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Imaging findings · Published

ハンナ病変

Hunner lesion

別名
Hunner潰瘍ハンナ潰瘍
臓器系
腎・泌尿器
科目
Obstetrics and Gynecology (Gynecology)
トピック
婦人科 32:骨盤痛
関連疾患
間質性膀胱炎
スコア
ESSIC分類

🧠 全体像:は、/という一つの症候群の中で、唯一「これがあれば診断が確定する」特異的な所見である。出血(点状出血)が非特異的で、IC/BPS以外の慢性膀胱刺激状態でも、さらには正常者でも観察されうる1のに対し、は膀胱そのものが限局して病んでいることを直接示す所見であり、見つければ(・注入)がそのまま決まる。というより「見つけたら何をするか」まで直結する所見である点が、他の画像所見と一線を画す。

所見の定義

は、発赤した粘膜の中に、正常の毛細血管構造を欠く特有の病変として現れる。日本の226の(B)は「膀胱内にを認める」ことのみを要件とし、これを「正常の毛細血管構造を欠く特有の発赤粘膜」と定義している2。より詳しい記述では、蒼白なを発赤した粘膜が取り囲み、中心へ向かって放射状に走る小血管を伴い、しばしば小さなが付着する3。病理学的には、上皮がしばしば剥離し、組織にと炎症細胞のをみる2。

💡 「潰瘍」という呼び名は病理学的には正確でない。 Hunnerが報告時に ulcer と呼んだ経緯から潰瘍と称されてきたが、実際には上皮の脱落はあってもその下の組織()が欠失しているわけではない——日本の診療ガイドラインが「ハンナ潰瘍」ではなく「」の語に統一しているのはこのためである1。

⭐ 見え方は一様ではない。 中心のを伴う典型像・伴わない典型像、炎症の強い像・弱い像、複数病変がした像、赤い滝のように出血する像(red waterfall bleeding)まで、外観の幅は広い4。「教科書的な単一の見た目」を覚えるのではなく、この幅そのものを覚えておかないと、非典型例を見逃す。⚠️ ただしこのアトラスは、単一のが診た症例のうち、画像が残っていて注入またはを受け症状が改善した31例に限って作られている4——外観の型の一覧としては使えるが、各型の頻度を読み取る資料ではない。

モダリティと写り方

は放射線画像ではなく、という内視鏡所見として捉える。

検査法 見え方・特徴
外来での(、水圧拡張なし) ほとんどのはこの方法で同定できる4。侵襲が小さく外来で完結する
水圧拡張下の(麻酔下) 拡張により周囲粘膜が破裂し、病変からの出血が誘発される——診断だけでなく病変を際立たせる操作でもある3。日本の診療ガイドラインも、は拡張に伴ってとなることが多く、排水時に病変や辺縁部から五月雨状または滝状の出血が起こる(時にとなる)と記載している1

⚠️ は全例に必須ではない。 AUAガイドラインは、合併症のない典型的なIC/BPSでは・を診断に必須としない一方、が疑われる患者には行うべきとし、他の治療の失敗を待たずに早期に行ってよいとしている5。

好発部位は膀胱後壁である3。

⭐ そもそも頻度の低い所見である。 はIC/BPS症例の5〜10%にしかみられない3。

⚠️ 年齢との関係を語る数字は、分母がこれと違う。 はでしか確認できないので、年齢別の割合はいずれもを受けた患者の中での割合である(MAPPについてはAUAの原文が “4.0% of cystoscopy” と明示している)。しかもAUAが同じ段落に並べているのは1つの研究ではなく3つの別々のデータセットである5。

データセット 年齢区分ごとにを認めた割合
Doiron らの研究 50歳超 14.9% 対 50歳未満 7.8%(p=0.0095)
MAPP研究 50歳未満 4.0%・50〜70歳 19.7%・70歳超 54.5%
別の臨床研究 30歳未満 8.6%・30〜60歳 23.8%・60歳超 55.6%

⚠️ この3つを1本の線につないで読まない。 年齢区分の切り方もも違い、「50歳未満」という同じ区分ですら 7.8% と 4.0% で2倍近く開く。3つに共通して言えるのは「年齢が上がるほどが見つかる確率が高くなる」という向きだけで、特定の年齢帯の頻度を数値で覚える対象ではない。💡 AUAはこの向きを根拠に「50歳を超える男女にはを勧めるのが妥当」とする一方、同じ段落で「すべてのIC/BPS患者にを行うことは勧められない」(若年者では有益性と危険性の釣り合いが不利になるため)とも書いている5。「まれだから探さない」でも「中高年なら全例で探す」でもなく、年齢をを勧める材料の一つとして使う。

リスクを上げる形態

「悪性かどうか」ではなく「ハンナ型かどうか」で以後のが分かれるため、次の所見はの存在を積極的に疑う手がかりになる。

  • 発赤粘膜の中に蒼白ながあり、そこへ向かって小血管が放射状に集まる3
  • 中心にが付着している
  • 50歳を超える患者(は主に中高年に多く、若年層ではまれ)3
  • 症状がより重く、排尿量が少なく、が小さい患者群(非ハンナ型と比べて)2

⭐ 見分けること自体が治療の分岐になる。 米国AUAは「があれば(レーザーまたは)および/または注入を行うべき」を、実施を勧める側で唯一の Recommendation(Evidence Strength: Grade C)として置き、のある患者を除いて初期治療は非なものにするとしている5。欧州(2026年版)も・凝固・レーザーを ESSIC分類のtype 3C(+生検陽性)に限って行うことを強い推奨として掲げ、同じ節の本文で「点状出血部の凝固は推奨されない」と明記している6。⚠️ 「で赤い病変を見たから焼く」ではない——・切除の適応は(と生検)で線が引かれている。💡 一方で水圧拡張それ自体はとしては弱い——は「介入としての膀胱拡張には十分なデータがない」とし、推奨表でも「水圧拡張単独をPBPSの治療として用いない」(弱い推奨)としている6。

評価の進め方

flowchart TD
    A["IC/BPSを疑う症状<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='storage phase (of micturition)'>蓄尿期</span>優位の膀胱痛・頻尿・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='urinary urgency'>尿意切迫感</span>"] --> B{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Hunner lesion'>ハンナ病変</span>を疑う所見があるか<br>重症度が高い・50歳超など"}
    B -->|"疑う"| C["早期に<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cystoscopy (cystoscope)'>膀胱鏡</span>を行う<br>他の治療の失敗を待たない"]
    B -->|"疑わない・典型的な軽症例"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cystoscopy (cystoscope)'>膀胱鏡</span>は必須ではない<br>症状と<span class='jp-term jp-term-diagram' title='diagnosis of exclusion'>除外診断</span>で診断・治療開始"]
    C --> E{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Hunner lesion'>ハンナ病変</span>を認めるか"}
    E -->|"あり"| F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Hunner-type interstitial cystitis'>ハンナ型間質性膀胱炎</span><br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='transurethral fulguration'>経尿道的焼灼</span>および/または<span class='jp-term jp-term-diagram' title='triamcinolone'>トリアムシノロン</span>注入"]
    E -->|"なし(点状出血のみ/所見なし)"| G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Hunner lesion'>ハンナ病変</span>なし<br>日本の診療ガイドラインでは<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bladder pain syndrome'>膀胱痛症候群</span><br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='designated intractable disease'>指定難病</span>の枠では非ハンナ型<br>多面的な症状マネジメントへ"]
    D --> H["治療反応不良なら<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cystoscopy (cystoscope)'>膀胱鏡</span>を検討"]
    H --> E

紛らわしいもの

  • 出血(点状出血)との違い。 出血は非特異的で、IC/BPS以外の慢性膀胱刺激でも起こりうる所見であるのに対し、はIC/BPSに特異的で診断的な所見である3。両者は水圧拡張という同じ手技で見つかることがあるが別の所見であり、「点状出血があればハンナ型」ではない(→出血)。
  • ・との鑑別。 発赤した粘膜病変という点で悪性腫瘍と紛らわしいことがあり、疑わしい所見があれば生検で除外する3。
  • 「非ハンナ型」という語の射程は文書によって違う。 日本の226の枠では、が無く膀胱時の点状出血を認める例に「(非ハンナ型)」という分類名が与えられ、「」と単純に同義ではない2。一方、日本の診療ガイドライン(2019年版)はこの分類自体を設けず、2007年版の非(NHIC)は現行の(BPS)に含まれると明記している1。⚠️ どちらの文書の用語かを確かめずに読み比べない(→/)。

まとめ

  • は、発赤粘膜の中に蒼白な・放射状の小血管・を伴う所見で、IC/BPSの中で唯一診断的な特異的所見である。
  • 見た目は一様ではなく、中心の有無・炎症の強弱・・赤い滝状の出血まで幅がある(型の一覧は31例の選択された症例に基づくアトラス由来で、頻度を読む資料ではない)。
  • IC/BPS症例を分母にすると5〜10%と頻度は低い。年齢が上がるほど見つかりやすくなる向きは3つのデータセットで一致するが、それらはを受けた患者を分母とし、区分の切り方も研究ごとに違うので、5〜10%と同じ線の上には並べられない。
  • 好発部位は膀胱後壁で、外来での(・水圧拡張なし)でほとんどが同定できる。は全例に必須ではないが、を疑えば早期に行う。
  • が見つかればおよび/または注入という直接的な治療につながる——所見の同定そのものがを決める。 2026年版は切除・凝固・レーザーをtype 3Cに限定し、点状出血部の凝固は推奨していない。
  • 「非ハンナ型」は226の枠の分類名で、日本の診療ガイドライン2019年版ではこの分類は設けられず(BPS)に含まれる。
  • 出血(非特異的)や・(発赤病変として紛らわしい)と混同しない。

出典

  1. 1.間質性膀胱炎・膀胱痛症候群診療ガイドライン(2019年版)(日本間質性膀胱炎研究会/日本泌尿器科学会・2019)本体PDF(2019年3月発行、第1版第1刷は2019年4月25日)を取得して逐語確認した。総称を間質性膀胱炎・膀胱痛症候群(IC/BPS)とし、そのうちハンナ病変のあるものをハンナ型間質性膀胱炎(HIC)、それ以外を膀胱痛症候群(BPS)と呼ぶこと。2007年版GLがハンナ病変はないが点状出血のあるものに与えていた非ハンナ型間質性膀胱炎(NHIC)という分類は本GLでは設けず、「NHICは、本GLのBPSに含まれる」と明記していること。ハンナ病変については、上皮の脱落はあってもその下の組織が欠失しているわけではないので病理学的な意味で潰瘍とは言えないとして、本GLでは「ハンナ病変(Hunner lesion)」と記述すると述べていること。点状出血(Glomerulations)については、脚注2が「この所見は印象的であるが、正常者やIC/BPS以外の患者でも観察される、程度と症状などとの関連性がないなどの理由から、臨床的な意義は乏しいとされている」と述べていること。診断の章が「ハンナ病変の亀裂・出血」として、ハンナ病変は膀胱拡張に伴い亀裂となることが多く、排水すると病変や辺縁部から五月雨状または滝状の出血が起こり、時に動脈性の出血となると記載していること。2026年5月7日付の日本泌尿器科学会「ガイドライン一覧」PDFでも本ガイドラインは2019.4.25発行・2021.5アップデートとして掲載され、それ以後の改訂版は掲載されていないこと。閲覧 2026-09-17
  2. 2.間質性膀胱炎(ハンナ型)(指定難病226)(難病情報センター・2025)指定難病226の診断基準B(検査所見)は「膀胱内にハンナ病変を認める」ことのみで、ハンナ病変を「正常の毛細血管構造を欠く特有の発赤粘膜」と定義し、病理学的には上皮がしばしば剥離し粘膜下組織に血管増生と炎症細胞の集簇をみると記載していることを確認した。ハンナ病変を有するものが「間質性膀胱炎(ハンナ型)」で指定難病226の対象、ハンナ病変が無く膀胱水圧拡張術時の点状出血のみを認めるものは「間質性膀胱炎(非ハンナ型)」として区別され対象外であること、ハンナ型の患者群のほうが高齢で症状も重症で病理学的炎症所見が強いことも確認した。閲覧 2026-09-16
  3. 3.Interstitial Cystitis/Bladder Pain Syndrome(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2024)NCBI BookshelfのHTML本文(Last Update: October 7, 2024)を取得して次を逐語確認した。ハンナ潰瘍(Hunner ulcer)は「often described as pale central scars with or without a fibrin clot and surrounded by erythematous mucosa, with small vessels radiating towards the center」で、水圧拡張後に周囲粘膜が破裂して出血が生じるとする。最も多い部位は膀胱後壁(posterior bladder mucosa)で、逐語は「Hunner ulcers are considered diagnostic for IC, but they are uncommon and may only be present in 5% to 10% of cases.」=IC全体の5〜10%にしかみられない所見であり、他の疾患を除外したうえで古典的ICに特徴的かつ診断的とされる。年齢については「which is more commonly found in patients over age 50 in whom a cystoscopy may, therefore, be justified」=50歳を超える患者で多いのでこの層では膀胱鏡が正当化されうるとし、続けて「the examination is generally discouraged in younger patients where Hunner ulcers are far less common」=若年者では概して勧められないと述べる(「50歳以上でのみ正当化される」という排他的な書き方はしていない)。糸球体様出血(glomerulations)は非特異的で、IC/BPSに診断的な膀胱鏡所見はハンナ潰瘍以外に無いとも明記している。閲覧 2026-09-16
  4. 4.Presenting an atlas of Hunner lesions in interstitial cystitis which can be identified with office cystoscopy(Neurourology and Urodynamics・2020)Europe PMCの抄録(DOI 10.1002/nau.24500、PMID 32902893)を逐語確認した。2011〜2020年に単一の医師が治療したIC/BPS患者の膀胱鏡画像を後方視的に集め、31例の画像からアトラスを作成している。組入れは「Only patients who had images available, received triamcinolone injection and/or fulguration of Hunner lesions, and reported improvement of their symptoms following treatment were included in the atlas.」=画像が残っておりトリアムシノロン注入または焼灼を受けて症状改善を報告した例に限られる。ハンナ病変の外観の多様性として「classic lesions with or without a central coagulum, inflamed lesions, non-inflamed lesions, groupings of lesions, and lesions with a red waterfall bleeding appearance」を報告している(抄録は滝状出血を水圧拡張と結び付けてはいない)。結論として「Most Hunner lesions can be identified during office visits using flexible cystoscopy and local anesthesia without hydrodistention or general anesthesia」と述べている。閲覧 2026-09-16
  5. 5.Diagnosis and Treatment of Interstitial Cystitis/Bladder Pain Syndrome(American Urological Association・2022)AUAガイドライン全文で、推奨3が膀胱鏡・尿流動態検査を「診断が疑わしいときに考慮する。合併症のない症例では診断に必須ではない」(Expert Opinion)とする一方、推奨4は「ハンナ病変が疑われる患者には膀胱鏡を行うべき」(Expert Opinion)とし、本文でハンナ病変が疑われる場合は他の行動療法・薬物療法の失敗を待たずに早期の膀胱鏡が正当化されると述べていることを確認した。表現型のうち「膀胱中心型」を、ハンナ病変・小さな膀胱容量・膀胱内局所麻酔で軽快する痛みで説明する。治療では、ハンナ病変のある患者を除いて初期治療は非手術的なものにするとし(推奨5)、ハンナ病変があれば経尿道的焼灼(レーザー・電気焼灼)および/またはトリアムシノロン注入を行うことを、実施を勧める側で唯一の Recommendation(Grade C、推奨19)としている。2026-09-17 にブラウザUA付き curl で再取得(HTTP 200・475,216バイト)し、年齢との関係の段落を逐語で確認した——同じ段落が3つの別々のデータセットを並べており、「Doiron et al. showed that the prevalence of Hunner lesion was significantly higher in patients over the age of 50 compared to those younger than 50 (14.9% vs. 7.8%, p=0.0095).」「In the MAPP research study, Hunner lesions were found in 4.0% of cystoscopy in patients less than 50 years old, 19.7% between ages 50 to 70, and 54.5% over the age of 70.」「In a different clinical study, Hunner lesions were found in 8.6%, 23.8%, and 55.6% of patients less than 30 years old, between 30 to 60 years old, and older than 60 years old, respectively.」である。⚠️ MAPP の数値は「4.0% of cystoscopy」=膀胱鏡を受けた患者を分母にした割合であって、IC/BPS 全体を分母にした有病割合ではない。段落の結論は「Thus it is reasonable to offer cystoscopy to men and women over the age of 50 …」と「In the Panel's opinion, performing cystoscopy to every IC/BPS patient is not advisable since the benefits/risks ratio is unfavorable for younger patients who have much lower prevalence of Hunner lesions.」で、全例施行は勧めていない。本ガイドライン全文にハンナ病変の全体頻度としての「5% to 10%」という記述は無い(それは StatPearls の記述である)。閲覧 2026-09-16
  6. 6.EAU Guidelines on Chronic Pelvic Pain — Management(European Association of Urology・2026)2026年版(Citation Information の章は "EAU Guidelines. Edn. presented at the EAU Annual Congress London 2026. ISBN 978-94-92671-32-5." とする)の治療の章を取得して逐語確認した。推奨表に "Offer transurethral resection (or coagulation or laser) of bladder lesions, but in PBPS type 3C only."(Strength rating は Strong)があり、経尿道的切除・凝固・レーザーをESSIC分類のtype 3C(ハンナ病変+生検陽性)に限定していること。本文は "Endourological destruction of bladder tissue aims to eliminate urothelial Hunner lesions. Coagulation of glomerulations or petequiae area is not recommended." と述べ、エビデンス要約は "Transurethral resection (coagulation and laser) may be effective in PBPS type 3C."(LE 3)とすること。水圧拡張については "There is insufficient data for the use of bladder distension as a therapeutic intervention."(LE 3)とし、推奨表でも "Do not use bladder distension alone as a treatment of PBPS."(Weak)としていること。閲覧 2026-09-17