小児科学

小児科学 · 16

精巣捻転・卵巣捻転、停留精巣

Testicular and ovarian torsion. Cryptorchism.

前提:病態
停留精巣・精巣萎縮の病理
前提:正常
泌尿生殖器系:生殖器系(精巣下降)
疾患
間欠性精巣捻転精巣上体炎・精巣炎精巣捻転・卵巣捻転停留精巣

🧠 全体像:とはいずれも「捻転→・浮腫→低下→虚血」というの時間との勝負であり、疑えば画像所見の完全な一致を待たず手術評価へつなぐ。は出生後早期にすることがあるが、生後6か月以降のはまれで、適切な時期のが必要になる。123

精巣捻転

陰嚢内での精索の突然の捻転。乳児期、とくに生後1年以内と思春期(おおむね12〜18歳)に多いを示す。1

  • 重要性:泌尿器科的緊急疾患。放置すれば虚血・に至る。
  • 病態生理:
    • :精巣・精索・がで捻れる周産期型
    • :内で精索が捻れる思春期型。bell-clapper変形が代表的素因
    • 捻転→障害→うっ血・浮腫→低下→虚血・壊死
    • は虚血時間とともに低下するため、発症時刻にかかわらず疑った時点で直ちに評価・治療する
  • 症状:突然の高度な片側精巣痛または下腹部痛、腫脹・圧痛、・精巣、悪心・嘔吐。は手がかりになりうるが、反射の有無だけでは除外・確定できない。も感度・特異度が不十分で、陽性/陰性だけでと捻転を区別しない。新生児では無痛性の硬いや発赤として発見されることもある。1
  • 診断:臨床的疑いが高ければ緊急手術を優先し、超音波のために遅らせない。診断が不明確で直ちに実施できる場合はで血流低下/消失、精索の、精巣腫大・不均一化を確認するが、残存血流があっても捻転を否定できない。14
  • 治療:疑った時点で直ちに泌尿器科へ連絡し、受診が遅れていても緊急探索を行う医療緊急疾患。1
    • :手術前の即時目的に試みてよいが、手術を遅らせてはならない
    • :即時と患側精巣固定を行い、通常は対側も固定する。明らかに温存不能な精巣のみ摘出する

卵巣捻転

卵巣・卵管が支持靭帯とを軸に捻転する病態。小児・思春期にも起こり、小児では腫瘤や嚢胞を伴わない正常卵巣の捻転も少なくない。2

  • 重要性:婦人科的緊急疾患。虚血・卵巣壊死のリスクがある。
  • 危険因子:卵巣腫大、、良性腫瘍、妊娠。ただし小児・思春期では明らかな腫瘤がない例もある。
  • 病態生理:捻転→→浮腫→浮腫増悪による動脈血流圧迫・低下→虚血・壊死。
  • 症状:突然発症の片側性下腹部/、悪心・嘔吐、なと圧痛。
  • 診断:で片側性卵巣腫大、、した卵胞、捻れたなどを評価する。動脈/静脈血流が保たれていても捻転は否定できず、確定は腹腔鏡による外科診断である。では尿/血中β-を確認する。2
  • 治療:疑えば迅速にを行い、肉眼的に暗赤色・黒色でもして卵巣を温存する。外観だけで壊死と判断して摘出せず、組織が崩壊して温存不能な場合などに限ってを検討する。は再発例など選択症例で検討する。2

停留精巣

または両側の精巣が陰嚢内の正常な位置まで下降しない状態。泌尿生殖器のとして最多。

  • 危険因子:早産、。
  • 症状:
    • 型(80%):精巣をに陰嚢へ誘導できない
    • 非触知型(20%):腹腔内に存在するか、精巣そのものが欠損している可能性
  • 病型:精巣(外鼠径輪と内鼠径輪の間に位置し十分な可動化ができない)、腹腔内精巣、。
  • 評価:触診が基本で、非触知精巣でも手術前の超音波やをに行わない。と、陰嚢まで誘導して一定時間保持できる移動性精巣を区別する。非触知精巣は小児外科・小児泌尿器科で腹腔鏡探索を含む評価へ進める。3
  • 治療:出生時のは生後6か月までにすることがあるが、それ以降はまれである。下降しなければ生後6か月で専門科へ紹介し、生後6〜12か月を目標に、遅くとも18か月までにを完了する。はルーチンには行わない。53
  • 合併症:、不妊、のリスク上昇。後もリスクが完全にゼロになるわけではない。53

まとめ

  • は周産期のと思春期のがあり、や残存だけで除外せず、疑えば直ちにへつなぐ。
  • は小児・思春期にも起こり、が保たれていても否定できない。手術では外観にかかわらず・温存を原則とする。
  • は生後6か月以降のがまれで、持続例は生後6〜12か月、遅くとも18か月までにを完了する。

出典

  1. 1.High risk and low prevalence diseases: Testicular torsion(2023)精巣捻転の二峰性年齢分布、精巣挙筋反射の限界、正常超音波で除外できないこと、疑診時の即時泌尿器科相談と緊急探索を確認した。閲覧 2026-08-13
  2. 2.Adnexal Torsion in Adolescents: ACOG Committee Opinion No. 783(2019)思春期の付属器捻転は画像だけで確定・除外できない外科診断であり、疑えば速やかな腹腔鏡、卵巣外観にかかわらない脱捻転・温存を推奨することを確認した。閲覧 2026-08-13
  3. 3.Comparison of diagnostic and treatment guidelines for undescended testis(2020)生後6か月以降の自然下降は低確率で、画像検査やホルモン療法をルーチンに行わず、6か月で紹介して6〜18か月に精巣固定術を行う国際ガイドラインの共通点を確認した。閲覧 2026-08-13
  4. 4.The Use of Doppler Ultrasound for Suspected Testicular Torsion: Lessons Learned from a 15-Year Multicentre Retrospective Study of 2922 Patients(2022)ドプラ超音波は選択例で有用だが診断性能は完全でなく、臨床的疑いが強い場合に手術を遅らせたり置き換えたりしてはならないことを確認した。閲覧 2026-08-13
  5. 5.Management of undescended testes: European Association of Urology/European Society for Paediatric Urology Guidelines(2016)停留精巣の標準治療は精巣固定術で、妊孕性低下・悪性化リスクを減らすため遅くとも18か月までの早期治療が必要であることを確認した。閲覧 2026-08-13