組織病理学

組織病理学 · H2-001B

巨赤芽球性赤芽球過形成

Megaloblastic erythroid hyperplasia

描出疾患
巨赤芽球性貧血

🧠 全体像:は、ビタミンB12または葉酸の不足などで合成が障害され、核の成熟が細胞質の成熟に追いつかなくなった骨髄像である。検鏡では「大きな赤芽球」「核・細胞質成熟の不一致」「多核化」「巨大」「」を一つの流れとして読む。

標本の要点

項目 所見
検体
染色 May-Grünwald-(MGG)
病態 合成障害による
主な原因 ビタミンB12欠乏、葉酸欠乏、合成を妨げる薬剤など
巨大化、多核化、核・細胞質成熟の不一致
巨大な前駆細胞やを伴いうる
末梢血への反映 赤血球、、を来しうる

発症機序

ビタミンB12と葉酸は正常な合成に必要である。欠乏するとが遅れる一方、・タンパク質合成と細胞質成熟は比較的進むため、細胞が大型化し、核だけが未熟に残る。

flowchart TD
    A["ビタミンB12欠乏・葉酸欠乏など"] --> B["チミジン合成低下"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='deoxyribonucleic acid'>DNA</span>複製・核成熟の遅延"]
    C --> D["細胞質成熟は比較的進行"]
    D --> E["核・細胞質成熟の不一致"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='megaloblasts'>巨赤芽球</span>・多核化・巨大<span class='jp-term jp-term-diagram' title='granulocytic lineage cells'>顆粒球系細胞</span>"]
    F --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ineffective erythropoiesis'>無効造血</span>・髄内細胞死"]
    G --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='macrocytic anemia'>大球性貧血</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Leukopenia'>白血球減少</span>・血小板減少"]

観察の順序

低倍率

細胞が増加した骨髄を確認する。骨髄全体の細胞密度は生検で評価するのが原則であり、吸引塗抹の一視野だけから「過形成」や「過細胞性」を断定せず、の比率と個々の形態を合わせて読む。

高倍率

所見 読み方
正常赤芽球より大型で、が繊細・未熟なまま細胞質のヘモグロビン化が進む
多核 ・の障害により、一つの大型細胞内に複数核を認める
多染性赤芽球 青の細胞質をもち、細胞質成熟の段階を示す
巨大好中球系細胞 にも合成障害が及び、細胞・核が大型化する
の大きさが不均一で、大型赤血球が混在する

⭐ 最は核・細胞質成熟のである。 単に「細胞が大きい」だけでなく、細胞質は成熟しているのにが幼若な点を捉える。

原因の整理

原因 代表的背景 病理像からの区別
ビタミンB12欠乏 ・欠乏、胃切除、回腸疾患・切除、長期間の吸収不良、補充のない厳格なヴィーガン食 葉酸欠乏と形態だけで区別できない
葉酸欠乏 摂取不足、アルコール使用、妊娠・などの需要増大、近位小腸疾患、 ビタミンB12欠乏と形態だけで区別できない
薬剤・代謝障害 メトトレキサート、など合成を妨げる薬剤 とが必要
障害 異形成の系統・程度、染色体・分子所見を統合する

葉酸は葉物野菜、豆類、果物などに多く、加熱や保存で失われやすい。ビタミンB12は主に動物性食品や強化食品から摂取するが、十分な補充があればヴィーガン食でも欠乏を予防できる。

⚠️ 骨髄像だけでビタミンB12欠乏か葉酸欠乏かを決めない。 血清ビタミンB12・葉酸、必要に応じて・、神経症状、食事・手術・吸収不良の病歴を組み合わせる。ビタミンB12欠乏では貧血に先行または独立して神経障害を生じうる。B12欠乏によるをもつ連続141例のうち40例(28%)は貧血も大球症も伴わず、が正常だったものが34例、が正常だったものが25例あった。この40例では血清とが著明に上昇し、血清が100 pg/mL未満だったのは22例のみだった1。

💡 B12欠乏を定義できる単一のは無い。 血清ビタミンB12が第一選択だが、生化学的・機能的な欠乏の判断が曖昧なときに血漿を第二選択として加える。も第二選択になりうるが、より特異度が低い。測定法が施設ごとに異なるため臨床的欠乏と不欠乏を分ける確定的なは設定できず、施設のを用いる。と強いが食い違うときは、神経障害を避けるため治療開始を遅らせない2。

巨赤芽球性変化と非巨赤芽球性大球症

項目
主機序 合成障害 変化、、骨髄疾患など
骨髄 、核・細胞質成熟の不一致 原則として典型的を欠く
末梢血 、 円形大赤血球など、原因により多様
代表原因 ビタミンB12欠乏、葉酸欠乏 肝疾患、アルコール、、

まとめ

  • は、合成障害による核と細胞大型化を反映する。
  • MGG染色では、、多核化、核・細胞質成熟の不一致、巨大、を確認する。
  • ビタミンB12欠乏と葉酸欠乏は形態だけでは区別できず、と臨床背景が必要である。
  • を見たら、変化の有無を確認し、大球症や骨髄異形成も鑑別する。

出典

  1. 1.Neuropsychiatric disorders caused by cobalamin deficiency in the absence of anemia or macrocytosis(The New England Journal of Medicine・1988)コバラミン欠乏による神経精神症状をもつ連続141例のうち40例(28%)は貧血も大球症も伴わず、ヘマトクリット正常が34例、平均赤血球容積正常が25例、両方正常が19例であったこと、こうした例では錯感覚・感覚障害・失調・認知症・精神症状が特徴で、血清メチルマロン酸と総ホモシステインが著明に上昇していたこと、血清コバラミンが100 pg/mL未満だったのは22例のみで残りはそれ以上であったこと、治療により39例中39例で神経精神症状が改善したことを確認した閲覧 2026-08-24
  2. 2.Guidelines for the diagnosis and treatment of cobalamin and folate disorders(British Journal of Haematology(British Committee for Standards in Haematology)・2014)コバラミン欠乏を定義する単一の基準検査は存在せず臨床像の評価が最も重要であること、血清コバラミンが第一選択検査で、生化学的・機能的欠乏の判断が曖昧なときに血漿メチルマロン酸を第二選択として加えること、血漿ホモシステインも第二選択になりうるがメチルマロン酸より特異度が低いこと、測定法の違いから臨床的欠乏・不顕性欠乏を分ける確定的なカットオフ値は設定できず施設ごとの基準範囲を用いること、検査値と強い臨床所見が食い違うときは神経障害を避けるため治療を遅らせないこと、葉酸の評価は血清葉酸が第一選択であることを確認した閲覧 2026-08-24