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Disease Atlas · 腎・泌尿器 · 疾患

間欠性精巣捻転

Intermittent testicular torsion

別名
捻転-整復症候群間欠性精索捻転
臓器系
腎・泌尿器生殖・産婦人科
科目
UrologyPediatrics
トピック
泌尿器科学 U-08:泌尿器科救急疾患小児科 16:精巣捻転・卵巣捻転、停留精巣
上位概念
精巣捻転・卵巣捻転
鑑別疾患
精索静脈瘤精巣上体炎・精巣炎
症状
疼痛悪心
画像所見
渦巻き徴候

🧠 全体像:は、精索が捻れては自然に戻ることを繰り返す病態である。受診したときには捻転が解けているので、⚠️ 診察も超音波も正常に見え、「異常なし」で帰される——これが最大の落とし穴になる。診断は画像ではなく病歴で立てる:「突然始まって短時間で完全に消える強いが、間隔をあけて何度も起きている」。急性捻転と違って手術は緊急ではないが、放置すればの完成による精巣喪失に至りうるため、なが中心的な治療になる。

何が起きているか

素因は急性捻転と同じで、精巣が内で振り子のように可動するbell-clapper変形が代表である。ここで精索が部分的に捻れると静脈還流が阻害されて激痛が起きるが、捻れが自然に解ける()と血流が戻り、疼痛は数分から数時間で完全に消える。この「捻転→」のサイクルが反復するのが本症で、とも呼ばれる。

⚠️ 本症は急性捻転の前段階でありうる。 複数の報告が「急性の患者の最大50%が、それ以前にによると考えられる疼痛エピソードを経験している」という文献を引用している12(いずれも自身の結果ではなく引用である)。したがって「今回は治まったから様子を見る」という判断は、次の完全捻転を待つことと同義になりうる。

臨床像

診断は純粋に臨床的である1。

項目 報告されている内容
疼痛の性状 急速に発症し急速に消退する強い疼痛。最も特徴的な所見3
反復回数 小児50例で手術前のエピソード数は平均4.3回(1〜30回)3
随伴する悪心 小児50例では悪心および/または嘔吐が約4分の13。成人50例では疼痛に伴う悪心が34%1
年齢 小児例で平均12.2歳(4〜17歳)3、成人の手術例で平均28.9歳(16〜49歳)1
症状持続 成人50例で平均31.6か月にわたり症状が続いてから手術に至った1
患側 左36%・右36%・両側28%1

診察では、無症状期でも精巣が通常の垂直位でなく水平位を取ることが手がかりになる。小児50例では、水平位の所見が手術で確認されたbell-clapper変形の存在と有意に関連していた(p<0.05)3。精巣の過可動、関節の過可動を伴うことも多い1。成人63例では、全例で精巣が異常位・を取るか容易に捻れ、著者らは精巣を愛護的に捻って同様の疼痛が再現されるかを見る「testicular twisting test」を提唱している2。

⚠️ 成人では別の診断を付けられて長く見落とされる。 成人63例の多くは、他院で感染症・・などと診断されていた2。反復するをとして抗菌薬で繰り返し治療している症例では、本症を疑う。

画像の位置づけ

⚠️ 超音波は「捻転が解けている時点」では偽って安心させる1。それでも、疼痛のある最中に撮れれば所見は残っていることがある。小児の19エピソードを解析した検討では次のように報告された4。

超音波所見 頻度(19エピソード中)
またはpseudomass 79%(15件)
・pseudomassを欠くが精索が「boggy」に肥厚 10.5%(2件)
精索が正常に見える 10.5%(2件)
血流:消失後に正常〜増加へ転じる/ 63%(12件)
血流:正常 26%(5件)
血流:低下 10.5%(2件)

⭐ 血流が「増えている」ことは正常の証拠ではない。 の直後には反応性の充血が起こるため、ドプラで血流が豊富に見えることこそが直前の捻転を示唆しうる。同検討は、・boggyな異常精索・捻れた精索より下方のpseudomass形成をいずれも診断を支持する有意な所見としている4。

⚠️ 陰性所見に重みを置かない。 成人63例のコホートでは「き」精索を認めた症例が1例も無かった2。画像が正常でも病歴が典型的なら診断を取り下げない。

評価と治療の進め方

flowchart TD
    A["反復する<span class='jp-term jp-term-diagram' title='scrotal pain'>陰嚢痛</span>"] --> B{"今まさに疼痛があるか"}
    B -->|"あり"| C["急性<span class='jp-term jp-term-diagram' title='testicular torsion'>精巣捻転</span>として扱う<br>直ちに泌尿器科へ"]
    B -->|"消退している"| D["病歴を詳しく取る<br>突然発症・短時間・完全消退・反復"]
    D --> E["無症状時の診察<br>精巣の水平位・過可動を見る"]
    E --> F{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intermittent torsion'>間欠性捻転</span>として矛盾しないか"}
    F -->|"いいえ"| G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='epididymitis'>精巣上体炎</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='varicocele'>精索静脈瘤</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='adnexal torsion'>付属器捻転</span>などを検討"]
    F -->|"はい"| H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='elective'>待機的</span><span class='jp-term jp-term-diagram' title='bilateral orchidopexy'>両側精巣固定術</span>を提示<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='scrotal support'>陰嚢サポート</span>による保存療法も選択肢"]
    H --> I["疼痛が強い・持続するときは<br>直ちに救急受診するよう指導"]

⚠️ 疼痛が持続している症例は本症として扱わない。 疼痛が続いているなら、それはしていないということであり、急性として時間との勝負に切り替える。

待機的両側精巣固定術

転帰 報告値
捻転による精巣喪失の予防 成人50例で成功率100%(平均追跡33.5か月)1
疼痛の消失 成人50例で88%が消失、12%が改善1。小児では追跡できた38例中37例(97%)が完全消失3
合併症 成人50例で・血腫なし1、小児50例で術後合併症なし3

両側に行うのは、bell-clapper変形が両側性であることが多いためである。

保存療法はで精巣を快適な位置に保ち再捻転を減らすことを目標とし、強い疼痛が持続するときは直ちに救急受診するよう指導する1。⭐ ただし成人63例の比較では、疼痛の消失・改善は固定術群94.7%(18/19)に対し保存群47.7%(21/44)で、固定術のほうが優れていた2。

卵巣・付属器の反復性捻転

卵巣・付属器でも捻転とを繰り返す病態が知られており、が受診時に消えている点は精巣と同じである。ただし精巣と違って一定のや研究は乏しく、報告の多くは症例報告とのにとどまる。

再発予防としてのには術式の議論がある。後に同側で初回固定術を受けた38例の比較では、で再捻転が25.9%(7/27)、卵巣-固定で0%(0/11)だったが、症例数が少なく有意差には至らなかった(p=0.08)5。妊娠中(主に第1三半期)にも合併症なく施行できたと報告されている5。

まとめ

  • は捻転とを繰り返す病態で、診断は画像ではなく病歴(突然発症・短時間・完全消退・反復)で立てる。
  • 無症状時の診察では精巣の水平位・過可動が手がかりになり、水平位はbell-clapper変形の存在と有意に関連する。
  • 超音波は捻転が解けていれば正常に見える。疼痛のある最中なら・pseudomass・boggyな精索が有力な手がかりになり、後のは正常の証拠ではない。
  • 成人では感染症・などとされて長く見落とされる。反復するでは本症を鑑別に挙げる。
  • 治療は両側で、精巣喪失の予防と疼痛の消失の両方で保存療法を上回る成績が報告されている。
  • 疼痛が持続しているなら本症ではなく急性として扱い、緊急手術へ回す。

出典

  1. 1.Bilateral orchidopexy for intermittent testicular torsion(BJUI Compass・2024)全文を閲覧。単一施設・単一術者が2015〜2023年に間欠性精巣捻転に対して待機的両側精巣固定術を行った男性50例の前向きコホートで、平均年齢28.9歳(16〜49歳)、症状持続期間が平均31.6か月、追跡が平均33.5か月であったこと、疼痛側が左36%・右36%・両側28%、既往の救急受診が34%、悪心の合併が34%であったこと、捻転による精巣喪失の予防成功率が100%、88%が術後に疼痛消失・12%が疼痛改善であり、陰嚢水腫・血腫の症例が無かったことを確認した。序文の記載として、間欠性精巣捻転の診断は純粋に臨床的であること、典型的な病歴が無症状期を挟んで反復する陰嚢痛であること、診察では精巣が通常の垂直位でなく水平位を取り、精巣の過可動や関節の過可動を伴うことが多いこと、捻転が解除された時点では超音波が偽って安心させうること、保存的管理が陰嚢サポートで精巣を快適な位置に保ち再捻転を減らすことを目標とすることも確認した。なお「急性精巣捻転患者の最大50%が先行する疼痛エピソードを報告する」は本論文の結果ではなく他文献の引用である閲覧 2026-09-03
  2. 2.Intermittent Testicular Torsion in Adults: An Overlooked Clinical Condition(Medical Principles and Practice・2017)全文を閲覧。3か月以上続く間欠性の精巣痛を組入れ基準とした成人63例(年齢中央値28歳、17〜50歳、2004〜2014年)の検討で、多くが他院で感染症・精索静脈瘤・前立腺肥大症など別の診断を受けていたこと、全例で精巣が異常位または横位を取るか容易に捻れたこと、著者らが精巣を愛護的に捻って同様の疼痛が再現されるかを見る「testicular twisting test」を提唱していること、この成人コホートでは「渦巻き」精索を認めた症例が1例も無かったこと、1か月の陰嚢サポートと頓用NSAIDsののち19例が両側陰嚢内精巣固定術・44例が保存療法を選び、固定術群は19例中18例(94.7%)で疼痛が消失または改善(VAS中央値1/10)、保存群は44例中21例(47.7%)で改善(VAS中央値3/10、追跡中央値13か月)であったことを確認した。なお「精巣捻転の男児の最大50%が間欠性捻転による先行疼痛エピソードを有する」は本論文の結果ではなく他文献の引用である閲覧 2026-09-03
  3. 3.Intermittent testicular torsion: diagnostic features and management outcomes(The Journal of Urology・2005)1〜18歳で間欠性精巣捻転と診断された50例の後方視的検討で、受診時平均年齢が12.2歳(4〜17歳)、手術前の疼痛エピソード数が平均4.3回(1〜30回)であったこと、最も多い所見が「急速に発症し急速に消退する強い疼痛」であったこと、悪心・嘔吐が全体の4分の1で報告されたこと、診察での精巣の水平位がbell-clapper変形の存在と有意に関連していたこと(p<0.05)、全例に両側精巣固定術を行い術後合併症が無かったこと、追跡できた38例のうち37例(97%)で症状が完全に消失したこと(平均追跡7.9か月)を確認した(抄録のみを閲覧しており全文は未取得)閲覧 2026-09-03
  4. 4.Intermittent testicular torsion in the pediatric patient: sonographic indicators of a difficult diagnosis(American Journal of Roentgenology・2013)間欠性精巣捻転を「突然発症し短時間で自然に軽快する片側陰嚢痛」と定義した小児例の後方視的検討で、19エピソード(15例)の超音波所見のうち63%(12件)が「血流消失後に正常〜増加へ転じる」(6件)または「精巣血流の増加」(6件)、26%(5件)が正常血流、10.5%(2件)が血流低下であったこと、19エピソード中79%(15件)に渦巻き徴候またはpseudomassを認め、10.5%(2件)は両者を欠くが精索が「boggy」に肥厚し、10.5%(2件)は精索が正常であったこと、渦巻き徴候・boggyな異常精索・捻れた精索より下方のpseudomass形成がいずれも診断を支持する有意な所見であったことを確認した(抄録のみを閲覧しており全文は未取得)閲覧 2026-09-03
  5. 5.Comparative outcomes of oophoropexy techniques in preventing recurrent adnexal torsion(Archives of Gynecology and Obstetrics・2025)卵巣径が正常な生殖年齢女性を対象に、付属器捻転手術後に同側で初回固定術を受けた38例(525件の付属器捻転・413例から厳格な基準で抽出)を後方視的に比較し、卵巣固有靱帯縫縮27例(71%)で再捻転が7例(25.9%)、卵巣-円靱帯固定11例(29%)で再捻転が0例だったが有意差には至らなかったこと(p=0.08)、固定術が妊娠中(主に第1三半期)にも術後合併症なく安全に施行できたことを確認した(抄録のみを閲覧しており全文は未取得)閲覧 2026-09-03