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Disease Atlas · 神経 · 症候群

足根管症候群

Tarsal tunnel syndrome

臓器系
神経運動器
科目
NeurologyMacroscopic Anatomy and Embryology (Macroscopic Anatomy)
トピック
神経内科 G1-37:末梢神経絞扼症候群解剖学 6.5:下肢:足関節と足
上位概念
末梢神経絞扼症候群
鑑別疾患
モートン神経腫後脛骨筋腱機能不全足底線維腫症足底腱膜炎頸椎・腰椎椎間板ヘルニアによる神経根症
症状
灼熱痛知覚異常しびれ圧痛Tinel徴候

🧠 全体像:は、の後下方にあるの下でが絞扼される病態である。の足版として並べられるが、⭐ 臨床の性格はかなり違う。 は「典型像がはっきりしていて、原因は特定できないことが多い」のに対し、はまれで過小診断されやすく、その代わり原因が見つかることが多い——の機序は約80%の症例で同定でき、特発性はまれである1。⚠️ したがって「」と診断して終わりにせず、・静脈瘤・・といったを必ず探しにいく。 ⚠️ は決め手にならない。 偽陰性はまれでなく、陰性でも診断を除外できない1。

解剖 — 屈筋支帯の下の狭い部屋

はの後下方にある狭いの空間である1。

境界 何でできているか
天井 。先端からとへ張る
床 脛骨・・の内側面

内容は、内側から外側へ → → → → の順に並ぶ1。

💡 並び順は覚え方がそのまま解剖になっている。 腱が2本、次に血管、次に神経、最後にもう1本の腱——つまり神経はいちばん後ろ寄りにあり、前方のが腫れれば押される側に回る。が原因になるのはこのためである。

は内でとに分岐する。⚠️ ただし5%では分岐がより近位で起こる1。は通常より近位で分枝して後内側の踵の知覚を担うが、25%ではから分かれるか、のを走る1。

⭐ 踵の感覚が保たれることがあるのは、この分岐の高さのためである。 がより近位・を走っていれば、下で絞扼されても踵は無症状で、足底だけがる。

原因 — 探せば見つかる

⭐ ここがとの最大の違いである。 の機序は約80%の症例で同定でき、特発性はまれである1。

内因性(管の中の異常) 外因性(管の外・全身)
、、腫瘍、神経腫 合わない靴
静脈瘤(拡張した静脈) 外傷。最大43%になどの外傷歴がある
・ 、後足部の・
神経周囲の線維化、骨棘、の肥厚 下肢の、全身性の
・ 糖尿病、甲状腺機能低下症、痛風、、術後瘢痕

出典は内因性・外因性を上のように整理している1。⚠️ が見つかるかどうかで、治療も予後も変わる。 による症例は手術によく反応する一方、原因を同定できず保存治療にも反応しない症例は手術成績も良くない1。

臨床像

  • の直上の疼痛がと足底へ放散する。下腿以上へ放散することもある1。
  • ⭐ 足底のとしびれ。 鋭いの痛み、に沿うと、ちくちく感を訴える1。
  • ⭐ 夜間に強い。 歩行・立位・後に増悪し、安静で軽快する。が夜間に悪化して睡眠を妨げる1。
  • 診察で・を認めることがある。⚠️ 筋力低下・の萎縮・のは慢性例の遅発所見である1。
  • 症状の範囲は、の本幹が絞扼されているのか分枝だけかで変わる1。

💡 との時間パターンの違いが最も実用的である。 は「朝の第一歩」で、動くと軽快する。は「夜と、動いたあと」で、休むと軽快する。痛みが強くなる向きが逆になっている。

診断

⚠️ に特異的な検査は存在せず、診断は臨床的に行われる1。82編・4213例を集めた系統的レビューも、診断の基準となる標準が無いことがそのまま診断の不一致と治療対象の選び方のばらつきを生んでいると指摘している2。

誘発試験

試験 やり方と成績
を繰り返し叩き、に疼痛やちくちく感が出れば陽性。⚠️ 感度25〜75%、特異度70〜90%1。⭐ ただし後の疼痛緩和の強い予測因子でもある
を的に最終域までかつし10秒保持する。症状が再現されれば陽性で、患者の82%で陽性となる1
の深部触診 圧痛。触知する腫瘤があればを疑う

⚠️ 誘発試験は「診断を付ける」というより「疑いを強める」である。 系統的レビューでは、を除くと誘発試験が最もよく使われ(82編中94%)、41%の研究では診断に必須とされていたが、誘発試験・・超音波のいずれも報告によって感度が大きくばらついていた2。

画像と電気生理

検査 位置づけ
単純X線 最初の画像検査。骨棘、後足部の・、、外傷の既往を見る1
超音波 とその分岐を描出でき、・・静脈瘤・を評価する1
MRI ⚠️ そのものの診断には感度が高くない。 他の原因を含めるか除くかのために撮る1
・ しばしば異常を示し、のほうが運動より異常を示しやすい。⚠️ 感度・特異度は最適といえず、偽陰性はまれでない1

⚠️ が陰性でも診断は否定できない1。⭐ これは「検査の質が悪い」のではなく「決められるだけの研究が無い」に近い。 1965年から2002年までの317編を絞り込んでも選定基準を満たしたのは4編だけで、いずれもClass IIIにとどまり、実際の感度と特異度は決定できなかった。は診断の確認に有用でありうるが、推奨水準はLevel Cである3。

flowchart TD
    A["足底の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='burning pain'>灼熱痛</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='numbness'>しびれ</span><br>夜間と活動後に増悪"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tarsal tunnel'>足根管</span>の触診と<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Tinel sign'>Tinel徴候</span><br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='dorsiflexion-eversion test'>背屈外がえし試験</span>"]
    B --> C{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='medial malleolus'>内果</span>後下方に一致する症状か"}
    C -->|"いいえ"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='radiculopathy'>神経根症</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='polyneuropathy'>多発ニューロパチー</span><br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='plantar fasciitis'>足底腱膜炎</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='heel fat pad atrophy'>踵脂肪褥萎縮</span>を再検討"]
    C -->|"はい"| E["単純X線で骨性の要因を確認"]
    E --> F["超音波または<span class='jp-term jp-term-diagram' title='magnetic resonance imaging'>MRI</span>で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mass lesion'>占拠性病変</span>を探す"]
    F --> G{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ganglion cyst'>ガングリオン嚢腫</span>・静脈瘤<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='tenosynovitis'>腱鞘炎</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='accessory muscle'>副筋</span>・腫瘍があるか"}
    G -->|"ある"| H["原因を狙った治療へ<br>手術の反応が良い群"]
    G -->|"ない"| I["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='nerve conduction study (NCS)'>神経伝導検査</span>を追加<br>陰性でも除外しない"]
    I --> J["保存治療を先行させる"]

鑑別

鑑別 決め手
朝の第一歩が最も痛く、動くと軽快する。圧痛はで、やを伴わない
に触知する結節があり、圧痛は結節そのものにある
L5・S1 腰から放散し、に沿う。⚠️ と併存しうるので、腰の所見があっても足を診る
両側性・左右対称で、に分布する。糖尿病では両者が重なる
間の疼痛と。足底全体ではなく間へ放散する
歩行距離で規定され、で軽快する
、部の、、 いずれもの鑑別として挙げられている1

治療

保存治療から始める。 ただし⚠️ 保存治療の成功率は原因によって異なる1。

段階 内容
薬物 ・、外用と。には・・を試験的に用いる1
注射 へのステロイド注射。⭐ 疼痛緩和と診断の両方を兼ねる1
の強化、下腿のストレッチ、神経の訓練、1
への負荷を減らす。踵をさせて神経への牽引を減らす、、1
原因への直接介入 はにしうる1

手術

保存治療が無効な場合、または絞扼の明らかな原因が同定された場合に適応となる1。術式は近傍の近位付着部からまでを切離する。

⚠️ 成功率の幅が大きい(44〜96%)1。よく反応するのは次の群である。

  • 術前にが陽性の患者
  • が原因の患者
  • 若年、症状の期間が短い、、原因が明確、に既往病変が無い

⭐ の伝導の著明な遅延は、保存治療の失敗を予測する1。⚠️ を行っても症状が十分に消退しないことがある。 術後合併症には・感染・がある1。

まとめ

  • は、後下方のの下でが絞扼されるである。の足版だが、はるかにまれで過小診断されやすい。
  • ⭐ と違い、原因が見つかることが多い。 の機序は約80%で同定でき、特発性はまれ。・静脈瘤・・・骨棘・・術後瘢痕を探す。最大43%になどの外傷歴がある。
  • の内容は内側から・・・・の順。分岐の高さには変異があり、5%はより近位で内側・へ分かれる。
  • 症状は足底のとで、夜間と活動後に増悪し安静で軽快する。の「朝の第一歩」とは増悪の向きが逆になる。筋力低下・萎縮は遅発所見。
  • 診察は(感度25〜75%・特異度70〜90%)と(患者の82%で陽性)。⚠️ 診断の基準となる標準は存在せず、報告ごとに感度が大きくばらつく。
  • ⚠️ の感度は高くなく、陰性でも否定できない。 エビデンスに基づく総説でも実際の感度・特異度は決定できず、推奨水準はLevel Cにとどまる。
  • は本症の診断には感度が高くない。超音波はとの評価に有用。
  • 治療は・・神経の訓練・薬物・ステロイド注射から始め、無効例や原因が明確な例でを切離する。成功率は44〜96%と幅があり、術前の陽性との存在が良好な反応を予測する。

出典

  1. 1.Tarsal Tunnel Syndrome(StatPearls Publishing (NCBI Bookshelf)・2026)足根管症候群を、足根管の構造とりわけ後脛骨神経の圧迫によって生じる絞扼性ニューロパチーと定義し、手関節の手根管症候群としばしば比較されるが手根管症候群よりはるかにまれであるとしていること。足根管が内果の後下方にある狭い線維骨性の空間で、天井は内果先端から踵骨内側突起と足底腱膜へ向かう屈筋支帯であり、床は脛骨・距骨・踵骨の内側面であること。内容は後脛骨筋腱・長趾屈筋腱・長母趾屈筋腱、後脛骨動静脈、後脛骨神経(L4〜S3)で、内側から外側へ後脛骨筋腱・長趾屈筋腱・後脛骨動静脈・後脛骨神経・長母趾屈筋腱の順に並ぶこと。後脛骨神経は足根管内で内側足底神経と外側足底神経に分岐するが、5%では分岐が足根管より近位で起こること。内側踵骨神経は通常足根管より近位で分枝し後内側の踵の知覚を担うが、25%では外側足底神経から分かれるか屈筋支帯の浅層を走ること。原因は内因性と外因性に分かれ、内因性には腱症・腱鞘炎・神経周囲線維化・骨棘・支帯の肥厚と、静脈瘤・ガングリオン嚢腫・脂肪腫・腫瘍・神経腫といった占拠性病変があり、外因性には合わない靴・外傷・足根骨癒合症や後足部の外反内反といった解剖学的力学的異常・下肢の全身性浮腫・全身性炎症性関節症・糖尿病・術後瘢痕があること。インピンジメントの機序は約80%の症例で同定でき、特発性の足根管症候群はまれであること。発生率は不明で比較的まれかつ過小診断されており、男性より女性に多くあらゆる年齢で見られること。最大43%に足関節捻挫などの外傷歴があり、危険因子に糖尿病・甲状腺機能低下症・痛風・ムコ多糖症・高脂血症が挙げられること。主訴は足根管の直上の疼痛が足弓と足底へ放散するもので、鋭い電撃様の足の疼痛・足底のしびれ・後脛骨神経支配域に沿う放散痛と知覚異常・背屈と外がえしの最終域での疼痛・ちくちく感や灼熱感を訴え、夜間・歩行や立位・身体活動後に増悪し安静で軽快すること、異常感覚が夜間に悪化して睡眠を妨げうること。診察で扁平足・回内足・内反尖足を認めることがあり、慢性例では萎縮・足内在筋の筋力低下・足趾の拘縮を認め、筋力低下は遅発の所見であること。Tinel試験は足根管を繰り返し叩いて後脛骨神経支配域に疼痛やちくちく感が出れば陽性で、除圧術後の疼痛緩和の強い予測因子である一方、感度は25〜75%と低く特異度は70〜90%であること。背屈外がえし試験は足関節を他動的に最終域まで背屈・外がえしして10秒保持し症状が再現されれば陽性で、足根管症候群患者の82%で陽性となること。足根管症候群に特異的な検査は存在せず診断は臨床的に行われ、画像と神経生理検査は他疾患の除外や原因の同定に用いること。単純X線が最初の画像検査で骨棘・後足部の内反外反・足根骨癒合症・外傷の既往を同定できること、MRIは足根管症候群の診断に対して感度が高くないが他の原因の除外に役立つこと、超音波は後脛骨神経とその分岐を描出でき腱炎・腱鞘炎・脂肪腫・静脈瘤・ガングリオン嚢腫の評価に用いること。筋電図と神経伝導検査はしばしば異常を示し、感覚神経伝導検査のほうが運動神経伝導検査より異常を示しやすいが、これらの検査の感度・特異度は最適とはいえず偽陰性はまれでないため陰性でも診断を除外できないこと。治療は原因・機能障害の程度・筋萎縮の有無で選び、保存治療の成功率は原因によって異なること。保存治療には冷却、アセトアミノフェンとNSAID、ガバペンチン・プレガバリン・三環系抗うつ薬の試験的投与、外用リドカインとNSAID、疼痛緩和と診断を兼ねたステロイド注射、理学療法、後脛骨筋の強化、活動調整、下腿のストレッチ、神経の滑走訓練、足根管への負荷を減らす装具、踵を内反させて神経への牽引を減らす内側ヒールウェッジ、夜間装具や歩行ブーツが含まれること。ガングリオン嚢腫は超音波ガイド下に穿刺吸引しうること。手術は保存治療が無効な場合、または絞扼の明らかな原因が同定された場合に適応となり、占拠性病変による症例は手術によく反応すること、後脛骨神経の伝導の著明な遅延は保存治療の失敗を予測すること。術式は内果近傍の近位付着部から載距突起まで屈筋支帯を切離するもので、手術成功率は44〜96%と幅があること。術前にTinel徴候が陽性の患者、若年者、症状の期間が短い者、早期診断・原因が明確・足関節の既往病変が無い者が手術によく反応すること。鑑別にはアキレス腱炎、深層屈筋区画症候群、踵骨棘や足部関節症などの変性変化、足部足関節の靱帯・腱膜の炎症性疾患、Henry結節部での長母趾屈筋腱と長趾屈筋腱の交差症候群、L5・S1神経根の圧迫、Morton中足骨痛、神経性間欠跛行、足底腱膜炎、多発ニューロパチー、踵骨後部滑液包炎が挙がること。予後は原因が同定できる症例、とくに早期に診断された症例で良好である一方、原因を同定できず保存治療にも反応しない症例は手術成績も良くないこと。合併症として持続する疼痛、筋力低下と萎縮、術後の創傷治癒不良・感染・瘢痕形成があり、除圧術を行っても症状が十分に消退しないことがあること。内因性の原因の列挙には肥大した副筋・変異筋も含まれ、母趾外転筋のような副筋や長趾屈筋腱のような腱が足根管に張り出して神経を圧迫しうること。疼痛は内果部から足弓と足底へ放散するのが典型だが下腿へ近位に広がることもあること。2026年1月版(章の著者はKielとKaiser、章の日付は2024年9月2日)を閲覧した。閲覧 2026-09-02
  2. 2.Differences in Diagnosing Tarsal Tunnel Syndrome Across the Literature: A Systematic Review and a Call for Standardization(JBJS Reviews・2026)足根管症候群の診断には基準となる標準が存在せず、そのために診断の不一致と治療対象の選び方のばらつきが生じているとして、現行の研究が用いている診断基準をbest-evidence synthesisで整理した系統的レビュー。3つのデータベースから、足根管症候群の診断または治療を主題とし、診断の記載があり、原著データを持ち、成人10例以上を含む研究を採用し、82編・4213例を対象としたこと。臨床症状を除くと誘発試験が最も多く用いられ(82編中94%で使用、41%では診断に必須)、そのうちTinel徴候が最も多かった(89%で使用)こと。誘発試験・電気生理検査・超音波計測の感度は報告によって大きくばらついたこと。標準化された診断手順が無いために実地診療のばらつきが大きく、エビデンスに基づく診断ガイドラインが必要だと結論していること。エビデンス水準は診断Level IIIであること(抄録のみを閲覧しており全文は未取得)。閲覧 2026-09-02
  3. 3.Usefulness of electrodiagnostic techniques in the evaluation of suspected tarsal tunnel syndrome: an evidence-based review(Muscle & Nerve(American Association of Neuromuscular and Electrodiagnostic Medicine)・2005)足関節部の脛骨神経障害(足根管症候群)における神経伝導検査と針筋電図の有用性を評価したエビデンスに基づく総説で、1965年から2002年4月までに英語で発表された317編のうち6つの選定基準の5つ以上を満たした4編を採用したこと。4編はいずれもClass IIIのエビデンス水準と判定されたこと。神経伝導検査は足根管症候群を疑われた患者の一部で異常を示し、感覚神経伝導検査のほうが運動神経伝導検査より異常を示しやすかったが、実際の感度と特異度は決定できなかったこと。針筋電図の異常の感度も決定できなかったこと。神経伝導検査は足関節部の脛骨神経障害の診断を確認するのに有用でありうるが推奨水準はLevel Cにとどまり、足根管症候群における電気生理学的手法をより確定的に評価するには適切に設計された研究が必要であると結論していること(抄録のみを閲覧しており全文は未取得)。閲覧 2026-09-02