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Drug Atlas · B27 Interstitial cystitis therapy / 間質性膀胱炎治療薬

ジメチルスルホキシド

dimethyl sulfoxide

分類
Intravesical anti-inflammatory / analgesic agents / 膀胱内注入用抗炎症・鎮痛薬
商品名(日本)
ジムソ膀胱内注入液50%
科目
Pharmacology
トピック
B27: Drugs acting on smooth muscles. Drugs influencing uterus contractions
承認適応
間質性膀胱炎
副作用
膀胱痛頻尿

🧠 全体像:DMSO()は、日本で(ハンナ型)に承認された唯一の薬剤である。米国では1978年、カナダでは1980年という早い時期から使われてきた古参薬でありながら、日本での販売開始は2021年と40年以上のタイムラグがある1。単一の受容体を狙う薬ではなく、抗炎症・鎮痛・平滑筋弛緩・溶解という複数の仮説が積み重なった「多面的な薬」という理解が実態に近い。そして適応はあくまでが確認されたハンナ型に限定され、全体を対象とする薬ではない点が、日本の電子添文を読むうえで最も外しやすいポイントになる。

薬効群の中での位置づけ

⭐ 2021年の販売開始以前、日本にはに承認された薬剤が一つも無かった。 PMDAの審査報告書は、それ以前の状況を「に対して本邦で唯一保険適用のあるは、侵襲性が高く、施術に伴う患者の身体的及び時間的負担が比較的大きい」と記している1。米国で使われる(、、、など)は日本では今もの適応を持たず、ヘパリン・のも適応外にとどまる。DMSOは「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」で必要性が高いと判断されたことを受けて開発され、の指定(2017年9月)を経て2020年12月に承認された1。

日本での位置づけ
(等) 適応なし(米国AUAガイドラインの分類に基づく海外での選択肢)
(ヘパリン・) 適応外
DMSO(本剤) ハンナ型のみ承認(唯一の承認薬)
への・注入 保険適用の手技(薬剤ではない)
DMSO以前から保険適用があった唯一の手段。侵襲性が高い

機序

DMSOの効果は単一の作用機序で説明されるものではなく、複数の仮説が組み合わさっていると考えられている。

flowchart TD
    A["DMSOが膀胱壁を透過する<br>(強い<span class='jp-term jp-term-diagram' title='membrane permeability'>膜透過性</span>・溶媒特性)"] --> B["抗炎症作用<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='mast cell'>マスト細胞</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='degranulation'>脱顆粒</span>抑制、<span class='jp-term jp-term-diagram' title='inflammatory mediator'>炎症性メディエーター</span>遊離の抑制"]
    A --> C["鎮痛作用<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='sensory nerve'>知覚神経</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='C fiber'>C線維</span>)の伝導抑制・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='local anesthesia'>局所麻酔</span>様の作用"]
    A --> D["平滑筋弛緩作用<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='detrusor muscle'>排尿筋</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='contractility'>収縮性</span>を直接低下させる"]
    A --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='collagen fiber'>膠原線維</span>溶解作用<br>膀胱壁の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='collagen fibers'>コラーゲン線維</span>を<span class='jp-term jp-term-diagram' title='solubilization'>可溶化</span>し瘢痕・線維化を軽減"]
    B --> F["膀胱痛・頻尿・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='urinary urgency'>尿意亢進</span>などの<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='lower urinary tract symptoms, LUTS'>下部尿路症状</span>が緩和される"]
    C --> F
    D --> F
    E --> F

💡 「単一の標的を遮断する」薬とは発想が違う。 がβ3受容体、がという単一標的を持つのに対し、DMSOは低分子の有機溶媒としての物理化学的性質そのものが複数のを同時に生む。溶解仮説は、ハンナ型で見られる膀胱壁の線維化・炎症性瘢痕を標的にしている点で、ハンナ型限定の適応と機序仮説が整合していると理解すると覚えやすい。

薬物動態

項目 値・特徴
のみ(しない)
吸収 膀胱粘膜から吸収されに移行する
代謝・排泄 一部がジメチルスルホン・ジメチルスルフィドに代謝される。ジメチルスルフィドは呼気・皮膚から排泄され、ニンニク様の体臭・としてされる2

適応

地域 効能・効果
日本 (ハンナ型)の諸症状の改善(膀胱に関連する慢性の骨盤部の疼痛・圧迫感及び不快感、又は頻尿等の)2
米国(1978年〜) の症状緩和1
カナダ(1980年〜) の症状緩和1

⚠️ 日本の適応は「」全体ではなく「ハンナ型」に限定されている。 効能又は効果に関連する注意は、症・・下部尿路の新生物・・等を膀胱内視鏡と尿検査等で除外したうえで、膀胱内視鏡でが確認され確定診断を受けた患者にのみ投与するよう明記している2。非ハンナ型()の患者に投与する薬ではない。

用法・用量

⭐ 50%(w/w)溶液を1回1バイアル50mL(DMSOとして27g)、2週間間隔で6回膀胱内に注入する。注入後は可能な限り15分間以上膀胱内に保持してから排出させる2。

  • は、症状が改善した後、一定期間を経て治療を要する程度まで悪化した場合にのみ行う2
  • 投与時反応(膀胱痛・・・膀胱不快感)が生じうるため、必要に応じて投与前にをしてから本剤を投与する2
  • ⚠️ そのは、本剤を入れる前にする。 日本の診療ガイドラインの2021年修正は逐語で「本剤は同時に注入したほかの薬剤の吸収を促進する可能性があるので、膀胱粘膜麻酔のためにを注入した場合には、これをしてから本剤を注入することが勧められる」と加えている3。💡 溶媒としての強いは、本剤自身だけでなく同居している薬剤も一緒に通してしまう——機序の節で挙げた性質が、そのまま手技上の注意になっている。米国AUAガイドラインも、DMSOをヘパリン・・局所ステロイド・製剤などと混ぜた「カクテル」として投与する場合について、逐語で DMSO potentially enhances absorption of other substances, creating the possibility for toxicity from drugs such as lidocaine と注意しており、⚠️ カクテルの安全性や単独投与に対する効果を検討した臨床研究は無いとも述べている4

⚠️ 保持時間の書き方が日米で逆を向いている。 日本の電子添文は「可能な限り15分間以上保持」と下限として書く2のに対し、AUAガイドラインは逐語で the panel suggests limiting instillation dwell time to 15-20 minutes; DMSO is rapidly absorbed into the bladder wall and longer periods of holding are associated with significant pain と、15〜20分に限るという上限の側から書いている4。💡 「15分」という同じ数字が、一方では最低ライン、他方では上限近くの目安として現れる。 数字だけを覚えると「長く保持するほどよい」と誤って運用しかねない。

禁忌・注意

  • 禁忌は本剤の成分に対する過敏症の既往歴のある患者のみ——他の泌尿器科用薬に比べて禁忌の範囲は狭い2
  • ⚠️ 投与前のが必須。 症・・下部尿路の新生物・・等、症状が重なる病態を膀胱内視鏡・尿検査等で除外し、膀胱内視鏡でを確認して初めて投与対象になる2
  • 投与時反応への備えとして、投与前の注入を検討する(⚠️ 注入したはしてから本剤を入れる3)2
  • ⚠️ 妊婦・妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与する。 でマウス(5 g/kg以上、腹腔内)・(8 g/kg以上、腹腔内)・ハムスター(3.8 g/kg以上、腹腔内および)に催奇形性が認められたとの報告がある2
  • では、治療上の有益性と母乳栄養の有益性を考慮して授乳の継続・中止を検討する。ヒト乳汁への移行は不明だが、分子量が小さく(78.13)率も30%と低いため乳汁中に移行する可能性がある2
  • 小児等を対象としたは実施されていない2

副作用

頻度 内容
高頻度(10%以上) 膀胱痛(30.6%)、、
中頻度(5〜10%未満) 膀胱不快感、頻尿
低頻度(5%未満)
その他 ・皮膚臭異常(ニンニク様の臭い)2

💡 ニンニク様の・体臭は、電子添文が独立した項目として挙げている副作用である。 全6回の投与を患者ができるよう、初回投与前に説明しておく価値がある2。

まとめ

  • DMSO(ジムソ液50%)は、日本で(ハンナ型)に承認された唯一の薬剤。米国では1978年、カナダでは1980年から使われてきたが、日本での販売開始は2021年1。
  • 単一標的を持つ薬ではなく、抗炎症・鎮痛・平滑筋弛緩・溶解という複数の仮説が積み重なった多面的な薬と理解する。
  • 適応はハンナ型限定——膀胱内視鏡でを確認し、他疾患をしたうえで初めて投与対象になる2。
  • 用法は1回50mL(DMSO 27g)を2週間間隔で6回、注入後15分以上保持2。⚠️ AUAは逆に保持を15〜20分に限るという上限側の書き方をしている4。投与時反応への備えとしての事前注入を検討するが、⚠️ 本剤は同時に注入した他剤の吸収を促進しうるので、注入したはしてから本剤を入れる3。
  • 禁忌は成分過敏症のみと狭いが、⚠️ 妊婦は有益性が危険性を上回るときにのみ(動物で催奇形性の報告)、は有益性を考慮して継続・中止を検討、小児等のは無い2。
  • 副作用は膀胱痛が30.6%と高頻度で、ニンニク様の・体臭という他の泌尿器科用薬にはない特徴的な副作用を持つ2。

出典

  1. 1.ジムソ膀胱内注入液50%(ジメチルスルホキシド)審議結果報告書・審査報告書(厚生労働省医薬・生活衛生局医薬品審査管理課/医薬品医療機器総合機構・2020)令和2年12月2日の医薬品第一部会で本品目を承認して差し支えないとされ再審査期間が10年とされたこと、本薬が「間質性膀胱炎」を予定される効能・効果として希少疾病用医薬品に指定されていること(指定番号(29薬)第402号、平成29年9月7日付け)、本薬が米国では1978年・カナダでは1980年に間質性膀胱炎の症状緩和の効能・効果で承認されていること、国内では「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」で医療上の必要性が高いと判断されたことを受けて承認申請がなされたことを確認した閲覧 2026-09-08
  2. 2.ジムソ膀胱内注入液50% 電子添文(2024年5月改訂・第4版)(医薬品医療機器総合機構(杏林製薬)・2024)日本の効能又は効果が「間質性膀胱炎(ハンナ型)の諸症状(膀胱に関連する慢性の骨盤部の疼痛、圧迫感及び不快感、尿意亢進又は頻尿等の下部尿路症状)の改善」であってハンナ型に限定されていること、効能又は効果に関連する注意が尿路性器感染症・尿路結石・下部尿路の新生物・過活動膀胱・前立腺肥大症等の除外診断を膀胱内視鏡と尿検査等で行ったうえで膀胱内視鏡でハンナ病変が認められ間質性膀胱炎(ハンナ型)の確定診断を受けた患者にのみ投与するよう求めていること、用法及び用量が50%ジメチルスルホキシド溶液を1回1バイアル50mL(ジメチルスルホキシドとして27g)・2週間間隔で6回膀胱内に注入し注入後は可能な限り15分間以上膀胱内に保持してから排出させることであること、再治療は症状が改善した後に一定期間経過して治療を要する程度まで悪化した場合にのみ行うこととされていること、重要な基本的注意が投与時反応(膀胱痛・尿道痛・膀胱刺激症状・膀胱不快感等)に対して必要に応じ投与前に局所麻酔剤の膀胱内注入を行うこととしていること、禁忌が本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者のみであること、副作用が10%以上で膀胱痛(30.6%)・尿道痛・膀胱刺激症状、5〜10%未満で膀胱不快感・頻尿、5%未満で排尿困難、ほかに呼気臭・皮膚臭異常(ニンニク様の臭い)であること、国内第III相試験(96例)の主な組入れ基準が1回排尿量50mL以上・残尿量100mL未満・1日排尿量3,000mL未満・1日平均排尿回数8回以上・膀胱痛NRS 4以上・ICSI 9点以上であり主要評価項目である投与12週のICSI変化量が全体集団で本剤群がプラセボ群に対し有意に減少しハンナ型の部分集団でも群間差が全体集団と同程度であったこと、承認番号が30300AMX00029000で販売開始が2021年4月であることを確認した。2026-09-17に本文を再取得し、9.5 妊婦が「妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。動物実験において、マウス(5g/kg以上、腹腔内)、ラット(8g/kg以上、腹腔内)、ハムスター(3.8g/kg以上、腹腔内及び静脈内)で催奇形性が認められたとの報告がある」であること、9.6 授乳婦が有益性を考慮して授乳の継続又は中止を検討するとし本剤の分子量が小さく血漿タンパク結合率が低いため乳汁中に移行する可能性があると述べること、9.7 が小児等を対象とした臨床試験は実施していないとすること、16.3 のヒト血漿タンパク結合率が30%、19 の分子量が78.13であること、16.2 で単回膀胱内投与後の回収残液に投与量の83.7%が残り16.3%が吸収されたと考えられるとされることを確認した閲覧 2026-09-08
  3. 3.間質性膀胱炎・膀胱痛症候群診療ガイドラインの修正・追加(日本間質性膀胱炎研究会/日本泌尿器科学会・2021)2019年版ガイドラインへの修正・追加文書(2021年5月、作成委員長 本間之夫)のPDFを取得して逐語確認した。53頁の修正が用法を「通常、1回1バイアル50mL、2週間間隔で6回膀胱内に注入する。なお、膀胱内注入後、可能な限り15分間以上膀胱内に保持してから排出させる」と引いたうえで、「なお、本剤は同時に注入したほかの薬剤の吸収を促進する可能性があるので、膀胱粘膜麻酔のために局所麻酔薬を注入した場合には、これを排液してから本剤を注入することが勧められる」と加えていること(根拠として Brayton CF, Cornell Vet 1986;76:61-90 を挙げる)、DMSOが2021年4月に保険収載されたことに伴い本体の複数箇所が「本邦でICに対し保険収載されている治療は、膀胱水圧拡張術とジメチルスルホキシド(DMSO)の膀胱内注入療法だけであり、保険診療上の推奨度は、これらの治療以外はすべて保留である」と改められたことを確認した閲覧 2026-09-17
  4. 4.Diagnosis and Treatment of Interstitial Cystitis/Bladder Pain Syndrome(American Urological Association・2022)AUAの当該ガイドラインページ(表示は「Published 2011; Amended 2014, 2022」)の全文を自分で取得して逐語確認した。膀胱内注入のDMSOはOptionに格付けされており、逐語で「If DMSO is used, then the panel suggests limiting instillation dwell time to 15-20 minutes; DMSO is rapidly absorbed into the bladder wall and longer periods of holding are associated with significant pain.」と保持時間の上限側から書かれていること(日本の電子添文の「可能な限り15分間以上」は下限側の規定であり、向きが逆である)。続けて「DMSO is often administered as a part of a "cocktail" that may include heparin, sodium bicarbonate, a local steroid, and/or a lidocaine preparation.」と述べ、さらに「The Panel notes that if a clinician chooses to administer a "cocktail" preparation, then he or she should be aware that DMSO potentially enhances absorption of other substances, creating the possibility for toxicity from drugs such as lidocaine. No clinical studies have addressed the safety or increased efficacy of these preparations over DMSO alone or of various cocktails in comparison to one another.」と注意していること。有効性の報告率の幅が広いことを理由にDMSOをOptionとしたと説明していること。膀胱内注入の推奨17がDMSO・ヘパリン・リドカインの3剤をアルファベット順に並べ Grades C, C, and B としていることを確認した閲覧 2026-09-17