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Disease Atlas · 神経 · 腫瘍

多形黄色星細胞腫

Pleomorphic xanthoastrocytoma

別名
PXA
臓器系
神経腫瘍
科目
Neurology
トピック
神経内科 G3-06:脳腫瘍の病理学的分類
上位概念
中枢神経系腫瘍(成人・小児)
鑑別疾患
神経節膠腫毛様細胞性星細胞腫
治療薬
ダブラフェニブ+トラメチニブ
症状
痙攣発作頭痛
画像所見
壁在結節
適応薬
ダブラフェニブ+トラメチニブ

🧠 全体像:(PXA)は、・と同じ「若年者の大脳半球表在性・境界明瞭な腫瘍」グループに属し、⭐ **BRAF V600E変異が全体の75%超と非常に高頻度という点でもこの仲間と重なる1。 2021分類ではgrade 2とgrade 3(型)の2段階に分かれ、⚠️ **型でこの変異を欠く例はがとくに低い1。画像はと同じ「嚢胞+」の形を取りうるため、この2つとは並べて覚えるとよい。

疫学・好発部位

全星細胞腫の1%未満とまれで、小児・若年成人に多い。あるコホートでは年齢中央値24歳(7〜60歳)、別のコホートでは32歳(5〜74歳)と報告され、⭐ grade 3はgrade 2より高齢で診断される傾向がある(27歳 対 37歳)12。

好発部位は大脳半球の表在性皮質、とくにである。あるコホートでは全体の60%相当(grade 2では72%)が、別のコホートでは81.6%が表在性大脳半球病変で36.7%がだった12。

画像所見——嚢胞+壁在結節

では表在性の皮質病変として描出され、はあるコホートで72%に認められた1。⭐ ・血管芽腫・と同じく、嚢胞と()の組み合わせを取りうる代表的腫瘍の一つである3。周囲浮腫はgrade 2で25%、grade 3で63%とで目立つ(p=0.01)1。

病理

の腫瘍細胞(88%)に加え、脂質を蓄えたキサントーマ細胞と(63%)が特徴である1。⚠️ キサントーマ細胞は低悪性度側に多く、grade 2で67%、grade 3では35%に低下する1。壊死はgrade 2で8%、grade 3で40%と大きく差がある(p=0.0007)1。

WHOグレード分類

⭐ 2021分類ではPXAをgrade 2またはgrade 3(型)に分け、型の基準は10高倍視野あたり5個以上のである1。

grade 2 grade 3(型)
好発年齢(中央値の一例) 27歳 37歳
の割合(一例) 72% —
周囲浮腫 25% 63%
キサントーマ細胞 67% 35%
壊死 8% 40%
TERT 3% 35%
5年 75.8% 37.0%
91.4% 64.8%

12

CDKN2A欠失は全体で28%に認められるが、grade間で有意差はない1。

分子——BRAF V600E変異

flowchart TD
    A["BRAF V600E変異<br>(PXA全体の約75%)"] --> B["MAPK経路の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='constitutive activation'>恒常的活性化</span>"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='transformation'>腫瘍化</span>"]
    D["grade 3でBRAF V600E変異を欠く"] --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='survival'>生存率</span>がとくに低い"]

⭐ **BRAF V600E変異はPXA全体の75.4%(43/57例)に認められ、grade 2で81%、grade 3で65%とやや低下する1。⚠️ **grade 3でこの変異を欠く例はがとくに低い(p=0.01)1——同じでも分子背景で予後が分かれる。

💡 BRAF V600E変異は・でも高頻度で、単独では組織型を区別できない。この3腫瘍が並んで語られる理由がここにある。

治療

⭐ 標準治療はである。 grade 2で完全切除できた例では、術後の追加治療は不要とされる2。出例に対する補助放射線療法は、あるコホートでは予後との有意な関連を示さなかった(p=0.715、n=6と少数)2。

⚠️ BRAF V600E変異陽性でを要する例には、分子標的薬という選択肢がある。 2023年、米国は1歳以上の小児患者を対象に、BRAF V600E変異陽性の( grade 1〜2、を要する例)に対しを承認した。無作為化試験では+に対し46.6%対10.8%、中央値20.1か月対7.4か月(0.31)と優れた成績を示した4。⚠️ ただしこの試験集団は全般であり、PXAに限定した成績ではない。

まとめ

  • PXAは若年者の大脳半球表在性腫瘍で、に多い。 2021分類でgrade 2とgrade 3(型、10高倍視野あたり5個以上)に分かれる。
  • 画像は・と同じ「嚢胞+」を取りうる。
  • 病理は細胞・キサントーマ細胞・が特徴。⚠️ キサントーマ細胞と壊死の頻度がgradeで大きく変わる(キサントーマ細胞67%→35%、壊死8%→40%)。
  • ⭐ BRAF V600E変異は全体の75%超と非常に高頻度だが、grade 3でこの変異を欠くとがとくに低い。
  • 5年生存率はgrade 2で75.8%(PFS)・91.4%(OS)、grade 3で37.0%・64.8%と大きな差がある。
  • 治療の中心は。⚠️ BRAF V600E陽性でを要する例にはという選択肢が2023年に承認されたが、対象試験はPXAに限定されていない。

出典

  1. 1.Clinical, Morphological, and Molecular Study on Grade 2 and 3 Pleomorphic Xanthoastrocytoma(Current Oncology(Zhang H, Ma XJ, Xiang XP, et al.)・2023)全文を閲覧した。PXAの好発年齢中央値が32歳(5〜74歳)でgrade 2が27歳・grade 3が37歳とgrade 3で高齢に傾くこと、好発部位が側頭葉でgrade 2では72%が側頭葉に位置すること、WHO 2021分類で退形成型(grade 3)が10高倍視野あたり5個以上の核分裂像を基準とすること、BRAF V600E変異が全体で75.4%(57例中43例)に認められgrade 2で81%・grade 3で65%とやや低下しgrade 3でこの変異を欠く例は生存率が有意に低いこと(p=0.01)、画像で造影効果が72%に認められ周囲浮腫がgrade 2で25%・grade 3で63%と高悪性度で顕著であること(p=0.01)、表在性皮質病変としての性質が85%に認められること、病理で多形性細胞が88%・脂質を蓄えたキサントーマ細胞がgrade 2で67%・grade 3で35%・好酸性顆粒小体が63%に認められること、壊死がgrade 2で8%・grade 3で40%と大きな差があること(p=0.0007)、TERTプロモーター変異がgrade 2で3%・grade 3で35%であること(p=0.0005)、CDKN2Aホモ接合性欠失が全体で28%に認められるがgrade間で有意差がないこと、grade 3の生存率がgrade 2より有意に低いこと(p=0.02)を確認した閲覧 2026-09-06
  2. 2.Exploring prognostic factors and treatment strategies for long-term survival in pleomorphic xanthoastrocytoma patients(Scientific Reports・2024)全文を閲覧した。49例(WHO grade 2が40例81.6%、grade 3が9例18.4%)を対象とした後ろ向き研究で、年齢中央値が24歳(7〜60歳)であること、腫瘍の81.6%が表在性大脳半球に位置し36.7%が側頭葉に局在すること、5年無増悪生存率がgrade 2で75.8%・grade 3で37.0%であること、5年全生存率がgrade 2で91.4%・grade 3で64.8%であること、遺伝子解析を受けた9例中7例(77.8%)にBRAF V600E変異を認めたが治療効果との関連分析は行わなかったこと、全摘出(GTR)が35例・亜全摘出(STR)が14例であり、grade 2でGTRが得られた例では術後の追加治療が不要とされたこと、STR6例における補助放射線療法の有無は予後と有意な関連を示さなかったこと(p=0.715)を確認した閲覧 2026-09-06
  3. 3.Cyst with a mural nodule tumor of the brain(Cancer Imaging(Raz E, Zagzag D, Saba L, et al.)・2012)Europe PMCの全文で確認した総説。中枢神経系で「嚢胞+壁在結節」の形を取る代表的な腫瘍が血管芽腫・毛様細胞性星細胞腫・神経節膠腫・多形黄色星細胞腫であり、より稀なものとしてtanycytic上衣腫・脳実質内神経鞘腫・線維形成性乳児神経節膠腫・嚢胞性転移が挙げられることを確認した閲覧 2026-09-06
  4. 4.FDA approves dabrafenib with trametinib for pediatric patients with low-grade glioma with a BRAF V600E mutation(U.S. Food and Drug Administration・2023)2023年3月16日、FDAが1歳以上の小児患者を対象にBRAF V600E変異陽性で全身療法を要する低悪性度神経膠腫(WHO grade 1〜2)に対しダブラフェニブ+トラメチニブを承認したこと、多施設非盲検試験(CDRB436G2201、NCT02684058)でカルボプラチン+ビンクリスチンとの2:1無作為化比較が行われ奏効率がダブラフェニブ+トラメチニブ群46.6%(95%CI 34.8〜58.6)に対しカルボプラチン+ビンクリスチン群10.8%(95%CI 3.0〜25.4)であったこと、無増悪生存期間中央値が20.1か月対7.4か月でハザード比0.31(95%CI 0.17〜0.55、p<0.001)であったことを確認した閲覧 2026-09-06