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Lab values · Published

精液検査

Semen analysis

別名
精液所見spermiogram
臓器系
生殖・産婦人科
科目
Urology
トピック
泌尿器科学 U-22:男性不妊症

🧠 全体像:は「精子が十分な数いて、正しく動いて、正しい形をしているか」を一度に見るパネル検査であり、単一の値ではなく複数項目の組み合わせで読む。第6版(2021年)が示す下限は、あくまで自然妊娠に至った集団の5であって「これを下回れば不妊」という診断的ではない1。だけで妊孕性・不妊を確定・除外することはできず、原因不明のまま残る割合もできない2。

何を測っているか

精液は複数の分泌腺の産物が混ざった液体で、各成分の由来が異なるため、どの項目が低いかでどの分泌腺・器官の問題かの見当がつく。

成分 主な由来 反映するもの
精液量の大部分(60〜70%) 腺 ・の通過性、の
精液量の一部(20〜30%)・酸性 前立腺 前立腺の
精子そのもの 精巣() そのもの
精子の運動性を支える環境 精巣上体通過中の成熟 精巣上体の機能

精液pHが7.2を下回る場合は、アルカリ性の腺分泌液が欠けている、あるいは・の閉塞を示唆しうる所見として位置づけられている1。

基準値と単位(WHO第6版・下限基準値)

項目 単位 下限(5) 95%CI
精液量 mL 1.4 1.3-1.5
百万/mL 16 15-18
総精子数 百万/射出液 39 35-40
総運動率(前進運動+非前進運動) % 42 40-43
前進運動率 % 30 29-31
正常形態率 % 4 3.9-4.0
(生存精子の割合) % 54 50-56
pH — 7.2以上が目安 —

いずれも1による。⭐ これらは「正常値」ではなく「」に位置づけが変わった——第5版までの「正常値」という呼称をやめ、臨床的な意思決定の目安として使うという第6版の立場転換を反映している1。

構成する項目ごとの読み方

  • 量とpH — 腺・前立腺のを反映する。量の著減+酸性pHは、や腺無形成など後精巣性の異常を示唆しうる。
  • ・総精子数 — そのものの指標。総精子数は「濃度×量」で決まるため、濃度が保たれていても量が少なければ総数は減る。
  • 運動率(前進運動率・総運動率) — 精子が受精の場まで到達できるかを反映する。精巣上体通過中の成熟障害やなどで低下しやすい。
  • 正常形態率 — 受精能を持つ形態の精子の割合。判定基準(Krüger厳密基準など)によって数値の意味が変わるため、どの基準で数えたかを併記しないと施設間で比較できない。
  • — 精子が生きているかどうかの指標。運動率が著しく低いのにが保たれていれば、鞭毛のなど「動けないが生きている」病態を疑う手がかりになる。

どのパターンで切り分けるか

⚠️ 単一の異常値だけで判断せず、パターンの組み合わせで見る。

パターン 呼び方 疑う方向
のみ低い 前精巣性・精巣性・後精巣性のいずれも取りうる
精子が全く検出されない 閉塞性か非閉塞性かの鑑別が最優先
運動率のみ低い(濃度は正常) 、精巣上体の異常、抗精子抗体、鞭毛の
正常形態率のみ低い 単独では予後への影響が不確実なことが多い
複数項目が同時に低い 乏精子無力 そのものの広範な障害を示唆し、や内分泌異常を含め精査範囲が広がる

⚠️ 測定上の注意 — 精液所見は同一個人でも採取のたびに変動が大きいため、異常があれば標準化した条件(禁欲期間をそろえる、全量を採取する、体温付近で速やかに検査室へ運ぶ)で少なくとも1回は再検することが推奨される2。精液中の白血球は陽性細胞として区別する必要があり、未熟な生殖細胞と形態的に混同しやすい1。

次に進むべき検査

は単独で完結せず、異常のパターンに応じて次の一手が決まっている。・であれば・テストステロンなどのホルモン評価、高度やであれば・Y染色体検査へ進む——この分岐の詳細はのノートに譲る。

まとめ

  • は量・・総数・運動率・正常形態率・・pHを一度に見るパネル検査で、単一項目では読めない。
  • 第6版の下限は自然妊娠集団の5であり、不妊を診断するではない。
  • 異常のパターン(どの項目が低いか、単独か複数同時か)が次にどの検査へ進むかを決める。
  • 個体内変動が大きいため、異常値は標準化した条件での再検を経てから解釈する。

出典

  1. 1.WHO laboratory manual for the examination and processing of human semen, Sixth Edition(World Health Organization・2021)全文(PDF)を確認。自然妊娠に至った集団(Campbell et al.)約3,500例超の分布から、下位5パーセンタイルを片側下限基準値として、精液量1.4 mL(95%CI 1.3-1.5)・精子濃度16百万/mL(95%CI 15-18)・総精子数39百万/射出液(95%CI 35-40)・総運動率42%(95%CI 40-43)・前進運動率30%(95%CI 29-31)・正常形態率4%(95%CI 3.9-4.0)・生存率54%(95%CI 50-56)と定めていること、この下位5パーセンタイルは「妊孕性と不妊を分ける閾値ではない」と明記していること、pH 7.2未満はアルカリ性のセミナル小胞液の欠乏を示唆しうるとしていること、精液中の白血球(ペルオキシダーゼ陽性細胞)についてはエビデンスに基づく基準値が無く旧版から引き継いだ1.0×10⁶/mLを暫定的な臨床的意義の閾値としていることを確認した閲覧 2026-09-07
  2. 2.Diagnosis and Treatment of Infertility in Men: AUA/ASRM Guideline (2020; Amended 2024)(American Urological Association / American Society for Reproductive Medicine・2024)全文(PDF)を閲覧。WHO第6版に基づく精液所見の片側下限基準値(自然妊娠に至った集団の下位5パーセンタイル)が精液量1.4 mL・総精子数39百万/射出液・精子濃度16百万/mL(95%CI 15-18)・生存率54%・前進運動率30%・総運動率42%であること、精液所見は個体内変動が大きいため異常があれば少なくとも1か月あけて再検すべきこと(Strong Recommendation)、精液検査所見だけで妊孕性・不妊を確定できないこと、乏精子症・無精子症や性腺機能低下を示唆する所見があればFSH・テストステロンのホルモン評価を行うこと(Expert Opinion)を確認した閲覧 2026-09-07