

  • ⚠️ 投与中・投与後に一過性のが起こりうる。 施術中・施術後は血圧をモニタリングする3
  • ⚠️ 貼付中・除去直後の灼熱感が強い。 のはこの灼熱感の緩和が目的であり、省略するとが大きく損なわれる
  • 施・介助者はとの偶発的接触(皮膚・眼・気道への曝露)を避ける防護策を徹底する

副作用

頻度 内容
高頻度(5%以上) 貼付部位紅斑、貼付部位疼痛(灼熱感)、貼付部位3
注意 施術に伴う一過性の

まとめ

  • は作動薬で、高濃度8%と低濃度OTCは同じ受容体を狙いながら運用がまったく異なる。
  • 高濃度の鎮痛機序は、を介した終末の可逆的な(表皮内の一時的な退縮)による。
  • 適応はPHN・足のDPNに伴う。の、部位別の貼付時間(足以外60分・足30分)、3か月以上あけたが特徴。
  • ⚠️ 医療従事者のみが施術し、血圧モニタリングと防護手袋(ニトリル)を要する。患者への自己貼付はできない。
  • 高頻度の副作用は貼付部位の紅斑・疼痛・で、施術中・施術後の一過性にも注意する。

出典

  1. 1.Small-Fiber Neuropathy: An Etiology-Oriented Review(Brain Sciences(Furia A, Liguori R, Donadio V)・2025)2020年のフランスのガイドラインに基づく整理で、限局した神経障害性疼痛にはリドカイン貼付剤とTENSが第一選択であり、第二選択にトラマドール・併用療法・カプサイシン貼付剤・A型ボツリヌス毒素が置かれることを確認した閲覧 2026-08-31
  2. 2.Topical capsaicin for pain management: therapeutic potential and mechanisms of action of the new high-concentration capsaicin 8% patch(British Journal of Anaesthesia(Anand P, Bley K)・2011)高濃度カプサイシン貼付剤の鎮痛が従来考えられていたサブスタンスP枯渇によるものではなく、TRPV1受容体を介した「脱機能化(defunctionalisation)」——受容体の脱感作、膜電位の一過性消失、神経栄養因子輸送の障害、表皮・真皮の神経終末の可逆的な退縮——によることを確認した閲覧 2026-08-31
  3. 3.QUTENZA (capsaicin) topical system — Highlights of Prescribing Information(米国FDA(DailyMed収載の添付文書)・2024)適応が成人の帯状疱疹後神経痛(PHN)に伴う神経障害性疼痛および足部の糖尿病性末梢神経障害(DPN)に伴う神経障害性疼痛であること、投与前に貼付部位と周囲1〜2 cmへ局所麻酔薬を塗布し皮膚が麻酔されるまで置くこと、貼付時間がPHNでは60分・足部のDPNでは30分であり最大4枚まで貼付できること、再治療は3か月以上の間隔をあけて行うこと、投与中・投与後に一過性の血圧上昇が起こりうるため血圧をモニタリングすべきこと、医療従事者のみが取り扱い(患者への交付・自己貼付は不可)ニトリル手袋を着用すること(ラテックス手袋は不可)、頻度5%以上かつ対照群を上回る有害事象が貼付部位紅斑・貼付部位疼痛・貼付部位そう痒感であることを確認した閲覧 2026-08-31