内科学

内科学 · L-64

血液・腫瘍救急:発熱性好中球減少症、腫瘍崩壊症候群、上大静脈症候群

Emergency in hematology and oncology: neutropenic fever, tumor lysis syndrome, superior vena cava syndrome

前提:病態
骨髄・リンパ系の非腫瘍性疾患
前提:正常
縦隔尿酸の生成・排泄とその代謝的役割
疾患
バーキットリンパ腫血液・腫瘍救急(発熱性好中球減少症・腫瘍崩壊症候群・上大静脈症候群)好中球減少性腸炎縦隔腫瘍
症状
インフュージョンリアクション吸気性喘鳴骨髄抑制
検査値
好中球減少絶対好中球数絶対単球数
スコア
CISNEスコアMASCCスコア

🧠 全体像:、、は、悪性腫瘍患者で「診断確定より安定化を優先する」病態である。気道・呼吸・循環を評価しながら、病態特異的治療を遅らせない。

発熱性好中球減少症

発熱は単回 ≥38.3℃、または ≥38.0℃が1時間以上持続、好中球減少は()<500/μLまたは48時間以内に <500/μLとなる見込みを目安とする。

flowchart TD
    A["化学療法中の発熱"] --> B["ABCDE・血算・臓器機能・乳酸"]
    B --> C["末梢血と<span class='jp-term jp-term-diagram' title='each catheter lumen'>カテーテル各腔</span>から血液培養"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='antipseudomonal agent'>抗緑膿菌薬</span>を速やかに開始"]
    D --> E{"高リスク・不安定か"}
    E -->|"はい"| F["入院し静注治療・感染源検索"]
    E -->|"いいえ"| G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='validity'>妥当性</span>を確認して外来経口療法を検討"]

培養採取は抗菌薬を遅らせない。の原則は版を重ねても変わらず、を出発点としながら、全例でグラム陽性菌・グラム陰性菌の両方をカバーする広域経験的抗菌薬を直ちに開始することである1。ASCO/ 2018は初回投与をから1時間以内に行うことを求めている2。高リスクまたは不安定例では、/、抗緑膿菌活性を持つ薬などの単剤静注を基本とする。バンコマイシンは、肺炎、カテーテル感染、皮膚軟部組織感染、リスクなど特定の適応時に加え、ルーチンには使用しない。厳格に選別した低リスク例では+アモキシシリン/などの外来経口療法を検討できる。持続発熱では真菌感染リスクとに基づき画像・抗真菌療法を検討する1。

💡 低リスクと呼べるにはだけでは足りない。 MASCCリスク指数は7項目・最大26点で採点し、21点以上を重篤な合併症の低リスクとする3。ただしASCO/ 2018は、外来経口療法に進むにはさらに好中球減少期間が7日未満・臓器機能が保たれているなどの臨床条件と、信頼できる・24時間の連絡手段・交通手段といった条件を満たすことを求め、やのを受けている患者にはMASCCを使わないとしている2。

⚠️ スコアが低リスクでも、抗菌薬の開始を遅らせる理由にはならない。 は「入院して静注か、外来で経口か」を分けるためのものであって、抗菌薬を投与するかどうかを分けるものではない1。

腫瘍崩壊症候群

腫瘍細胞の急速な崩壊により、高K血症、高P血症、低Ca血症、が生じ、、不整脈、痙攣を来す。、増殖の速い血液腫瘍、治療感受性、腎障害・脱水は高リスクである。

💡 Cairo–Bishop分類は「だけのTLS」と「臨床事象を伴うTLS」を分ける。 尿酸・K・P・Caの異常が基準を満たすだけの段階をlaboratory TLS、そこに腎障害・不整脈・痙攣といった臨床事象が加わった段階をclinical TLSと呼び分け、重症度を段階付けする45。採血だけで拾える段階があるからこそ、リスク例では治療開始前後に電解質・尿酸・Crを頻回に測る意味がある。

対応 内容
予防 リスク分類、十分な補液、K/P/Ca/尿酸/Crの頻回測定
尿酸対策 では、高リスクまたは既存では5
注意 は欠損で禁忌。はCa-P沈着を増やすため原則ルーチンに行わない5
緊急処置 高K血症を直ちに治療。症候性低Ca血症のみ慎重に補正。難治性電解質異常、容量過剰、では透析

上大静脈症候群

の圧迫・浸潤・血栓により頭頸部・上肢の静脈還流が障害される。肺癌、リンパ腫、、中心静脈カテーテル関連血栓が主因である。

典型像は顔面・頸部・上肢の浮腫と、、静脈の怒張・、頭痛・めまい、咳、呼吸困難、嗄声、、で、臥位やで悪化する。造影CTで閉塞部位、、原因、血栓を評価する。

、重度、脳浮腫、では、酸素化・気道管理とともに緊急血管内を検討する。安定例では可能なら治療前に組織診断を得て、腫瘍型に応じ化学療法・放射線療法を行う。血栓性では抗凝固とカテーテル管理を行う。ステロイドはリンパ腫やなど選択例で用い、組織診断を損なう可能性に注意する。

まとめ

  • FNは培養採取と開始を遅らせない。
  • TLSはリスクに応じた補液・と頻回モニタリングで予防する(は推奨されない)5。
  • SVCSでは気道・脳症状の重症度が緊急の判断を左右する。

出典

  1. 1.Clinical Practice Guideline for the Use of Antimicrobial Agents in Neutropenic Patients with Cancer: 2010 Update by the Infectious Diseases Society of America(Infectious Diseases Society of America (IDSA)・2011)発熱性好中球減少症ではリスク層別化を出発点としつつ、全例でグラム陽性菌・グラム陰性菌の両方をカバーする広域経験的抗菌薬を直ちに開始することが、版を重ねても変わらない原則であるとしたことを確認した。閲覧 2026-08-25
  2. 2.ASCO/IDSA Clinical Practice Guideline Update for Outpatient Management of Fever and Neutropenia in Adults Treated for Malignancy(American Society of Clinical Oncology (ASCO) / Infectious Diseases Society of America (IDSA)・2018)外来管理はMASCC 21点以上に加えて臨床基準(好中球減少期間が7日未満、臓器機能が保たれているなど)と社会的条件を満たした場合に限られること、造血幹細胞移植や急性白血病の寛解導入化学療法を受けている患者にはMASCCを用いないこと、初回経験的抗菌薬をトリアージから1時間以内に投与することを確認した。閲覧 2026-08-25
  3. 3.The Multinational Association for Supportive Care in Cancer risk index: A multinational scoring system for identifying low-risk febrile neutropenic cancer patients(Multinational Association for Supportive Care in Cancer (MASCC) / Journal of Clinical Oncology・2000)発熱性好中球減少症の重篤な合併症のリスクを7項目・最大26点で採点し、21点以上を低リスクとするカットオフを導出コホート756例で作成し検証コホートで確認したことを確認した。閲覧 2026-08-25
  4. 4.Tumour lysis syndrome: new therapeutic strategies and classification(British Journal of Haematology・2004)腫瘍崩壊症候群を高尿酸血症・高K血症・高P血症・低Ca血症と尿毒症という代謝異常の集合として定義し、急性腎不全を来して致死的になりうること、増殖の速い腫瘍で発症率が高いことを示すとともに、新たな治療戦略と分類(Cairo–Bishop分類)を提案した。閲覧 2026-08-25
  5. 5.Guidelines for the management of pediatric and adult tumor lysis syndrome: an evidence-based review(Journal of Clinical Oncology・2008)腫瘍崩壊症候群は予防が最善の管理であり、高リスク例には補液と予防的ラスブリカーゼ、中間リスク例には補液にアロプリノールまたはラスブリカーゼを併用し、低リスク例は厳重なモニタリングにとどめること、および尿のアルカリ化は推奨しないことを確認した。閲覧 2026-08-25